人権条約機関(human rights treaty bodies)の活用方法

日本が締約国となっている主要な人権条約(human rights treaties)

国連(UN)で採択された人権諸条約(human rights treaties)のうち、人権条約を実効化するため、締約国の人権条約の履行状況を監視する人権条約機関(human rights treaty bodies)が設けられている条約は、主要な人権条約と呼ばれます。次の各条約は、日本が締約国となっている主要な人権条約です。


 

人権条約機関制度の効果的機能の強化及び向上に関する総会決議

国連の各人権条約機関は、人権保障に重要な役割を果たしていますが、各条約の加盟国の増加や各人権条約機関の審査手続の相違に伴う煩雑さにより、審査や政府報告の提出に遅れが生じるなどの問題が明らかになってきました。


そのため、2014年4月、国連総会は、人権条約機関制度の効果的な機能の強化及び向上に関する決議を採択しました。この決議に基づき、各人権条約機関の会合週数の増加、各人権条約機関による審査手続の合理化及び統一化、各人権条約機関による審査のインターネットによる公開等が図られることになります。


報告制度(Reporting Procedures)

条約の締約国(Contracting Parties)は、定期的に、人権条約機関に対して報告書(Reports)(政府報告)を提出する義務があります。この報告書を踏まえ、人権条約機関(human rights treaty bodies)は、締約国が人権条約をきちんと履行しているかを審査します。この審査の際には、政府報告のみならず、国連機関等の国際機関(International organizations)やNGO団体などが提供した情報も参考にします。そして、審査の結果、人権条約機関は、総括所見(concluding observations)という文書を採択し、その中で、締約国に対し、勧告(recommendations)という形で人権条約の履行について改善すべき点を指摘します。

 

以上のような人権条約機関(human rights treaty bodies)の役割に照らせば、以下のような形で、人権状況の改善のため、人権条約機関を活用することが考えられます。


  • 政府に対し、政府報告(Reports)の提出期限を守るよう働きかける
  • 政府報告に合わせて、人権状況に関するNGO報告書を提出する
  • 人権条約機関(human rights treaty bodies)の会合に出席して発言する
  • 人権条約機関からの勧告(recommendations)が国内で実施されるよう、フォローアップ(follow-up)のための活動を行う


 

個人通報制度(Individual communication procedures)

また、主要な人権諸条約(human rights treaties)の多くには個人通報制度(individual communication procedures)が設けられています。個人通報制度により、条約上規定された人権が侵害され、国内で救済されなかった場合に、条約上の人権を侵害された個人が、国連の人権条約機関(human rights treaty bodies)に対して申立をして救済を求めることができます。

この個人通報制度は人権条約を批准すれば自動的に利用できるものではなく、締約国が個人通報制度を受け入れる受諾宣言(declarations)や選択議定書(optional protocols)の批准(ratification)をすることが条件となっていますが、日本政府は未だどの人権条約についても個人通報制度を受け入れていません。日弁連では、日本政府に対し、人権諸条約上の個人通報制度を速やかに受け入れるよう求めています。

icon_pdf.gifパンフレット「個人通報制度」の実現を!~国際基準による人権保障のために~(PDFファイル;803KB)