「社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案」及び「生活保護制度に関する国と地方の協議」についての意見書

2011年7月14日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連では、2011年7月14日付けで「「社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案」及び「生活保護制度に関する国と地方の協議」についての意見書」を取りまとめ、同年7月21日付けで厚生労働大臣に提出しました。また、指定都市市長会にも提出しました。

 

 

意見書の趣旨

1指定都市市長会の「社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案」(以下「本件提案」という。)のうち、生活保護に関する費用を全額国が負担することを提案している部分は正当であり、国はこの点を緊急に実現すべきである。



2 その余の部分は、以下のとおり現状認識を誤っており、憲法25条違反のおそれの強い提案が多く含まれているため、指定都市市長会は、本件提案を撤回すべきである。



(1) 社会保障制度全般が不十分な中で生存権保障及び貧困問題の解消に生活保護が果たしている役割を軽視し、保護率や生活保護世帯の増加の事実をもって「制度疲労」であるとする点で、現状認識を誤っている。



(2) 生活保護基準と年金や最低賃金の不整合につき、後二者の引上げではなく「保護費の見直し」が必要であるとしている点で誤っている。



(3) 稼働能力を有する保護受給者が急増しているとの現状認識は誤っている。



(4) 本件提案が実質的に提言している有期保護は、憲法25条及び生活保護法2条違反であり、保護受給者の就労自立を名目として有期保護を導入することは許されない。



(5) 本件提案の自立概念は一面的であり、自立支援を保護受給者の権利として位置付けていない点は不当である。



(6) 医療費一部自己負担の導入は、医療を受ける権利の侵害であり、憲法25条並びに生活保護法1条及び3条に反する。



3 厚生労働省と地方代表は、本件提案を受けての「生活保護制度に関する国と地方の協議」を中止し、生活保護制度改革について協議を行う際には生活保護利用当事者や支援者等の利害関係者の参加を保障した上、公開の下で行うべきである。


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