取調べの可視化(取調べの可視化本部)

取調べの可視化(全過程の録画)を全件に

被疑者の取調べは「密室」で行われています

日本の刑事司法制度においては、捜査段階における被疑者の取調べは、弁護士の立会いを排除し、外部からの連絡を遮断されたいわゆる「密室」において行われています。このため、捜査官が供述者を威圧したり、利益誘導したりといった違法・不当な取調べが行われることがあります。
その結果、供述者が意に反する供述を強いられたり、供述と食い違う調書が作成されたり、その精神や健康を害されるといったことが少なくありません。


 

「裁判の長期化」や「えん罪」の原因となっています

そのうえ、公判において、供述者が「脅されて調書に署名させられた」、「言ってもいないことを調書に書かれた」と主張しても、取調べ状況を客観的に証明する手段に乏しいため、弁護人・検察官双方の主張が不毛な水掛け論に終始することが多く、裁判の長期化やえん罪の深刻な原因となっています。

 

最近でも、厚労省元局長事件、足利事件、布川事件など、裁判が長期化した事例や違法・不当な取調べによるえん罪事件が多く発生しています。

 

取調べの可視化(全過程の録画)が義務付けられました

密室での違法・不当な取調べによるえん罪事件の反省を踏まえ、日本においてもようやく、2016年の刑事訴訟法等の一部改正により、裁判員裁判対象事件・検察官独自捜査事件について、身体拘束下の被疑者取調べの全過程の録画が義務付けられ、2019年6月に施行されました。

 

対象事件は全事件の3%、まだまだ不十分です

しかしながら、改正刑事訴訟法による録画義務付けの対象事件は全事件の3%未満です。これまでに発生した多くのえん罪事件はこの改正法があったとしても録画義務付けの対象外です。

 

また、逮捕されていない被疑者や参考人(被疑者以外の人)の取調べも録画義務付けの対象外です。

 

欧米諸国だけでなく、韓国、香港、台湾などでも導入されています

イギリスやアメリカの多くの州のほか、オーストラリア、韓国、香港、台湾などにおいても、取調べの録画や録音を義務付ける改革が行われています。

 

また、国連の国際人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対して、取調べへの弁護人の立会いのほか、取調べの方法、継続時間の厳格な規制と完全なビデオ録画を定める立法措置を講ずるよう勧告しています。

 

私たちは、取調べの可視化(全過程の録画)の全件拡大を提言しています

改正刑事訴訟法は、施行後一定期間経過後、録画の実施状況について検討し、必要な見直しを加えることを求めています。

 

今後の見直しにあたっては、逮捕されていない被疑者も含め、取調べの可視化(全過程の録画)を全件に拡大すべきです。

 

取調べの可視化(全過程の録画)の実現と拡充に向けた活動