両性の平等(両性の平等に関する委員会)

活動の概要

日弁連は、個人の尊重、男女平等の見地から、女性の地位・権利や現行法制の改善に関する調査・研究、女性にかかわる重大な人権侵害や差別に関する具体的事実の調査・研究及びそれに基づく適切な措置の実施などを目的として、1976年5月1日に、全国からの50名の委員等により構成された「女性の権利に関する委員会」を設置しました。その後、1993年6月に、あらゆる分野に男女が共に参画し、真の両性の平等の実現を目指すために、現在の「両性の平等に関する委員会」に名称を変更し、その調査・研究の成果を意見書や報告書として取りまとめ、公表しています。


現在の活動紹介

両性の平等に関する委員会は、1.雇用・労働問題(第1部会)、2.教育・福祉問題(第2部会)、3.家族問題(第3部会)に分かれて各関連事項について調査・研究等を行っており、複数の部会にまたがる事項などについては別途、プロジェクトチームを結成しています。


現在、規制緩和と景気減退によるパート労働者・派遣労働者など不安定労働者の急増の中で、パート労働法・有期労働法などの非正規労働関連法制に関する問題が大きな課題となっています。「女性の貧困」は従前から深刻な問題ですが、これは労働問題であるだけでなく、家裁実務で用いられている婚姻費用・養育費算定表が低額に失することやその不履行率の高さが指摘されています。また、DV(ドメスティック・バイオレンス)については、防止法の施行、特に保護命令制度の運用に絡む問題点が指摘されています。さらに、ハーグ(子の連れ去りに関する)条約や、親権制度も大きな課題となっています。これらについて、各部会を中心に調査・研究を続けています。


そのほか、女性差別撤廃条約の実施状況に関する日本政府報告書に対するカウンターレポートの作成、同条約の選択議定書批准に向けた活動、国連女性の地位委員会への委員派遣などを行っています。また、ジェンダー・バイアスの解消問題、男女共同参画基本計画についての意見・提言の提出、婚外子差別廃止・選択的夫婦別姓制等を実現するための民法改正に向けての活動なども行っています。


直近の活動については、以下の委員会ニュースのバックナンバーご覧ください。

icon_pdf.gif両性の平等ニュース54号 (PDFファイル;1.2KB)



選択的夫婦別姓制度の導入に向けた取り組み

日弁連では、選択的夫婦別姓制度の導入に向け、意見書を公表するなど、国に対する働きかけを行っています。

詳細は、arrow_blue_1.gifこちらをご覧ください。



養育費・婚姻費用の算定に関する研究・取り組み

日本弁護士連合会では、2016年(平成28年)11月に「養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言」を取りまとめ、新算定方式・新算定表を公表しました。


本提言は、2012年(平成24年)3月に取りまとめた「『養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表』に対する意見書」の内容を具体化したものであり、生活保持義務の理念に照らし、現算定方式・現算定表と比較してより合理的な内容となるように作成されたものです。今後、この新算定方式・新算定表が広く使用されていくことを目指していきます。


また、2017年(平成29年)7月に、日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会編の書籍「養育費・婚姻費用の新算定表マニュアル 具体事例と活用方法」(出版社:日本加除出版株式会社)が出版され、実務家を中心に好評を得ています。


(以下関連リンク)
2020年11月18日 「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」に対する意見書
2016年11月15日 養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言
 icon_pdf.gif 新算定方式・新算定表の仕組み、使い方及び注意事項に関するQ&A (PDFファイル;179KB)

 icon_pdf.gif 冊子「養育費・婚姻費用の新算定表とQ&A」 (PDFファイル;1.7MB)
2012年3月15日 「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」に対する意見書


全国一斉女性の権利ホットライン実施結果(2023年度)

2023年6月23日から29日までの男女共同参画週間を中心に、各地の弁護士会で「全国一斉女性の権利ホットライン」を実施しました。実施方法は、電話による相談のほかに、面接およびオンラインよる相談を行った弁護士会もあります。


期間中、全国で558件の相談を受け、相談を受けた弁護士が記入した相談カードを基に集計した結果は、添付のとおりです。


icon_pdf.gif2023年度 全国一斉女性の権利ホットライン実施結果 (PDFファイル;52KB)


シンポジウム報告

近時開催した、シンポジウムについてご報告します。


2024年

2024年3月30日
arrow_blue_1.gif シンポジウム「LGBT理解増進法と人権擁護のこれから」

2023年6月、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(いわゆる「LGBT理解増進法」)が制定・施行されました。


本シンポジウムでは、法案提出者である国会議員、自治体管理職経験もある学者、性的少数者の当事者支援者それぞれの視点から、LGBT理解増進法がどのような法律なのか、そして、法律によりLGBTに関する人権擁護はこれからどうなっていくのか、また、どうあるべきなのかを伺いました。

プログラム
Ⅰ 基調報告「LGBT理解増進法の立法経緯と内容」
  牧島 かれん氏(衆議院議員)
Ⅱ 基調報告「当事者支援者団体から見たLGBT理解増進法」
  神谷 悠一氏(LGBT法連合会事務局長)
Ⅲ 基調報告「LGBT理解増進法制定後の人権擁護」
  鈴木 秀洋氏(日本大学大学院危機管理学研究科教授)
 Ⅲ パネルディスカッション「LGBT理解増進法と人権擁護のこれから」
     ▸パネリスト
  牧島 かれん氏
  神谷 悠一氏
  鈴木 秀洋氏
 ▸コーディネーター
  森 あい弁護士(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)


icon_pdf.gif日弁連シンポジウム「LGBT理解増進法と人権擁護のこれから」報告書 (PDFファイル;651KB)


2023年

2023年3月4日
arrow_blue_1.gifシンポジウム「セクハラの慰謝料はなぜ低い?―慰謝料額から現代日本のセクハラを考える―」

セクハラ事件は後を絶たず、被害者に対する救済も十分に行われているとはいえません。また、損害に対する賠償額はいまだ低額にとどまっています。これらの原因を分析するとともに、主に欧米の状況等と比較しながら、被害者救済のためにあるべき賠償額の水準について問題提起をいたしました。


プログラム
Ⅰ 基調講演 違法な性行為による損害賠償請求の諸問題
  金山 直樹 氏(慶応義塾大学名誉教授)
Ⅱ アンケート報告
  山本 真由美 氏(両性の平等に関する委員会 委員)
 Ⅲ パネルディスカッション
     ▸パネリスト
  金山 直樹 氏
  内藤 忍 氏(独立行政法人労働政策研究・研修機構 副主任研究員)
  糸瀬 美保 氏(両性の平等に関する委員会 特別委嘱委員)
 ▸コーディネーター
  岸 松江 氏(両性の平等に関する委員会 委員)


2022年

2022年6月8日
arrow_blue_1.gifシンポジウム「企業活動とLGBT」

近年、日本では様々な分野でLGBTに関する取り組みが進められています。企業においても同様です。労働施策総合推進法の改正にも現れているように、職場にLGBTが存在しないものとすることはできません。さらに近時は、サービスの提供からサプライチェーンの構築まで、企業のあらゆる対外的な活動でも、LGBTの人も含め誰をも等しく尊重することがきわめて重要となってきました。


「ビジネスと人権」の観点からは、企業には人権を尊重する責任と促進する役割を果たすことが求められています。そこで、弁護士等の企業のアドバイザーが企業活動に対して正しい指導・助言等を行うためにも、本シンポジウムを通じて、実際に企業がどのような取り組み・工夫をしているのかを共有しました。


プログラム
Ⅰ 基調報告「ビジネスと人権」
  菅原 絵美氏(大阪経済法科大学教授)
Ⅱ パネルディスカッション「毎日の積み重ねからブランドづくりまで」
 ▸パネリスト
  原  麻衣氏(株式会社三好不動産テナント事業部)       
  小山 大作氏(ラッシュジャパン合同会社コーポレートコミュニケートマネージャー)
  松岡 宗嗣氏(一般社団法人fair代表理事) 
  髙田 俊亮弁護士(国際人権問題委員会幹事)
 ▸コーディネーター  

  本多 広高弁護士(両性の平等に関する委員会LGBTの権利に関するPT座長)
Ⅲ 報告「企業からの意見表明」 
  寺原 真希子弁護士(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)


icon_pdf.gif日弁連シンポジウム「企業活動とLGBT」報告書 (PDFファイル;536KB)


2022年3月6日
arrow_blue_1.gifオンラインシンポジウム「離別後の子の養育を考える~英国司法省報告書を元に~」


2021年

2021年3月6日
オンラインシンポジウム「「性教育」の今とこれから~「包括的性教育」と「性の権利」の実現のために~」

今日の性教育の国際的な潮流は、人権やジェンダー、性の多様性などを含んだ「包括的性教育」であり、性に対して肯定的なアプローチをとるものとなっています。一方、日本においては今なお消極論も根強く、世界の潮流からは取り残された状況にあります。


包括的性教育の不足は、性に関する知識の不足による望まない妊娠や性感染症の原因となることはもちろん、人権や性的同意に関する認識の欠如による性加害・被害、性的少数者への差別、さらにはセクシャルハラスメント、DVなどの原因や背景ともなっています。


本シンポジウムでは、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(ユネスコ編)の訳者の1人である渡辺大輔先生に包括的性教育と性の権利に関する基調報告をお願いし、パネルディスカッションでは、各分野から実践の報告をしていただき、包括的性教育と性の権利実現に向けた課題と展望を考察しました。


プログラム
Ⅰ 基調講演「包括的性教育と性の権利を巡る世界と日本」
  渡辺 大輔 氏(埼玉大学基盤教育研究センター准教授)
Ⅱ パネルディスカッション「性教育を巡る現状とこれから」
 ▸パネリスト

  渡辺 大輔 氏(埼玉大学基盤教育研究センター准教授)
  遠見 才希子 氏(産婦人科医師)
  水野 哲夫 氏 (大東学園高校、一橋大学等非常勤講師)
  上智大学エンパワーメントサークルSpeak Up Sophia
 ▸コーディネーター

  佐藤 倫子(弁護士/日弁連両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)


2020年

2020年11月26日
オンラインシンポジウム「これからの女性の働き方~コロナ禍が浮き彫りにしたジェンダーギャップ・日本の実態~」

昨今、国際的に女性の職業生活における活躍の推進が進められている中、日本でも、この国際的な潮流に乗って、2015年に女性活躍推進法*が成立しました。しかし、世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数2019年ランキングにおいて、日本は153か国中121位でした。そのような状況の中、コロナ禍は日本の労働市場のどのような問題を浮き彫りにしたのでしょうか?本シンポジウムでは、これからの日本における女性の働き方を考える上で乗り越えなければならない課題と展望について、考察しました。


プログラム
Ⅰ 基調報告「女性活躍推進の現状と課題~韓国調査の報告を踏まえて」
   寺本 佳代 氏(弁護士/日弁連両性の平等に関する委員会副委員長)
   相原 わかば 氏(弁護士/日弁連両性の平等に関する委員会委員)
Ⅱ 基調講演「コロナ禍は日本の労働市場のどのような問題を浮き彫りにしたのか」
   大沢 真知子 氏(日本女子大学人間科学部現代社会学科教授)
Ⅲ パネルデスカッション「これからの女性の働き方~コロナ禍が浮き彫りにしたジェンダーギャップ・日本の実態と今後の展望~」


▸パネリスト
   大沢 真知子 氏(日本女子大学人間科学部現代社会学科教授)
   和田 武訓 氏(サイボウズ(株)チームワーク総研統括ディレクター)
   鴨 桃代 氏(労働組合「なのはなユニオン」委員長)
   圷 由美子 氏(弁護士/東京弁護士会男女共同参画推進本部事務局次長)


▸コーディネーター
   細永 貴子 氏(弁護士/日弁連両性の平等に関する委員会委員)

 

2018年

2018年11月15日
シンポジウム「セクシュアル・ハラスメントの根絶と被害者の救済のために-人権侵害と差別の視点で問い直す-」

    icon_pdf.gif報告書 (PDFファイル;425KB)


2018年5月16日
シンポジウム「家庭教育支援法案を考える」

 icon_pdf.gif報告書 (PDFファイル;1.1MB)


2018年3月3日
シンポジウム「養育費の履行確保のため、今、取り組むべき課題―子どもの最善の利益のために」


 

2017年

2017年11月22日
シンポジウム「同性カップルの法的保障を考える~多様な家族が平等であるために~」

   icon_pdf.gif報告書 (PDFファイル;472KB)

   icon_pdf.gif配付資料1(鈴木賢氏) (PDFファイル;1.8MB)

   icon_pdf.gif配付資料2(宍戸常寿氏) (PDFファイル;170KB)


2017年11月7日
シンポジウム「性暴力の根絶を目指して~刑法改正後の課題~」


2017年7月12日
養育費・婚姻費用の新算定方式・新算定表公表記念シンポジウム「養育費・婚姻費用の新算定方式・新算定表の提言-子どもの最善の利益のために」


2017年3月4日
シンポジウム「ニッポン一億総活躍?介護とどう向き合うか~ジェンダーの視点から~」

2016年6月に政府は「ニッポン一億総活躍プラン」を閣議決定し、「介護離職ゼロ」を目標の1つに掲げるとともに、「女性の活躍」を大きな柱として強調しました。

 

従来から介護は、育児とともに、「女性が家庭において無償で行う労働」という性別役割分担の意識の影響を強く受けてきました。今回のシンポジウムは、介護の現場におけるジェンダーの問題に焦点をあてて議論しました。

 

まず、寺本佳代会員から日本の介護をめぐる現状に関する報告があり、次に南山大学法学部の緒方桂子教授から、行政、要介護者、介護事業者、介護職従事者、介護離職者の関係を、3つの憲法問題と3つのジェンダー問題として捉えた講演をいただきました。全国福祉保育労働組合の横田祐さんからは、「介護は女性が行う専門性のいらない職業」として低賃金に位置づけられている実態が報告されました。
在宅介護する当事者からは、介護離職せざるをえない実態や経済的負担の重さが語られました。


本シンポジウムは、政府の掲げる「介護離職ゼロ」、「女性活躍」政策を検証し、これらのスローガンを真に内実あるものとするために何が必要かを、参加者が我が身に引き寄せて考える機会となりました。

 

 

2016年

2016年3月5日
シンポジウム「公平な離婚給付を考える」

1 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない(憲法24条1項)。しかし、家事・育児・介護等が妻の役割とされる社会では、有償労働を続ける夫と無償労働を負担する妻との間で稼得能力と資産格差が拡大する。現在の離婚時財産給付は、このような格差を解消するものであろうか。離婚時財産給付の中心である「清算的財産分与」は、「特有財産を除外して婚姻時と別居時(基準時)の財産を比較し、増加分を折半する」こととされているが、例えば自宅がオーバーローンであれば他に資産があっても分与されないのは公平か、子ども名義の預金を分与対象としてよいのか、婚姻前は同じ経済力があったのに離婚後に夫は経済的余裕ができ妻は困窮するというのは公平か。


2 犬伏由子慶応大学法学部教授は、基調講演の中で、「財産分与制度の課題」として、①清算的財産分与のみに着目し、婚姻が当事者(特に女性)におよぼす離婚後の経済的不利益・不均衡の是正が対象外であること(婚姻中の性別役割分担が離婚後の経済的自立困難をもたらしている)、②扶養的財産分与から補償的財産分与への理論的転換(理論的根拠、要件・基準等の明確化)が必要であること、③裁判所の関与を増やし(協議離婚、当事者による自主的決定が多い)、財産開示制度の不備を是正すること、④女性差別撤廃委員会の一般勧告第29号「婚姻、家族関係及びそれらの解消の経済的影響」、仏・独・英・米など諸外国の法制等を参照して決定基準(考慮要素)・方法等を明文化すること、などを指摘した。


3 パネルディスカッションでは、清算的財産分与対象財産の見直しや離婚後補償の見直しと実質化(無償の家事労働の対価、失われた稼得能力の補償)などを念頭におきつつ、3つの事例を検討した。「オーバーローン不動産」「子ども名義の預貯金」「学資保険」「将来の退職金」「住居の確保」「補償的・扶養的財産分与」「財産開示」などについて様々な意見が交わされた。特に丸山さん(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事)には、当事者支援者の立場からの疑問を随所でお話しいただいた。


漫然と実務の慣行に従うのではなく、公平の実現のために工夫すべき点が多いことを実感したシンポジウムであった。

 

 

2015年

2015年9月15日
シンポジウム「国際人権の視点から日本の家族法を考える~憲法と条約に沿った民法改正へ~」

2015年9月15日、日弁連主催、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク(JNNC)共催のシンポジウム「国際人権の視点から日本の家族法を考える~憲法と条約に沿った民法改正へ~」が開催された。


日本人として初めて女性差別撤廃委員会委員長に就任した林陽子会員(第二東京)による基調講演では、自己の姓を選択・変更する権利が恣意的な干渉から保護されるべきことをプライバシー権の保護に含まれるとした自由権規約委員会個人通報見解など、国際機関の判断が紹介された。夫婦同姓しか認めないことの不合理性を想像できない人には、「婚姻姓は夫婦の姓の50音順にする」ことを考えてもらうとよい。あるいは、米国の女性議員が公的文書で女性については婚姻の有無で「Miss」「Mrs」、男性は婚姻の有無にかかわらず「Mr」と表記されることを問題視し、「Ms」の記載を認めようと運動したところ、反対にあい、「男性は未婚の場合Master、既婚の場合Mrと区別しよう」と提案したところ反対が萎んだ等のエピソードが示唆的であった。


女性差別撤廃条約に批准している日本は、尊重義務、保護義務、充足義務を負う。尊重義務とは、女性を差別する法律等を自制すること、保護義務とは、私的主体による差別から女性を保護すること、充足義務とは、男女の法的及び事実上の平等な権利の実質的な享受を確保するため多様な措置を積極的に採ることである。日本政府は、女性に対する差別的規定を撤廃する義務を負う。そして、同条約第1条は、いかなる区別、排除、制限であって、女性の人権および自由の行使を妨げる効果又は目的を持つものは、差別を意図しない場合でも、差別であると定める。最後に、個人通報制度等など、国際人権の水準に達するために必要なことが提言された。


夫婦別姓訴訟弁護団団長の榊原富士子会員 (東京)、再婚禁止期間立法不作為訴訟上告人代理人の作花知志会員(岡山)の報告の後、林会員のほか、法務省特別顧問の横田洋三氏、2012年まで国際法曹協会(IBA)会長等を歴任された川村明会員(第二東京)、NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク理事長でありJNNC会員でもある坂本洋子氏をパネリストとした、パネルディスカッションとなった。国際社会では、夫婦同姓規定は、「時代錯誤」であること、憲法第98条第2項からして条約が法律より上位にあること、民法改正論議を巡る国内議論の経過等が指摘された。

 


2015年3月7日
第58回人権擁護大会シンポジウム第1分科会プレシンポジウム「母子家庭における子どもの貧困-その原因と実効的施策を考える」

2015年3月7日、シンポジウム「母子家庭における子どもの貧困-その原因と実効的施策を考える」を開催しました。


基調報告では、母子家庭と子どもの貧困の現状と問題点をコンパクトに報告しました。


基調講演では、阿部彩氏(当時、国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部部長)が「母子世帯の貧困率、ひとり親世帯の貧困率が、2009年から2012年にかけて悪化し、所得の再分配による貧困率の削減はほとんどない状況で、その原因は、生活保護を受けている人が少ないことと児童扶養手当の額が少ないこと。現在の施策は、離別女性や未婚女性に対する視点がなく、婚姻状況が女性の貧困に密接に関連するようにシステムができ上がっている。全ての女性の生活保障という観点で社会政策をつくり直した方が大きな支援になる。当面の目標として、児童扶養手当の拡充と母子世帯の貧困率削減の数値目標を掲げること」等を述べられました。


後半のパネルデイスカッショでは、赤石千枝子氏(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)は、「養育費の取得率は2割以下で月4万円程度。算定表の見直しや履行確保が必要。児童扶養手当の拡充が喫緊の課題」と指摘されました。


みわよしこ氏(ジャーナリスト)は「生活保護世帯で育った人が、自己責任と、自分を責めたりスティグマをおそれて生活保護申請をしないことがある。健康で文化的な最低限度の生活の範囲と内容をもうちょっと豊かにしたほうがいい」と提言されました。


山野良一氏(「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人)は「子どもの貧困対策大綱について実効性があるのか疑問。先生たちの忙しさとスクールソーシャルワーカーさんがほとんど非正規、非常勤であること。もう一つはプライバシー保護の問題。先生たちは、子どもの貧困とか、ひとり親世帯の問題についてきちんと学ぶことが必要。学校での教育は、多様性が必要」と指摘されました。


藤原千沙氏(法政大学大原社会問題研究所准教授)は「母子家庭の貧困の研究はされてこなかった。貧困問題は、労働と社会保障の両方をみる必要がある。生活保護を受けていない母子家庭が多い。子どものための貯金や保険、車を持てない事がネックとなっている。児童扶養手当は、4か月に一度という支給期月が問題で、運用で改善できる。親一人が働いて子ども一人は養える社会でないと持続できない。労働が貧困から脱却できる手段となっていない、所得再分配が十分でない。これからは生活できる賃金のあり方を考えていかなければいけない」と提言され、充実したシンポジウムを終了しました。

 

 

2014年

2014年6月21日
「司法におけるジェンダー・バイアス~性暴力被害の実態と刑事裁判の在り方~」

2014年6月21日、シンポジウム「司法におけるジェンダー・バイアス~性暴力被害の実態と刑事裁判の在り方~」を開催しました。

 

このシンポジウムは、司法関係者が性暴力被害の実態を十分に理解していないことから生じる捜査や公判における問題点を明らかにし、また性暴力被害の実態を踏まえた捜査・刑事裁判のあり方について議論することを目的とするものです。

 

まず、吉田容子会員から、内閣府等の調査結果や最高裁で無罪となった2つの判決の分析などに基づく性暴力被害の実態に関する報告があり、次に精神科医の宮地尚子さんから精神医学的に見た性暴力被害の実態についてお話しいただきました。

 

後半では、角田由紀子会員をコーディネーター、上記2名のほか元警察官の牧野雅子さん、元裁判官の神山千之さん、宮村啓太会員をパネリストとして、捜査段階や事実認定におけるジェンダー・バイアス、刑事弁護の在り方、司法関係者に対する研修の実情など、性犯罪事件の現状について多様な観点から議論がなされました。また、性犯罪事件に関わる者は性暴力被害の実態を正しく理解することが必要不可欠であり、研修等を必須とすべきとの指摘もありました。

 

シンポジウムの詳細については、資料を御参照ください。

 

icon_pdf.gif「司法におけるジェンダー・バイアス~性暴力被害の実態と刑事裁判の在り方~」資料(PDFファイル;2.5MB)

 

また当日、当委員会で作成した司法関係者のためのテキスト「司法におけるジェンダー・バイアスとは?~司法におけるジェンダー・バイアスをなくすために~」を配布しましたので、こちらも御参照ください。

 

「司法におけるジェンダー・バイアス~性暴力被害の実態と刑事裁判の在り方~」
icon_pdf.gifテキスト(前半)(PDFファイル;1.01MB)
icon_pdf.gifテキスト(後半①・資料1~資料4)(PDFファイル;7.02MB)
icon_pdf.gifテキスト(後半②・資料5~資料8)(PDFファイル;3.26MB)

 

2014年3月1日
「アベノミクスで女性は輝けるか?」

2014年3月1日、シンポジウム「アベノミクスで女性は輝けるか?」を開催しました。

 

「アベノミクス」の「成長戦略」では、「女性の活用」政策を重要な柱として位置付けているところ、このシンポジウムでは、安倍内閣が目指す労働・保育等の政策は、ますます女性の非正規・貧困化を進める可能性があることを明らかにしました。

 

1986年の男女雇用機会均等法の施行と同時に女性保護規定等が撤廃され、派遣法が制定された結果、2012年時点で女性労働者は均等法施行直後から1.5倍になったものの、増加したのは非正規社員です。正規・非正規を含め男女賃金格差は一向に改善しておらず、その一方で「マタニティ・ハラスメント」の横行など、出産・子育てと仕事の両立の困難さも変わっていません。

 

一方、安倍内閣が行おうとしている①労働者派遣制度の規制緩和、②限定(ジョブ型)正社員制度の導入、③「日本型裁量労働制」や労働時間規制の見直し等、が導入されれば、家庭責任を負わされている女性は、一層非正規労働に追いやられ、正社員であっても解雇しやすい限定(ジョブ型)正社員にされかねません。

 

講演いただいた脇田滋さん(龍谷大学法学部政治学科教授)は、使用者が、労働者を無限定正社員=長期蓄積能力型、限定正社員=高度専門能力活用型、非正社員=雇用柔軟型などの雇用類型(=身分)的に分断していることを指摘し、均等待遇の実現、同一価値労働同一賃金原則の徹底、労働組合が全体労働者代表的役割を徹底することと労働時間短縮の重要性を指摘しました。

 

また、竹信三恵子さん(和光大学現代人間学部現代社会学科教授)は、「非正規労働者への差別の固定」の背景には「家事ハラスメント」ともいうべき性別役割分担意識があり、「アベノミクス女性活用策」は「家事ハラ」を強化しかねないと指摘し、むしろ労働時間全体の規制とゼロ歳児保育の充実・公的福祉の強化、1日の労働時間規制と同一労働同一賃金の国際基準導入・女性ユニオンの強化等が必要だと述べました。

 

その他、神奈川労連労働相談センターの澤田幸子事務局長と日本アイ・ビー・エム「ロックアウト解雇」撤回裁判原告の女性、派遣切りとたたかう裁判原告の女性から、それぞれ労働現場の報告がなされました。

 

当委員会では、今後も安倍内閣の政策について、女性の視点からの問題提起を行っていきたいと思います。

 

シンポジウムの詳細については、資料を御参照ください。

 

「アベノミクスで女性は輝けるか?」
icon_pdf.gif資料(前半・講演資料)(PDFファイル;3.25MB)
icon_pdf.gif資料(後半・参考資料)(PDFファイル;8.88MB)

 

2014年2月13日
「家族法改正はなぜひつよう?~生きやすい社会をつくるために~」-立ち見が出るほどの盛況に-

2013年9月に最高裁で違憲判断が下された婚外子の相続分差別規定を始め、婚姻年齢の差別規定や再婚禁止規定、夫婦同氏を強制する各規定の改正の「ひつよう」を広く共有することが容易でなかった、との問題意識を踏まえ、当委員会は、2014年2月13日、「家族法改正はなぜひつよう?~生きやすい社会をつくるために~」と題し、シンポジウムを開催しました。

 

基調講演では、様々なテーマで精力的な発信を続ける、作家の落合恵子さんから、婚外子差別の違憲決定は未来への「扉」を開けるものになったこと、今後も、「生きていく日々のなかにある人権」を取り戻すため婚外子に限らないマイノリティの声(アザー・ボイシス)に耳を傾けていきたいといったことが、切切と語られました。

 

後半のパネルディスカッションでは、新進気鋭の評論家で、「シノドス」編集長の荻上チキさんから、憲法の下、「マイノリティの権利はマイノリティであっても認められる」との指摘があり、病児保育等に取り組むNPO法人フローレンス代表理事駒崎弘樹さんからは、かつての「標準世帯」が「標準」でなくなったにもかかわらず、民法という「OS」が古いことは、少子化といった政策課題の関係で極めて深刻、との指摘があり、関西学院大学客員教授の大崎麻子さんからは、家族法の規定が、女性差別撤廃条約等の条約審査で度々改正の勧告を受けてきた意味について、国際秩序の普遍的価値に遡っての御発言がありました。

 

その上で、家族法改正の「ひつよう」を共有するため、大崎さんからは、経済合理性を説くことが効果的であること、駒崎さんからは、広い層を巻き込むこと、「現に困っている人」の具体的な事例を積み重ねることが大事であること、荻上さんからは、「情念」レベルに訴えかける多様な「物語」が必要であることなど、様々な御助言、御提案を頂きました。

 

パネルディスカッションの締めくくりは、駒崎さんの「一緒にがんばりましょう!」のエールがありました。当委員会の企画としては、躍動感に充ちた、型破りなシンポジウムとなりました。これを機に、家族法改正に向けた動きにしなやかさと豊かさが備わることを、期待してやみません。

 

シンポジウムの詳細については、資料を御参照ください。

 

icon_pdf.gif「家族法改正はなぜひつよう?~生きやすい社会をつくるために~」資料(PDFファイル;4.68MB)

 

2013年

2013年10月10日 
「民法改正実現を!国会の決断を求めるシンポジウム」(主催:NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク)

2013年10月10日、憲政記念会館にて、NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク主催、日弁連共催により、「民法改正実現を!国会の決断を求めるシンポジウム」が開催されました。これは、同年9月4日、最高裁大法廷において、民法の婚外子差別規定を違憲とする判断が下されたことを受け、緊急に企画されたものでした。

 

冒頭、日弁連として本シンポジウムに共催した趣旨、及び、最高裁の違憲判断当日、「arrow_blue_1.gif婚外子の法定相続分についての最高裁判所違憲決定を受けて家族法における差別的規定の改正を求める会長声明」を公表したことをご紹介しました。

 

続いて、民法(家族法)改正問題に関わってこられた訴訟の当事者方の皆さんや、関係団体のご紹介やご発言、更に、同シンポジウムに列席された国会議員の方のご紹介とご挨拶、と続きました。挨拶のマイクを握られた国会議員は、民主党、公明党、みんなの党、社民党の各政党所属の議員で、改正に向けた、力強い発言や頼もしい決意表明を頂きました。

 

その後に、元最高裁判事の泉徳治弁護士、元法制審議会民法部会身分法小委員会幹事の吉岡睦子弁護士、立命館大学法学部の二宮周平教授、早稲田大学法科大学院教授で別姓訴訟弁護団団長の榊原富士子弁護士の、民法(家族法)改正問題に長年取り組んでこられた4名を迎え、mネット・民法改正情報ネットワーク理事長の坂本洋子さんのコーディネートで、パネルディスカッションが行われました。

 

泉弁護士からは、かつて最高裁でこの問題に関与したご経験を踏まえ、現行民法は制定当時から違憲だった、少数者のためにこそ司法がある、といったご意見が述べられ、吉岡弁護士からは、法制審議会での答申以降、改正がなされないまま15年余が経過していることについて、当時の議論に関与された立場からご発言がありました。また、二宮教授からも、研究者として、長年この問題に取り組まれた実感を踏まえ、少数者のために人権がある、というお話が改めてなされ、榊原弁護士からは、法制審議会当時から、夫婦別姓訴訟を手掛ける現在まで、当事者の方達に勇気づけられながら改正を訴え続けたこと等についてご発言がありました。

 

いずれにしても、最高裁が違憲判断を下したことの意義、重みを、今後、国民や立法府がしっかりと受け止められるかどうかについて、強い危機感からの問題提起がなされ、婚外子差別規定にとどまらず、夫婦同氏規定、再婚禁止期間を定める規定、婚姻適齢に男女差を設ける規定を含めた、民法改正を求める声が上がりました。

 

同シンポジウムを踏まえ、日弁連の両性の平等に関する委員会としては、民法改正に向け、更なる活動を進めるべく、議論を深め、検討を進めております。

 

2013年9月21日
シンポジウム「セクシュアル・リプロダクティブ・ライツ 女性に対する暴力と人工妊娠中絶・買売春問題」

日弁連は、2013年6月、「arrow_blue_1.gif刑法と売春防止法等の一部削除等を求める意見書」を公表しました。意見書では、人工妊娠中絶に関し、刑法堕胎罪規定の削除や配偶者の同意を広く求める規定の改正を、売春防止法に関し、売春当事者が事実上処罰される勧誘処罰規定や差別的な補導処分についての規定の削除を求めています。

 

この意見書実現のための取り組みの1つとして開催したのが本シンポジウムです。シンポジウムでは、意見書の内容を紹介するとともに、加藤治子さん(医師)からは医療現場からみた人工妊娠中絶と買売春の現状、横田千代子さん(全国婦人保護施設等連絡協議会会長)からは婦人保護施設の現場からの声を、そして柘植あづみさん(明治学院大学社会学部社会学科教授)からは日本における人工妊娠中絶の状況をそれぞれお話しいただきました。

 

そして後半では、角田由紀子会員をコーディネーターに、これら3名の方々をパネリストとするパネルディスカッションを行いました。

 

2013年4月6日
シンポジウム「子の安心・安全から面会交流を考える-DV・虐待を中心に-」

家庭裁判所の面会交流事件は弁護士が最も悩む事件の1つです。父母の別居や離婚後も、その自発的かつ柔軟な協力のもと、子と双方の親との自由な交流が続くことは、子にとって望ましいことと思われますが、他方、子の利益を最も優先しているはずの家裁において、明らかに子の重大な利益を害するおそれのある結論が出される場合があります。そこで、本シンポジウムでは、面会交流に関する実務の問題点とその背景を探るとともに、子の利益に適う司法の関与の在り方を検討しました。

 

最初に、典型的な問題点を絡めて創作した事例を2つ紹介しました。次に、基調報告を行い、家裁実務の現状と問題点を整理し、あわせて争いのある面会交流事件についての判断の枠組みや方法を提案しました。さらに、ジョージワシントン大学のジョアン・S・マイヤー先生、慶應義塾大学の渡辺久子先生からご講演をいただき、最後に、近畿大学の小川富之先生を交えたパネルディスカッションを行いました。

 

詳細は報告書をご覧ください。

 

icon_pdf.gif シンポジウム「子の安心・安全から面会交流を考える-DV・虐待を中心に-」報告書(PDFファイル;1.2MB)

 

2012年

2012年3月3日
シンポジウム 子ども中心の婚姻費用・養育費への転換-簡易算定表の仕組みと問題点を検証する-


2011年

2011年9月8日
シンポジウム 女性こそ主役に!災害復興~東日本大震災後の日本社会の在り方を問う~
2011年6月29日
シンポジウム「雇用におけるジェンダー平等の実現に向けて~パートタイム労働法・有期労働法制を中心に~」