貧困問題(貧困問題対策本部)

活動の概要

2008年の第51回人権擁護大会において、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」が満場一致で採択され、日弁連は、労働分野の規制緩和を見直すと同時に、セーフティネット全体の再構築が必要であるとし、引き続き生活困窮者支援に全力を挙げて取り組むことを内外に宣言しました。この決議の趣旨及び大量の派遣切り等の雇用不安が広がる社会情勢を踏まえ、2008年12月に貧困と人権に関する委員会が設置され、さらに、体制を強化して全国規模で集中的な取り組みを進めるため、同委員会を改組する形で、2010年4月、貧困問題対策本部が設置されました。

 

本部内には、(1)セーフティネット部会、(2)ワーキングプア部会、(3)女性と子どもの貧困部会などを設置して各課題に取り組んでいます。

 

本部では、貧困に関わる人権侵害を社会から根絶するために必要な対応策の提言、調査研究、対外的諸活動を行うことを目的としており、特に、以下の4点を重点目標としています。

 

  1. 法律扶助制度を拡充しつつ、労働と生活の問題の総合的な相談窓口を各地の弁護士会に設置するとともに、自治体等との連携により市民がアクセスしやすい体制を構築すること(第60回定期総会宣言)
  2. 直接・無期の労働契約による正規雇用を原則とし、非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立った労働法制及び労働政策の抜本的見直し(第51回人権大会決議)
  3. 日弁連生活保護法改正要綱案の法制化(第49回人権擁護大会決議)
  4. 子どもの貧困対策の推進(第53回人権擁護大会決議)

     

 

詳しい活動内容や最新の情報

1 各地の弁護士会・市民団体等との連携や体制の強化に向けて

(1)各弁護士会への貧困問題対策本部の設置等、組織体制強化の要請

日弁連貧困問題対策本部の設置とともに、各弁護士会においても、貧困問題に対応する組織を強化する要請をしています。

 

(2)貧困問題対策全国キャラバンの実施(2011年10月~3月)

日弁連の取り組みを広く市民の皆様に知っていただき、全国の弁護士会とも密接に連携しながら定着させ、さらに全国の人権団体、労働団体等とも連携を深めるために、2010年度に引き続き、2011年度も全国で連続的に貧困問題に関する市民集会を開催する「貧困問題全国キャラバン」を実施する予定です。

 

(3)貧困問題対策全国協議会の開催

各地の貧困問題への取り組みについて、全国的に情報を共有し、意見交換を行うために各弁護士会の担当者による全国協議会を開催しました。第1回は2010年5月14日、第2回は同年11月8日、第3回は2011年6月2日に行い、活発な議論がなされました。

 

2 相談体制の構築

(1)相談体制構築マニュアルの作成

労働と生活に関する総合相談窓口を整備するために有益な情報を掲載した「相談体制構築マニュアル」を作成し、各弁護士会に配布しました。マニュアルには、法律扶助制度の活用、各地の実践例(労働局申告の代理援助の自主事業立ち上げ、自殺対策基金を活用した相談体制の構築など)などが盛り込まれています。

 

(2)2010年12月全国一斉「雇用と生活」総合相談強化月間

日本弁護士連合会・各地弁護士会・日本司法支援センター(法テラス)の共催により、2010年12月を「全国一斉『雇用と生活』総合相談強化月間」と位置づけ、解雇や賃金未払いなどの労働問題、生活保護、公的貸付、多重債務などの生活問題に、弁護士が無料で相談に応じました。初日である12月1日には、全国一斉「雇用と生活」ホットライン(フリーダイヤル)を実施しました。
1か月間で全国1500件を超える相談がありました。

 

3 貧困ビジネス対策

貧困問題の深刻化が進むなか、貧困にあえぐ人をターゲットにして利益を得ようとする「貧困ビジネス」が蔓延しています。貧困ビジネスは、住まい、労働、医療といった社会生活に不可欠な領域までその勢力を拡大しつつあります。そこで、当連合会は貧困ビジネス被害を根絶するため、被害実態を明らかにして救済につなげるなど、以下のような活動を行っています。

 

  • 1) 『貧困ビジネス被害の実態と法的対応策』(民事法研究会)の出版(2011年8月29日第1刷発行)
  • 2) 「無料低額宿泊所」問題に対する意見書 (2010年6月18日)
  • 3) シンポジウム「貧困ビジネス被害を考える~被害現場からの連続報告」の開催(2010年4月12日)

4 生活保護問題への取組

生活保護制度は、人が尊厳に値する生活をするための最後のセーフティネットです。それにもかかわらず、政府と自治体の財政悪化、利用者の増加などを理由に、水際作戦など運用の後退と、改悪への試みが繰り返されてきました。
そして、2011年3月11日に東日本を襲った大震災による未曾有の被害の中で、生活保護制度の最後のセーフティネットとしての機能が改めて問われる一方、財政難により生活保護制度の運用の後退と改悪への試みが更に加速することが懸念されています。
このような生活保護制度について、最後のセーフティネットとしての機能を十分に発揮させるため、当連合会は以下のような活動を行っています。(2016年3月)

 

 

5 労働問題における取組

(1)労働者派遣法抜本改正に向けた取り組み

現在国会で継続審議となっている労働者派遣法改正について、「派遣対象業務を専門的なものに限定すること」や「『常用雇用』を期間の定めのない契約に限定すること」などを求め、意見書や会長声明を重ねて公表しています。そのほか、国会の審議状況に合わせて、議員要請の実施や院内集会等を随時開催しています。

 

(2)有期労働契約の規制

有期労働契約の問題が日本の深刻な貧困問題に直結しているとの認識のもと、2010年7月15日付けで意見書を公表しました。

 

2013年6月10日を中心とした日程で「全国一斉労働相談ホットライン」を実施しました。

 

(3)公契約法・公契約条例の制定を求める取り組み

公契約に基づいて労務に従事する人たちの適正な労働条件を確保することは、公共サービスの質の確保と生活できる賃金への底上げの実現、また、公正な競争による地域経済の活性化にもつながります。

 

公契約法・公契約条例の重要性について考え、制定に向けた動きを全国で進めることを目的として、2012年2月3日にシンポジウムを開催しました。

 

(4)デンマーク調査の実施

2010年8月30日から9月3日まで調査団を派遣し、デンマークの労働政策に関する調査を実施しました。デンマークの労働市場は、「ゴールデントライアングル」と呼ばれる3要素、すなわち、①フレキシブルな労働市場、②手厚い失業保険制度、③積極的労働市場政策、を兼ね備え、フレキシキュリティ(柔軟性と安全性の両立)の代表例として注目を集めています。2011年1月14日には、同調査の報告を行うとともに日本の労働政策についても議論するシンポジウムを実施しました。

 

 

6 子どもの貧困対策

(1)第53回人権擁護大会の開催と決議の採択

2010年10月の第53回人権擁護大会において、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての子どもの生きる権利、成長し発達する権利の実現を求める決議」を満場一致で採択しました。

 

なお、人権擁護大会の開催に合わせて、全国24地域で、子どもの貧困をテーマにしたシンポジウムが開催されました。

 

(2)子どもの貧困対策各界懇談会の開催

子どもの貧困問題を検討している民間団体との懇談会を継続的に実施しています。

 

(3)子ども・子育て新システムへの対応について

政府が検討を進めている「子ども・子育て新システム」について、2011年1月21日付けで意見書をとりまとめ、同年2月9日には緊急シンポジウム「すべての子どもへの良質な成育環境を保障し、子どもを大切にする社会のために~『子ども・子育て新システム』を考える~」を開催し、同年7月6日には第2回目のシンポジウムを開催しました。

 

7 その他

(1)貧困率公表1年を迎えるにあたっての会長談話

貧困率公表から1年を迎え、より詳細な貧困率の実態調査により貧困の原因を探り、具体的期限を定めた貧困率削減目標を設定すべきであるとして2010年10月20日に会長談話を公表しました。

 

(2)地域主権改革への対応

現在国会で継続審議となっている地域主権関連3法案について、その影響等について考えるシンポジウム「地方分権とナショナル・ミニマムのあり方を考える」を2010年7月3日に開催しました。

 

また、地域主権改革については、貧困問題対策の観点から、2010年12月に以下の意見書を取りまとめ、公表しています。これ以外の分野についても、引き続き、検討を進めています。

 

(3)パーソナル・サポート・サービスについての検討

政府が検討しているパーソナル・サポート・サービスのあり方について、全国各地のモデルプロジェクト実施地域の委員を中心に検討を進めています。

 

(4)セーフティネット貸付に関する検討

年金担保貸付により年金から借入金の返済が行われ、年金収入が途絶えて生活に困窮する高齢者等が少なくないことから、2010年2月18日付けで意見書を取りまとめました。

 

その後、事業仕訳により同事業は廃止の結論となりましたが、それに代わる公的セーフティネット貸付である生活福祉資金貸付を利用しやすいものにするために、2011年2月17日付けで意見書を取りまとめました。

 

さらに、同年2月24日には、シンポジウム「みんなで考えよう。セーフティネット貸付―現状と課題及びセーフティネット貸付のあるべきかたち―」を実施しました。

 

 

(5)奨学金返済問題への対応

雇用や生活上の困難等から奨学金返済への対応に窮する利用者が急増していることを受けて、日弁連では、奨学金返済問題ホットラインを実施し、現状の把握に努め、改善を図っています。

過去の実施結果は、以下のとおりです。


 

(6) 第56回人権擁護大会シンポジウム第3分科会の開催(報告)

PDF第56回人権擁護大会シンポジウム第3分科会報告集「『不平等』社会・日本の克服-誰のためにお金を使うのか-」(PDFファイル;813KB)