全面的国選付添人制度の実現(全面的国選付添人制度実現本部)

活動の概要

罪を犯したとされる少年は、成人と異なり、刑事裁判を受けるのではなく、家庭裁判所に送られて少年審判を受けます。その少年審判を受ける少年に、国費で弁護士を付ける制度を国選付添人制度といいます。


日弁連は、少年の主張を聞き、証拠をチェックして、適正に事実が認定されるよう、少なくとも少年鑑別所に収容され、身体拘束を受ける少年の事件全てを対象とする「全面的国選付添人制度」が必要であると考えています。


その実現を目指す運動を担うことを目的に、2009年1月、全面的国選付添人制度実現本部を設置しました。


運動の結果、2014年4月に少年法が改正され、国選付添人制度の対象事件が大幅に拡大されました。


しかし、現行法は、対象事件がなお限定されている点及び少年や保護者の請求による選任を認めず裁判官が必要と判断する場合に限っている点で不十分なものです。刑事訴訟法の改正に伴い、被疑者国選弁護制度の対象事件が2018年6月1日に身体拘束事件全件まで拡大されることとなっていますが、より支援や助言を必要とするはずの未成熟な少年については、置き去りにされたままになっています。


そのため、日弁連は改めて、身体拘束を受ける少年の事件全てを対象とする「全面的国選付添人制度」の実現を求め、現在取り組んでいます。


活動の内容及び最新の情報

1 全面的国選付添人制度に関する立法提言

日弁連では、以下のとおり、全面的国選付添人制度の実現に向けた意見を公表しています。
  

2 国選付添人制度について

国選付添人制度は2000年の少年法「改正」で初めて導入されました。しかし、この制度は、非行事実に争いがある事件について検察官関与決定がなされた場合に限り、家庭裁判所が選任するというもので、年間10件以下という極めて少数の選任にとどまっていました。


その後、2007年の少年法「改正」で、検察官関与の有無にかかわらず、家庭裁判所が必要と認めた場合には裁量により弁護士付添人を選任することができるようになりましたが、その対象事件は、殺人、強盗などの重大事件に限られていたため、その選任数は、年間300人から500人程度にすぎませんでした(少年鑑別所に収容された少年は、年間約1万人以上になります。)。


日弁連が運動を進めた結果、2014年4月、少年法の一部を改正する法律が成立し、国選付添人の対象事件が被疑者国選弁護制度と同一範囲の死刑・無期又は長期3年を超える懲役・禁錮の罪の事件まで拡大されました。これは、少年鑑別所に収容され身体拘束された少年の約8割を対象とするものであり、大幅な前進であると評価できるものです。


しかしながら、2015年の通常国会で「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立したことに伴い、2018年6月1日、被疑者国選弁護制度の対象事件が身体拘束事件全件まで拡大されることとなりました。


その結果、国選付添人の対象事件が限定されたままであるため、家裁送致後には、国選弁護人が引き続き国選付添人として活動することができないという矛盾が生じることとなります。


日弁連は、身体拘束された少年の事件全てを対象とし、少年又は保護者の請求があった場合にも国選付添人を選任する「全面的国選付添人制度」の実現を目指しており、今後も取組を進めていく必要があります。



3 主な活動

1.  全面的国選付添人制度実現のための立法運動

全面的国選付添人制度を実現するためには、少年法改正が必要です。そのために、広く市民にその必要性を訴えるとともに、政府、国会に対して、法改正の働きかけを行っています。


2.  少年保護事件付添援助制度

日弁連では、家裁が国選付添人を選任しないという判断をした事件や国選付添人制度の対象外事件であっても、資力のない少年が弁護士付添人を選任できるようにするため、全国の弁護士が負担する特別会費で運用する少年保護事件付添援助制度を作り、すべての事件について、弁護士費用を援助しています。


3.  全国の弁護士の対応態勢の整備

全国の弁護士会では、付添人を担当する弁護士を増やし、特に、被疑者段階で国選弁護人がついた事件について、家裁送致後も引き続き弁護士が付添人として活動する態勢の確立を図っています。


4.  当番付添人制度の全国実施

当番付添人制度は、少年鑑別所に収容された少年について、少年から依頼があった場合に1回につき無料で弁護士が面会する制度です。被疑者段階で弁護人がついていない少年についても、これを契機に弁護士と面会し、その弁護士が引き続き付添人として活動することを予定しています。全国の弁護士会で実施しています。


5.  弁護士活動の質的向上を目指す取組

少年事件を担当する弁護士は一気に増加しましたが、日弁連では、あわせて付添人活動が少年の利益となるよう、活動の質の確保、向上を目指す取組をしています


6.  シンポジウムの開催

市民の皆様に弁護士付添人の意義と全面的国選付添人制度の必要性を理解していただくために、各地でシンポジウムを開催しています。


参考資料

(1)パンフレット
(2)シンポジウム報告書
(3)少年事件に関する各種統計(事件数・付添人選任数・少年保護事件付添援助利用件数等)