法教育のススメ~学習モデル~

自ら考え、自ら行動するチカラを

多くの教員の皆様にとって「法教育」に取り組む上で一番の悩みは、法的知識に自信がないなどの理由で、教材を自ら作ることに困難を覚えるという点にあるのではないでしょうか。

 

そこで、この「学習モデル」ページでは、教員の皆様がすぐに利用できる教材を紹介します。

 

私たちの目指す「法教育」は、単に法律の知識を習得するのではなく、自分たちの身の回りで起こるさまざまな問題について、法的なものの見方や考え方に基づき、主体的に考え、公正に判断し、自ら行動するチカラを身につける教育です。

 

どうぞ授業で積極的にご活用ください。

 

 

教材についてのお問い合わせ先

 

日本弁護士連合会 法制部法制第一課
住所 〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3
TEL 03-3580-9511 (月~金曜日 9時30分~17時30分)
FAX 03-3580-9920

 

 

小学生向け ルールってなんだろう?

 

みなさんは、ルールといえば「とにかく守らなければならない」ものと考えてはいないでしょうか。

 

「ルールがあるのだから、とにかく守りなさい」と言って、子どもたちがそれに従順に従ってくれれば大人にとっては楽でしょう。しかし、実際にはそうはならないでしょうし、法教育的に見ると、そうなってしまっては問題があるのです。

 

我々は、子どもたちに、問題があれば、それを自分たちの頭で考え、意見を交換しながら、みんなが一応納得できる結論を出してもらうことを願っています。そこでは、おかしなことをおかしいと思うこと、おかしいと思ったことを堂々と議論することが何よりも重要なのです。

 

この教材は、「ルールのない町」という架空の物語をベースにすることにより、子どもたちに興味や関心を持ってもらうよう工夫しました。そして、ルールがないとどんな困ったことになるのかを子どもたちに理解してもらった上で、ルールはどうやって作ったらいいのかを考えた後、最後に、問題のあるルールについて、そのルールが正しいかどうかをどうやって判断したらいいか考えてもらいます。

 

その際は、判断する「ものさし」を提示することにより、これから実際に起こるであろう様々な問題にも応用できるように工夫されています。

 

ともかくも一度この教材で授業をしてみませんか?

 

授業の目標

1ルールは、安全な社会生活を営む上で必要になものであり、それは慣習や道徳、合意に基づいている
     ことを気づかせる。

2ルールは誰が・どのようにして作るのが一番いいか考えさせる。

3ルールに従うのは、それが「正しい」ものであることが前提であり、ルールが正しいかどうかを
     評価する知的ツールを会得するとともに、正しいルールに変更しようとする意欲・態度を身につける。

 

教材(3時間構成)

今回の目標

1自分たちの周りにあるルールの存在について発見させ、そのルールがどのようにして
     存在するようになったかを考えさせる。

2もしそのルールがなかったら社会はどうなるかを考えさせ、ルールの必要性を実感させる。

 

第1回 指導要領

段階 主な発問・学習活動
児童から予想される発言
指導上の留意点
導入
【10分】

みなさんが家庭や学校で自分たちが守っているルールについて教えて下さい

<予想される回答>
  • うちではお手伝いしたらお小遣いがもらえる
  • 学校へは集団で登校する
  • いじめをしない
  • うそはつかない

それはどのようにして決まったのですか

  • 道徳
  • 慣習
  • 合意
  • ルールとは何かという質問があれば、みんながまもらないといけない決まりごと、と説明する
  • 回答のうち道徳・慣習・合意に基づくと思われるものを1、2ピックアップして板書する
  • 答えが出にくいときは、どうして従っているのかを考えさせる
  • 先の事例に対応させて道徳、慣習、合意と板書する
展開(1)
【10分】

ルールのない町を読んでみましょう

ルールのない町ではどんなことが起こりましたか

  • 車がスピードを出しすぎている
  • 車が右側も左側も関係なく走っていて、交差点でも止まらない
  • もめごとが起きるとすぐケンカになる
  • 町中、ゴミだらけ
  • お菓子を買ってもお金を払わない
  • ルールのない町のプリントを配る
  • 児童に読ませてもよい
展開(2)
【10分】

ルールのない町で起きた問題をなくすために、私たちの社会にある実際のルールはなんでしょうか

  • 車は左側通行しなければならない、赤信号で止まらなければならないというルールがある
  • けんかはしてはいけない、争いごとは話し合って解決しなければならないというルールがある
  • 決められた日や場所以外でゴミを捨ててはいけないというルールがある
  • ものを買ったらお金を払わなければならないというルールがある
  • 「~してはいけない」「~しなければならない」という形で、ルール自体を発表させる
展開(3)
【10分】

そのようなルールはどのようにして決まっているのでしょうか

  • 道路交通法という法律で基準が決められている
  • ケンカをしない、話し合いで解決する」という道徳がある
  • 決められた場所以外にゴミを捨てないというルールは、町を汚すのはよくないという道徳から生まれたもの
  • ものを買ったらお金を払うというールは、慣習や合意から生まれたものだけど、民法という法律にも定められている

    慣習、道徳、合意と法律との関係について説明する

  • 今度はそのルールの源泉について考えさせる
  • 法律とは合意の一種で、国が決めたルールである。法律の中には習慣や道徳から生まれたルールを改めてはっきりさせたものや(民法)、一律に決めておいた方が便利なことを取り決めたもの(道交法)などがある
まとめ
【5分】

わたしたちの社会でルールはなぜ必要なのでしょうか

  • もしルールがなかったら、命の安全も危ないし、街や社会で安心して生きていくことが難しくなる

このようなルールがあって初めて一人一人の自由や財産が守られるし、紛争が起きたときにもルールに従って平和的に解決することができる

  • ルールがない町で起きた問題を思い出させる

 

 

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第2回 今回の目標

1社会にあるルールは誰が作っているのかを考えさせる。

2ルールに関する仕事にどのようなものがあるかを理解させ、その仕事を分担する理由について
     考えさせる。

 

第2回 指導要領

段階 主な発問・学習活動
児童から予想される発言
指導上の留意点
導入
【5分】

クラスのルールはどうやって決めていますか

<予想される回答>

  • 自分たちで話し合って決める
  • 前の時間では、街や社会で安心して生きていくためにルールがあること、ルールは、習慣や道徳や合意から生まれるものであることを思い出させる
  • 習慣や道徳からルールがうまれるためには長い年月が必要であり、またその範囲もはっきりしないことが多いので、合意でルールを決めるようになってきたことを指摘する
展開(1)
【10分】

ルールのない町を読んでみましょう

町の全員で話し合ってルールを決めようとしたらどうなりましたか

  • いろいろな意見が出てまとまらなかった

ルールを一人の人に作らせないのはなぜでしょうか

  • いじわるな人だと困る
  • 一人だと自分の趣味嗜好に走る
  • 大勢で考えた方がいいものができる
  • ルールのない町のプリントを配る
  • 児童に読ませてもよい
  • クラスのルールなら全員で決めることができるが、町全体だと難しくなることを理解させる
  • お話に出てくる理由だけでなく様々な理由を考えさせる
展開(2)
【10分】

ルールに関係する仕事にはどのような仕事があるでしょうか

  • 立法府(議会・国会)
  • 行政府(内閣・町役場・警察)
  • 司法(裁判所)

適宜、裁判所と警察の役割の違いを説明する

  • 回答がでにくいときは、交通ルールを例にとって、赤信号では渡れないというルールを作るのは誰か、赤信号は誰が設置するのか、赤信号に違反したらどうするのかと具体的に質問する
展開(3)
【10分】

あなたらならルールのない町にどのような制度を作りますか

  • 議院内閣制
  • 大統領制
  • 自由に考えさせる
  • 国と地方の政治制度の違いに触れる
  • ルールのない町では、議員5人からなる町議会(ルールを作るグループ)、町長1人(ルールに従い町の仕事をする代表者)、裁判官1人(争いを解決する人)を決めることになる
まとめ
【10分】

同じ人たちが、ずーっと権力を握っているとどうなるでしょうか

  • 自分たちの都合でルールを作ってしまう
  • 少数者の利益を考えなくなる

ルールを作るのも守らせるのも同じ人たちだったらどうなるでしょうか

  • 自分たちに都合のいいようにルールを運用する危険がある

これらのことから、日本の政治では、立法・行政・司法の三権をそれぞれ別の人たちに担わせるとともに、特に立法府の議員は選挙によって選ばれていることを説明する

  • 最初に、ルールは、わたしたちの行動に影響を与えるものであり、ルールを作る人・守らせる人には私たちに影響を与える力、すなわち権力があることを説明する

 

 

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第3回 今回の目標

1ルールが正しいかどうかを評価する知的ツールを理解する

2おかしなルールがあれば、無視するのではなく、正しいルールに変更しようとする意欲・態度を
     身につける

 

第3回 指導要領

段階 主な発問・学習活動
児童から予想される発言
指導上の留意点
導入
【5分】

みなさんの身の回りにあるルールでなんか変だなと思うルールはありますか

おかしなルールには従いますか

  • 従う
  • 従わない
  • 裁判所へ訴える
  • 一応従うが改正する
  • 自由に回答させる
  • 利用可能な変なルールの例があれば、最後のまとめのときに使うよう覚えておく
展開(1)
【15分】

ルールが正しいものかどうかワークシートに従って判断してみましょう

  • ワークシートを配る
  • ルールが正しいものかどうかは内容の他に作られ方も問題になるが、ここでは先生が作ったということで作られ方に問題はない
  • ルールには作られた目的があり、ルールが正しいかどうかを判断するには、まず目的と内容を正確に理解することが前提である

<例題 1>
給食時間中に大声で話す生徒がいるので、先生は「行儀よくしなければなりません」というルールを作りました。

  • 意外と肯定的な意見がでるかもしれない
行儀よくするというのはどういう意味か考えさせ、みんなが同じように理解できるものでなければならないと説明する

<例題 2>
生徒たちが健康になるように先生が「1日100キロのマラソンをしなさい」というルールを作りました

  • ほとんどの人は無理
みんなが守れるルールでなければならない

<例題 3>
虫歯の子が増えたので先生が「虫歯にならないようマスクをしなさい」というルールを作りました

  • 関係ない
目的を達成できない内容ではいけない
展開(2)
【15分】

ルールのない町を読んでみましょう

お菓子を食べてはいけないというルールについてどう思いますか

  • お菓子が食べられないのはおかしい

ワークシートに従って判断していきましょう

お菓子を作ったり売ったりしてはいけないというルールはどうやって作られたのでしょうか

  • 町議会で決まった

ルールの作り方に問題はなかったでしょうか

  • 代表者が決めたのだから問題ない
  • リエたちが知らない間に決まったのはおかしい

目的はなんですか

  • 虫歯をふせぐ

その目的は正しいですか

  • 正しい

ルールの内容はなんですか

  • お菓子を作ったり売ったりしてはいけない

誰にでも理解できますか、平等ですか

  • 理解できるし、平等は平等

この内容で目的を果たせますか

  • お菓子を食べなくても虫歯になる人はなる
  • お菓子を食べなければ虫歯になる率は低くなるかもしれない

このルールは必要ですか

  • お菓子を作ったり売ったりする人が困る
  • お菓子を食べる自由がある
  • お菓子を食べても歯磨きをすれば虫歯にはならない
  • 回答がでにくいときは、交通ルールを例にとって、赤信号では渡れないというルールを作るのは誰か、赤信号は誰が設置するのか、赤信号に違反したらどうするのかと具体的に質問する
  • ルールのない町のプリントを配る
  • 児童に読ませてもよい
  • 代表者が作ったもので基本的には問題はないはずだが、リエたちが知らない間にできた点に気づかせる
  • 内容とセットにして正しくないと答える可能性もあるので、その場合は、目的だけを考えてもらう
  • 目的を達成できない内容かどうかは微妙なところがあることを気づかせる
まとめ
【5分】

自分たちの周りにあるルールで変だなと思っているルールがあれば、今日のワークシートに従って本当に必要かどうか考えてみよう

必要がないルールであれば廃止したり、改正したりしよう

  • 冒頭の質問で使えるルールがあればあてはめてみる

 

 

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