汚職・腐敗防止への取組
汚職・腐敗は、持続可能な開発にとって大きな障害となり、貧困地域に悪影響を及ぼし、社会の構造を腐食します。腐敗防止は、国際社会にとって重要な課題となっています。
基礎知識
腐敗のない世界の実現を目指す国際NGOであるTransparency Internationalは世界各国におけるコラプションの状況を指数化(Corruption Perceptions Index)し、公表しています。2014年の調査では、日本は175か国中廉潔度が15位と高い評価を受けていますが、日本企業の取引相手、または進出する新興国には廉潔度が低い国が多くあります。
- トランスペアレンシー・ジャパン(Transparency Internationalの日本支部のホームページ)
- Corruption Perceptions Index(Transparency International のホームページ 英文)
International Bar Association(IBA国際法曹協会)は、日本弁護士連合会も加盟している国際法曹団体です。OECD、UNODC(国連薬物犯罪事務所)と共同で、Anti-Corruption Strategy for the Legal Professionと題するプロジェクトを立ち上げ、腐敗防止対策における弁護士の役割について啓蒙活動をしています。
- Anti-Corruption Strategy for the Legal Profession(ホームページ 英文)
- Legal Projects Team – Our Projects (International Bar Associationのホームページ 英文)
我が国では、2011年6月6日に、日弁連と共催して「法律家にとってのコラプションのリスクと脅威」と題するワークショップを開催しました。
- 国際刑事立法対策ニュース(No.15)(PDFファイル;637KB)
国際的な法規制の枠組み
OECDは、開発を強化し、貧困を減らし、市場への信頼を支えるため国際商取引における贈収賄と闘う活動を行っています。そのため「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」を策定しています。日本はこの条約に批准しており、国内で実施するため、平成10年に不正競争防止法を改正しました(下記「国内法」を参照)。OECDは、加盟国による条約の履行状況を定期的に審査しています。我が国も2002年、2005年、2011年と3回審査を受けました。2011年の第3回審査では「ある程度の進展は見られるものの、日本における外国公務員贈賄防止法の執行状況には依然として重大な懸念が残る」との評価を受けています。
- 外国公務員贈賄防止条約に関する経緯(経済産業省のホームページ)
- Bribery in International Business (OECDのホームページ(英文))
- Japan – OECD Anti-Bribery Convention
- 第3回審査報告書の日本語による要約
国連も世界における腐敗の防止に重要な役割を果たしており、腐敗の防止に関する国際連合条約を策定しています。
- 腐敗の防止に関する国際連合条約(外務省のホームページ)
ウィーンに本拠を置くUNODC(国連薬物犯罪事務所)がこの条約の実施する事務局です。
OECD、IBAと共同で弁護士の役割に関する啓蒙業務を行っています。
- United Nations Convention against Corruption (UNODCのホームページ 英文)
UNODC(国連薬物犯罪事務所)は、事業のための腐敗行為防止の倫理とコンプライアンスプログラムの実務ガイドを公表しています。
上記の実務ガイドは、実効的な腐敗行為防止の倫理とコンプライアンスプログラムを構築するために各企業がとることのできる措置を実務の視点から検討する際に参考となるガイドです。
国際刑事立法対策委員会では、上記の実務ガイドを翻訳しておりますので、原文及び仮訳は以下をご覧ください。
なお、日本弁護士連合会では、日本企業及び日本企業に助言を行う弁護士を対象に、海外贈賄防止を推進する上での実務指針に関する現時点でのベスト・プラクティスとして、「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」を取りまとめておりますので、あわせてご覧ください。
- 事業のための腐敗行為防止の倫理とコンプライアンスプログラム:実務ガイド(原文)
- 事業のための腐敗行為防止の倫理とコンプライアンスプログラム:実務ガイド(仮訳) (PDFファイル;568KB)
- 海外贈賄防止ガイダンス(手引)
海外の法令およびその域外適用
米国はその国内法であるForeign Corrupt Practices Act (FCPA)を、積極的に域外適用しています。日本企業を含む多数の外国企業が処分の対象となっています。日本国内で業務を行う弁護士にとって留意すべき法令です。
- Foreign Corrupt Practices Act (米国司法省のホームページ 英文)
FCPAを執行する米国司法省及び証券取引委員会は、FCPAの解釈及び執行に関する指針を公表し、具体的な事例をあげて解説しています。
- Spotlight on Foreign Corrupt Practices Act (米国証券取引委員会のホームページ 英文)
英国では2011年に贈収賄に関する包括的な法令が制定されました(Bribery Act)。この法律は適用範囲が広いので、日本企業に対して域外適用される可能性があります。
- Bribery Act 2010(英国政府のホームページ 英文)
企業活動において腐敗防止のため適切な手続(adequate procedures)をとっている場合、法人処罰を回避することができます。英国政府は、適切な手続き策定のためのガイダンスを公表しており、英国外の企業も参考にしています。
- Bribery Act 2010 Guidance (英国政府のホームページ 英文)
国内法
我が国はOECDの国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約を国内で実施するため、不正競争防止法に外国公務員贈賄罪を規定しています。
- 外国公務員贈賄防止(経済産業省ホームページ)
OECDの対日審査の指摘を受け、日本も外国公務員贈賄罪の捜査に力を入れることが予想されます。
国際刑事立法対策ニュースのコラプション関連記事掲載号
■国際機関の調査は脅威?外国公務員に対する贈賄防止条約に関するOECD審査ミッションを受けて
No.1 [2004年10月1日](PDFファイル;823KB)
■腐敗の防止に関する国際連合条約と弁護士の役割
No.11 [2009年10月1日](PDFファイル;1.57MB)
■第三回国連腐敗防止条約締約国会議について
No.12 [2010年4月1日](PDFファイル;4.42MB)
■国際取引に関係する汚職防止
No.14 [2011年5月1日](PDFファイル;1.76MB)
■外国公務員贈賄罪に関するOECD対日審査と弁護士会
No.15 [2011年10月1日](PDFファイル;637KB)
■第4回国連腐敗防止条約会議(モロッコ)レポート
No.16 [2012年1月1日](PDFファイル;794KB)
■コラプション(汚職・腐敗)に関する勉強会 2013年10月28日開催 報告
No.20 [2014年1月1日](PDFファイル;366KB)
■第5回国連腐敗防止条約締約国会合(パナマ)に出席して
No.21 [2014年6月1日](PDFファイル;321KB)
■コラプション(汚職・腐敗)防止対策に関する勉強会 報告
No.22 [2014年12月1日](PDFファイル;3.98MB)