弁護士費用保険(権利保護保険)について
1 弁護士費用保険(権利保護保険)とは
保険会社や共済協同組合が販売する保険の契約者が事故被害に遭い、弁護士に法律相談や交渉等の依頼をした場合、その費用が保険金として支払われる保険です。自動車保険の特約として販売される例が多いですが、近時、対象範囲を拡大した新商品も登場しています。
日弁連では「権利保護保険」(ドイツ語の「Rechtsschutzversicherung」の直訳)として特許庁に商標登録しています(通称で「弁護士費用保険」または「弁護士保険」と呼んでおり、英語の「Legal Expense Insurance」の訳である「訴訟費用保険」と呼ばれることもあります。)
日弁連と協定を締結している保険会社や共済協同組合(以下「協定保険会社等」といいます。)の加入者(商品によってはそのご家族)の方は、トラブルに遭って弁護士に依頼しようとするときに、日弁連・各地の弁護士会を通じて弁護士の紹介を受けることができます。また、既に弁護士の知り合いがいる方につきましても、弁護士費用保険(権利保護保険)を利用することが可能です。
2024年10月1日現在、日弁連と協定を結んでいる保険会社・共済協同組合は以下のとおりです。(50音順)
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
AIG損害保険株式会社
au損害保険株式会社
キャピタル損害保険株式会社
共栄火災海上保険株式会社
ジェイコム少額短期保険株式会社
全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)
全国自動車共済協同組合連合会
全国トラック交通共済協同組合連合会
全国労働者共済生活協同組合連合会(こくみん共済 coop〈全労済〉)
ソニー損害保険株式会社
損害保険ジャパン株式会社
SOMPOダイレクト損害保険株式会社
大同火災海上保険株式会社
Chubb損害保険株式会社(チャブ保険)
中小企業福祉共済協同組合連合会
チューリッヒ保険会社
ミカタ少額短期保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
三井ダイレクト損害保険株式会社
明治安田損害保険株式会社
楽天損害保険株式会社
弁護士費用保険販売件数とLAC取扱件数は年々増加しています。
【注】1.弁護士費用保険販売件数は日弁連との協定保険会社・共済協同組合のみ(一部概算)。 2.LAC取扱件数には、全ての弁護士紹介依頼案件および弁護士選任報告案件(依頼者が自身で弁護士を選任した案件)の登録件数が含まれている。
2 日弁連リーガル・アクセス・センター(日弁連LAC)
日弁連リーガル・アクセス・センター(日弁連Legal Access Center 、以下「日弁連LAC」といいます。)
トラブルに遭って、弁護士に法律相談をしたり、交渉や訴訟を依頼したりする場合に、その費用は市民にとって大きな不安であり、弁護士に頼ることを躊躇される方も少なくないかもしれません。
日弁連ではそのような問題を解決するため、1980年頃から諸外国の制度を調査・研究し、保険会社数社と協力して、2000年に法律相談費用や弁護士費用等が保険金として支払われる弁護士費用保険(権利保護保険)を発足させました。
日弁連では、この制度の運営と発展のために「日弁連LAC」を設置し、各地の弁護士会との連絡調整や、保険会社・共済協同組合との協議等の活動を行っています。
3 市民の皆様へ
保険に加入されるときには、万が一トラブルに遭って弁護士を必要とするときに備えて、弁護士費用特約を付けることも検討してみてはいかがでしょうか。(弁護士費用保険に特化した単独保険も発売されています。)
既に保険に入られている方も、ご自身の契約内容(弁護士特約がついているかどうか)を確認してみることをお勧めします。
また、自動車保険以外にも、火災保険、傷害保険、旅行保険にも、弁護士費用が支払われる特約が付いている場合がありますので、ご加入の保険の特約を確認してみましょう!
なお、弁護士費用保険制度を紹介するための広報動画を公開していますので、ぜひご覧ください。 弁護士の知り合いがいないときは、日弁連と協定を締結している保険会社や共済協同組合を通じて、日弁連と各地の弁護士会がお住まいの地域の弁護士を紹介します。
4 弁護士費用保険ADR
弁護士費用保険ADRは、2018年1月1日から開始した弁護士費用保険に関する裁判外紛争解決機関です。
取り扱う対象は、弁護士費用を保険から支払われる弁護士費用保険に関する保険金の適否や妥当性といったものに関する紛争、その他免責事由等の有無に関する紛争などを対象とします。
主としては、保険金から支払われる適否、妥当性に関する紛争を取り扱うということを目的としており、被保険者、保険契約者、協定保険会社等が当事者となれることは当然のこととして、この弁護士費用保険ADRでは、受任弁護士も被保険者等の代理人ではなく独立した当事者として、自らが利害関係のある当事者として申立等ができるということもこの弁護士費用保険ADRの特徴です。
手続としては、主に紛争解決手続として、和解あっせんの手続と裁定手続があります。さらに、相手方が手続に応諾しない場合や、和解あっせんしたけれども、和解成立に踏み込めないというような場合に紛争解決としては終了せざるを得ない時に、見解書というものを交付するということを求める手続(見解表明の手続)も別途用意しています。
案内チラシ
案内チラシ (PDFファイル;252KB)
ADR規則・細則
弁護士費用保険に関する紛争解決機関の設置及び手続に関する規則(規則第182号) (PDFファイル;311KB)
弁護士費用保険に関する紛争解決機関の設置及び手続に関する細則 (PDFファイル;269KB)
弁護士費用保険に関する紛争解決機関における裁定委員等の報酬及び申立手数料等に関する細則 (PDFファイル;87KB)
弁護士費用保険ADR利用マニュアル
弁護士費用保険ADR利用マニュアル (PDFファイル;2.1MB)
【書式01】申立書(紛争解決) (Wordファイル;28KB)
【書式02】委任状(紛争解決・見解表明共通) (Wordファイル;18KB)
【書式02-2】通知書(申立権限) (Wordファイル;18KB)
【書式03】手続同意書 (Wordファイル;24KB)
【書式04】裁定同意書 (Wordファイル;23KB)
【書式19】答弁書(紛争解決のみ) (Wordファイル;22KB)
【書式25】取下書(紛争解決・見解表明共通) (Wordファイル;15KB)
【書式26】申立書(見解表明) (Wordファイル;16KB)
5 今後の課題
ドイツ・イギリス・スウェーデン・フィンランド等の諸外国では、弁護士費用保険の普及率は高く、その対象範囲も幅広くなっています。日弁連では、日本においても弁護士費用保険を今後さらに普及・発展させるため、対象分野のさらなる拡大やより良い制度の充実に向けて、調査・研究をはじめとする諸活動に積極的に取り組んでいます。
弁護士費用保険に関する海外調査(フィンランド・スウェーデン)報告書 (PDFファイル;4.9MB)(2024年8月)