貧困率公表1年を迎えるにあたっての会長談話

政府が2009年10月20日に相対的貧困率の公表を行ってから、本日で1年を迎える。昨年の貧困率の公表にあたって、政府は、特に子どもの貧困率を取り上げて、わが国の17歳以下の子どものうち7人に1人が貧困状態にあり、ひとり親家庭の子どもに至っては半数以上が貧困状態にあることを明らかにし、わが国の未来を担う子どもの貧困は優先的に解消されるべき政治課題であるとの判断のもと、この1年間、生活保護における母子加算の復活などの施策を実施してきたことは、評価できるものである。


しかし、残念ながら、貧困率公表から1年を迎える今日に至っても、より詳細な貧困の実態調査や分析、貧困率の削減に向けた中長期的な政策の提示は行われていない。子どもの貧困対策についても、貧困ゆえに授業料が支払えず高校中退を余儀なくされる子どもや、大学進学をあきらめざるを得ない子ども、虐待や家庭の崩壊などが原因で家族の中で健やかに育つ機会を奪われている子どもなど、子どもを取り巻く状況が依然として危機的であることを踏まえると、抜本的改善に向けた展望が開かれているとは到底言えない。


当連合会は、今月8日に盛岡にて開催された人権擁護大会において「貧困の連鎖を断ち切り、すべての子どもの生きる権利、成長し発達する権利の実現を求める決議」を採択し、国及び地方自治体に対して、子どもの貧困の実態調査、貧困対策の策定などの諸方策の実施を求める旨を表明したところである。


貧困率公表から1年を迎える今日、当連合会は、政府に対して、改めて上記決議における諸方策の実施を求めるとともに、今年は、子どもはもとより、男女別、年齢別、地域別、就業形態別、国籍別等のより詳細な類型別の貧困率調査の結果を公表し、これらの類型別の実態調査を通じて貧困の原因を探り、具体的期限を定めた貧困率の削減目標を設定して、その目標を達成するため、労働、社会保障、教育などの分野における総合的かつ具体的な計画を策定し、実施するよう強く求めるものである。


2010年(平成22年)10月20日


日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児