日本司法支援センター(法テラス)との連携

日本司法支援センター設立と日弁連の取組

2004年6月、総合法律支援法が公布され、2006年4月に「日本司法支援センター」(法テラス)が設立されました。法テラスは、全国各地の裁判所本庁所在地や弁護士過疎地域などに拠点事務所を設けて、市民の皆様に様々な法律サービスを提供しています。

日弁連は、法テラスが真に市民の皆様の役に立つものとなるよう、その運営に協力しています。また、市民の皆様への広報や、法テラスとの民事法律扶助契約弁護士、刑事の国選弁護人契約弁護士、少年の国選付添人契約弁護士、国選被害者参加弁護士契約弁護士の確保に努めています。さらには法テラスで常勤で働く弁護士(スタッフ弁護士)の確保・養成・支援のために、研修の実施、養成事務所の確保など様々な活動を展開しています。

 

法テラスの主な事業と日弁連の取組

情報提供業務

法テラスは相談受付窓口を設置するとともに、電話やインターネットを通じて、トラブルに巻き込まれた方へ無料で役立つ情報を提供しています。例えば、弁護士会、司法書士会、地方自治体などの全国の様々な相談機関の窓口情報を整備し、その中から、適した相談窓口を紹介しています。日弁連では、情報提供が円滑かつ適切に行われるよう、専門の弁護士を派遣してきました。


民事法律扶助業務

かつて、民事法律扶助事業(経済的な理由から法的援助を受けることができない人に、弁護士費用等の援助を行う事業)は、(財)法律扶助協会が担っており、協会の支部長を各弁護士会長が兼務するなどして、日弁連が運営を支えていました。この民事法律扶助事業を法テラスが引き継いで、法律専門家の援助が必要なのに経済的理由のため弁護士や裁判所の費用を払うことが困難な人のために無料法律相談や、弁護士費用等の立替えなどを行っています。


日弁連は、法テラスが引き継いだ後も民事法律扶助事業予算の増大に向けて、関係機関等に働きかけを行い、また、業務を担う弁護士の契約促進や利用者の目線に立った改善を法テラスや関係機関と協議しながら進めています。その結果、最近でも、次のような改善がなされています。

 

生活保護受給者等に関する原則償還猶予・免除に向けた取組とその実現

日弁連からの要望をきっかけとして、2010年1月から、生活保護受給者については、原則として法テラスへの償還が猶予され、事件終結後は償還が免除されるという取扱いが実現しました。

また、生活保護受給者に準ずる程度に生計が困難であり、かつ将来にわたって資力を回復する見込みに乏しい方の猶予・免除についても、法テラスや関係機関と協議折衝を行い、猶予・免除を受けられる基準や申請の際の必要書類の明確化を行い、「償還が困難であること」を理由に民事法律扶助の利用を断念することのないように取り組むことを法テラス等へ要請しています。

 

生活保護受給者に対する破産予納金の立替えについて

日弁連の積極的な取り組みにより、2010年4月から、生活保護受給者を対象として、民事法律扶助を利用した場合、生活保護受給者の自己破産事件に係る官報公告費の全額が立て替えられるほか、管財事件の予納金についても20万円を上限として、立て替えられる扱いとなりました。

民事法律扶助業務の運用改善に向けた取組

日弁連では、海外在住の日本人も民事法律扶助が円滑に利用できるよう、また、DV事件等について実質的に複数での受任を可能とするために、困難事件としての扱いを認めるよう法テラスと折衝協議を行い、運用を改善しています。

民事法律扶助制度の報酬改善に向けた取組

民事法律扶助制度における弁護士報酬の水準は、受任弁護士の業務量や労力に見合わないものとなっており、このままでは担い手の確保を含め持続可能な制度として存続することが困難になりかねません。

 

日弁連では、2023年3月3日の臨時総会で採択した決議において、民事法律扶助制度の代理援助における弁護士報酬の適正化を図ること等を国に対し求めています。

 

この実現に向けた取組として、今般、日弁連は以下2つの調査を実施し、これらの調査結果に基づいて、2024年2月15日付けで「民事法律扶助制度の報酬改善を求める意見書~まずは離婚関連事件から~」を取りまとめました。

 

司法過疎対策業務

日本には、「司法過疎地域」といわれる法律サービスを十分に受けられない地域があります。法テラスでは、このような地域に法律事務所がある地域事務所を設置し、法テラスのスタッフ弁護士が常駐して法律相談や案件の依頼に応じています。日弁連でも、従来からこのような地域に「公設事務所」(ひまわり法律事務所)を設置して司法過疎地域の解消に努めてきましたが、法テラスのスタッフ弁護士の確保・養成・支援も行いながら、法テラスと連携をして司法過疎地域での法的サービス向上に努めています。

スタッフ弁護士の確保・養成・支援としては以下のような取組を行っております。

 

修習生に対するスタッフ弁護士に関する採用情報の提供

スタッフ弁護士の業務に興味を持っていただくために、司法試験に合格した司法修習生の方向けに、法テラスの業務やスタッフ弁護士について説明する採用情報説明会やガイダンスを開催しています。

 

スタッフ弁護士養成事務所の確保

新規登録弁護士がスタッフ弁護士として採用されるまでの間や、法テラスで採用された新規登録弁護士が各地の法テラス法律事務所に赴任するまでの間に、スタッフ弁護士として必要なスキルを身につけるため、養成事務所で養成を行います。日弁連は各地の弁護士会と協力して各地の養成事務所の確保に取り組んでいます。

 

定期研修会の実施

スタッフ弁護士として多様な業務に対応するための基礎知識の習得を図るため、養成事務所で養成中のスタッフ弁護士等を対象とした定期研修を実施しています。

 

スタッフ弁護士経験交流会の実施

全国各地に赴任しているスタッフ弁護士に、各地での活動を報告してもらい、現制度のあり方や問題点、今後の課題等について議論を深めるための経験交流会を開催しています。

 

国選弁護関連業務

日弁連は従来より、被告人段階のみを対象とした現行の国選弁護制度を拡大し、被疑者段階からをも対象とする新たな制度の創設を求める一方、「当番弁護士制度」を立ち上げ、被疑者への法的援助の補完・実施を行ってきました。そして2006年10月から、法テラスにおいて被疑者・被告人の権利を守るために、被疑者・被告人を通じ一貫した国選弁護の体制が整備され、日弁連ではその担い手となる弁護士の確保に努めています。


犯罪被害者支援業務

現在、犯罪被害者支援の輪が全国に広まっており、各地の弁護士会、各市民団体、警察などにより犯罪の被害を受けた方へ様々なサポートが行われています。

法テラスでは、多くの支援団体と連携し、被害者援助に詳しい弁護士や相談窓口を紹介するとともに、国選被害者参加弁護士制度を担っています。

 

法律援助事業(日弁連委託援助業務)

日弁連は、人権救済の観点から、国選制度や国による法律扶助制度が行き届いていない分野について、弁護士から徴収した会費を主な財源として弁護士費用等を援助する法律援助事業を行っています。日弁連では、総合法律支援法に基づき、この事業を2007年10月1日から法テラスに委託して実施しています(日弁連委託援助業務)。

 

法律援助事業は、2007年3月末まで財団法人法律扶助協会が自主事業(国からの補助金を用いない事業)として行ってきたもので、同協会の解散後、2007年4月から日弁連の事業として行っていたものです。

 

この事業は、人権救済の観点から、総合法律支援法が規定する法テラスによる民事法律扶助制度や国選弁護制度等でカバーされていない方を対象として弁護士費用等を援助します。

 

法律援助事業の財源と日弁連の取組

法律援助事業は、法テラスにおける民事法律扶助制度や国選弁護制度等でカバーされていない部分について、人権救済の観点から、日弁連が弁護士である会員から徴収している会費を財源に実施し、弁護士費用等を援助する制度です。日弁連は、事業の財源を確保するため、基金を設けて、弁護士である会員から一般会費とは別に「少年・刑事財政基金のための特別会費」として月額1,300円、「法律援助基金のための特別会費」として月額800円を徴収しています(2022年4月現在)。

 

また、刑事被疑者弁護援助及び少年保護事件付添援助事業以外の援助事業の財源は、上記の特別会費のほか、主に贖罪寄付によって成り立っています。贖罪寄付は、被害者がいない刑事事件や、被害者との示談ができない刑事事件などで、被疑者・被告人となっている方が改悛の真情を表すためになされるものです。日弁連・弁護士会では、弁護士による法律援助を必要とする方々のために使用しています。


贖罪寄付実績 (単位:千円)
年度 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
実績 115,814 166,616 143,637 120,148 153,836 165,927
財源問題と国費・公費化の取組

法律援助事業の援助件数は、近年の経済不況、雇用状況の悪化等から増え続けており、日弁連としてその財源の確保が喫緊の課題となっています。援助の対象となる事件は公的支援の下で解決されるべき社会性のある案件ばかりです。日弁連は、法律援助事業が国費・公費によって実施されるよう全力で取り組んでいます。