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掲載日 タイトル 執筆者

2019年

2019年 03月01日

法教育に育てられた18年前といま 石塚 慶如

2019年 02月01日

法教育授業のおわりに 神坪 浩喜

2019年 01月01日

法教育は負けていないか? 坂根 義範
2018年

2018年 12月01日

私と法教育のかかわり 野島 和朋

2018年 11月01日

法教育の裾野 真鍋 直敬

2018年 10月01日

出張授業は「ソ」の音で 石垣 正純

2018年 09月01日

三重弁護士会 2018年ジュニアロースクール 内田 悠希

2018年 08月01日

大人の法教育「法バル」 増川 拓

2018年 07月01日

「法教育が当たり前にある社会」を目指して 木野 綾子

2018年 06月01日

新潟県弁護士会の法教育 三科 俊

2018年 05月01日

「想像力」を育む 中畑 真哉

2018年 04月01日

正解はない! 前田 宏樹

2018年 03月01日

福島県弁護士会の「市民」のための法教育 岩﨑 優二

2018年 02月01日

和歌山における法教育 津金 貴康

2018年 01月01日

福井から発信! 童話劇での法教育 後藤 正邦
2017年

2017年 12月01日

いじめ防止授業について思うこと 木下 康代

2017年 11月01日

文部省著作教科書「民主主義」のご紹介 畠山 将樹

2017年 10月01日

高校生模擬裁判選手権2017 加藤 潤
2017年 09月01日 裁判傍聴のススメ 中永 淳也
2017年 08月01日 生徒たちが持っている力 古城  博道
2017年 07月01日 教員セミナーのグループワークのご報告 鍋嶋 正明
2017年 06月01日 エンタメ×法教育 佐藤 大和
2017年 05月01日 弁護士バッジのチカラ~法教育事業へ積極的なご参加を~ 杉本 周平
2017年 04月01日 日本最北の地での法教育 中嶋 純
2017年 03月01日 情報が錯綜する現代社会にこそ必要な法教育 廣津 洋吉
2017年 02月01日 私と法教育 渡部 俊介
2017年 01月01日 学校の先生方と手を携えて 原 道也
2016年
2016年 12月01日 広島での取り組みのご紹介 前田 有紀
2016年 11月01日 法教育って何をしてるの? 佐藤 有紗
2016年 10月01日 いじめ防止授業について 山口 大観
2016年 09月01日 弁護士が学校に行くこと 谷口 恭子
2016年 08月01日 高校生模擬裁判選手権の夏 萩原 経
2016年 07月01日 人の繋がりの中で育つ法教育活動 永岡 亜也子
2016年 06月01日 札幌の法教育 綱森 史泰
2016年 05月01日 答えのない授業 五十嵐 裕美子
2016年 04月01日 まずはお電話を 葛西 秀和
2016年 03月01日 「チョイ足し」法教育のすすめ 原 智紀
2016年 02月01日 法教育としてのいじめ防止授業 樋川 和広
2016年 01月01日 法教育と18歳選挙権 芝野 友樹
2015年
2015年 12月01日 ワクワクできる法教育 小森 竜介
2015年 11月01日 NIEと法教育~新聞を使った法教育授業のお勧め~ 春田 久美子
2015年 10月01日 風の声に耳を傾ける 中野 宏典
2015年 09月01日 縦軸で見る法教育 安永 治郎
2015年 08月01日 裁判員制度と法教育、そしてその先にあるもの 入坂 剛太
2015年 07月01日 法教育の夏がやって来た! 武藤 玲央奈
2015年 06月01日 先生方と歩み続けた10年間 鈴木 真実
2015年 05月01日 法教育は誰のためのもの? 内田 光彦
2015年 04月01日 特別支援学校での法教育授業 張江 亜希
2015年 03月01日 法教育教員セミナー(予定) 清木 敬祐
2015年 02月01日 高校生模擬裁判選手権 小原 麻矢子
2015年 01月01日 法教育の魅力とは 木村 潤
2014年
2014年 12月01日 どうして小学校ではシャープペンシルが禁止されているのか 柘植 大樹
2014年 11月01日 紛争のない世界へ 高橋 重剛
2014年 10月01日 法教育を広めたい 近藤 雅樹
2014年 09月01日 ビバ デモクラシー!! 矢田 健一
2014年 08月01日 法教育の役割 村松 剛
2014年 07月01日 童話と法教育 野坂 佳生
2014年 06月01日 法教育授業のご紹介 ~ 模擬裁判と模擬調停 額田 みさ子
2014年 05月01日 決まりを守る 西本 聖史
2014年 04月01日 リエちゃんの本当の試練 根本 信義
2014年 03月01日 高校生模擬裁判選手権、ふるってご参加(傍聴)ください! 菅藤 浩三
2014年 02月01日 法教育をやってみよう! 神坪 浩喜
2014年 01月01日 法教育活動の喜び 黒澤 圭子
2013年 12月06日 七輪と法教育 船岡 浩

  

第64回 「法教育に育てられた18年前といま」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

札幌弁護士会「法教育委員会」委員

             石塚 慶如



法教育に育てられた18年前といま

私が高校生だった18年前は、法教育の取り組みがここまで全国的な規模ではなかったと思いますが、その当時、私が通っていた北海道内の高校で弁護士が授業を行うという取り組みがありました。その授業では、放火事件を題材に生徒たちが模擬裁判を実演し、その後評議をするという内容だったと記憶しています。

評議のときに感じたことは、存在する証拠は同じでも、人によって見え方が違うということでした。そして、議論を積み重ねて納得するというプロセスもとても新鮮なものでした。

 

議論を積み重ねて結論を出すことが新鮮に感じた理由は、今までの学校生活での決定プロセスがこれと違っていたように感じていたからです。例えば、小学校では声が大きくガキ大将タイプの人の意見が通っていたように思います。中学校になると、恥ずかしさや間違いだと指摘されることへの怖さからか、クラス内で意見が出にくくなり、出された意見が無批判に通っていたような記憶があります。

そのため、議論をして結論を出すことはクラス会などで何度も行っていたはずと言われても、私にとっては形式的なものに過ぎなくて、実質はちょっと違ったように思います。

 

しかし、模擬裁判を通じて、「人と違う意見を出してもいいんだ」、「相手に納得してもらったり、相手から納得させられたりすることがあるんだ」と、ある意味当然のようなことを新鮮に思った記憶があります。

 

そんな高校時代から18年が経ち、私は現在、母校の高校で高校生に法教育活動をしています。そこで模擬裁判の授業をする際に伝えていることは、「正しい答えが用意されていない問題を解決するために全員で議論して結論をだしてほしい」ということです。


クラス内の決め事や、進路選択や社会人になってからのことなど、児童や生徒が遭遇する重要な課題のほとんどは、答えが用意されていない問題のはずです。これを解決するためには、解決方法を知っておくことが重要と感じています。
さきの模擬裁判のように他者と議論を積み重ねることのほか、何度も課題を解決することで見えてくる判断基準の規則性を見つけることもそうだと思います。


このように考えると、法教育の考え方は、特定の科目や教科とつながるというだけではなく、学校生活や社会生活全般と繋がっているのだなと、改めて感じるところです。


 

 

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第63回 「法教育授業のおわりに」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

仙台弁護士会「法教育検討特別委員会」委員

             神坪 浩喜


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私は、学校に「ルール作り」等の法教育授業にいったとき、授業のおわりにこんなお話をしています。


~~~~~~~~~~

皆さん、法教育授業を体験してみていかがでしたか。

友達の話をきいてみると「へ~そんな考え方もあるんだなあ」と思いませんでしたか。「それは、ちょっと違うんじゃない」と、そう思った人もいると思います。


ここで、皆さんに体験して欲しかったこと。それは、自分とは違う色々なものの見方や考え方があるということです。自分とは違う考え方の人がいる。その人の意見の理由を聞いてみると、なるほどと感じる。でもやっぱりここが違うじゃないかなと考える。そんな人の話をきいて、迷ったり考えたりということを体験して欲しかったのです。


皆さん、法が大切にしている考え方って何だと思いますか?

それは、一人ひとり、みんな違っているから、お互いに尊重しながら、よく話し合いをしていきましょうという考え方です。


一人ひとりを大切にするという「個人の尊重」

そしてみんなでよく話し合いをしようという「民主主義」です。


一人ひとり、この世に、皆さんと同じ人はいません。皆さんの代わりはいません。かけがえのない存在ということです。そして、みんなそうなのです。

みんな違います。生まれてきた環境も考え方も好みも違います。カレーが大好きな子もいれば、嫌いな子もいる。サッカーが好きな子もいれば、野球が好きな子もいる。人それぞれなのです。


そして、人は、人と支え合って、助け合って生きていかなければ、生きてはいけません。一人では生きていけないのです。人は、人と人との間で「人間」となるのです。


今日、皆さんが、食べた朝ご飯、誰がつくってくれましたか。そのお米や野菜、お肉は誰が育てたのでしょう。誰が運んでくれたのでしょう。お父さんやお母さんといった目に見える人はもちろん、目に見えないたくさんの人に、皆さんは支えられ、助けられているのです。人は、人とつながりながら、社会とつながりながら生きています。人は、一人では生きていけないのです。

そして、人は考え方が違う。同じ人は一人としていません。だから、自分以外の人が、何を欲して、何を考えているのかは、話し合わなければ分からないのです。


分からなければ、衝突が生じます。自分が好きなことを、相手も喜ぶと思って行動したところ、相手の人はそれを嫌いで嫌がることもあるでしょう。自分の考え方や価値観を押しつけると、相手の人は反発してしまいます。きっと喧嘩になって、お互い傷つけあってしまうでしょう。


だから、よく話し合って、お互いの考え方を知るのです。

「私は、これこれの理由からこうした方がいいと思う。」と意見をお互いに言うのです。約束事を決めるのです。ルールを決めるのです。それは、混乱をさけること、お互いに傷つけあわずに、仲良く、支え合って生きていくことができるためにそうするのです。


皆さんは、「法」というものは、縛り付けるもの、不自由なものと思っているかも知れませんね。でも、法は、決して、皆さんを縛り付けて自由を奪うものではありません。


法の目的は、色々な考え方の人がいる社会において、人が共に支え合って、共に幸せに生きることができることを目指すものなのです。色々な価値観をもつ人がいて、それぞれが幸せに共に生きることができるように調整し、バランスを図ろうとするものなのですね。

人は皆違って、色々な人がいるからこそ、調整としての法やルールが必要になってくるわけです。


幸せのために法はあるのですよ。

一人ひとりかけがえのない存在として、その存在や意見は尊重すること。そして、みんなでよく話し合っていくこと、この大切さを、心に留めておいて下さいね。 皆さん、今日は、熱心に法教育授業を聞いてくれて、ありがとうございました。

 

 

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第62回 「法教育は負けていないか?」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
             坂根 義範



法教育は負けていないか?今から10年ほど前 ― 平成20年(2008年)ころと記憶しています ― ある論者が日本における特殊詐欺の実状を踏まえた上で興味深いことを語っていました。「還付金詐欺のように役所の名前をかたる手口の振込詐欺は、アメリカではあり得ない。もし『あなたにお返しすべき還付金がありますが、今日中に手続を済ませないと、この還付金を受け取る権利が消滅してしまうので、今すぐ急いで指示に従ってください』という電話がきたら、多くの米国市民は、まず何を考えるか。そんな大事な権利の存在を、消滅する当日まで当人に知らせなかった役所や役人は全くけしからん、訴えてやろう。だから、まず、電話をかけてきた役人らしき人物やその上司、ひいてはその役所の責任を追及しようと考え、『あなたは、どこの役所の何という部署の者なのか? 上司の名前は? 私の権利が今日中に消滅するというのは、一体どういうことなのか?』と矢継ぎ早に質問を浴びせるでしょう。したがって、アメリカでは還付金詐欺など試みるだけ無駄なことなんです」と。ラジオか何かで耳にして、ひどく感心した覚えがあります。



実はこの話、私が法教育に携わるようになった原点の1つです。


もちろん、アメリカと日本では国の成り立ちや憲法を始めとする法制度を作り上げてきた歴史が異なり、お上意識の有無なども影響して、両国における詐欺の手口が大きく違うのだろうとは理解しています。それでも、市民への法の浸透度、法意識に大きな差があることに嘆息してしまいました。と同時に、その差を埋めるため、法教育による可能性に賭けてみたいとも思いました。


確かに、詐欺犯撲滅のような防犯活動は、まずもって治安機関の任務であり、また、犯人を生み出さないための教育や、人として善く生きるように導くこと、貧困の撲滅などが重要であり、法教育と直接には関係ないだろうという声も聞かれます。しかし、例えば、道行く人が皆、武術の心得を有する人たちであれば、ひったくりをやって金品を奪おうなどと不埒な考えをもつ輩はきっと出てこないでしょう。同様に、市民が皆、法意識の高い人たちで、米国市民のように、電話をかけてきた詐欺犯に対して当たり前のように切り返せる法感覚があれば、昨今のように特殊詐欺がはびこる世の中にはなっていないはずです。そうした反社会的な事象に負けずに市民が生き抜く力、いわばバイタルなパワーやスキルを市民に供給できる法教育でありたいと常日頃から願っています。



そういう思いでこの10年、様々な形で法教育に携わり、世の中に法がゆき渡って人々の法意識が向上することを目指してきました。しかし、それをあざ笑うかのように、未だに一般市民が被害を受ける特殊詐欺は後を絶たず、平成が幕を閉じようとしている平成31年(2019年)の今も、あろうことか地方裁判所の名をかたる手口による詐欺被害の報道を耳にするような状況にあります。裁判官はもちろん、共に司法の一翼を担う私たち弁護士にとっても口惜しい残念な事態です。


こうした司法への挑戦とでも言うべき犯罪に、法教育は無力なのか。法教育は負けているのではないか。このように問われると、正直、口ごもってしまいます。ただ、諦めるのはまだ早いような気がします。こうした問い掛けに対し、「いや、私たちの法教育は力強く、断じて負けていない」と言い切れるように、そして、近い未来に人々が「どうして平成の時代には特殊詐欺が多発してたんだろう、不思議だね」と言える世の中になるように、法教育に携わる私たち自身も謙虚に学び続けながら、これからも法教育の可能性に賭けていきたいと思います。


以上


 

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第61回 「私と法教育のかかわり」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
中国地方弁護士会連合会「市民のための法教育委員会」委員
島根県弁護士会「市民のための法教育委員会」委員長
            野島 和朋



実は、島根県弁護士会では、最初に入る委員会は自分で選ぶことができず、あらかじめ決められています。私も、いつの間にか、法教育委員会委員ということになっていたのでした。
 

そして、これもたまたまなのですが、中国地方の5県で持ち回りで行っている中国地方弁護士会連合会の大会が、私が弁護士になった次の年に島根県松江市で行われることになっており、そのテーマが「法教育にどう取り組むか」ということで、よくわからないまま、その準備に駆り出されておりました。大会では、当時の委員長に、「新人弁護士の登竜門だから」とかなんとか言われて発表も任されました。そんな私が、今では当会の法教育委員会の委員長です。なにかの運命のいたずらでしょうか。
 

さて、その大会があった2010年から、当会では、毎年、夏休みに、小学校5・6年生(午前)と中学生(午後)を対象としたジュニア・ロースクールin島根を開催しています。最初の年は、勝手がわからず、茨城県弁護士会の後藤直樹先生に来てもらって、指導していただきました。
 

このとき知った小学生用の法教育が私には衝撃でした。おそらく他会でも似たものは行われていると思いますが、こういうものです。わがままな王様が、小学生にゲームをさせて、景品をやると言いつつ、自分の好きなようにルールを決めて理不尽なことを言い、結局景品はあげません。ルール自体が読めない文字で書かれていたりもします。文句を言うと牢屋に入れられます。小学生はぶーぶー言い出します。そこで、王様のどこがいけなかったかを考えてもらい、自分たちで新しいルールを作って王様に突きつけます。そして、実はそれが「憲法」なんだよ、という話をします。
 

こんな憲法の授業ははじめて見ました。まさに憲法ができる過程を追体験させるものであり、憲法は国家を縛るものであるということが小学生にも理解できて、しかも楽しい。これが法教育か、といたく感動したのを覚えています。
 

小学校に言って話をすると、授業で習っているので、日本国憲法の三大原理なんかは小学生でも覚えていて、結構すらすら出てきます。しかし、そもそも憲法は国家権力を制限するという基本がよくわかっていなかったりします。
 

首相が憲法改正に意欲を示している今、法律の知識そのものではなく、法の根本にある自由、平等、正義、公平といった価値を教える法教育の重要性はますます高まっていると思います。
 

私と法教育のかかわり とはいえ、出前授業では、憲法をテーマにしたものや、いわゆる主権者教育もありますが、学校側からの希望で多いのは模擬裁判です。
 

模擬裁判も論理的な思考を学ぶという点では悪くないのですが、私としては、もうちょっと模擬裁判以外のものが増えるといいと思っています。学校側としては、主権者教育なんかもやってみたいけど中立性も気になり、授業で司法や裁判については取り上げるので、模擬裁判がやりやすい、という事情があるようです。
 

ところで、私はマジックを趣味としており、実は日弁連に営利業務の届け出も出しています(ギャラをいただくことがあるので)。なんとか法教育と結びつけることができないかと思っていますが、いまのところ、アイスブレイクに使うくらいしか思いついておりません。これも今後の課題のひとつです。
  



 

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第60回 「法教育の裾野」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
四国弁連「法教育・子どもの権利委員会」委員長
徳島弁護士会「法教育委員会」委員
            真鍋 直敬



私の住む徳島県には法学部がありません。地元大学の図書館の法学書のコーナーを見ても、ほとんど読まれた形跡がなく、判例タイムズも最新号まで全て揃っているのに全巻新品です(欲しい!)。
このように法学にはあまり縁のない土地柄ですが、徳島弁護士会としても近年法教育に力を注いでおり、高校生を対象としたジュニア・ロースクールの開催(憲法委員会)、中学生・高校生を対象とした消費者教育の出前授業(消費者問題対策委員会)、高校生模擬裁判選手権への参加(法教育委員会)などの取り組みを行っています。
現在、法教育委員会ではスクールロイヤー制度の導入を検討しているところ、まだ企画段階ではありますが、詰めの段階まで来ており、個人的には実現する可能性が高いと考えております。


このように不毛の土地に少しずつ種を蒔いているのですが、高校生模擬裁判選手権に参加してくれた学生が時折連絡をくれたりすると、蒔いた種が実を結んだことをダイレクトに実感します。
ある学生は、大手渉外事務所にパラリーガルとして就職したとの連絡をくれました。高校生模擬裁判選手権に参加していなかったら、おそらくそのような選択はしなかったとのことでした。
また、他の学生は、高校生模擬裁判選手権が終了した直後は、将来は司法試験に合格して弁護士になりたいと言っており、大学に入ってからも、ロースクールに進むか就職するかで悩んでいるとの相談を受けました。


法教育は、法律専門家でない一般市民に対して、法や司法制度に対する理解を深めてもらうものであり、必ずしも法曹養成ためのキャリア教育ではありませんが、学生たちが自分の進路を決める際、いずれの道に進むにせよ高校生模擬裁判選手権に参加した時のことを思い出してくれるのは、法や司法制度に対する認識・理解が彼らの中に浸透していったのかなと嬉しく思います。


法教育の裾野このような法教育に関する取り組みですが、個々のイベントは大変好評であり、最大瞬間風速は高いのですが、他への波及効果という点ではまだまだ物足りません。
普段法教育関連のイベントに携わっていて実感するのは、法教育に理解のある教員がいるかいないかで学生の関心や継続的な参加の程度が大きく変わってくることです。
学習指導要領が改訂された今、法教育の現場は間違いなく学校であり、法教育の裾野を広げていくためには、学生に直に接する教員に対し、教員セミナーなどを通じて法教育の意義・楽しさを知ってもらうことが求められています。
法教育に少しでも関心のある教員の方がおられましたら、是非徳島弁護士会までご一報ください。


地元大学の図書館にて、学生が何気に法学書を手に取っている光景が見られるような土壌を作っていきたいと思っています。



 

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第59回 「出張授業は「ソ」の音で」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長
千葉県弁護士会「法教育委員会」委員
            石垣 正純



各単位会での法教育委員会の活動の中で重要なものに、学校への出張授業があります。公平や公正など法の価値や理念を教えるもの、主権者教育として主体的な社会へのかかわりに関するもの、18歳への成人年齢引き下げでやにわに脚光を浴び始めている消費者教育やワークルール教育、いじめの防止授業、模擬選挙・模擬裁判の指導などです。出張授業は「ソ」の音で


教員養成系の学部を卒業し、職業人生の4分の3を高校の教員として過ごし、教育と法の世界をより近くするために司法の世界に入ったという変わり者の私にとって、これら出張授業の拡大、スクールロイヤー制度の導入という近年の流れは、大いに歓迎すべきもので、各弁護士会でのますますの取り組みの発展を期待しています。


さて、そのような法教育を取り巻く状況の中で、最近私は、各弁護士会で、「出張授業の心構え」と題した研修を行わせてもらっています。すでに、滋賀、宮崎、大分、岐阜の各会でお話をさせていただきましたが、熱心に出張授業に取り組む(又はこれから取り組もうとしている)先生方に、授業の方法論とともに、「学校で児童・生徒に教えることを、もっともっと楽しもう!」という裏のテーマを伝えることができたのではないかと思っています。


授業の方法論で、一番大事なのは、まず児童・生徒をよく見ること、次に、教室や体育館で、もっと自由に歩き回ることです。そして、発声は「ソ」の音でということ。「ソ」の音でとは、地声の音程を「ド」としたときに、授業では、それより高い「ソ」の音で話してほしいということです。普段より、はっきりとした声になりますし、何より授業の雰囲気が格段に明るくなります。


出張授業の中で、時に、生徒が全然話を聞いてくれなくて「折れた」「もう行きたくない」、などと言う話をちらほら聞きくのですが、「ソ」の音で明るくはっきりと、そしてどんどん歩き回って生徒との距離を縮めると、もっともっと授業を楽しめます。弁護士は、いかに正確な文章を作るかを日々研鑽しているわけですが、児童・生徒に対しては、正確さよりわかりやすさが大事。子どもたちが退屈している時は、それは言葉の意味が分からない、話し方が単調だということです。そんな場合は、少し声を高くして、一人一人の子どもに手を差し伸べて向き合ってみてください。


これまで、日本の学校には、十分な法的な知識もなければ、法を支える価値への理解もありませんでした。それ以前に、自ら考える力、そして他と議論して考えを深める力も育ってはいなかったのです。しかし、今、数多くの弁護士が、学校での出張授業に取り組んでいて、これは、子どもたちが、大きく成長する良い機会なのです。そして、この活動を発展させていくためには、弁護士ももっともっと授業を楽しむようにすることが大切です。出張授業を通して、その授業のテーマとともに、弁護士の仕事がいかに楽しく素晴らしいものかも子どもたちに伝えられれば(シビアな部分は黙秘するとして)、教育と法の世界はもっと近いものになり、子どもたちがより安心して、安全に成長していけるはずです。


出張授業は「ソ」の音で! 楽しく出張授業をしていきましょう。



 

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第58回 「三重弁護士会 2018年ジュニアロースクール」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
三重弁護士会「法教育委員会」委員
             内田 悠希



先日、私の所属する三重弁護士会にて、「ジュニアロースクール」が開催されましたので、今回は、そのご報告をさせて頂きます。

2018年8月3日、三重弁護士会館にて、ジュニアロースクールが開催されました(5年ほど前から開催しています)。津市内の最高気温が38.1度を記録する、暑さが非常に厳しい日ではありましたが、三重県内の中学生29名に参加してもらえました。

今年から、ジュニアロースクールの参加者募集方法につき、プロジェクトチーム(PT)を立ち上げて、同PTで募集方法を綿密に計画し、かつ、各委員が自身の出身中学校を回って勧誘するなどした結果、特定の中学校に偏ることなく、満遍なく色々な中学校から参加してもらうことができました。

三重弁護士会のジュニアロースクールは、毎年2部構成で開催しており、前半の部で、法廷見学若しくは裁判傍聴、後半の部で、模擬裁判の実演・評議を行っています。
今年は運良く、刑事の公判期日が入っていたので、前半の部で、実際の裁判を傍聴してもらうことができました。後半の部は、建造物侵入・窃盗未遂を題材とした、刑事模擬裁判の実演・評議を行いました。


(裁判傍聴)
弁護士会館から、津地方裁判所の法廷に移動し、刑事裁判傍聴を行いました。
冒頭手続から最終陳述までの、刑事裁判の審理の一連の流れを、参加者の皆さんに、実際に見ていただくことができました。また、裁判の独特の雰囲気を肌で感じていただくことができたかと思います。
 
(模擬裁判)
建造物侵入・窃盗未遂を題材とした刑事模擬裁判を行いました。本題材は、窃盗未遂罪の成否が問題となる事案でした。
本題材につき、まず、模擬裁判の実演を行いました。実演においては、裁判官役、検察官役、弁護人役を各2名ずつ、計6名を参加者から募り、証人尋問、被告人質問等を実際に行ってもらいました。各役とも、参加枠以上の希望者数で、参加者の皆さんの熱意を感じました。

模擬裁判の実演終了後、班に分かれて、窃盗未遂罪の成否について評議を行いました。そこでは、模擬裁判で出てきた各事実について、参加者が様々な視点から評価を行い、激論が交わされました。弁護士が想定していなかったような事実の評価の仕方も出てきて、参加者の皆さんの発想力にとても感心しました。

今回の模擬裁判の評議では、他の人の話を聞きつつ、他の人と話し合うことを通して、ひとつの物事を様々な視点から評価するという、日常生活を送る上でも大切なことを、参加者の皆さんに、実践してもらえたかと思います。

 

模擬裁判終了後、「ジュニアロースクール修了証書」と「未来の三重弁護士会入会書」が各参加者に授与され、今回のジュニアロースクールは終了となりました。

  三重弁護士会 2018年ジュニアロースクール

ジュニアロースクールの翌日、私は、「日本弁護士連合会主催 第12回高校生模擬裁判選手権関西大会」(@大阪)のお手伝いをさせて頂いたのですが、同選手権の過去の参加者が、今や、実際に法曹となって、同選手権に運営側として携わっているということを聞きました。
三重弁護士会のジュニアロースクールの参加者が、法曹になったということはまだ聞きませんが、三重弁護士会でも、今後、ジュニアロースクールに参加した中学生が弁護士となって、「未来の三重弁護士会入会書」を持って入会し、一緒にジュニアロースクールを開催するようになる日がくるかもしれません。そんな日が来たら、どんなに嬉しいことでしょうか。
法教育の目的は、決して法曹を生み出すことではありませんが、そんな日が来ることを楽しみに待ちつつ、今後も、出前授業、ジュニアロースクール等に積極的に取り組んでいきたいと思います。


以上

 

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第57回 「大人の法教育「法バル」」

札幌弁護士会「法教育委員会」委員
             増川 拓




「大人の」と付くと、なんとも微妙なタイトルですが、札幌弁護士会室蘭支部管内では、飲食店を会場にして、社会人がお酒や食事を楽しみながら、法律や紛争解決について議論を交わす、「法バル」が開催されています。弁護士が講師を務め、具体的な事例に基づいて裁判員裁判や民事調停などを体験してもらい、情報収集・分析力、議論による合意形成能力を養います。


現在、学習指導要領に法教育が盛り込まれ、各学校で様々な取組が始まっています。しかし、実際に子ども達が学ぶ大人、具体的には自宅の親・親戚、学校の先生、地域社会の人たちが、法教育について何も知らないのであれば、十分な効果は見込めないのではないか。「多数決こそ民主主義であり、正義。」と考える大人ばかり見ていては、「少数派の意見を尊重した合意形成」という立憲的民主主義の根幹を、子ども達も身につけようがないのではないか。そのような心配をしていたところに、地元の飲食店の店長さんからお話をいただきました。「謝礼が出せなくて悪いのだけれど・・・。」というセリフも気にならず、二つ返事で引き受けました。


大人の法教育「法バル」 この「法バル」も、すでに5回目を終えました。年齢、職業、経歴、思想信条が異なる男女が10名ほど集まり、毎回白熱した議論が交わされています。コーディネーターである弁護士は、議論の整理とまとめを行います(このため、さすがに弁護士は終了までお酒を飲めません(笑))。


紛争解決能力を養う法教育は、子ども達はもちろん、現代社会を生きる大人にも必要だと思います。「法バル」だけでなく、企業の社員研修や、町内会・PTAなどの地域団体での勉強会に、法教育を実施できる弁護士が積極的に参加していくことは、今後非常に意義のあることだと考えています。


市民の皆さん、ちょっと模擬裁判で裁判官や検察官、弁護人をやってみたくはないですか?弁護士の皆さん、ちょっと顧問先や地元の団体に声をかけてみませんか?勉強会の後は、市民の皆さんと弁護士との距離がグッと近づき、美味しいお酒が飲めますよ。


 

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第56回 「「法教育が当たり前にある社会」を目指して」

第一東京弁護士会「法教育委員会」委員
             弁護士 木野 綾子




「法教育が当たり前にある社会」を目指して「法教育」という言葉は、最近だいぶポピュラーなものになってきました。
「法教育=法律専門家でない人々に対する、法にかかわる基本的な知識、考え方、さらにはそれに必要な技能等の教育」などと説明されていますが、法教育が注目されるようになったのはせいぜいここ十数年のこと。
裁判員裁判制度の導入が決まった頃から、「市民にも法教育を」という声が高まり、新学習指導要領の実施によって、平成23年度から小学校、平成24年度から中学校、平成25年度から高校というふうに、法教育が正式に学校教育の中で取り入れられるようになりました。
われわれ弁護士も出前授業と称していろいろな学校に行きますが、一番人気は何と言っても刑事模擬裁判です。教室を法廷に見立てて、生徒が弁護士・検察官・裁判官役を演じて、皆で結論(判決)を考えたりする体験型の授業で、いつもたいへん盛り上がります。
第一東京弁護士会では、全ての教材が法教育委員会作成のオリジナルで、弁護士による実演を収録したⅮⅤⅮ教材も用意しています。
もちろん、刑事模擬裁判だけではなく、18歳以上の選挙権が認められるようになった後には、主権者教育というニーズに合わせた教材(例:地域における特定の問題に関して様々な立場の人の意見を聴き、生徒がグループワークでルールやマニフェストを作成するというものなど)も用意しました。
今後は、民法改正により成人年齢が18歳になりますので、それに合わせて消費者教育なども今まで以上に必要になってくるものと思われます。
また、2022年度には高校の新学習指導要領により、社会への参加を学ぶ「公共」科目が新設されますので、ますます法教育への注目度が高まることでしょう。
もうすぐ夏休みですが、日弁連では「高校生摸擬裁判選手権」が行われ、各地の弁護士会では小中学生向けの「ジュニアロースクール」「子ども法律学校」などのイベントが行われる予定です。
こうして書き出してみると、幼いころから法教育に触れることのできる現代の子ども達が頼もしいような、うらやましいような。
これからも、われわれ法教育に携わる弁護士は、「法教育が当たり前にある社会」を目指して、時流に合わせながら、試行錯誤を繰り返しつつ、地道に活動していきたいと思っています。


 

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第55回 「新潟県弁護士会の法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
   新潟県弁護士会「学校へいこう委員会」副委員長
            三科 俊




新潟県弁護士会では、2012年度から「学校へいこうPT」を、2013年度から「学校へいこう委員会」を設置し、その名のとおり弁護士が学校へ赴き、出前授業をしています。この委員会ができるまで、法教育をメインで扱う委員会はなく、消費者教育は消費者保護委員会が、いじめ予防授業については子どもの権利委員会が行うなど、いわゆる縦割りで対応しておりましたが、この委員会ができた後は、学校派遣に関するものはこの「学校へいこう委員会」で対応しています。


当初、日弁連の弁護士学校派遣WGのパイロット事業地として始まった新潟県ですが、パイロット事業地ではなくなった現在でも、高校をはじめ、小中学校から多くの派遣依頼をいただいております。
 

また、新潟県弁護士会では、学校に限らず、PTAや教員の会合からの派遣依頼にも応じているのが特徴で、学校に関連する団体からの依頼であれば基本的に応じております。
 

出前授業の内容ですが、学校のニーズに合わせた授業を心がけています。少し前まではスマホ・SNSの問題点に関する授業依頼が多かったように思いますが、最近は投票年齢引き下げも影響してか、いわゆる主権者教育が増加傾向にあります。主権者教育といっても、模擬投票や模擬選挙をしたり、公職選挙法に関するクイズを出したり、リーダーについて選んでもらうグループワークをしたりと、内容は様々です。学校からのオーダーを受けて、担当弁護士が教員の先生方と相談しながら作り上げていきます。新潟県弁護士会の法教育
 

このような出前授業はまさに「弁護士が学校へ出向く」ものですが、反対に「児童・生徒の皆さんに弁護士に会いに来てもらう」というイベントもやっています。他の単位会でも多く実施されているジュニアロースクールを、新潟でも「ジュニアロースクールin新潟・三条・長岡」という形で毎年夏休みの期間に実施しています。今年もそれぞれ8月ころに実施予定です。
 

新潟県弁護士会は法教育分野ではまだまだ後進県です。今後の活動(私見を大いに含みます。)としては、学校派遣活動を軸に据えつつ、他会の法教育先進県を視察したり、教員の先生方との勉強会を実施したり、どんどん弁護士のスキルをブラッシュアップしていきたいと考えております。


以上


 

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第54回 「「想像力」を育む」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
   岡山弁護士会「県民ネットワーク委員会」委員長
            中畑 真哉




法教育は、法的なものの見方や考え方を身につけてもらうための教育だという言われ方をよくします。


この「法的なものの見方や考え方」というのは何でしょうか。「想像力」を育む


まず思い浮かぶのは、法律の条文をしっかり覚えて、それを駆使して日常生活のトラブル解決に役立てる力かと思います。もちろん、それも大事なことですし、法教育で身につけてもらいたい力の一つです。


ですが、子どもも含め誰もがスマホを持ち、いつでも何でも検索できる情報化社会の中では、情報には必要な時にすぐにアクセスできますので、細かな知識を覚える必要性は高くありません。また、得られた情報の結果、実際に法律を駆使してトラブルを解決する必要があると思えば、弁護士などの専門家に相談すればよいのです。その意味では、一般の人が日常生活で必要な法律の知識は、「何かおかしい。法律の問題のはずだから弁護士に相談しよう。」と思うきっかけとなるだけの最低限のもので足りるともいえます。


「法的なものの見方や考え方」として、より法教育で身につけてもらいたいのは、「多面的・多角的なものの見方や考え方」です。抽象的でわかりにくいと思いますので、誤解を恐れずにわかりやすい言葉で表現すると、「想像力」ということになるのではないかと思います。


何年か前になりますが、新聞の一面広告にこのようなものがありました。小さな赤鬼の子どもが泣きながら一人でぽつんとたたずむイラストの上に、「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」という台詞が書かれたものです。「しあわせ」をテーマに実施した新聞広告のコンテストの最優秀賞の作品だったようですが、なかなかのインパクトがありました。


この作品で感じる「そのような見方があったか」という視点こそが、法教育で育みたい「想像力」です。あらゆるものごとには、多面性があります。我らが岡山県民の英雄であり(余談ですが、つい最近、岡山空港の愛称も岡山桃太郎空港に決まりました。)、疑いようのない正義の味方のはずだった桃太郎ですら、赤鬼の子どもの視点では、幸せを奪った「悪」になってしまうのです。


桃太郎の例は、極端ですが、ややもすると、我々は、自分にとって居心地のよい場所に視点を固定して同じところからの景色ばかりを見てしまいがちです。ところが、人は皆それぞれ人生経験や知識などを背景に、異なった価値観や思想をもっています。そのため、それぞれ視点は異なり見えている景色も少しずつずれていて当然なのです。


あらゆるものごとを見る際に、「あの人だったらどのような見方をするかな。」と想像力を働かせることは、多様な価値観を持つ人が尊重し合って共生していくためには非常に大切なことだと思います。


 

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第53回 「正解はない!」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
  京都弁護士会「法教育委員会」委員
前田 宏樹




「正解なんてないよ」
私は、出張授業の際、敢えてこの言葉を頻発します。


「正解はない!」思い返してみると、私は中学生や高校生だった頃、授業中に間違った発言をすることが怖くて、教師の質問に対して自ら挙手して答えるということはほとんどしませんでした。


法教育では、様々なテーマを取り扱います。知識や経験を伝えるだけではなく、様々な立場の見方や考え方について、各々のメリットやデメリットを検討したり、自分と異なる意見との間で共通点や相違点を考え、合意を形成する授業もあります。そのような授業では、唯一の正解というものはありません。自分なりの意見、そしてその意見を支える論拠を組み立てることが重要なのです。


出張授業に行くと、弁護士の質問に対して何も答えない生徒が時折います。しかし、その生徒の目を見ると、一生懸命何かを考えていることは分かるのです。きっと、かつての私のように、「今考えていることを言って、それが間違いだったらどうしよう。恥ずかしい。」と思ってしまい、自分の意見を言い出せないのだと思います。そんな時、私は「この問題には、たった一つの正解なんてないんだよ。今君が考えていることを言ってみて。」と言います。すると、とても素晴らしい意見が返ってきます。時には、こちらが予定していなかった視点からの意見もあります。仮に、本筋から離れてしまっている意見であっても、そのような見方や考え方も一つの意見なのです。そのような考え方が、他の意見のデメリットを気付かせたり、逆に、その論拠を補強することもあります。
私は、生徒一人一人が自信をもって自分の意見を発言できるようになってもらうことを目指して出張授業に臨んでいます。しかし、それと同時に、自分の意見に対する懐疑的な目と、他人の意見を聴く耳も持って欲しいと思っています。なぜなら、自分自身の意見も「たった一つの正解」ではないのですから。


高等学校学習指導要領における新科目「公共」の導入、成人年齢の18歳への引き下げ案等、若者の社会形成への参画が求められています。あるいは、大学入試センター試験に代わる大学入学共通テストにおける思考力、判断力、表現力の重視もベクトルは同じかもしれません。法教育は、そのための素地を養うものでもあります。
とはいえ、法教育は、まだまだ発展途上です。「教育」と銘打つ以上、「たった一つの正解」はありません。教師と弁護士が互いに自分の意見を出し合い、協働しながら、これからも作り上げていきたいと思います。

 

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第52回 「福島県弁護士会の「市民」のための法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
  福島県弁護士会「市民生活被害対策委員会」委員
岩﨑 優二



福島県弁護士会においては、いじめ防止授業および消費者教育出前講義を中心に、年間約5000人(2016年度実績)の児童、生徒、学生を対象に学校派遣事業を行っています。消費者教育および法教育を担当するのが、私の所属する「市民生活被害対策委員会」で、私自身も年間5校前後で出前講義を担当しております。次年度からは、いじめ防止授業の担当者にも登録し、こちらにも出前する予定です。


福島県弁護士会において現在のところ法教育プロパーの事業は少ないのですが、学校派遣事業自体は、単位会の規模に比して充実しているものと自負しております。そして、私自身は、「弁護士が授業をする以上、それはテーマが何であっても『法教育』でなければならない。」と考え、知識教育にとどまらない授業を心がけております。よく、いじめ防止授業を担当する弁護士が「弁護士がいじめ防止授業をする以上、それは人権教育でなければならない。」とおっしゃるのとも通じると思います。


私が法教育に関心を持ったきっかけは、消費者教育の研鑽のために参加した2012年度日弁連夏期消費者セミナーでした。同セミナーは「子どもをとりまく消費者被害~ネット社会における大人の役割~」がテーマでしたが、従来の消費者問題の範疇を超え、インターネット利用の危険性やその啓発・教育の在り方が議論され、私は、単なる消費者知識にとどまらない教育の必要性を痛感しました。福島県弁護士会の「市民」のための法教育そこで私が想起したのが、福島県弁護士会における担当委員会が「市民」生活被害対策委員会であることでした。これが「市民」のための法教育に関心を持つきっかけとなりました。


同年、消費者教育推進法が制定され、そこに「消費者市民社会」という用語が定義されました。また、消費者団体には、基本理念にのっとり、消費者教育の推進のための自主的な活動に努めるとともに、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場において行われる消費者教育に協力する努力義務が課せられました。弁護士会にも、これに準ずる努力義務が課せられているものと考えます。


「市民」のための教育において、弁護士、弁護士会に対する期待が高まっていることを感じます。その期待に応えるべく、自治体や関係団体、教育現場と協力しながら研鑽を積みたいと思います。


 

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第51回 「和歌山における法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
 和歌山弁護士会「法教育委員会」委員
津金 貴康



今回は、和歌山弁護士会における法教育の取組についてお話をしたいと思います。


和歌山弁護士会は従前より無料での講師派遣を行っていましたが、平成28年度より日弁連のパイロット事業地として、無料での講師派遣に一層力を入れています。学校から依頼を受け、裁判制度や弁護士の仕事内容、ルール作りや少年事件等のテーマの指定を受けて、弁護士を派遣して講義を行っております。平成29年には17か所で出張講義を行いましたが、特にいじめ問題やネットトラブルについての授業の依頼が多くありました。小学校の授業でもネットトラブルについての授業の依頼が多く、小学校のネットトラブルに対する危機意識を感じました。学校には授業後にアンケートをお願いしているのですが、「弁護士が話すことで生徒が重く受けとめてくれた。」など、ご好評を頂きました。


和歌山における法教育また、和歌山弁護士会では、平成22年度より高校生を対象にした「和歌山ジュニアロースクール」を開催しております。第2回目以降は夏休み期間中に実施されています。弁護士が被告人や弁護人や検察官等を演じて模擬裁判を行い、高校生が裁判員となって被告人が有罪か無罪か等を判断してもらうという企画です。高校生の皆さんには、裁判員裁判の雰囲気を体験してもらうとともに、裁判官、検察官、弁護士の仕事や役割について理解を深めて頂いています。また、他の高校生や裁判官・検察官・弁護士と一緒に事件について考えることで、自分で考える力を養うとともに、物事に様々な見方があることに気付くきっかけになっているのではないかと考えます。ジュニアロースクールについても、例年ご好評を頂いています。


その他、裁判傍聴会を実施したり、毎年夏季に日弁連が主催する高校生模擬裁判選手権の和歌山県からの出場校の支援を行っております。


和歌山弁護士会の法教育委員会は、自由で公正な民主主義社会の構成員である市民を育て、支援するための教育方策(法教育)の策定及び実践などの活動を行うこととされています。このような理念を多くの子どもたちに浸透させられるよう、これからも邁進していきたいと思います。

 

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第50回 「福井から発信! 童話劇での法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
福井弁護士会「法教育委員会」委員長
後藤 正邦



福井弁護士会では、2004年から毎年、「ジュニア・ロースクール福井」と称する事業を行ってきました。これは、県内の小学校5年生から中学生を対象として、法教育の授業を行う事業です。毎年60人定員で募集していますが、もう何年も前から、広報開始からあっという間に定員に達する大人気事業になっています。   

福井地方裁判所にご協力いただいて行う裁判所見学も人気企画ですが、このジュニア・ロースクールの目玉は、童話(昔話)を素材にした劇と法教育授業です。   


これまでに扱ったものとしては、例えば、以下のようなものがあります。

♦「桃太郎」で考える配分的正義

鬼ヶ島から取り返してきた宝を、桃太郎たちは全部村人に返さないといけないの?いくらかの報酬はもらえない?犬、キジ、猿は?


♦「さるかに合戦」で考える契約

自分では、木の上に実った柿の実を取れないカニ。トラブル回避のためには、猿との間で、おにぎりと柿の種を交換するときに、何か約束をしておいた方が良かったのでは?


♦「わらしべ長者」で考える所有権

交換した物についてトラブルが起こったとき、誰が所有権を主張できる?


以上のものは、私たちの世界では、民事の問題として扱う事柄です。利害関係をどのように調整するのが一番公正かとか、後々のことまでよく考えて契約(約束)をしようとかいったことを議論していただくのです。

よく突き詰めて考えていくと一般の大人はおろか法律家でも難しい問題に、小中学生が非常にバランスの良くて道理の通った、しかも弁護士も驚くような結論と理由を指し示してくれる面白さがあります。


ほかに、刑事の問題は、1つだけご紹介します。

♦「かちかち山」で考える正当防衛

悪さをして柱にくくり付けられた狸が、隙を見て、お婆さんとお爺さんを痛めつけて逃げ出したとき、正当防衛は成立する?   


面白そうではありませんか?「かちかち山」の狸は、お話では悪者に違いないのですが、その狸のことを懲らしめるのに、どこまでのことが許されるのかという裏テーマがあるのです。普通のお話をひっくり返した視点で考え直すことができるのが、法教育の醍醐味です。


アリとキリギリス   最近何かと話題の「主権者教育」には、特に近年力を入れています。

♦「アリとキリギリス」で考える立憲民主主義

女王アリが専断するアリの社会に異変が起こる。さて、多数決に参加できるのは誰?それから、多数決で決めたことが一部の人を虐げることになるときも、その多数決で決めたことは守るべきなの?

♦「ヤマタノオロチ」で考える統治機構

横暴をふるっていたヤマタノオロチを追い払った後の村。これまでヤマタノオロチに従っていれば良かった村人たちが、自分たちの村の治め方について悩んだ結果、作り出した仕組みとは?

♦「はだかの王様」で考える民主制と表現の自由

専横を極めていた王政が打ち倒されることになった、民衆の一言の大切さとは?インターネットも新聞も何もかも禁止されることの問題は?   


私たちの社会のあり方をどのようにしていけば、もっと私たちの声が社会問題の解決や政治に反映できるのか?また、ついつい多数決で決めたことは絶対だと思いがちですが、その多数決に至るまでに経るべきプロセスや、個々人の権利とは何か?そして、多数決で決めたことでも、高次の法に反するということがあるのではないか?

そのような、立憲主義、民主主義の根本的な価値を見つめなおす授業を行っています。教科書に書かれたキーワードを追いかけるのではない、本当の主権者教育の授業が、ここにはあります。


特に「アリとキリギリス」については、2016年10月に行われた日弁連人権擁護大会のシンポジウムで紹介したところ、瞬く間に、全国紙や、全国の弁護士会(法教育委員会や憲法委員会など)から注目され、全国に授業実践が広がっていきました。      


今後も福井弁護士会法教育委員会の活動・授業に注目していただきたいと思いますが、これは全国各地における取組みの一端をご紹介したに過ぎません。   

ぜひ、皆さんの地元の弁護士会、そして日弁連などの取組みにもご注目、そしてご参加ください!小中学生や高校生はもちろん、一般の方々にとっても、新しい学びと気付きがあると思いますよ。


 

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第49回 「いじめ防止授業について思うこと」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

滋賀弁護士会「法教育委員会」委員

 木下 康代



1年前のことです。娘が「Aちゃんとお話しできない」と言い出しました。Aちゃんは、クラスの中で娘が一番好きな女の子の友達です。ケンカでもしたのかと思い事情を聞くと「わたしはしゃべりたいけど、Bちゃんがしゃべっちゃダメって言う」「だからお話できない」ということで、私は唖然としました。なぜならその当時、娘は保育園の年中でした。4歳児クラスのやり取りです。
 

こんなに幼いころから、単なるケンカではなく「いじめ」の芽があるのかと深く考えさせられた出来事でした。娘と話してAちゃんと変わらず話すということで娘は納得してくれましたが、親子で率直に話せるのも幼いうちだけです。家庭での教育ももちろん大切ですが、それだけでは限界だろうと思いました。

 

そんな中、今年度に入り、大津市と滋賀弁護士会との間で、希望のあった大津市の小中学校に対して弁護士を派遣して「いじめ防止授業」を行う事業を開始することになりました。今まで、滋賀弁護士会独自の事業として、滋賀県内の中学・高校に弁護士を講師として派遣する出張授業はしていましたが、「いじめ防止」を正面から取り上げるのは初めてです。
 

いじめ防止授業に特化した勉強会や研修をしたり、専用のメーリングリストを立ち上げて意見交換をしたり、当会なりに真剣に準備をして取り組んでいます。弁護士がいじめ防止を語る意味とはやはり、事例を交えたリアルな話ができるということと法的な知識、あとは「弁護士」の存在そのもののインパクトだと思います。
第49回 「いじめ防止授業について思うこと」 

今年度の授業の申し込みは、小中学校合わせて47校、のべ160コマ以上の依頼がありました。来年度以降は市の予算の関係で何校に実施できるか分かりませんが、とりあえず今後4年間は同様の事業を実施することは決まっています。


学校現場から返ってくるアンケートもおおむね好評で、いじめが犯罪になるという指摘や自死した生徒の遺書の読み上げを行うことが弁護士ならではと感じていただけているようです。

 

家庭や学校(あるいは保育園・幼稚園)でも「いじめは駄目だ」ということを幼いころから繰り返し話します。けれども、親や教師の立場から話すと、人情論になりがちです。


当会の「いじめ防止授業」の取り組みは、まだ始まったばかりですし、現在は大津市との間の取り組みであり、今後どうなっていくのかは分かりません。けれども、親や学校とは異なる目線から、いじめの芽が大きくならないうちに、いじめ防止に向けた取り組みを続けていきたいと思っています。


 

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第48回 「文部省著作教科書「民主主義」のご紹介」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

岩手弁護士会「法教育に関する委員会」委員

 畠山 将樹



このコラムでは、各地の法教育の実践内容やその質を高める努力がなされていること、その他いろいろな視点から法教育の充実に関して述べられていて、私はとても勉強になっています。私自身も法教育の充実について考える日々を送っていますが、その中で非常に強い刺激を受けた本がありますので、ここで紹介させてください。


それは岩手弁護士会で法教育委員長を務められる先生からお勧めしていただいた、文部省著作教科書「民主主義」という本です。1948~1953年まで中学・高校の社会科教科書に使われていたものです。株式会社径書房が1995年に復刻しており、更にそのエッセンスをまとめたのが、西田亮介編「民主主義 〈一九四八‐五三〉中学・高校社会科教科書エッセンス復刻版」(幻冬舎新書)です。


とてもとても興味深い内容ばかりなのですが、ほんの一部だけ、抜き出して内容を紹介させていただきます。文部省著作教科書「民主主義」のご紹介


「すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である。」


「たいせつなのは、民主主義の精神をつかむことである。なぜならば、民主主義の根本は、精神的な態度にほかならないからである。それでは、民主主義の根本精神はなんであろうか、それは、つまり、人間の尊重ということにほかならない。」


「人間が人間として自分自身を尊重し、互に他人を尊重しあうということは、政治上の問題や議員の候補者について賛成や反対の投票をするよりも、はるかにたいせつな民主主義の心構えである。」


「民主主義の反対は独裁主義である。」、「民主主義の仮装をつけてのさばって来る独裁主義と、ほんものの民主主義とをはっきり識別することは、きわめてたいせつである。」、「独裁主義は、・・・今度は誰も反対できない民主主義という一番美しい名まえを借りて、こうするのがみんなのためだと行って、人々をあやつろうとするだろう。」、「それを打ち破る方法は、ただ一つである。それは、国民のみんなが政治的に賢明になることである。人に言われて、その通りに動くのではなく、自分の判断で、正しいものと正しくないものとをかみ分けることができるようになることである。」


読み易いけれども格調高い文言で、今なお色あせない、むしろ現代のためにあるような内容が詰まっています。私は、このような本が、戦後まもなく日本の教科書として使用されていた事実に衝撃を受けました。私は、この本で述べられていることをしっかりと噛みしめ、肝に銘じながら、法教育の更なる充実について考えていきたいと思っています。皆様も是非読んでみてください。



 

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第47回 「高校生模擬裁判選手権2017」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

東京弁護士会「法教育委員会」委員

 加藤 潤



真夏の陽射しが降り注ぐ8月5日、今年も高校生模擬裁判選手権が、関東・関西・四国・中部北陸で一斉に開催されました。


この選手権については、これまで当コラムでも何度か取り上げられているところですが、高校生が各校対抗で、本物の法廷を舞台に、検察官役・弁護人役となって刑事裁判を実演するというもので、今年で第11回目を迎えました。
日弁連の主催で、最高裁、法務省・検察庁、各地の地裁・弁護士会連合会・弁護士会の共催により開催されています。


出場する高校生は、部活動やテストなどで多忙の中、「支援弁護士」・「支援検事」と呼ばれる実務家の支援のもと、試行錯誤を重ねながら尋問事項や論告・弁論を入念に作り上げ、本番当日を迎えます。
そして当日は、支援弁護士・保護者・教員・過去に出場経験のある先輩卒業生など多くの方々が傍聴に訪れ、高校生を応援します(傍聴は無料で、どなたでもご参加が可能です。)。
昨年度は、ある参加校にマスコミが密着取材し、その準備や本番での様子がテレビ放映されるなど、年々選手権の認知度は高まってきています。学校の申込みも増加しており、地域によっては予選を実施するところも出てきました。


一方、高校生の熱戦を審査する審査員は、法曹三者・マスコミ関係者・学識経験者で構成され、裁判長役は弁護士が担当し、証人役・被告人役も、本番に備えリハーサルを重ねた弁護士が担当するなど、この選手権は実に多くの方々のご協力によって成り立っています。
当委員会も、模擬裁判選手権チームを組んで会議を重ね、教材作成(今年は薬物事犯)や審査員等の方々との打合せ、会場の下見等々、準備を進めます。

そして本番当日には、全国各地の委員が運営スタッフとして大会に駆けつけます。


今回、私は東京地裁で行われた関東大会に運営スタッフとして参加したのですが、関東大会では、今年は「高校生が主役」という原点に改めて立ち返り、刑事裁判という題材を扱う中でも、参加した高校生により楽しんでいただけるよう、いわゆる「夏フェス」を意識してみました。


参加校の入場や表彰式などで、高校生が好きな(だと思われる)BGMをかけて場を盛り上げたり、参加校紹介では、学校のプロフィールのご紹介のほか、参加生徒に登壇していただき、意気込みを語っていただいたりと、高校生主体の楽しい雰囲気を心がけました。


また、例年は、当日の高校生の実演について、素晴らしかった点や改善点等をお伝えするため、大会が終わった後に、学校に書面で講評を送付していたのですが、今年は運用をガラリと変更し、当日の試合終了後に、参加生徒と審査員の方々が法廷ごとに車座になって直接講評を行う、という方式にしてみました。
講評の声が聞き取りにくかった等のご感想も頂いており、今後改善すべき点は多々ありますが、当日は熱気あふれる質疑応答が繰り広げられ、ときには大きな笑い声もあり、かなり盛り上がっている様子でしたので、方向性は間違っていなかったように感じました。高校生にとっては、直接その場で審査員の方々から様々なお話が聞けて良かったのではないでしょうか。


高校生模擬裁判選手権試合結果ですが、今年は関東大会では史上初となる、2校の同点優勝という結果となりました。
毎年のことではありますが、優勝校や個人賞を受賞した生徒の喜びだけでなく、惜しくも受賞を逃した生徒の悔し涙を見るにつけ、皆さんがこれまでいかに真剣に取り組んできたのかを、改めて思い知らされます。運営側としては、やりがいとともに、この選手権をより実りあるものにしていくためにどうすればよいか、責任を持って考えていかなければならないと強く感じます。


今年で第11回目を迎えたこの選手権、乗り越えるべき様々な課題はありますが、今後もっと開催地や参加校を増やして裾野を広げ、盛り上げていけたらと思っています。
そして、この選手権が高校生にとって、刑事裁判の分野にとどまらず、社会の諸問題をより主体的に捉え、自ら判断し積極的に関わっていくきっかけとなり、彼らの未来に少しでも役立つことができたら、これほど嬉しいことはありません。


 

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第46回 「裁判傍聴のススメ」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

鳥取県弁護士会「法教育委員会」委員長

 中永 淳也



鳥取県弁護士会・法教育委員会の法教育のメニューのひとつに、「裁判傍聴会」がある。
もちろん裁判は基本的に誰でも傍聴可能だが、いきなり裁判所に行って法廷の傍聴席に座るというのは結構ハードルが高いし、その手続で何をやっているのかもよく分からない。
そこで、「裁判傍聴会」では、傍聴に適した一回結審の刑事事件をピックアップした上で、参加者が傍聴に入る前に必要な解説をしたり、さらに、傍聴後にも質疑応答の機会を設けるなどして、初心者も裁判手続を理解しやすいような工夫をしている。
ただ、一定の知識やスキルを持ち帰ってもらう出前授業とは異なり、裁判の現場を、そのまま肌で感じ取ってもらうことにこそ大きな意義があるのだと思う。


先日、当会が毎年開催している「夏休み法廷傍聴会」があり、私も、法教育委員の一人として様子を見てきた。


当日集まったのは、子どもたち(小・中学生)と、その保護者たち十数名。


傍聴の対象になった刑事事件は、コンビニでの万引きで、追起訴なしの自白事件である。
裁判手続は滞りなく進み、情状証人の尋問や被告人質問を経て、感極まった(?)被告人が土下座して謝ろうとして裁判長に制止させられるなど、ちょっとした出来事はあったものの、無事に結審した。

傍聴後、子どもたちと話す機会があったので、以下のような話をした。


裁判傍聴

「―今日の裁判を見て、どうでしたか。

テレビや映画でやっている派手な法廷ドラマとは違った様子でしたか。
でもね、ちょっと地味かもしれないけど、こっちが本物なのです。


被告人は、砂を噛むような孤独の中で、どんな生活をしてきたのでしょうか。
万引きをして捕まった瞬間、どんな気持ちだったのでしょう。
今日の裁判で知人の証言を聞きながら、何を感じたのでしょうか。
いろいろ想像すると、法廷ドラマよりも、もっとリアルだと思いませんか。


今日、皆さんに見ていただいたのは、紛れもなく一人の人生です。
ここから、皆さんが、何かひとつでも感じ取ってくれたのであれば、
参加してもらってとても良かったと思います―。」


法廷傍聴会が終わって、蝉の声を聞きながら、事務所への帰り道。
今日の法廷傍聴会で何を学ぶかは、子どもたちの自由。でも、きっと何かを感じとって、ひとつ成長してくれたのだろうと思う。
それとともに、私は弁護士としていくつもの裁判を経てきたけれど、それからどれだけ学び、成長しているのかなと、ふと思った。


 

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第45回 「生徒たちが持っている力」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

山形県弁護士会「法教育委員会」委員長

 古城 博道


平成29年6月某日の午後、山形県内の某私立高校で主権者教育の出前授業が始まった。

参加者は、政治経済選択の3年生15人。卒業後の進路は、就職と進学が半々程度という話だ。

今日の授業は、弁護士会が用意した主権者教育授業「導入編」の1回目だ。

「導入編」は全3回コース。主な目標は、生徒が課題に対して自分の意見を表明できるようになること。第1回は、身近な課題について生徒一人一人が自分の意見を述べる弁護士との対話形式の授業、第2回は別の政策課題について生徒同士のグループ討論が待っている。

私たちは、当初、初めから生徒にグループ討論をやってもらおうと考えた。でも、考えてみると、生徒一人一人が、自分の意見を、ちゃんと根拠や理由付けをもって表明できるのだろうかと疑問を持った。そこで、まずはそこから始めようと考え直して、「導入編」を作った。


第1回のテーマは、「いじめ防止のため学校に監視カメラを設置することの是非」。資料を配布して、時間を与えて、生徒にその場で検討してもらう。

賛成派と反対派に分けて、それぞれの立場で意見を述べてもらう。

生徒グループディスカッション生徒一人一人との対話が始まった。

最初は資料を使えないけれども、話をしながら、一所懸命資料をめくる生徒。

資料にはないけれども、自分の経験を根拠にして、意見を述べる生徒。

発言が苦手そうだけれども、対話していくと、ボソボソと、でもちゃんと意見を言える生徒。

異なる立場の生徒の意見を聞いて、反論を試みる生徒。

対話の様子を見て要領を得て、しっかり資料を使って理由を述べる生徒。

休憩時間をはさんで、生徒達との対話は続く。

時間がかかったが、全員が、他の人と違う自分の意見を述べた。

私たちは、みんな、できるんだなと実感していた。

同時に、生徒の意見が用意した資料の内容に大きく左右されるので、考えさせる材料の吟味が大事だなと反省させられていた。


対話の終わりの方で、一人の生徒が、たしか、こんな発言をした。

「自分は、カメラの設置が賛成の側だけど、やっぱり嫌なところもあるんで、考えるときは、反対の人のことも考えないといけないと思う。」

私たちは、それを聞いて共感して、そして、後からすごく感心した。そうした討論のルールに通ずる発言はなかなか出てこない、次の目標かなと思っていたからだ。


生徒たちは、弁護士から教えられなくても、討論になったら異なる立場の意見も考えるバランス感覚をもっていて、言葉のやり取りを繰り返す授業時間の中で、自然と言葉に表すことができるものだと思えた。

教えるのでなく、引き出してあげられたら。

私たちは、手さぐりで、少しずつ、主権者教育に関わっていきたいと思っている。


 

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第44回 「教員セミナーのグループワークのご報告」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

青森県弁護士会「法教育に関する委員会」委員

 鍋嶋 正明


2017年5月20日(土)に、愛知県名古屋市の愛知県弁護士会館において、法教育教員セミナーが開催されました。

法教育教員セミナーとは、学校の先生方などの教育関係者と弁護士がともに法教育について考えるイベントであり、毎年、東京都の弁護士会館で開催されていました。

今回は、初めて東京以外で開催され、愛知県弁護士会などのご協力のもと、名古屋市で開催されました。

私は、青森県から飛行機で参加しました(青森空港から県営名古屋空港へは直行便がありましたが、私は名古屋市には初めて行きました)。


今回の教員セミナーは、福井大学の橋本康弘教授の講演と日弁連の野坂佳生弁護士による授業実践例の概要説明などからなる第1部と、中高4グループのグループワークと模擬調停の体験からなる第2部から構成されていました。

当日の私の担当は、中学生向けの授業案を作成するグループワークの進行役(司会)でした。

教員セミナーのグループワークは、弁護士会が用意した主権者教育の教材をもとに、法教育の視点から考える主権者教育の授業案を学校の先生方と弁護士の共同で作成するというものです。

教員セミナー

私が進行役を担当したグループワークには、名古屋市内の中学校の社会科の先生方4名と日弁連の弁護士3名、愛知県弁護士会の弁護士1名、それに私と書記役の弁護士1名が参加しました。

中学生向けの授業案を作成するグループワークの題材は、地域の課題について、生徒に事前課題として考えてきてもらい、それを模擬投票に結び付けるというものでした。

私が進行役を担当したグループワークに参加された中学校の先生方は、みなさん法教育に非常に熱心で、様々なご意見を出していただきました。

中学校の先生方からは、生徒に一つ一つきちんと理解してもらうことを重視し、目的を持って丁寧に授業を進めたい意向が伝わってきました。弁護士と現場の先生方との視点の違いも分かり、勉強になりました。



グループワークは2時間であり、参加者はみな議論に積極的に参加することができ、議論は白熱しました。

作成された授業案は3時間構成で、その骨子は、生徒が事前に考えてきた地域の課題について、1時間目で全生徒に発表してもらい、

①1時間目のところで、1度投票を行う等し、3つの課題を選択する

②2時間目に、資料を用意して、各班で課題を1つ検討してもらう

③3時間目に、各班の検討結果を発表してどの課題を優先するか投票をする

というもので、非常にきれいにまとまったと思います。


終了後には、参加者のみなさまと懇親会を行い、楽しくお酒を飲むことができました。

私としては、進行役の大役を何とか終えることができ、翌日、ほっとして青森への帰路に就くことができました。

今後、今回の教員セミナーで経験したことを青森県での活動にも活かしていきたいと考えています。



 

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第43回 「エンタメ×法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
東京弁護士会「法教育委員会」委員

佐藤 大和

 

私は、今後の法教育の課題は「無関心の壁をどのように壊すか」「いかに記憶に残り、実践に繋げる法教育をすることができるか」だと考えています。近年、各弁護士、各弁護士会、日弁連らの活動により、法教育は着実に浸透しつつあります。しかしながら、他方で、各弁護士たちが精力的に活動をしても、法教育に対して無関心である児童や生徒らは一定数います。また、無関心とまではいえなくても、法教育の授業等がその場限りになってしまい、授業の内容が記憶に残っていない、さらには、その内容を実践している生徒や児童たちの数になると、かなり少ないのではないかと考えます。

 

となると、法教育は着実に浸透しつつあるため、今後は、法教育の活動の「機会」だけではなく、「質」をいかに高めていくのかが課題の一つになります。そして、この課題を解決するための最大の壁として「無関心の壁」と「実践の壁」の2つの壁があると思っています。前述のとおり、法教育の活動の機会は、年々着実に増えています。しかし、いかに法教育が広まっていても、それが弁護士らの自己満足では全く意味がありません。児童や生徒たちの心に残り、生徒や学生たちが実践することになって、初めて本当の意味の「法教育」になると思っています。

 

もっとも、これがなかなか難しいといえます。各弁護士により、法教育に関する教材や授業の試行錯誤が行なわれていますが、各弁護士によって法教育の考え方も想いも異なるため、実際に授業や教材を作ろうとした場合、良くも悪くも「最大公約数的に弁護士たちの視点から満足する教材や授業」になってしまうことも少なからずあります。これでは、生徒らにとって興味がある教材にはなりにくいといえます。もちろん、最近では、弁護士会によっては、新しい試みも増えていますが、まだまだ今までとは異なる層、もしくは新しい層の児童や生徒たちの「無関心の壁」は壊せないと思っています。

 

個人的には、今までにない新しい視点や切り口で、新しい層の生徒や児童たちの「興味の視点」に立ちながらも、もっと驚きがあったり、もっとワクワクしたりする授業や教材作りも大事だと思っています。例えば、最近、私は「エンタメ×法教育」の試みを始めています。具体的には、各教育機関などでタレントらと一緒に法教育の講演をしたり、自作のオリジナル教材では漫画を入れたりし、今までの層とは異なる生徒や学生らが興味を持ちそうな内容の授業や教材作りに挑戦しています。直近では、主権者教育ではありますが、元SKE48のアイドルやアニメの声優の方々と一緒に高校で主権者教育の講演(シンポジウム)も行いました。アンケート結果をみる限りでは、生徒たちにとって大好評だったといえます。しかし、このような取り組みでも、まだまだ不十分であると考えています。エンタメ×法教育以上の私の試みは記憶に残る法教育ではありますが、生徒や児童たちの実践に繋げられているかというとまだまだ改善の余地があります。

 

私は、今後も法教育の機会を増やしながらも、質を高め、生徒や児童たちに実践してもらうためには、従来の法教育の活動内容を大切にしつつ、同時に新しい視点や切り口で常にチャレンジをすることを恐れないことが大事なのではないかと思っています。そして、今までとは異なる層の生徒や児童たちにも法教育を伝えるために、従来とは異なるアプローチも必要だと考えます。具体的には、法教育をテーマにしたテレビ、小説、漫画・アニメ、ドラマ化など、様々な媒体からアプローチすることも今後の課題になるでしょう。私自身、今後も、新しい時代の新しい法教育を生み出していきたいと考えています。

 

 

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第42回 「弁護士バッジのチカラ~法教育事業へ積極的なご参加を~」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
滋賀弁護士会「法教育委員会」委員

杉本 周平


弁護士バッジのチカラ高校3年生だった1997年秋、私の通う高校に、卒業生である故・原健先生(京都弁護士会)が訪問され、法学部への進学を希望する生徒を対象とした講話をされたときのこと。原先生は、「これが弁護士のバッジです」と、胸につけていたご自身の弁護士バッジを外して、私たちに手渡されました。法曹志望だった私は、初めて手にした弁護士バッジにいたく感激し、時間をかけてじっくりと眺めていました。


講話が終わった後も、原先生は、控室を訪れた私に、弁護士の仕事のことや、ビアガーデンでアルバイトをしながら司法試験の勉強をしていたことなどをざっくばらんにお話されました。バッジに触れただけでなく、弁護士と直接会話ができたことが嬉しくて、そのときのことは今でも鮮明に覚えています。


時は流れて2010年4月。法教育のホの字も知らなかった私が、滋賀弁護士会の法教育委員長に任命されてしまいました。当時の滋賀弁護士会は、近畿2府4県の弁護士会の中で唯一「出張授業」や「ジュニアロースクール」といった法教育事業を実施しておらず、どうするべきか悩んでいました。


そのとき、ふと、原先生のバッジを手にし、感激した高校時代の自分を思い出しました。「滋賀の生徒たちにも、原先生と同じことをしてみたい」「あのときの自分のように、弁護士と話ができたというだけで、喜んでくれる生徒がたくさんいるはずだ」という気持ちが湧き上がってきました。


こうして、滋賀弁護士会では、意欲のある若手弁護士を集めて、ゼロから手探りの状態で法教育事業をスタートさせることになりました。開始初年度(2011年度)は3校で7コマだけだった「出張授業」も、2015年度には28校で95コマの授業を実施するに至りました。授業を担当した弁護士も、学校からの要望に応じて、それぞれ個性的な授業を実施しており、弁護士から直接法律や仕事の話が聞けたとあって、教員の方々や生徒たちからの評判も上々です。


この他、2012年8月からは、滋賀県内の中学生を対象に「ジュニアロースクール」を実施し、今年で6回目を迎えます。毎回、弁護士だけでなく、若手の裁判官・検察官にも参加してもらい、法曹三者の仕事に関する授業、大津地裁の法廷見学、法曹三者を囲んでの昼食会なども行っています。参加する生徒たちも、初めて出会う法曹三者や、初めて入る法廷に大はしゃぎの様子で、大変有意義な時間を過ごしています。


そして、私が「出張授業」を担当するときは、原先生と同様に、必ず自分のバッジを生徒全員に手渡して見せるようにしています。また、授業が終わった後も、時間が許す限り学校に残り、生徒たちからの質問を受けるようにしています。授業中は興味のなさそうな顔をしていた生徒が、後で質問や相談に来ることもあります。


弁護士と直接ふれ合える機会は、私たちが想像する以上に、生徒たちにとって印象深いもののようです。少なくとも、原先生のバッジを手にした私が、13年後に滋賀弁護士会で法教育事業をスタートさせるくらいのチカラを発揮するのです。「出張授業」や「ジュニアロースクール」をきっかけに法曹を志し、将来、法曹界で大活躍する後輩もきっと現れることでしょう。


これまで法教育とは縁のなかった弁護士のみなさんも、是非、地元弁護士会の法教育事業へ積極的にご参加いただき、各地を大いに盛り上げていただけるようお願いします。とりわけ、ベテランの先生方にも、学校やジュニアロースクール会場を訪れて、ご自身の貴重な経験を生徒たちに直接お話していただきたいと思います。弁護士が真剣に話をすれば、生徒たちも真剣に話を聞き、最後はとても喜んでくれるものですよ。


 

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第41回 「日本最北の地での法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

道弁連「道弁連法教育連絡協議会」委員
旭川弁護士会「法教育PT」委員

中嶋純

旭川弁護士会で初めてなされた法教育の活動は、2012年2月18日に行われた第1回刑事模擬裁判になります。参加校3校、参加人数21名と小規模なものでした。

きっかけは、前年度の札幌で行われたジュニアロースクールの見学に来ていた旭川の高校の先生と旭川弁護士会所属の先輩弁護士が意気投合し、「旭川でも模擬裁判をやりましょう!」と盛り上がったことでした。

当時、旭川弁護士会では、法教育を扱う委員会やプロジェクトチーム等の組織はなく、法教育をやりたいという熱意をもった先輩弁護士1名が単独で活動している状態でした。新人弁護士であった私は、法教育という単語すら聞いたことがありませんでしたが、楽しそうに活動する先輩弁護士に引っ張られて法教育の活動を始めたのです。ところが、第1回の刑事模擬裁判を開催した後、先輩弁護士は、「中嶋。後は頼んだ。」といい、旭川から日本最南端の沖縄弁護士会に登録替えしてしまいました。

残された私は、学校の先生から次年度も是非模擬裁判を開催してほしいというお話を頂いたこともあり、学校の先生2名と協働し、次年度、第2回の模擬裁判を開催することができました。以後、毎年1回のペースで刑事模擬裁判を行い、本年2月、第6回の刑事模擬裁判を開催したところです。

参加頂いた高校の先生に他校の先生を紹介いただき、直接営業活動を行うなどして、参加校や参加人数は徐々に増えていきました。ちなみに、本年度は、参加校4校、43名の生徒の方に参加頂きました(昨年度は92名の生徒の方に参加頂いています。)。最近では、刑事の模擬裁判以外にも、学校に赴き、憲法の話やSNSの危険性等に関する講演を行ったり、18歳の選挙権を題材としたシンポジウムを開催する等、旭川弁護士会での法教育に関する活動は確実に増加しています。これらに対応するため、旭川弁護士会でも法教育プロジェクトチームを立ち上げ、現在、8名の委員が同チームに所属し、活動を行っています。

旭川では、学校に行くのが好きな弁護士と熱心な学校の先生が協働して法教育の活動を行ってきました。活動の内容にも先生の意見を積極的に取りくんできました。例えば、刑事模擬裁判では、先生から、「生徒に自分の意見がいかにかわりやすいものなのか、他人がいかに人の意見により考えが変わるのかを知ってほしい。」との要望が出たことから、机の上にオセロの駒を置いて、被告人が有罪と思うときは黒、無罪と思うときは白を表にするようにし、考えが変わったときは駒を裏返すということをしています。これにより生徒の考えが変わったことがすぐにわかるようになりました。また、生徒に自分の主張をしっかりできるよう訓練したいとの要望を頂き、各校で1名ずつ、感想発表の場を設けたり、将来法曹を目指す生徒のために、弁護士が後片付けをしている最中にフリータイムで質問・雑談ができる機会などもつくっています。第41回「日本最北の地での法教育」

学校への出前授業も学校の先生から授業案を頂き開催させて頂いています。シンポジウムも学校の先生からお話を頂き、先生と弁護士と新聞社でシンポジウムの内容を考え、開催したものです。

このように法教育の歴史は大変浅く、弁護士も手探りで行っている状態です。なので、難しい知識はいりません。生徒に学びの機会を与えたいとのことでしたら、是非、お気軽にお声掛けください。一緒に法教育をつくっていきましょう。

 

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第40回 「情報が錯綜する現代社会にこそ必要な法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

福岡県弁護士会「法教育委員会」委員
福岡県弁護士会筑後部会「法教育委員会」委員

廣津洋吉

昨今、インターネットやスマートフォンを利用していると、ひとつのニュースについて、新聞や雑誌が作成した記事のみならず、個人の記者(プロなのか素人なのかも不明)が投稿した記事を目にする機会が増えたように思えます。また、Facebook等のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も普及してきたことから、記事に関する様々な人からのコメントもよく目にします。このように、現代はまさにこれまで以上に情報が錯綜した社会といえるのではないでしょうか。そのような中で、錯綜した情報に飲み込まれて思考停止となることがないよう、情報を整理し、問題を多面的に分析する能力を備えることが必要となっているように思います。このような能力を備えるために、法教育は必要なものだと考えます。

すなわち、法教育とは、子どもたちに、個人を尊重する自由で公正な民主主義社会の担い手として、法や司法制度の基礎にある考え方を理解してもらい、法的なものの見方や考え方を身につけてもらうための教育をいうと言われています。そして、そもそも「法」というものが、異なった価値観を持った人々が意見を調整しながら作ったルールですから、「法」の基本的な考え方を理解することは、そもそも社会には多様な価値観が存在するということを知ることにもなりますし、ものごとを多面的に分析する能力を身につけることにもつながるものと考えられます。

法教育コラム画像

例えば、日弁連が主催している高校生模擬裁判選手権大会においては、ひとつの模擬刑事裁判において、高校生に検察官あるいは弁護人の立場に立ってもらい、それぞれの立場から証拠をもとに意見を述べてもらうということをやっています。検察官の立場に立った高校生は、たとえ個人的な意見としては無罪であると考えたとしても、大会の中では有罪という意見を説得的に論じなければなりません。このような体験は、立場が違えばものの見方が異なるということ、多様な価値観があるということを実感できるものだと思います。 日弁連を始めとして、各単位会の法教育委員会においては、学校への出前授業、ジュニアロースクール、教員セミナー等を実施して法教育の普及に努めています。このような法教育の取り組みにご興味がおありであれば、是非お気軽にご参加ください。心よりお待ちしております。

 

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第39回 「私と法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

茨城県弁護士会「市民のための法教育委員会」委員

渡部俊介

私と法教育の出会いは十年ほど前に遡ります。

当時私は筑波大学に通う学生でした。私が大学三年生の時に、大学のゼミの先生に、茨城県弁護士会のおこなっている「夏休み子ども法律学校」の見学に来ないかと誘われました。私は何にでも興味を持つ性分でしたから、すぐに参加を希望しました。授業後の懇親会でおいしいものをごちそうになれるのでは、と期待していたことも否定はできません。

この時に私に声をかけてくれたのが、法教育界では知る人ぞ知る、茨城県弁護士会の根本信義先生でした。当時の私は法教育のほの字も知らず、根本先生が日本の法教育をリードする有名な先生だとは全く知りませんでした。

私がお邪魔した時に水戸で子ども達に授業していたのは、こちらも、法教育界では知る人ぞ知る後藤直樹先生でした。このとき後藤先生は、正義の話をされていました。正義は、公平的正義、配分的正義、匡正的正義に分類できること、それぞれの正義がなぜ必要なのか、どのような場面で必要なのか、わかりやすくお話されていました。

この授業において、今まで生きてきて、自分が考えた事も無かったような視点や、自分がうまく言葉に出来なかったアイディアが示されたりということを体験しました。子ども達の自由で鋭い発想にもたくさんの刺激を受けました。

そして、自分も弁護士となって、こういうことを子ども達に教えてみたい、いや、子ども達だけというのももったいない、大人にもいろいろな考え方を知ってもらったり、考えてもらう機会を作りたいと思うようになりました。

法教育コラム画像

こうして私は十年前に法教育に出会い、「弁護士になって法教育に携わりたい」という夢をもつようになりました。この時の子ども法律学校の打ち上げで、茨城県弁護士会の先生たちに「弁護士になって茨城県弁護士会に入って、法教育をやりたいので、歓迎してくださいね。」と話していたのですが、幸いにもその夢が実現しました。

現在でも、茨城県弁護士会では、春、夏、冬の年三回、小学生と中学生を対象に「子ども法律学校」を行っています。毎回、先生方が創意工夫された教材(ほとんどが新作)が使われており、10年前の私と同じように、参加してもらった子供たちには、素晴らしい体験をしてもらえているものと思います。

私自身は、まだまだ未熟ではありますが、これから、できるだけたくさんの人に、感動やわくわくを届けられるようにがんばっていきたいと思います。

 

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第38回 「学校の先生方と手を携えて」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

静岡県弁護士会「法教育委員会」委員

原 道也

学校の先生方とお話しする機会が増えています。

学校内での様々なトラブルについて個別に相談を受けることもありますし、先生方を対象にした講話や各種セミナー、イベントなどに呼んでいただくこともあります。
そんなとき、法教育のお話をすると、関心を持って聞いていただけることが多いです。

学校内での具体的なトラブルを巡る相談であっても、「お互いの認識が違っているところをよく確認した上で、双方が折り合える着地点を見つけて行けるとよいですね」といった、「法教育的」なお話になることがよくあります。

学校の現場における法教育の需要は、確実に高まっているように思います。

法教育は、自分と他者とのギャップを克服していこうとする(身の回りの紛争を主体的に解決しようとする)「意欲」と、そのための手法に関する「知識」と、その手法を実践するために必要な「技術」を養成しようとするものです。こうした法教育の様々なプログラムに参加して得られる大事な気付きのひとつは、「あなたとわたし、違っているように見えても、その本質においていかほどの違いがあろうか」という、他者との相違を寛容に受け止めることの大切さです。

法教育によって、より多くの子どもたちに、他者との相違を寛容に受け入れる気持ちが育まれ、さらにその相違を自律的に克服するための素養(リテラシー)を広めていくことが出来るならば、子どもたちが将来、より幸せな市民生活を送るに有効であることはもちろん、(すでにこのコラムの他の回でも触れられているように)いじめ予防にも資するところがあるはずです。

こうして考えてみると、法教育を行う「場」は、まずもって、学校であるべきです。

弁護士会館などを会場にして行う弁護士会主催のジュニア・ロースクールも、法教育の意義や楽しさを発信するのに大変有意義な機会ですが、授業を行う弁護士と参加生徒との関係はどうしても一回的のものになりがちです。

この点、学校では、先生方と児童・生徒との関係は継続的なもので、人格的な接触も密です。 校舎

同じプログラムを実施するについても、題材の選び方、クラス内での役割分担等、最大の効果を導くためのよりきめ細かな準備が可能になります。また、学校の先生方には、プログラム実施後の効果について、後々まで検証することも可能です。

今後、法教育をさらに発展させていくためには、まずは学校こそがこれを行うべき本来の「場」であることを前提とした上で、学校の先生方がより身近に法律家にアクセスできる体制を整えることが大切だと思います。

この点、日本弁護士連合会が推進する「弁護士学校派遣制度」の今後にも注目しています。

 

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第37回 「広島での取り組みのご紹介」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

広島弁護士会「法教育委員会」委員

前田 有紀

今回は、惜しくも日本一は逃しましたが、広島東洋カープの25年ぶりのリーグ優勝に沸く広島から、広島での取り組みについてご紹介します。

広島弁護士会の法教育委員会では、学校へ出前授業に行ったり、裁判傍聴セミナーを開いたりなど、1年を通じて様々な活動をしています。

中でも、最大のイベントは、毎年夏に開催しているジュニアロースクールです。10年ほど前から開催していますが、ここ数年は100名を超える中高生にご参加いただいています。ジュニアロースクールでは、身の回りの出来事について考えてもらうワークショップと模擬裁判を行っています。

使う教材は、毎年新しいものを弁護士が一から作っており、今年のワークショップでは、連絡網を題材に個人情報について考えてもらいました。

また、昨年のワークショップでは中学生と高校生で問題を変える試みをしました。

高校生には、「ヒロベンクエスト」と題して、架空の国のリーダーを選ぶことについて考えてもらいました。

中学生には、「ベビーカー」を電車内へ持ち込むことについて考えてもらいました。

中学生の中には電車内がイメージできない生徒さんもいるかもしれない、という心配もあって、みんなで「ベビーカー問題」を取り上げる映像ニュースを作りました。ニュースに登場してくるアナウンサー、リポーター、車掌さん、サラリーマン、子育て世代の人・・・演者も技術者も全員弁護士です。撮影当日の朝は、早い時間に集合したにもかかわらず、弁護士たちのテンションがいつもより高かったように思います。

ここ数年の模擬裁判では、弁護士が被告人役などを演じ、生徒さんたちに有罪か無罪かを考えてもらっています。また、生徒さんたちへは、「事件のあらまし」をお伝えするために、手作りの新聞記事を作成して事前に自宅へ送付しているのですが、年々、担当弁護士の画力が上がってきており、毎年の密かな楽しみになっています。

法教育コラム画像

ジュニアロースクールの最後には、生徒さんたちへ修了証書を渡し、クラスごとに記念撮影をしています。撮影中の生徒さんたちの楽しそうな笑顔を見て、私たち弁護士は来年も頑張ろう、と思うのです。

最後に…、最近の新たな取り組みとしましては、広島弁護士会内の他の委員会から声をかけていただき、共同で学校へ行くことがありました。今後は、弁護士同士の顔がわかる広島弁護士会の規模を生かし、横のつながりで何かできないか、考えていけたらとも思っています。

 

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第36回 「法教育って何をしてるの?」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

埼玉弁護士会「人権のための法教育委員会」委員

佐藤 有紗

今回の法教育コラムでは、私の所属する埼玉弁護士会での法教育の活動を中心にご紹介します。

埼玉弁護士会では、小学生対象の授業を中心として、出前授業やサマースクールなどの活動を行っています。

まず、出前授業についてご紹介します。

出前授業というと、いじめや憲法などの講義を想像される方が多いのではないでしょうか。しかし、当会の出前授業では、身近な問題についてグループディスカッション形式で話し合うという授業を主として行っています。

テーマとする身近な問題は、事前に児童に対し、児童自身が実際に抱えている問題についてアンケートを取り決定しています。そのため、グループごとに取り上げるテーマは異なるのですが、具体的には「小学校でもシャーペンを使いたい」「図書館にマンガを置きたい」「いじめをなくす方法を考えたい」などの小学生に身近な問題をテーマとしています。

授業では小学生5・6人がグループとなり、弁護士とテーマについて話し合いを行います。最近では話し合いの際に、画用紙と付せんを利用し、児童の意見を付せんに書き、画用紙に貼り付けて意見のグループ化をしたり、メリット・デメリットの表を作成するなどして話し合いが充実するような工夫を行っています。

次にサマースクールについてご紹介します。

サマースクールは、小学校の夏休みの時期に年1度、埼玉県の全小学校の児童を対象にして開催しています。平成28年度は、埼玉県のicon_page.png「青少年夢のかけはし事業(埼玉県ホームページ)」として実施されたこともあり、定員30名に対して147名もの応募をいただきました。

本年のサマースクールでは、小学生模擬調停をメイン企画として実施しました。模擬調停では、児童は調停委員役を担当し、クラスの席替えの方法をくじ引きで決めたいと主張するグループの代表者及び自由に決めたいと主張するグループの代表者とそれぞれ話し合いを行い、双方が納得するような解決案の検討を行いました。事実関係の整理や主張の整理、解決案の検討など、検討する内容が盛りだくさんの難しい事案でしたが、活発に意見が飛び交い模擬調停は大いに盛り上がりました。

私は埼玉弁護士会の法教育委員会において、企画を担当することが多いのですが、企画する際は、① 聞いて考える力を伸ばす②自分の意見を表明する力を伸ばす③相手の意見を踏まえたうえで、自分の意見を話す力を伸ばす、というこの3つの点を重視しています。私個人の考えとはなりますが、これらの3つの力は自己実現・自己統治を行う力に繋がる大切な力だと考えています。そのため、毎回企画する際は、どのような内容にすればこれらの3つの力を伸ばせるのだろうかと考えて企画を行っています。

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日弁連の法教育委員会では、海外の法教育についても調査し、日本での法教育がさらに充実した内容になるよう検討を行なっています。平成28年10月6日に開催されたicon_pdf.gif第59回人権擁護大会 (PDFファイル;2.11MB)では、ドイツで主権者教育の研究などをされているヴァイセノ教授をお招きし、ご講演いただきました。

このような海外の法教育についての調査検討内容を理解し、各弁護士会の活動内容を把握するなどして、今後もみなさまに充実した法教育をお届けできるよう努力して参ります。

以上堅苦しい内容となってしまいましたが、参加していただいたみなさまに楽しんでいただけるような企画をご用意しておりますので、ぜひぜひみなさま法教育の授業にご参加ください。

 

 

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第35回 「いじめ防止授業について」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

鹿児島県弁護士会「法教育委員会」委員長

山口 大観

第27回のコラムでも話題に挙がっていますが、「いじめ防止授業」について触れさせていただきたいと思います。

平成25年にいじめ防止対策推進法が成立し、施行されていますが、同法15条1項では「学校の設置者及びその設置する学校は、児童等の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図らなければならない。」とされており、各学校でもいじめの防止に向けた教育的取り組みが行われていることと存じます。

そこで、各地の弁護士会でも昨今盛んに取り組まれているところですが、鹿児島県弁護士会でも、子どもの権利委員会と協力して、小学校4年生から高校生までを対象とした「いじめ防止授業」への講師派遣の取り組みを行っています。
昨年度は、いじめ防止授業だけで小学校22校、中学校6校、高校1校に弁護士を講師として派遣しました。

学校からのご依頼の趣旨は様々ですが、いじめをすると法的にどんな罰を受けるのかを話してほしいという依頼を受けることもあります。
もちろん、いじめによって加害者の人生も狂ってくるという話をすることも、いじめを無くす上での一つのポイントだと思いますが、法教育委員会としては、もっと根源的なところの理解によるいじめ防止を目標としています。
いじめの防止のためには、個人の尊厳という価値を理解し、他者を尊重して共生することの重要性を考えさせることが大切ではないかということです。

手をつなぐ 弁護士会では、これまで法教育の普及に取り組んできましたが、法教育は、複雑化・多様化した現代社会において、多様な人々が共生するためのルールとしての法について、単に条文や制度の知識に止まらず、法の基礎になっている平等・公正・正義などの価値を理解し、法的なものの見方や考え方、人権感覚を身につけ、ひいては自分達で問題を解決する能力や態度を育むことを目的としているものと考えています。

その過程で、他者の立場にも立って多角的に物事を考えさせるという授業手法を用いることが多いですが、この手法を活かすことによって、いじめ防止授業においても、他者の立場や気持ちを理解させ、他者を尊重して共生していくことを目指す授業が可能になると思うのです。

鹿児島県弁護士会でも、引き続き、授業の質を高めて、いじめが許されないことを根本的に学んでもらう授業の提供に努力していきたいと考えております。
是非、弁護士会の講師派遣制度をご利用ください。

 

 

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第34回 「弁護士が学校に行くこと」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

富山県弁護士会 法教育に関する委員会担当副会長

谷口 恭子

弁護士として「学校」に出向き、生徒と向かい合うとき。それはとても緊張する瞬間である。

胸には弁護士バッジ。ひまわりと天秤の意味を説くときの清々しさ。弁護士バッジに恥じないように、自分自身は日々の仕事と向き合うことができているのだろうか。

ときには母校の後輩たちに自分の背中を見せることになる。生き方まで問われているような気恥ずかしさ。わずか50分の授業時間の中で、人生の先輩として、生徒の心に何かを残したい。50分ってこんなに短かったっけ。昔はずいぶん長く感じたのに。授業のあとも襟を正して、まっすぐに生きていこうと思う。

法律は六法全書だけではない、法律の背後にある考え方を知ってほしい。相手を受け入れ、理解し、自分の意見を伝えることができる力を身につけてほしい。

若いキラキラした瞳に真剣に向き合って、一点の曇りもなく、言葉のひとつひとつを噛みしめて口にする。言葉を発することに重い責任を感じる。

伝えたい思いはたくさんあるのに、うまく伝わったのだろうか。もっともっとうまく伝える技術がほしい・・・。

富山県弁護士会法教育に関する委員会は平成26年6月に発足した若い委員会です。委員会の前身のPTの時代に、富山県内の高校および特別支援学校に対する弁護士学校派遣をゼロから始めて4年目になります。

会員から学校派遣名簿登録弁護士を募り、会一丸となって手探りでここまでやってきました。

授業担当弁護士の弁護士としてのそれぞれの経験に基づき、また、学校の先生方の要望に一つずつ応えながら、丁寧に一つ一つの授業を行っているところです。繰り返し授業を依頼してくださる学校も増えてきており、特に「商業高校」においては「経済活動と法」の単元の授業にゲストティーチャーとして呼んでいただくことが多くなっています。

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教壇に立って生徒さんと向き合うことには不思議な力があるのか、授業を一度経験するともっともっと良い授業を試みてみたくなり、そんな中で、弁護士にとって学校に行く意味を深く考えるようになっています。

なかなか理想的な「法教育」に近づくことは難しいですが、学校に出向くことで、弁護士をより身近に感じていただき、学校の先生方や生徒さんと接点をより多く持ち関係を深めていく中で生み出せるものがあればと思っています。

特に、最近は18歳選挙権の影響により、学校現場からは主権者教育における弁護士の役割に期待する声が増えつつあり、申込みが増えています。

弁護士が主権者教育を行う意義はどこにあるのか、弁護士が行う主権者教育のあるべき姿はどのようなものか、考える日々が続いています。

富山県の取組はまだ始まったばかりです。今後ますます全国各地で展開されている「法教育」の実践を参考にさせていただき学ばせていただきながら歩みを進めてまいりたいと思っています。

 

 

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第33回 「高校生模擬裁判選手権の夏」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

京都弁護士会「法教育委員会」委員

萩原 経

高校生模擬裁判選手権をご存知ですか?これは、日弁連が主催する、刑事模擬裁判の大会で、今年で記念すべき第10回大会を迎えます。高校生たちは、提供される資料をもとに、証人と被告人への尋問と、弁護人・検察官の意見を述べる論告・弁論を、本物の法廷行います。このコラムで取り上げるのは既に3回目ですので、ご存知の方も多いかもしれません。

京都府では、第1回大会から参加校があり、私が所属する京都弁護士会でも、高校生の支援に取り組んできました。

高校生に与えられるのは、ほぼ証拠書類だけ。これは、実際に弁護士が刑事裁判に取り組む時とほとんど同じです。資料が高校生に渡るのは、選手権の約2ヶ月前。高校生たちは、このわずかな期間に、資料をいろいろな角度から検討します。

また、実際の刑事裁判では、弁護士や検察官は、自分の側に有利な証言をする見込みの証人とは、事前に会って証言の内容を確認することがほとんどです(「証人テスト」などと言われます)。しかし、高校生は、検察官側としても弁護人側としても、証人と事前に会うことができません。その意味では、高校生は、実際の刑事裁判よりも難しい状況で、模擬裁判に取り組んでいるともいえます。

ところが、高校生たちは、本物の弁護士や検察官も顔負けの、立派な尋問や論告・弁論をします。例えば、尋問であれば、質問すべき事項がよく検討されていることはもちろん、証人が予想外の回答をした場合にも臨機応変に対応します。論告・弁論でも、模造紙や模型を使って視覚に訴えるなど、高校生らしい感性に基づいて、堂々と論述します。

これにとどまらず、事件の背景にある社会問題に目を向け、研究する学校もあります。例えば、昨年の題材(未婚で出産し、アルバイト収入でギリギリの生活をしている母親が、その子供に手をかけたという事案)であれば、若年女性の貧困と孤立について、学校の外から専門家を呼んで講演を聞いた例がありました。選手権は、模擬裁判の実践にとどまらず、高校生が社会で起こっていることに関心を持つきっかけにもなっています。イメージ画像

高校生模擬裁判選手権は、様々な角度から資料を検討し、尋問や論告・弁論を組み立ててそれを実践するプロセスが重要であり、優劣をつけることは本来の目的ではありません。とはいえ、高校生にとっては、審査結果はとても気になるところです。審査結果の発表の際には、大きな歓声が上がり、涙(うれし涙もくやし涙も)がそこここで見られます。高校生はそれだけのエネルギーを費やして模擬裁判に取り組んでいるのです。

今年の大会は、平成28年7月30日に実施されます。このコラムが掲載される頃には、既に結果が明らかになっていることでしょう。

夏の法廷では、甲子園にも負けないくらい熱い高校生の戦いが行われています。模擬裁判に取り組む高校生たちを、ぜひ応援してください。

 

 

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第32回 「人の繋がりの中で育つ法教育活動」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

長崎県弁護士会「法教育委員会」委員

永岡 亜也子

西の果て長崎県でも、日弁連や他会からの刺激を受けつつ、地道に少しずつできることから法教育活動(あるいは、法教育活動に繋がり得る活動)に取り組んでいます。今回は、そんな長崎県弁護士会における法教育活動等の取り組みについて、ご紹介をしたいと思います。

長崎県弁護士会では、平成20年8月に法教育委員会設置PTが立ち上がり、平成21年4月に法教育委員会が設置されました。所属委員はほとんどが60期台の弁護士で、若手弁護士が中心となって、ジュニアロースクールや出前講義などの活動を行っています。

ジュニアロースクールは、年に1回、夏休みの時期を利用して企画・開催しているもので、当初は、長崎県弁護士会のみの単独企画として、小中学生を対象に、身近な問題をテーマに取り上げて、ルールや規制について考えてもらうという取り組みを行っていました。

しかし、裁判所と検察庁とを巻き込んでの三庁合同企画とした方が盛り上がるのではないかという考えもあって、日弁連などの高校生模擬裁判選手権の取り組みに倣って長崎県弁護士会でも高校生を対象とした模擬裁判を企画・開催するべく、平成25年度に初めて、裁判所の実際の公判廷を利用しての模擬裁判を企画・開催しました。このときは、実際の公判とほぼ同様の流れで検察官と弁護士が一通りの裁判手続きを実演するという方法を採り、参加生徒には評議等を行ってもらいました。参加生徒からはそれぞれに活発な意見が出され、各評議を指揮した裁判官からも感嘆の声が聞かれるほどでした。

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そこで、今度はもう一歩踏み込んで、参加生徒自身に裁判手続きを実演してもらうという方法に挑戦をしようということで、平成27年度に初めて、対抗試合形式での模擬裁判選手権を企画・開催しました。手探り状態の中での準備は大変でしたが、参加生徒の充実した表情や一生懸命にやり遂げた姿を見て、その苦労は吹っ飛びました。後に、模擬裁判選手権への参加をきっかけに法学部への進学を志し、見事法学部への進学を果たした生徒からは、改めて感謝の言葉が寄せられました。

このときに、隣県の佐賀県の弁護士に被告人役や審査員のお手伝いをいただいたご縁もあって、平成28年度は佐賀・長崎での合同模擬裁判選手権を企画・開催することになりました。平成28年度は長崎、平成29年度は佐賀というように、持ち回りでの開催を検討しています。そのためにはまず、この夏に予定されている第1回合同模擬裁判選手権を無事に成功させなければなりません。長崎では、代表校を選出するための予選会の開催も予定しており、既に、出場校に対する事前指導が始まっています。参加生徒に、参加して良かったと思ってもらえるようなイベントとするべく、委員総出で、参加生徒ともに奮闘したいと思います!

以上のほかにも、長崎県弁護士会では従前から、主に高校からの要請を受けての出前講義などの活動を行っていますが、平成28年度は、子どもの権利委員会と共同して、いじめ予防を目的とした出前講義にも積極的に取り組む予定としています。この取組みについては、特に長崎市教育委員会に好意的・積極的に受け入れられており、長崎市に在籍する任期付き公務員の弁護士とも連携しながらの対応等を行っています。

また、同じく平成28年度からの取り組みとして、長崎県教育委員会との間で、県立学校の校長先生向けの学校問題に関する相談窓口設置に関する協定を締結しました。県立学校の校長先生が解決困難な問題に直面したときに、長崎県弁護士会においてあらかじめ選任した相談担当者に法的助言を求めることができるというもので、その相談費用等については、長崎県教育委員会が負担することになっています。

これらの様々な活動を通じて思うことは、いずれの取り組みも、人と人との繋がりの中で動いているものだということです。たとえば、模擬裁判選手権でいえば、裁判所や検察庁の協力があってのものですし、佐賀との合同模擬裁判選手権などは、まさに人の繋がりの中から生まれた企画といえます。また、いじめ予防授業の取り組みについては、背景に、長崎市に在籍する任期付き公務員の弁護士の尽力があります。一方、県立学校の校長先生向けの相談窓口は、今後の法教育活動に向けた人脈づくりのきっかけとなる可能性を秘めているものです。

こういった人の繋がりを大切にしながら、法教育活動をより一層活性化させ、長崎らしい長崎ならではの法教育活動を模索・実現していくことができたら、とても素敵なことではないかと思っています。

 

 

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第31回 「札幌の法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

札幌弁護士会「法教育委員会」委員

綱森 史泰

全国の弁護士会の法教育の取組を知ると、各地域で特色のある活動をしていることが分かります。この法教育コラムでも、各地の活動状況が紹介されておりますので、今回は、札幌の法教育活動について紹介させていただきたいと思います。

札幌では、2012年に法教育委員会が設置されました。それ以前は「市民ネットワーク委員会」という名称の委員会で、弁護士会の活動について一般市民の方々にモニターをしてもらう「市民モニター」活動と法教育活動の二つの活動を行っておりましたが、法教育活動の充実のため専門委員会に改組されたものです。なお、2004年の市民ネットワーク委員会設置以前には、「司法改革推進本部第四部会(市民部会)」が、2001年頃から司法教育の取組を始めていました。このように、札幌では、司法制度改革の流れを汲んで、比較的早い時期から弁護士会の法教育活動が始められたことに特色があります。

札幌の法教育活動の中心的なイベントは、高校生を対象とする「ジュニアロースクール札幌」です。このジュニアロースクールは、2004年度の第1回開催以来、年1回のペースで継続的に開催され、2015年度で第12回を数えました。内容は、例年、午前に法教育授業、午後に刑事模擬裁判というものですが、法教育授業では、学校の先生方にご協力を頂いて、学校の先生と弁護士のペアで授業を行うことに特色があります。また、刑事模擬裁判では、裁判官・検察官・弁護人役を生徒が演じるほか、その他の生徒全員に裁判員としてグループ評議をしてもらう全員参加型の模擬裁判を実施しています。参加生徒の感想は毎回好評で、「私にとって法的なものの考え方は一生大切なものになると思った。」というような感想をもらえることは大変嬉しいことです。

イメージ画像その他にも、小学校・中学校・高校への出前授業や出張模擬裁判、学校からのエクスターンシップの受け入れ、教員向けの法教育セミナーの開催など、さまざまな取組をしています。

このような法教育の取組を続け、広げていくためには、関心を持って取り組む弁護士と学校教員の輪を広げていくことが重要です。札幌では、少し堅苦しい名称ですが、弁護士と学校教員からなる「法教育研究協議会」を開催して、法教育に関する情報交換やジュニアロースクールの企画などを行っています。

以上のような札幌弁護士会の法教育の取組にご興味・ご関心をお持ちいただけました生徒、教員のみなさまには、ぜひイベントやセミナー等にお気軽にご参加いただけますと幸いです。

 

 

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第30回 「答えのない授業」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

第一東京弁護士会「法教育委員会」副委員長

五十嵐 裕美子

法教育の出張授業を行う際、教員の先生方からよく聞くのが、次のような言葉です。「子どもたちはとても楽しかったようで、意欲的に取り組む姿は頼もしく見えました。ただ、結局正しい答えは何だったのかと聞かれます。どう答えたらいいのでしょう。」

私が担当している授業は、ルール作りや模擬調停などが主で、模擬裁判員裁判などの刑事系の授業を担当することはあまりないのですが、刑事系の授業をよく担当する弁護士からも同じ話を聞きます。「結局、有罪と無罪、どちらが正解だったのでしょう?」と教員の先生から問われることがあるそうです。

ご質問に対しては、ルール作りの授業であれば、「答えは一つではなく、作るべき正しいルールというものがあるわけではないのです。利害関係の対立する相手の話にも耳を傾ける、反論や批判は人ではなく意見に対して行うなどの話合いの留意事項を踏まえ、一つの合意に達するまでの過程こそが、経験し学んでほしい内容なのです。」とお答えしています。それでも、「答えがないと消化不良になってしまう、子どもも正解を求めています。」というご意見を頂くことも多くあります。

果たして、法教育の授業に正解の提示は必要なのでしょうか。

実は、私たち弁護士が見る司法の現場でも、誰もが認める正解が存在するわけではないのです。裁判所の判断が正解ではないのか、と思われるかもしれませんが、裁判所が出す判断も、提出された主張や証拠を前提としたものにすぎませんし、同じ事案でも裁判所同士で判断が分かれることも多々あります。現実には、私たちは、どこかに存在する確実な正解を確認することはできないのであって、与えられ又は見つけ出した情報をもとに、当事者の皆が(満足はできないとしても)受け入れることができる結論を導き出すべく努力していくしかないのです。

裁判所による判断を当事者が受け入れる(受け入れざるを得ない)のは、裁判所による判断が間違いのない真実であるからではなく、決められた条件のもとで当事者が主張反論を尽くした上で、国民の代表者が決めた法律に従った判断がなされるシステムがあるからです。近隣住民が皆で決めた日常生活上のルールを守ろうと思えるのは、それが唯一無二の正しい決まりだからではなく、皆の意見を聞き話し合って、公正な手続きで決めたことだからです。イメージ画像

このようなことに思いを馳せるためのヒントを持ち帰ってもらうためにも、法教育の授業においては、自分たちが出した答えと正解を比べて○×をつける、というようなイメージを持たないでもらえるように工夫したいと、個人的には感じています。

もっとも、学ぶ内容を明確化して十分に説明するなど、授業を受けてくれる子どもたちに消化不良の感を残さない授業を行うための工夫の余地は、大いにあると思います。この点、教員の先生方からの率直なご意見を受け、大いに反省し学ばせていただく必要があると感じています。同じように正解のないテーマを扱う授業において、教員の先生方がどのような工夫をされているかを参考にして授業内容の充実を図るなど、これからも研鑽を積んでいきたいと思っています。

 

 

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第29回 「まずはお電話を」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

函館弁護士会「子どもの権利と法教育に関する委員会」委員

葛西 秀和

函館の「子どもの権利と法教育に関する委員会」は平成23年8月に設立され、もうすぐ設立5周年になります。この間、夏期にジュニアロースクール(模擬裁判員裁判)を4回開催してきました。出前授業や法教育講座は、中学生・高校生を対象に6回開催し、中には6人の中学生を、4人の弁護士、7人の教員で取り囲んだこともありました。あるいは100人の中学生に参加してもらった出前授業もありました。出前授業などの規模は様々で、少しずつ実績もたまってきています。

さて、私たちが出前授業で学校を訪れると、生徒たちはとても一生懸命に課題に取り組み、講義に耳を傾けてくれます。また、私たちが「自由に質問して下さいね」と言えば、「ぶっちゃけ儲かるんですか」、「モテますか」など、若者らしい質問をしてくれます。そうした質問に対して、私たちは爽やかに抽象的な回答をしたり、たまには具体的に回答したりします。そうすると、アンケートには「弁護士のイメージが変わった」というメッセージが残されるようになります(きっといい意味で…)。

どうやら生徒には、テレビ(しかも、テレビドラマ)で見る弁護士の印象が強いようです。確かに函館弁護士会管内には弁護士は50名ほどしかおらず、弁護士と関わる機会はこうした出前授業などがほとんど唯一の機会であり、テレビのイメージを更新する機会はないのでしょう。そして、このことは生徒のみならず先生方にとっても同じかもしれません。そのため、出前授業には、生徒のみならず、先生方にとっても弁護士をより身近に感じていただける、そんな機会としての意味もあるような気がします。実際に、先生から出前授業のご要望をいただき、一緒に授業案を考えていく中でそんな先生側の変化を感じたこともありました。ですから、先生が出前授業に興味を持っても、最初はどうやって弁護士に依頼しようか悩んでしまうこともあるのではないでしょうか。でも、私自身も、授業案を考える中で先生方と議論をして、新しく見えてくるものがたくさんありました。ですので、出前授業などの機会が増えれば、お互いに得られるものが増えていくと感じており、そのためには私たちからの積極的な働きかけが必要だと思っています。

イメージ画像ただ、弱音を吐くと、例えば函館弁護士会に所属する弁護士はその多くが複数の委員会の委員を兼任しています。私も、刑事弁護センター、高齢者・障がい者関係、雇用や貧困に関する委員会などの委員を兼任しており、それぞれの委員会の活動に順次あたっていくと、ついつい出前授業の実施に向けた活動が後回しになってしまうことがあります…。

ですので、もし出前授業などのご希望があるときには、お近くの弁護士会までご連絡をいただくと、自動的に出前授業の機会を増やせるので、実は助かるのです。

ということで、ぜひご遠慮なく、まずはお電話を。

 

 

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第28回 「「チョイ足し」法教育のすすめ」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

岡山弁護士会「県民ネットワーク委員会」委員長

原 智紀

以前、私の地元、岡山県の学校の先生方に、法教育授業が実践できていない理由についてアンケートをとったことがありました。

選択式のものでしたが、「法教育の授業内容がどのようなものかわからない」「法教育を実践する時間的な余裕がない」と回答した方が多く、また、これらより数は少ないものの「法教育の授業内容が難しい」という回答もみられました。

「法教育の授業内容がどのようなものかわからない」「法教育の授業内容が難しい」ことについて、学校の先生が、ゼロの状態から法教育の教材を開発して授業することはハードルが高いのだろうと推察されます。

そこで、日弁連では、学校の先生を対象とした法教育教員セミナーを開催して法教育に関するワークショップを行っていますし、各地の弁護士会でも、法教育の教員研修や法教育セミナーを開催して授業実践例の紹介やワークショップをしたり、弁護士と学校の先生たちで法教育研究会といった組織を立ち上げて教材を作成・検討するといった活動を行っています。

「法教育を実践する時間的な余裕がない」ことについて、ただでさえ時間がない中で「法教育」という何か特別なものはできない、そんなイメージがあるのかもしれません。

しかし、これまで学校の先生が行っていた授業に、ほんの少し法教育的な視点・エッセンスを取り入れれば、きっと素晴らしい法教育の授業実践になるだろう、そんな思いを私は持っています。

平成27年5月に開催した日弁連「法教育教員セミナー」の小学校の先生を対象としたグループワークでは、文部科学省作成の『私たちの道徳3・4年生』に掲載されている『ぶらんこ復活』という教材を基にして、ルールを守ることの大切さという道徳的な内容だけではなく、ルールの必要性、公平・平等という視点でのルールづくりといった法教育の視点を取り入れた授業案(指導案)の作成をしました(その成果は、日弁連のサイトの「関連教材集」の中に、pdfファイル指導要領 (PDFファイル;125KB) とpdfファイル授業案 (PDFファイル;135KB) として掲載しています。)。

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この『ぶらんこ復活』は、法教育の内容を取り入れた道徳の授業の一例といえるかもしれません。また、道徳に限らず、様々な授業科目でも法教育的な視点を取り入れることができるのだろうと思います。普段行っている授業に法教育の内容を少し盛り込むのなら、授業時間が取れないというハードルも乗り越えられるのではないでしょうか。

まずは、普段の授業で、法教育というエッセンスを「チョイ足し」することから始めてみてはいかがでしょうか。

最後に、「チョイ足し」といっても、何をどう「チョイ足し」すればよいのか、そのさじ加減がよくわからない方へ。

法教育に熱心に取り組んでいる弁護士は全国各地にいますから、まずは地元の弁護士会にお問い合わせください。

ただし、「『チョイ足し』の仕方を教えてください」と言われても、受付の人は何のことだかわかりませんから、「法教育の授業について弁護士のアドバイスが欲しいのですが」などの要望を述べてくださいね。

 

 

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第27回 「法教育としてのいじめ防止授業」

長野県弁護士会「法教育委員会」 委員

樋川 和広

1 長野県弁護士会法教育委員会は、平成24年に設置され、若手の弁護士を中心に約30名の委員で活動しています。

当委員会が昨今力を入れている活動の一つとして、主に小学校高学年を対象とする「いじめ防止授業」がありますので、この場をお借りし紹介させていただきます。

2 弁護士によるいじめ問題に対する出張授業の起源は、今から10年以上前、第二東京弁護士会の有志の先生方を中心に取り組みが開始され、各地にその活動が広がっていると聞いております。当委員会においても、東京での取り組みと授業内容に感銘を受け、実際に東京で数回にわたり授業実施風景の見学をさせていただきました。その上で、当委員会内で協議し、多くの点で東京での授業に示唆をいただき、授業案を拝借させていただきながら、長野県弁護士会版のいじめ防止授業を作成しました。

3 我々が授業案を作るにあたって意識したことは、「弁護士が敢えていじめの問題を語る」ことの必要性を、授業を聞いた生徒に納得してもらうことでした。そのために、法教育において弁護士が扱う内容との融合を検討しました。いじめがなぜ許されないかという根本にあたる説明を、弁護士の職務たる「基本的人権の擁護」と立憲主義の大原則たる「個の尊重」、そして「正義」という観点から紐解いて説明する授業案を模索しました。具体的には、「人権」とは何であるかという説明から初め、いじめが人権侵害であることを強調し、また「いじめられる側にも悪いところがあるか?」という避けては通れない問題提起については、「個の尊重」の重要性を説くことで答えを出そうとし、いじめを防止する、阻止するための活動を正義の行動であると位置づけています。

伝えたいメッセージがとても多くなるため、1単元ではなく2単元(小学校では90分)を1セットとした授業内容とし、また、現場の教員の意見を受け、弁護士が一方的に講義する内容ではなく、各単元に生徒がグループワークで検討する時間を設ける形式としました。グループワークは盛り上がりますし、グループワークが挟まることで、2単元続けた授業でも生徒の集中力が持続します。

4 長野県におけるいじめ防止授業は平成26年度から開始され、本年度は小中学校併せ7校、25クラスに実施することが出来ました。ご協力いただいた教員の先生方には概ね好意的な評価をいただいているものと思います。

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そして何より、授業を受けた生徒の反応は我々が想定した以上に熱心で、真剣なものでした。それだけ、いじめの問題が生徒にとっても関心の高いものであることがわかります。どのクラスに行っても、全く話に興味を持たない生徒はほぼおらず、むしろ終始食い入るように授業に集中している生徒が沢山います。授業後の感想では、多くの生徒がいじめが人権侵害に他ならないことを理解し、そして、いじめを防止するために自分でも出来ることがある、という気付きを得ていることがわかり、弁護士によるいじめ防止授業に意義があることを実感しています。

5 今後は、長野県弁護士会において授業の担い手を増やすとともに、より生徒の心に届く授業内容への改良と、授業実施における伝え方の技術研鑽に努め、引き続きいじめ防止授業が学校現場に広く受け入れられるよう継続して参りたいと考えております。

 

 

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第26回 「法教育と18歳選挙権」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

和歌山弁護士会「法教育委員会」 委員

芝野 友樹

1 公職選挙法が改正され、今年の夏に行われる参議院議員選挙から、18歳以上の国民が選挙権を行使できることになりました。

2 これまで、法教育委員会では、「個人を尊重する自由で公正な民主主義社会の担い手として、法や司法制度の基礎にある考え方を理解してもらい、法的なものの見方や考え方を身につけてもらうための教育」を法教育として、その普及に努めてきました。

私の所属する和歌山弁護士会でも、様々な取り組みをしてきました。例えば、毎年高校生を対象として、「ジュニアロースクール」を開催しています。このイベントでは、弁護士が実演する模擬裁判に裁判員役で参加してもらい、証人の証言や被告人の供述を聞き、検察官及び弁護人の意見を聞いた上で、評議をしてもらい、有罪か無罪を決めてもらいます。

また、出張講義では、ルール作りを体験してもらったりもしています。例えば、マンションに防犯カメラを設置するかどうかということについて、クラスで議論を行い、最終的にどのようにして、ルールを決めるのかということを話合ってみるといったものです。

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最初は、戸惑う高校生も多かったように思いますが、やりとりを繰り返すなかで、自分の意見を述べたりできるようになりました。またその中で、他人の意見を聞いて、自分の意見を補強したり、自分の意見を変えるなど、様々な意見があるなかで、どう考えていくのかという力を養っていったように思います。

3 今後、早ければ高校3年生から、選挙権を行使できることになります。選挙権の行使は、模擬裁判での模擬評議と異なり、現実の貴重な一票となります。高校生が、実際に考えたことが政治に反映されることになっていきます。法教育、主権者教育はますます重要になると思っています。

もちろん18歳の素朴な意思表示、それはそれで貴重な意見と思います。しかし他方で、様々な意見があふれる中、自分の力で考え、意見表明をする力を養うこともまた重要だと思います。

私たちは、もっと法教育を身近なものにしていきたいと思っていますし、高校生にも、積極的に参加していただきたいと思います。

 

 

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第25回 「ワクワクできる法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

栃木県弁護士会「法教育委員会」 委員

小森 竜介

みなさんは、どういうことでワクワクしますか?

ワクワクすることは、人それぞれたくさんあると思いますが、そのワクワクの一つに、今まで知らなかった新しいことを知るということがあるのではないでしょうか。

私は、本を読んだり、話を聞いたりして、「そうなっていたんだ!」、「そういう理由があったんだ!」、「そんなすごい人がいたんだ!」と驚くと、とてもワクワクします。そして、他人の迷惑をかえりみずに、そのたくさんのワクワクを伝えようとしてしまいます。

世の中の仕組みやその原理、どんな人たちがいるのかを知ることが出来れば、もっともっと世界が広がります。

自分の知らなかった新しいことを知ることでワクワクしてしまうのは、自分の世界が広がっていくことを感じられるためなのかもしれません。

「法教育」と聞くと、抽象的で何やら難しく堅苦しいイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、実は、法教育は、みなさんが簡単にたくさんのワクワクに出会える楽しい場なのです。

私の所属する栃木県弁護士会の法教育委員会では、法教育のイベントとしてジュニアロースクールや出前授業を行っています。

そこで、多くの生徒のみなさんに、模擬裁判やルール作り等に参加してもらっています。

模擬裁判では、みなさんにあたかもロールプレイングゲームのプレイヤーとして手続に参加してもらいます。

そして、その経験の中で、みなさんは、裁判手続やルールを知るとともに、公正さや法的視点といった観点を自然と身につけることになります。

また、ルール作りでは、具体的な問題に対して、問題解決のためにどのようなルールを作るべきなのか、ルールをどうやって決めたらよいか等について、話し合いを通じていろいろと検討してもらいます。

そして、その経験の中で、みなさんは、ルールの決め方など世の中の仕組みを知るとともに、民主主義や立憲主義の内容を自然に理解することになります。

また、みなさんは、弁護士とのふれあいの中で、いろいろ今まで知らなかったことを知ることになります。

法教育のイベントは、みなさんの世界が広がっていくワクワクの絶好の機会なのです。

法教育は、みなさんがワクワクすることが出来る場ですが、実は、弁護士にとってもたくさんのワクワクに出会える場なのです。

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弁護士は、ついつい裁判や紛争解決のために必要な法律構成は何かといった観点のみで物事を考えがちです。

みなさんとの関わりの中で、「そういう発想や考え方があったんだ!」「そういうところを見落としていたんだ!」という新しい発見や気付かされることがたくさんあり、とってもワクワクできるのです。

ちなみに、通常業務で見落としがあれば、ワクワクというより、全身氷河期状態になってしまいますので、法教育は安全にワクワクできる場なのです。

池上彰さんばりにおもしろいことをみんなにわかりやすく伝えようと思い、ついつい力が入りすぎることもありますが、みなさん、法教育のイベントで、いっしょにワクワクしましょう。

ワクワクすると、明日がとっても楽しみになりますよ。

 

 

 

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第24回 「NIEと法教育~新聞を使った法教育授業のお勧め~」

九州弁護士会連合会 法教育に関する連絡協議会 委員長

福岡県弁護士会 法教育委員会 委員長

春田 久美子

NIEをご存じですか?「教育に新聞を(newspaper in education)」というものです。 法教育の出前授業に赴くとき、最も心を砕くのが教材づくり、ですよね。

伝えたいテーマ(授業の目標)が決まったら、素材、モチーフとして、どういう内容のものを選ぶか…法教育の授業において、児童・生徒さんが、自ら考えたくなるような、取り組んでみたいような気持ちをかきたてらるかどうかは、ここにかかっている!と思っています。私の場合、素材、いわゆる“ネタ”を見つけるのは新聞を読んでいるときにヒントを得られることが多いです。

私自身は、ゲストティーチャー(GT)として出前授業に行く際、“正解”がない、賛成・反対、○か×など、意見が分かれ、答えが両論あり得るような、どちらもそれぞれの言い分があって、なかなか大人の私たちでも、正解を言えないような論点が含まれているものを教材にすることが多いのですが、そのヒントは、新聞を眺めているときなどに閃く(!)ことが多いのです。例えば、〈野良ネコの餌やり問題〉や〈ペット(飼い犬)税を条例で導入しよう、と自治体が動き出した〉の記事。ネコやイヌなど動物ものは、子どもたちにも身近ですから取り組みやすいようです。他には〈赤ちゃんポストの是・非〉や〈公園の禁止事項が増えている問題〉や〈あなたは、どう思う?海水浴場での飲酒、音楽(鳴り物)禁止〉etc。まだ、実践していませんが、〈組体操の10段ピラミッドで骨折!果たして、続けるべきかどうか…?〉や〈育休取ったら保育園を退園させられるのって、どう?!〉もいつかやってみたいな~と思っています。

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新聞を使った授業は、法教育を普及させるために、教育大学生に実践してもらうこともあります。私が赴く授業前の1週間ほど新聞を読んでもらい、その中から、何年生を対象に、こんなメッセージを伝えるために、どういう展開で授業をしてみますか?という問い掛けで新聞記事を貼り付けておく、というワークシートを事前に配っておきます。当日、発表してもらうのですが、結構、人によってチョイスする記事がばらつくので授業は盛り上がります!

記事だけではありません。ある朝、新聞を開くと一面に大きな広告が…。桃太郞に父親を殺された子鬼の坊やが涙を流して立っている図柄に『ボクのおとうさんは、桃太郞というヤツに殺されました』というメッセージ。小さくキャッチコピーとして『一方的なめでたしめでたしを生まないために。広げよう、あなたが見ている世界』が添えられている紙面でした。これは2013年度の新聞広告クリエーティブコンテスト最優秀賞作品でしたが、私の最終的に目指している法教育は、このようなイメージだな~と強く印象に残りました。

野良ネコの餌やりを扱う授業は、学校の先生だけによる研究授業でも実践されました。ところが、最近のお子さんは、(3段落の記事でしたが)多くの文字を読もうとはしない、ということで、その教員の方は、記事の内容を4コマ漫画に書き直して生徒に呈示する、という工夫をされました。なるほどな~と思いましたが、文字を読む練習としても果敢に取り組んでもらってもよいのでは、と思ったりした私です…。

NIEは、お住まいの各都道府県ごとに事務局がその地のメジャーな新聞社内に置かれており、推進協力校もたくさん存在します。法教育をNIEとコラボしてやりませんか!とお誘いすると、取材もしてくれるかもしれません(子どもたちのやる気がアップします)♥

デジタルな時代ですが、アナログな新聞は法教育の教材づくりの上で、宝の山だと思っています。皆さまも、そういう目で眺めてみたらいかがでしょうか♪

 

 

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第23回 「風の声に耳を傾ける」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

山梨県弁護士会「法教育委員会」 委員

中野 宏典

ボブ・ディランというアメリカのミュージシャンの代表曲の一つに、『Blowin’ In The Wind』という曲があります。世の中のいろいろな不条理や疑問に対して、「友よ、答えは風に吹かれている」と訥々と歌う、胸に迫る素晴らしい名曲です。

先日、地元の高校で、高校生法律ウルトラクイズ、というのをやらせてもらいました。憲法などをテーマに○×クイズを出題したのですが、最後に、意地の悪いことに、○とも×とも正解のない、あるいは正解の分からない問題を出したところ、生徒さんたちから、一斉に「えー」というブーイング(?)の声が上がりました。確かに、○×クイズなのに○でも×でもない問題を出すのはズルいわけで、生徒さんたちの不満もごもっともなのですが、この授業で伝えたかったのは、世の中には、正解がある・分かっていることは意外に少ない、ということでした。

私たちは学校で、どちらかといえば正解・不正解のはっきりしている問題ばかりを扱ってきます。でも、ボブ・ディランが歌うように、答えは風に吹かれていて、世の中には、実は正解が分からないことの方が多いのではないでしょうか。風の声に耳を傾け、そういう問題に迷いながらも自分なりの回答を出しながら、私たちは生きています。普段正解探しをしてしまう癖(?)がついている生徒さんたちにとっては、答えがない問題、人によって考えが違う問題があるということが新鮮に映るらしく、感想でもそのような声をたくさんいただきました。

このような価値の多様性をまずは知ってもらったうえで、法教育が目指すものは、実はその先にあると思っています。つまり、法教育は、「答えがないときに私たちはどうすべきなのか」という問題に一つの道筋を示すものである、ということです。私たちが社会生活を送る以上、「答えがないから何をやってもよい」「価値が多様だから他者の考えは無視してよい」というわけにはいきません。

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答えが分からないとき、人によって考え方が違う問題にぶつかったときに、どのような基準で考えたらよいのかという「物差し」を使うことで、自分の考えを整理したり、他者の考えとの違いを明確にして歩み寄りを図ったりできることがあります。法的な観点でいえば、その代表例が「正義」とか「公平」という物差しで、法治国家で社会生活を送るうえでは、この物差しを身に付けることが役に立つわけです。この物差しを身に付け、正しく風の声に耳を傾けられるようになることが、よりよい社会につながっていくのではないでしょうか。もっとも、テストの答案には「答えは風に吹かれている」とは書かないでくださいね(笑)。

 

 

 

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第22回 「縦軸で見る法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」 委員

佐賀県弁護士会「法教育委員会」 委員

安永 治郎


  • 8月1日(土) 高校生模擬裁判選手権四国大会(@高松)の応援
  • 8月3日(月) 長崎県弁護士会サマースクール(@長崎)の応援
  • 8月4日(火) 佐賀県弁護士会サマースクール(@佐賀)の開催

以上が私の8月初旬のスケジュールですが、4日間で3つのイベントに携わりました。

3つものイベントに参加すると、参加生徒の反応や運営方法を異なる角度で見ることができます。特に、前2つのイベント(高松、長崎)は高校生、佐賀の場合は小・中学生と、参加生徒の学年が異なっていましたので、参加生徒へのアプローチの違いを鮮明に感じました。

その中から、小学生向け法教育イベントの方法論について、今回感じたことを少しだけ紹介いたします。

法教育今回の佐賀のサマースクール(小学生の部)は白雪姫をモチーフにした裁判劇で、お妃様が白雪姫を殺害しようとした犯人なのか、犯人性を検討するものでした。教材の中に散りばめられた間接事実を小学生は細かく拾ってくれましたし、気付いた事実が有罪、無罪の根拠になる理由も説明してくれました。

小学生がここまで考えられることに毎回感心するのですが、高校生模擬裁判と比較すると、あくまで自分が考えた意見を紹介させるところで留まっています。高校生模擬裁判の場合は検察役と弁護役に別れて裁判に参加するので、自分たちの考えだけでなく、相手方の主張への反論も合わせて行う姿勢を見ることができますが、小学生向けイベントでは反対意見に対する検討という点にまでは触れられていません。

私は、一つの事実に対して複数の異なる見方があること、これを子どもたちに感じてもらうのが法教育の醍醐味だと思っています。

童話を題材としつつ、本来の結論と逆の考え方もあるのだという考えを持ってもらうという点では、今回のイベントもその醍醐味を体感してもらえるものになっています。

ですが、自分と反対の意見に触れ、それをどのように消化するのか、そこまで踏み込めれば、参加した小学生の視点は更に広がるのではないかと考えています。

小学生にそこまでの議論をする能力があるのか等という指摘はあろうと思いますが、小学生向けイベントについてはまだまだ改良、検討の余地が十分にあるようです。来年のサマースクールに向けた宿題ができました。

これまでは自分の単位会のイベントだけを見ていましたが、日弁連や他会のイベントに参加することで、このような学年の違い(縦軸)という視点から法教育イベントを比較検討することができました。そんな発見を求めて、来年の夏がまた楽しみです。

 

 

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第21回 「裁判員制度と法教育、そしてその先にあるもの」

横浜弁護士会 法教育委員会 委員

日本弁護士連合会 市民のための法教育委員会 委員

入坂 剛太


 

 

先般、ある教育委員会の研修会にお招き頂き、「裁判員制度と法教育」というタイトルでの講演をさせていただきました。

平成21年5月に開始された裁判員制度は、その後定着が進み、平成27年5月までに、4万人を超える方が、実際に裁判員として審理に臨まれました(最高裁判所ホームページ「裁判員裁判の実施状況について(制度施行~平成27年5月末・速報)」表4)。

教育の場においては、現行の学習指導要領(平成23年改訂)には、中学校社会科の公民的分野や、高等学校公民科の「現代社会」や「政治・経済」などで、裁判員制度を扱うことが定められています。これを受けて、学校現場では、弁護士を講師に招いて、司法・裁判制度の解説や、模擬裁判授業を行うなど、各地で様々な取り組みがなされてきました。

実際のところ、裁判員制度はやや突然に始まった感があり、裁判員制度に関する教育において最も重視されたのは、「裁判のしくみを知り、これに親しみを覚える」という点であったように思います。このため、我々弁護士に求められたのは、上のような、裁判制度の解説や、模擬裁判などが中心となっていました。

しかしながら、裁判員制度が定着し、国民の司法参加が進んだ現在にあっては、「学校で裁判員制度を学ぶ意義と方法」を、より踏み込んで考えていく必要があるように思います。裁判員制度は、国民のみなさんが裁判に積極的に参加するという経験を通じ、司法制度への理解と信頼を高めていくことにその目的があります。そうだとすれば、学校現場においても、裁判員制度の学習は、単に裁判の制度を知るという「知識」の面だけではなく、検察官・弁護人の主張や証拠を分析し、他者との議論を通じて自立的な意見を形成するという「技能」の面、他者の意見を尊重しつつ、裁判や法に関心を有し、積極的に関わっていくという「意欲・態度」の面にも配慮が必要です。これは、裁判員制度に関する授業の一コマだけで完結するものではなく、他の教科や学校活動全般において、繰り返し取り上げていく必要があると考えています。

法教育この研修会では、このような問題意識をもとに、日弁連市民のための法教育委員会や、各地の弁護士会の法教育委員会が作成した教材や、出前授業等のプログラム等をご紹介し、裁判員制度以外の分野で行う法教育活動のご案内をさせていただきました。

裁判員制度の学習は、法教育のきっかけとしてはとても分かりやすく、興味深い分野です。学校現場の先生方におかれましては、ここで法教育に関心を有した子どもたちの理解を更に深め、その能力と意欲を更に高めていただきたいと願っています。

是非一度、各地域の弁護士会を通じ、法教育授業のお申し込みをご検討いただければ幸いです。一同、心よりお待ちしております。

 

 

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第20回 「法教育の夏がやって来た!」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

岐阜県弁護士会法教育委員会 委員長

武藤 玲央奈


 

 

子ども達が夏休みを迎えるころ、私達法教育に携わる弁護士の多くは多忙を極めることとなります。
日弁連及び全国各地の単位弁護士会が、子ども達の夏休みに合わせて、様々な法教育に関わるイベントを行う時期だからです。

日弁連のイベントである高校生模擬裁判選手権は、2015年で9回目を迎え、今や我が国最大の法教育イベントの1つと言っても過言ではないと自負するところです。
2015年は例年以上に多くの高校からの参加希望があり、予選や抽選で出場校を絞るなどする事態となっていて、嬉しい悲鳴を上げています。

私の所属する岐阜県弁護士会でも、2009年から「ジュニア・ロースクール」という中学生向けの法教育イベントを開催しています。岐阜県弁護士会は、岐阜県内で唯一の法学部を有する朝日大学との間で2009年に学術交流協定を締結しており、「ジュニア・ロースクール」も、弁護士会のイベントでありながら、朝日大学の多大なるご協力を頂いて、充実した内容となっております。
例年模擬裁判を行っていますが、朝日大学の法廷教室を使用し、模擬裁判の役者さんや模擬裁判後の子ども達の評議の補助役として学生さんにご協力頂くなどしています。事前のPRも、朝日大学の職員の皆さんが中学校を回ってチラシを渡して頂くなど入念になされており、例年コンスタントに50名から70名程度の中学生の皆さんに参加頂けています。
イベント終了後には、朝日大学の学生食堂で、弁護士と子ども達、保護者の皆さんが一緒になっておいしいお昼ご飯を食べながら交流する企画も毎年好評を頂いています。このような朝日大学の多大なるご協力のおかげで、私達弁護士は、企画の中身の議論に集中することができるのです。

法教育この夏も子ども達の熱い議論と輝かしい眼差しにたくさん出会えるといいなあと期待しながら、全国各地の弁護士会が様々なイベントを企画しています。

是非お近くの弁護士会のイベントを覗いて頂き、法教育の夏を子ども達と一緒に満喫して下さい。そして、学校現場で法教育授業を実践する際のヒントや人脈を目いっぱい吸収していって下さい。

皆様のお越しを心からお待ちしています!

 

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第19回 「先生方と歩み続けた10年間」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

岩手弁護士会「法教育に関する委員会」委員

鈴木 真実


 

 

岩手では、平成17年に県内中学校の先生方の参加を得て「法教育研究会」を立ち上げました。

そして、

  • 授業は教育の専門家である教員が行う
  • 教員に素案を持ち寄ってもらい、それを基礎にして法教育研究会で協議して教材案を作成する
  • 授業には弁護士がゲストティーチャーとして参加する

という3つを基本的な方針として、県内の10か所以上の中学校で法教育授業を行いました。

1学年に数名しかいないという小規模校もあるため、町内の中学校3年生(約90名)を町民会館に集めて、10名の弁護士がゲストティーチャーとなって授業を行うという取り組みをしたこともあります。

特に私たちが大切にしているのは、教育現場の最前線にいる先生方に授業案の素案を持ち寄ってもらうということです。地域によって生徒さんの置かれている環境や学校の規模も様々であり、生徒さんがより身近に感じられる授業案を練っていくには、先生方による視点が重要だと考えています。

「そうは言っても、法教育の授業案なんて、どうやって一から作れば良いの?」と、このコラムを読んでくださっている先生方から質問の声が聞こえてきそうですが、そこは安心してください。

例えば、「選挙や租税について、生徒に身近に感じてもらえない」という先生の一言から始まり、「模擬党首討論を行って投票させることで主体的な参加が促せるのでは」、「税金という希少資源の配分というのは、配分的正義の視点を学べると思う」等の意見が研究会の参加者から出てきて、議論を重ねた結果、党首討論形式の授業が完成しました。弁護士が党首役を担当し、生徒さんには所得等の前提条件を設定した複数のグループに分かれてもらい、所属したグループの立場から党首に質問し、グループ討論を踏まえ、各自が投票するという授業です。今では毎年1回の恒例授業となっています。

他にも、「町有地の活用方法という地元に即したテーマはどうか」、「地元にとって無縁ではない農地開発と環境問題を取り上げることはできないか」等、教育現場にいる先生方から“きっかけ”を提供してもらうことから議論が始まり、授業案が出来上がっています。

法教育立ち上げから間もなく10年を迎える法教育研究会ですが、ここから生まれた授業を受けた生徒さんの中から、教員になり、自分も法教育を実践していきたいと言って研究会に参加してくれる方が出てきました。 先生方と歩み続けた10年間が、こうやって次世代に繋がっていくことは、望外の喜びです。

日弁連では、毎年、弁護士と先生方とが討論しながら法教育授業案を作っていくという「法教育教員セミナー」を実施しています。案ずるより産むがやすしといいます。このコラムで少しでも興味を持っていただけたならば、まずは、企画にご参加いただき、法教育を体験してください。

皆さんのご参加をお待ちしております。

 

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第18回 法教育は誰のためのもの?

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

沖縄弁護士会「法教育に関する特別委員会」委員

内田 光彦


 

 

皆さんは『法教育』という言葉を聞いたとき、誰が実施するもので、誰を対象として行われるものだと考えますか?

「法」だから法律専門家が担うものだろう、「教育」だから児童生徒、そして児童生徒を教える立場にある先生・教員のためのものだろう。そんな回答が返ってくるのではないかと思います。

では、この回答は正しいのでしょうか。

確かに、これまでのコラムでも紹介しましたとおり、弁護士で組織される日弁連は積極的に法教育活動に取り組んできました。夏には高校生を対象とした「模擬裁判選手権」を実施し、5月には小学校・中学校・高等学校教員を対象とした「教員セミナー」を実施しています。また、各地の弁護士会でも、主に小中学生及び高校生を対象に出張授業やジュニアロースクールを開催するなどしています。

このような活動を見てみると、現在の法教育は、主に教員や、弁護士を含む法律実務家等が担っており、その対象の多くが児童生徒であることは否めません。
しかし、これは「学校現場等における法教育」という文脈での話であると私は考えています。

そもそも、法務省が発足させた法教育研究会が作成した報告書では、法教育は「法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育」と定義されています。法教育は「法律専門家ではない一般の人々」のためのものであり、児童生徒のためのものであるといった限定は一切ありません。

むしろ、子どもたちの社会よりも大人の社会におけるほうが紛争は起こりやすく、その紛争は複雑なことが多いのではないでしょうか。そのような中で「法やきまりの意義」を考え、「紛争を処理し解決する」能力を身に付けておけば、裁判や調停に訴えずとも紛争を解決できる場面が増えるのではないかと思います。

また、児童生徒にとって学習の場は学校現場に限りません。家庭において、近所のコミュニティにおいて、さらには放課後に友達と遊ぶ場においてなど、様々な場面で子どもは学んでいます。そのときに、保護者や近所の人など身近にいる方々が、さらには、子ども同士が「法教育」を実践することは可能であり、皆さんが法教育の担い手となりえるのです。

法教育以上のとおり、法教育は、子どもだけでなく、誰もが学び、実践し、さらには教えることができるものだと思います。そして将来、皆さんや、私たちが実践した法教育を経験した子どもが、意識せずともその担い手になってくれたらどれほど嬉しいことでしょう。

ですので、少しでも法教育に興味のある方、是非一緒に(子どもを対象とした法教育活動に付き添ったり、参加・傍聴するなどして、子どもと共に)学んでみませんか。

 

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第17回 「特別支援学校での法教育授業」

第二東京弁護士会「法教育の普及・推進に関する委員会」委員

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

張江 亜希


 

 

第二東京弁護士会・法教育の普及・推進に関する委員会では、福井大学の橋本康弘准教授と共同で特別支援学校での法教育授業も実施しています。

授業テーマは、小中学校等で行っているものと変わらず、公平などについて生徒さんたちで議論し、考えてもらったり、契約の概念等を学んでもらったりなどで、授業をさせて戴く学校のニーズに応えて、担当の先生方と一緒に授業案作りをさせて戴いています。

この特別支援学校での法教育授業の特徴の一つは、「視覚」に訴える授業という点にあります。現場の先生方から、「生徒達は視覚で捉えたものほど理解度が上がるが、一方で、情報過多だと意識に残らない」というアドバイスを戴いたことから、これに応えるべく、視覚に訴え、かつ、シンプルな教材を作成すべく、議論とブラッシュアップを重ねています。

実際の授業では、先生方が演じる寸劇によって設定場面を把握してもらったり、イラストを用いたスライドを使用したりしています。

なかでも、先生方の寸劇は、とてもリアルで、見ている弁護士たちもその場面に引き込まれていきます。

また、もう一つの特徴は、「身体」でも理解してもらうというものです。具体的には、生徒さんたちも先生方と一緒に寸劇を演じてもらったりしています。

これも、生徒さんたち自身が「身体」を使って表現することで、「身体」でも理解をするという先生方のアドバイスを参考にさせて戴いたものです。生徒さんたちも、寸劇等を体験することによって、混乱なく、スムーズに場面を理解してくれているように思います。

そのため、当該テーマについて、生徒さんたち自身で考え、疑問に思ったことを弁護士に質問したり、他の生徒の意見に対し自分の意見を述べたりと、生徒さんたちの議論もなかなか活発に行われています。

昨年11月に出された文部科学大臣の「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」においても、「特別支援学校については、小・中・高等学校等に準じた改善を図るとともに、自立と社会参加を一層推進する観点から、自立活動の充実や知的障害のある児童生徒のための各教科の改善などについて、どのように考えるべきか」との諮問がなされています。

法教育法教育とは、物事を多面的にとらえ、様々な考えがあることを知り、自分はどのように考えるかといった力を養っていくという一面があります。このような法教育は、上記諮問にある、生徒さんたちが自立し、社会参加を行っていくために必要なものの考え方を養うための方法として、重要な役割を果たせるのではないかと思います。

特別支援学校の先生方、是非、弁護士と一緒に授業をしてみませんか?

 

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第16回 「法教育教員セミナー(予定)」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

清木 敬祐


 

 

日弁連「市民のための法教育委員会」は、いくつかのチームに分かれていますが、私は、そのうちの「企画チーム」に所属しています。
私は、日弁連「市民のための法教育委員会」委員になってからも、しばらくは「企画チーム」が一体何をするのかも、さらに言えば、どのチームに所属しているのかさえも、恥ずかしながら分からないまま出席をしていた記憶があります。

そのような私を「企画チーム」だったのだ、と明確に認識させてくれた企画である「法教育教員セミナー」が、今年(2015年)も5月23日(土)に開催される予定です。
私は、過去2回開かれた「法教育教員セミナー」に1回目は書記役、2回目は進行役として参加させていただきました。いずれも授業プランの作成を行ったのですが、当初は、ご参加いただいた教員の方から「この授業プランは、どの科目のどの単元を前提とすればいいのか?」という入口についてのご質問を受けたり、私の不用意な発言から「教科書『を』教えるのではなく、教科書『で』教えるのです。」とのご指摘を受けたりすることもありました。しかしながら、最後に「その視点は、道徳にはない視点ですね。」とのご意見をいただいた際、「法教育」のイメージが自分自身のなかで(未だ不十分であることは承知していますが)浮かんできた思いがしました。

今年の「法教育教員セミナー」においても、「道徳の授業プラン作成」がテーマのうちの一つとなっています。「道徳」も「法教育」も言葉からすれば抽象的なイメージであり、非常につかみにくいものだと思います。しかしながら、法教育教員セミナーで教員と弁護士がともに授業プランを作成するという実践によって、段々と自分の中で具体的なイメージが形成されてくるような気がします。

法教育

私も、法教育教員セミナーに参加させていただいたからこそ、「企画チーム」に所属していたと認識したことは当然として、「法教育」を多少は具体的にイメージできるようになりました。

今年は、「道徳の授業プラン作成」のみならず、新たに「民事模擬調停授業の体験」も行われる予定です。確かに、開催場所が日本弁護士連合会弁護士会館であるため、関東地方以外の教員の方には、多大なるご負担をおかけすることになりますが、実践のため、是非ともご参加の程宜しくお願いします。

 

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第15回 「高校生模擬裁判選手権」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

小原 麻矢子


 

 

日弁連においては、毎年、高校生のかた達による「高校生模擬裁判選手権」と、学校の先生方と弁護士とが協力して、法教育を盛り込んだ授業案を検討し意見交換を行う「教員セミナー」を開催しています。

これらのうち、高校生模擬裁判選手権は、このコラムでも紹介されていますが、高校生に、刑事模擬裁判を行う経験を通じて、物事のとらえ方やそれを表現する方法を学び、刑事手続の意味や刑事裁判の原則を理解することを目指しているもので、既に8回開催されました。私は平成25年及び同26年に関東大会の手伝いに加わりました。関東大会では、東京地方裁判所の実際の法廷を用いて、本物の裁判官、検察官、大学教授、法務省、新聞記者の方などが審査にあたります。扱うのは刑事事件で、検察側と弁護側に分かれて、周到に準備を重ねた高校生が4~5人ずつのチームを組み、本物さながらの法廷劇を繰り広げます。このレベルが高くて、毎回驚かされます。

高校生による裁判の準備には、「支援弁護士」と呼ばれる弁護士が指導にあたり、当日までに練習を重ねて本番に臨みます。高校生による証拠の検討、効果的な尋問、説得的な話し方、論告弁論のパフォーマンスは実に見事で、私も毎回感心してしまいます。参加する高校生の親御さんと思われる方が「傍聴」される姿も見られ、わが子の法廷を見守り、中には感激して涙される場面もあります。この日のために放課後と夏休み返上で、力を合わせてきた高校生の皆さんの奮闘ぶりは清々しく、手に汗握る攻防が繰り広げられます。まさに高校生による「選手権」にふさわしい内容となっています。高校生模擬裁判選手権を経験されたかたが、大学卒業後、司法の仕事に就いた、模擬裁判がそのきっかけであったという嬉しい記事を目にすることもあります。

「選手権」ですから順位を付けるのですが、審査は厳格に行われます。参加する高校生は緻密に準備を進めており、例えば弁護側でいえば、証人の証言と調書との食い違いを突いたり、検察の証拠の穴を厳しく攻めるといった姿勢が見られ、尋問や被告人質問をいかに最終弁論につなげるかが意識されています。

試合が終了すると、審査ののち、講堂で結果発表があるのですが、喜んだり落胆している高校生たちの姿も実に印象的で、頑張っている高校生たちを間近で見られるこの機会は、普段悩みも多い仕事の中での清涼飲料水のような感動を与えてくれます。きっと、法教育活動に参加する多くの弁護士がこのような思いを抱いていることでしょう。

 

法教育

そして同時に、たった一人の被告人のために、これほどの手続きを踏んで判断が行われている我が国の司法制度を、高校生の皆さんに肌で感じて貰い、将来につなげて頂きたいと願っています。

高校生のみなさん、友人たちとチームを組んで、本物の裁判所で、法に基づいて行われている実際の手続きを自ら実践し、刑事事件の法廷を自分たちで作り上げるという、達成感と喜びを是非味わってみて下さい。

 

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第14回 「法教育の魅力とは」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

鳥取県弁護士会法教育委員会 委員長

木村 潤


 

 

弁護士にとっての法教育の魅力は何かと聞かれると、なかなか一言で答えられません。
一つの答えとしては、法教育にはとても大切な意義や価値があるからということになるでしょうか。

確かに、法教育というものには大切な意義や価値がたくさんあります。
突き詰めていけば、個人の尊厳、自由、正義、公正、平等及び民主主義など、私たちの社会の土台となる大切な概念と結びついてます。
しかし、私は法教育に意義があるから、価値があるからというだけで、この活動をしているわけではありません。

私が法教育に進んで関わっている理由、それは、「楽しい」からです。
鳥取県弁護士会では、法教育の主な活動として、県内の中学校及び高校に弁護士を派遣する「出前授業」を行っています。
出前授業の準備はたいへんですが、実際にやってみると楽しくてまたやってみようと思います。

なぜ、楽しく感じるのか。
一つには、面倒な利害関係がないからということがあります。
普段の業務と異なり、学生相手には、私たちは何の利害関係もありません。また、他の公益活動のように人権関係の深刻な問題が生じているというわけでもありません。したがって、細かな理論武装や駆け引きに煩わされることなく、素直に学生に向き合うことができます。

もう一つの理由としては、やはり学生の反応が素直で新鮮だということです。
学生の反応は素直で正直です。特に、年齢が下がるほどにその傾向を感じます。彼らは、話している人が弁護士だからというだけでは納得してくれません。
この人の言っていることが理解できるか、納得できるか、また、面白いかということをとても素直に評価しています。

私が初めて出前授業に行った際、普段の業務と同じような感覚で接していたら、彼らの反応は寝てしまったり、つまらなそうにしたりと散々なものでした。
その際、自分がいかに特殊な世界にいて特殊な言葉を使って話をしているのか気づかされたのです。
そのような体験があってからは、意識的に話し方や言葉の使い方を工夫しています。どのようにすれば、彼らが考えていることを引き出せるのか、どのように話せば興味を持って聞いてくれるのか、そんなことを考えながらいつも授業の準備をしています。

 

法教育

これは、たいへんなことですが、実際にやってみると楽しいもので、また、弁護士としてのスキル向上にも役立つことだと思います。
法教育の最終的な担い手は学校の先生方ですが、不足するところは我々弁護士の手助けが必要です。
しかし、法教育はいつも人手不足です。
そのため、このコラムをご覧になっている先生方にもお誘いの声がかかるかもしれません。
その際は、ぜひ一度やってみてください。きっと法教育の魅力を分かっていただけると思います。

 

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第13回 「どうして小学校ではシャープペンシルが禁止されているのか」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

埼玉弁護士会「人権のための法教育委員会」委員

柘植 大樹


 

 

法教育の活動で小学校を訪問すると、児童から「どうして学校にシャープペンシルを持ってきては駄目なのか?」という質問を受けることがあります。

皆さんが小学生の時には、学校へ持ってくる筆記用具に制限はありましたか。私が約35~40年前に通っていた小学校では、シャープペンシルを学校に持って来てはいけないというルールなどありませんでした。けれども、現在、多くの小学校では使用を禁止しているようです。

 

では、なぜ小学校はシャープペンシルを禁止しているのかというと、その理由は定かではありません。これについて、法教育の授業後に聞いてみると、ある小学校の先生は「シャープペンシルだと鉛筆に比べて筆圧が弱くなる。」という回答でしたが、違う小学校の先生は「高級なシャープペンシルを自慢したり、盗難事件が起こることを避ける。」という説明でした。また別の小学校の先生は、「昔は使用できたが、ある時期を境に禁止となった。何が禁止の最大の理由であったのかはよく覚えていない。」と答えてくれました。

このように、多くの小学校ではシャープペンシルの使用を禁止していますが、その理由はいまひとつ判然としないのです。上に挙げた「シャープペンシルだと筆圧が弱くなる」というパターナリスティックな制約は、もっともらしく聞こえますが、筆圧は芯の濃さによってある程度調整可能と思われ説得力が弱く、そもそも1年生から6年生までを一律に全面禁止とする必要性も見当たりません(なお、シャープペンシルの使用を禁止している中学校はありません)。

おそらく、小学校でシャープペンシルを禁止する実質的な理由は、学校側のメリットとして、高価なシャープペンシルの盗難事件が起こるなどの危険や、授業中にカチカチと音を出されるなどの事実上の煩わしい事態を避けることができる点にあるのではないかと考えます。そして、いったん学校で「シャープペンシル禁止」というルール・方針ができると、学校側はこの問題を蒸し返すことなどしないため、使用を禁止する小学校の数は増えていきます。他方で、多くの児童は、入学以来ずっとシャープペンシルの持参・利用を禁止されていることから、小学校では当然にシャープペンシルは使えないものと思い込み何らの疑問も感じない、というのが実情なのではないでしょうか。

 

これまでは、たとえ児童から「どうして学校にはシャープペンシルを持ってきては駄目なのか?」などの疑問が出されても、ともすれば学校側は「ルールはルール。その中身の良し悪しは考えずに守りなさい。」という対応で済ませていたかも知れません。

 

シャーペン

しかし、近時、『自分たちできまりをつくって守る』との文言が新学習指導要領に盛り込まれ、また、小学校の授業に法教育が取り入れられてきた時代の流れからすれば、学校側も以前のような対応では不十分です。今後は、より積極的に「なぜ、そのようなルールが作られたのか」を皆で考え、場合によっては、小学校でも昔はシャープペンシルの使用が可能だったことやルールは不変ではなく変えられることを説明し、さらには、いま問題となっているルールは正しいのか、それとも変えるべきなのか等々について児童と一緒に考えることが、将来の社会で中心的な役割を担う小学生に対しての意味ある法教育となるのではないかと思います。

 

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第12回 「紛争のない世界へ」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

秋田弁護士会市民のための法教育委員会 委員長

高橋 重剛


 

 

「弁護士の仕事は何でしょうか。」と小学生や中学生に尋ねると、多くの生徒さんは、「もめ事(紛争)を解決する仕事です。」と答えてくれます。これは全くそのとおりで、私たち弁護士は、毎日紛争の間で悪戦苦闘しています。

紛争の中には、対立がかなり激しいものもあり、その度に、私は、この紛争はどこから生じたのだろうと考えます。たしかに、一方の当事者が100%悪い場合もなくはないのですが、多くの場合、当事者それぞれにもっともな言い分があることがほとんどです。そして、依頼人のお話を聴いていくうちに、紛争のきっかけは、ほんの些細なこと(と私には思われる)から芽生えたものであることが多いです。小さな紛争の芽は次第に大きくなって、やがて当事者ではとても刈り取ることができなくなって、私たち弁護士のところに持ち込まれる、そんな感じをイメージしてもらえるでしょうか。

 

紛争の渦中にいる私は、依頼人は紛争の芽が小さいうちにどうにかできなかったのだろうかといつも思います。

紛争の芽を芽生えさせない、あるいは、仮に芽生えたとしても小さいうちに摘むにはどうすればいいのでしょうか。それには、私は相手のことを尊重することが大事だと思っています。だれでも自分のことは大事ですし、できれば周りの人からも、尊敬までされなくても尊重されたいと思うはずです。私だってそうです。このことは、日本国憲法第13条でも「すべて国民は、個人として尊重される。」と規定され、国民の重要な権利であると考えられています。

ただ、自分だけが尊重されればいいというのでは、それは単なるわがままです。ここで重要なのは、自分が尊重されなければならないのと同じように、ほかの人のことも、自分が尊重されるように尊重しなければならないということです。

 

それでは、ほかの人を尊重するとは具体的にどのようなことをしたらよいのでしょう。誰にでもできる簡単なことは、まず目の前にいる人の話をよく「聴く」ことだと思います。漫然と「聞く」のではなく、真摯に「聴く」ことが大事です。ある講演会で、「聴く」という漢字には「耳」だけではなく、「目」と「心」も入っていると教えられました。まさに、耳だけでなく、相手の目を見ながら、相手を理解しようと一生懸命聴くことが大事ではないでしょうか。これから先、みなさんがほかの人の話に真剣に耳を傾けていけば、やがて紛争は減っていくと私は確信しています。

 

家族

とはいえ、私の仕事は忙しさを増すばかりで、一向に減る気配がありません。

どうか、みなさん、ほかの人の話をよく聴いて紛争を避けて通ってください。全世界から紛争がなくなるところまでいくのは大変でしょうが、少なくとも私の周辺から紛争がなくなれば、私は喜んで転職したいと思います。そして、ピザ職人になるための修行にでかけるのが私の夢です。

 

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第11回 「法教育を広めたい」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員

愛知県弁護士会「法教育委員会」副委員長

近藤 雅樹


 

 

「法教育が広まっていない」

ある新聞にこのような記事が掲載されていた。日弁連は平成15年4月に「市民のための法教育委員会」を設置し、法教育を普及させるべく活動してきた。文部科学省も、平成20年、21年に学習指導要領の改訂を行い、法に関する学習の充実を明確にするとともに、法教育の普及に努めているという。にもかかわらず、まだまだ教育現場では法教育が十分に普及しているとはいえないと言われているのである。

日弁連「市民のための法教育委員会」に所属し、また、愛知県弁護士会でも法教育委員会に所属して現場に携わっている身から見ても、法教育の十分な普及は実感できていない。さて、皆さんのご感想は?

 

「どうすれば、法教育を普及させることができるのか?」 法教育に携わる弁護士の誰もが頭を悩ませている問題ではないだろうか。もちろん、日弁連も試行錯誤してきた。このコラムが掲載されている日弁連ホームページの開設も、その1つである。委員が何度も討論を重ねて、提供できる具体的な授業案も作った。第4回のコラムで紹介された、「高校生模擬裁判選手権」もその1つである。

 

そして、平成25年度、26年度には「法教育教員セミナー」というイベントも実施した。この「法教育教員セミナー」は、法教育に携わる、あるいは、法教育に関心のある小、中、高校の教員に日弁連会館に集まってもらい、法教育に関する講演の後、複数のグループに分かれ、弁護士と教員それぞれ3~5名ずつで討論しながら、法教育の具体的な授業案を作っていくというものである。平成26年度は5月17日(土)に実施されたが、「道徳教材」をもとに、1~2限で実施可能な、簡潔な授業案を模索した。

参加者の法教育への関与の度合いは様々であり、まだ授業を一度もしたことがない方も、既に複数回実施している方もいた。しかし、関心の高い人ばかりであったため積極的に発言、質問が交わされ、「授業のテーマ」、「授業の目標」が設定され、これに従った授業案が徐々に練られていった。そして、具体的な時間配分も決まっていき、最後はこのようにして作られた授業案を書面化したのであるが、さすがにこの作業、教員にとっては手慣れた作業なのか、あっという間に完成していった。

弁護士と教員が協力して法教育を実践していく、そのきっかけになればと考えて実施した教員セミナーは、参加者には概ね好評であり、「今後も参加したい」「実際の授業に、弁護士に来てもらいたい」といった声が聞かれた。できあがった授業案も、少し手を加えるだけで実際の授業に活用できそうなものがあり、イベント自体は成功といってもよいかもしれない。

 

しかし、残念なのは参加者の少なさ。オブザーバーを含めて22名であり、これでは「法教育の広がり」にはつながらない・・・。チラシを作成し、各所、研究会、講習会、イベントで配布したりもしているのだが、参加者は増えない。

弁護士が学校に行って法教育の授業を行う「出張授業」なども、各地の弁護士会が積極的に取り組んでいる。参加者、経験者には好評であり、リピーターになってくれることが多いのに、そこからの広がりは決して十分ではない。

家族

私たちは「法教育を広めたい」のである。なぜ広まらないのか?我々の活動は功を奏していないのか?何か、どこかピントがずれているのか?どうすれば、広がるのか?コラムの読者の皆さんによい智恵があれば、是非ともお聞かせ願いたい。

容易に、かつ、劇的に法教育を広げるような手は、今日も思いつかない。「法教育の歌」でも作って、動画サイトにアップしてみようか?そんな馬鹿なことも考えながら、法教育を普及させるためのイベント、広報に頭を悩ます日々は続く。

 

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第10回 「ビバ デモクラシー!!」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

群馬弁護士会「法教育委員会」委員

矢田 健一


 

 

日本は民主主義の国です。民主主義は、大切に守っていかなくてはいけない素晴らしい制度です。
民主主義って、いつの時代でも同じものでしょうか?たぶん違うと思います。民主主義の国ができた瞬間から民主主義が完成したのではなく、時間をかけて少しずつより良い制度になってきたのです。今の日本の民主主義にもいろいろな欠点がありますが、未来にはもっと良い民主主義の国になっていることでしょう。

そんな民主主義の国では、一人一人の国民が主人公です。
だから、民主主義の主人公である国民一人一人が、ちょっとずつ成長すれば、日本の民主主義も、ちょっとずつ良いものになっていくはずです。
民主主義は、社会の決まりごと=ルールを、社会の構成員が自ら決める制度です。ルールを作るのも国民ですし、ルールを廃止したり変えたりするのも国民です。ルールによって社会がうまくいけば国民が利益を得ますし(いろいろ便利になります)、社会がうまくいかなくなれば国民が責任を負います(いろいろな不便を被ります)。

私は、ルールを難しく表現したのが「法」だと考えています。
社会のルールを、どんなふうに作ればよいのか、どんな内容で作ればよいのか、作ったルールが適切かどうかをどのように評価すればよいか、不適切だった場合の変更はどのような方法か、そんなことを学ぶのが法教育です。法教育は、国民一人一人が民主主義の担い手となる力を育むものです。
国語の勉強をして国語の学力が上がる、数学の勉強をして数学の学力が上がるのと同じように、法教育を通じて、日本の民主主義が良いものになっていくとしたら、すごいことだと思いませんか。
下駄箱僕が生まれた時から、日本は民主主義の国でした。民主主義は存在して当たり前のものでした。そんな民主主義をよいものにしていくなんて、法教育にかかわる前は、考えたこともありませんでした。それが、法教育を通じて実現できるかもしれないなんて、すごくワクワクします。
もちろん、一人一人の力は小さいし、世の中を大きく変化させることは大変です。国語や数学の偏差値のように、変わっていくことが実感できるものでもありません。でも、10年、20年という単位で考えれば、法教育によって、きっと社会はよくなっていくと信じています。
法教育で、民主主義を、そして社会をよくしようだなんて、なんだか、すごく大げさで夢のようなお話に聞こえるかも知れませんね。そんな、夢のような話に、ちょっとでも興味を持っていただけたら、僕らと一緒に法教育に取り組みましょう。

 

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第9回 「法教育の役割」

日弁連「市民のための法教育委員会」事務局長

横浜弁護会法教育委員会委員長

村松 剛


 

 

「対立と合意」。
中学校社会科学習指導要領公民的分野に新しく取り入れられたこのキー概念に触れて、学校も変わったなぁ、とそう思った。

ボクが子どもの頃、学校の文化は「みんな仲良く」だった。今でもこの文化は変わっていないようだが、少なくとも昔は「対立」を正面から認めることはタブーなように感じられた。「みんな仲良く」の背景には、「みんな同じ」という無言の同調圧力があったように感じる。鈍感なボクは、そんな学校文化を素直に受け入れ、楽しい学校生活を送ることができた。しかし、敏感で繊細な友人は、反発を感じていたようだった。
「みんな同じ」であれば「対立」は生じない。一人ひとりが異なるからこそ「対立」が生じる。「対立」を認めることは、社会の多様性を認めることであり、それは憲法の根本価値である個人の尊重、一人ひとりをかけがえのない個人として尊重することに繋がっている。
下駄箱一人ひとりは違う、けれど皆で共に生きていくために「合意」を重ねながら社会を創っていく。共生に異論はないが、これまでは「共生」を強く意識する余り、多様性を積極的に認める意識が薄くなっていなかっただろうか。「対立」を正面から認めるようになれば、もしかしたら、今、学校で問題となっているイジメは減るかもしれない。

新しく取り入れられたこのキー概念を、形式的に操作するだけの授業にしてはならない。「対立と合意」、その概念の背後にある多様性の存在や個人の尊重までしっかり伝えていくこと、法教育に期待される大きな役割の一つだと思う。

 

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第8回 「童話と法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

野坂 佳生


 

 

2013年度の朝日広告賞のテーマは「幸せ」であった。最優秀賞受賞作品は、子鬼が涙を流しているイラストに「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」というコピーが添えられているだけの作品である。見る者は桃太郎の側から鬼の側への視点転換を求められ、「みんなが幸せになることはできないのか?」と問いかけられる。10年余り前に米国で用いられている童話素材の模擬裁判教材を初めて見たときも、似たようなことを感じた。例えば、今では日本の社会科教科書にも載っている『3匹のこぶた』は、末の子豚に鍋で煮込まれてしまったオオカミの母親が、加害者の子豚に慰謝料請求するというものである(オリジナルは民事模擬裁判)。これも、正当防衛の成否云々というより、オオカミ側の視点からも問題を考えてみてもらうこと自体に意味がある教材だと思う。

当時、小学校入学前だった次男に『大工と鬼六』という絵本を読み聞かせていたときに、「このままのストーリーで法教育の教材にできるなあ」と思った。ある腕のよい大工が、急流に橋をかけてほしいと村人たちから頼まれ、断りきれずに引き受けてしまって悩んでいる(日本人的である)。すると、川の中から鬼が現れて、「橋をかけてやるから目ン玉をよこせ」と取引をもちかける(鬼の家には首を長くして人間の目ン玉を待っている幼子がいるらしいことが物語後半で示唆される)。大工は「どっちでもよい」などと曖昧な返事をしてしまう(これもまた日本人的である)。すると、翌朝には立派な橋が完成していて、大工は「早く目ン玉をよこせ」と鬼に迫られる(契約債務履行請求である)。この鬼の要求は認められるべきか。認められないとしたら、鬼はタダ働きになってしまうのか(何かしら大工に要求できないか)。大工の側だけでなく鬼六の側からも問題を考えてもらおうということで、こういう授業を2004年にジュニア・ロースクール福井で実践してみた。法教育の常として、契約成立要件だの公序良俗だの事務管理だのといった概念は教えなかったが、参加してくれた子どもたちは、いろいろな解決策を柔軟な発想で考えてくれた。もちろん正解などないから、考えるプロセスが授業の獲得目標ということになる。

また別の年に、『さるかに合戦』を素材とした授業で、「柿の種と握り飯を交換する際にカニは猿と何を合意しておけばよかったか」を考えてもらったときは、あるグループから意表を突く提案があった。カニは、「早く芽を出せ」とか「早く実がなれ」と柿に指示して迅速に柿を実らせることができるのだから、最初に育てた柿の木の実を猿が食べることは甘受し、その種で多数の柿の木を育てて、そのときには「実ったら自分で実を落とせ」と柿に言い聞かせておけばよいというのである。それが無理でも、そんなに多くの柿の実は猿も食べきれないから、猿がカニのために柿の実を採れば一定率を労賃として取得できるなど、柿の実の分配について合意できる可能性が高まるというのである。「財の希少性」は正義の問題を論ずる際の前提のひとつとされるが(全員が幸福になれるほどの十分な財があるのなら正義の問題は生じない)、その前提をひっくり返そうというわけである。これがペーパーテストなら誤答かもしれないが、ちゃんと「みんなの幸せ」を考えている。このような想定外の考えに出会えることも、法教育に携わることの楽しみのひとつである。

鬼のイメージ財が希少であってもなお「みんなが幸せになる」ことができないか。これは、法という社会システムの永遠の課題であるが、その課題を実現するために高邁な理想を語るのではなく、目の前の具体的な問題にどう向き合うかを考えてもらうのが法教育だと私は考えている。その具体的な問題は、もちろん子どもたちの日常生活に身近なものであったほうがよいであろうが、他方では、似た問題を現実生活の中で抱えている子が教室内にいないかどうかにも配慮しなければならない。その点、童話や昔話は、仮想の空間の話であるから後者の懸念が無用な反面、子どもたちが登場人物を身近に感じやすい面があるため、小・中学生を対象とする法教育の良い素材になり得る。いちど授業作りにチャレンジしてみていただきたい。

 

 

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第7回 「法教育授業のご紹介 ~ 模擬裁判と模擬調停」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

第二東京弁護士会「法教育の普及・推進に関する委員会」委員

額田みさ子


 

 

法教育の授業のテーマには様々なものがありますが、そのうちの2つをご紹介します。

まず、法教育で広く取り組まれているものとして刑事の模擬裁判があります。この授業のねらいは、一つには、刑事手続の意味や刑事裁判の原則を理解してもらうということがあります。推理小説の世界では、誰が犯人なのかという推理が進む中で「真実」が暴かれてどんでん返しが起こったりしますが、刑事裁判手続は、起訴事実を検察官が立証することができたか否かが判断の対象です。「疑わしきは被告人の利益に」というフレーズは、検察官の立証責任を表したもので、証拠に基づき常識に照らして有罪であることに少しでも疑いがあれば、被告人は無罪と判断されます。素朴に考えると、「真実を知っているのは被告人だ」と思いがちですが、このような考え方は、犯人と疑われた人に「真実を言え」という強制がはたらき、かえって虚偽の事実が作り出され、えん罪を生み出してしまうことから、現在のような刑事裁判の原則が生まれました。

また、裁判では、事実は証拠に基づき認定されます。そこで、証拠に基づき事実を多面的な視点で捉え、いくつかの事実から何が起こったのかを論理的に考え、そして、それをわかりやすく他者に伝えるという力が必要です。刑事模擬裁判は、このような力を養うというねらいもあります。

もう一つ、民事の紛争解決の一つである調停を、実際に体験してもらう模擬調停という授業があります。もめ事が起こった場合、本人達の話し合いで解決ができれば一番よいのですが、もめている者同士では冷静な話し合いができないこともあります。そのような場合に、中立な第三者が間に入り、話を聞いて双方の納得を促し、紛争の解決を目指す手続が調停です。裁判手続に比べ、調停は、双方の納得という点において、もめ事の解決方法として優れたものがあります。

模擬調停では、自分の意見をしっかり他者に伝え、相手の意見をきちんと聞き、そして、公平や公正という法的な観点から解決案を考えることが必要になります。たとえば、交通事故の被害を賠償してほしいという事案であれば、被害額はどのくらいか、その被害を誰が負担するのが公平かということを考え、合意の道筋を探すことになります。

授業風景この2つの授業で養われる力は、ひとり裁判や調停という場だけでなく、日常の生活の中でも必要とされる力です。

このような法教育の授業を受けた生徒さん達からは、「とても楽しかった。」、「難しいと思ったけれど、自分で考えることができた。」、「人の意見を聞いてなるほどと思った。」など好評価を受けることがほとんどで、考える授業である法教育の楽しさを実感してもらっていると感じます。

学校の長期休みに併せて、各地の弁護士会の多くが法教育のイベントを実施しています。この夏休みにも、いろいろな企画が予定されることと思います。本ホームページのイベント情報でもご紹介致しますので、是非、皆さま、お近くのイベントにご参加ください。

 

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第6回 「決まりを守る」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

広島弁護士会「法教育委員会」 委員

西本 聖史


 

 

「この決まりは守らなくていいんだよ。」

そう言うと、たいてい怪訝な顔をされます。どうかするとお叱りを受けることもあります。曰く、今の子どもたちは、決まりを守れなくなっているのだから、決まりを守らなくていいなんてとんでもないことだ、と。

確かに、みなが決まりを守らない社会では、安心して暮らすことはできません。決まりを守ることは大切です。

 

けれど、世の中にある決まりは、守るべきものばかりなのでしょうか。

身の回りの決まりを思い返してみると、おかしな内容の決まりはないでしょうか。誰かが勝手に作った決まりはないでしょうか。あるいは、決まりが作られた当時はよかったけれども、その後時代や状況が変わって、今では社会にそぐわなくなってしまった決まりはないでしょうか。

ときには、国会が作る法律ですら、守るべきものではないとされることがあります。例えば、民法という法律は、結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の相続分は、結婚している男女の間に生まれた子(嫡出子)の相続分の半分にすると定めていましたが、2013年、最高裁判所はこのような不平等な決まりは憲法に違反するとして、守るべき決まりではないと判断しました。

とにかく決まりを守れと言いさえすればいいというものではなさそうです。

 

では、私たちは、子どもたちに、決まりを守りなさいと教えるべきなのでしょうか、それとも決まりを守らなくてよいと教えるべきなのでしょうか。一見、両者は矛盾しているように見えます。

しかし、実は、両者は矛盾してはいません。そのことは、私たちがどうして決まりを守らなければならないのか、言い換えると、そもそも決まりが何を守ろうとしているのかに思いを巡らせれば、容易に分かります。

 

人を傷つけてはいけない、人に損害を与えてはいけない、契約を望む通りに結んでよい、一定の人に保護を与えるなど、世の中には実にたくさんの決まりがあります。

そのうち、よい決まりは、私たちにとってかけがえのない自由や平等といった大切な価値を守っています。よい決まりを守れば、みなが自由で平等な社会の中で豊かに暮らすことができます。だから、私たちは、よい決まりを守るべきです。 

ところが、悪い決まりは、こうした自由や平等といった大切な価値を守るのではなくて、反対に脅かすものです。日本でも、戦争が終わる前は、自由や平等を脅かす決まりがたくさんあって、みな怯えるようにして暮らしていました。だから、悪い決まりは、私たちが守るには値しません。

 

このように、決まりを守りなさいというのと、決まりを守らなくてもいいよというのは、一見矛盾しているように思えますが、実は、どちらも、自由や平等といった大切な価値を守ろうとしているという点では、同じことを言っているのです。

 

これからは、「決まりを守りなさい」と言って子どもたちを叱りつけるのではなくて、「どうして決まりを守らなければいけないんだろう」と考えさせてはどうでしょうか。そうすることで、きっと、子どもたちは、決まりの根っこにある自由や平等といったかけがえのない大切な価値に気づいてくれることでしょう。

そして、そうした大切な価値に気づいた子どもたちは、守るべき決まりと守るに値しない決まりを区別できる力を身につけるとともに、これまでにも増して、よい決まりを積極的に守ろうとしてくれるに違いありません。

 

星イメージ

サン=テグジュペリの星の王子様の中に、こういう言葉があります。

「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」

決まりの字面だけを見ていると、かんじんなことを見失いがちです。心の目ならぬ法的な目を育んで、決まりの根っこにあるかんじんなことに気づける人間になりたいものです。

 

 

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第5回 「リエちゃんの本当の試練」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

根本 信義


 

 

私が考案した小学生向けの授業案を1つ紹介します。このWebページで学習モデルとして紹介されているものです。

 

「町からルールがなくなった」という物語の第1章を読みます。小学生のリエちゃんが、ルールを破って先生や親に怒られてしまいます。ルールなんてなければいいのにと願ったことからルールがなくなった町に迷いこんでしまうのです。

 

ここでスピーチトレーニング的に、物語に描かれているトラブルを指摘させます。子どもたちからは「車が猛スピードで走っていて危ない」「町がゴミだらけ」「お菓子を買ってもお金を払わない人がいる」など次々と答えが返ってきます。次に、現実の社会ではそんな問題を起こさないようどんなルールがあるのかをたずね、さらに、そのルールがどのような形で存在するのか質問。答えはかなり怪しくなってきますが、ヒントを与えながらなんとか道徳や法律という答えを導いていきます。その上で、社会にはなぜルールが必要なのかを質問します。ここまで丁寧にたどれば、ルールは自分たちの生命・身体や財産のみならず、社会の安全を守るためという答えが自然と返ってきます。

 

続けて第2章を読んでいきます。妖精が現れてリエの願いを叶えたことを告げます。元の世界に戻してというと「ルールを作ってみんなが守るようになったら元に戻してあげる」と言われたリエちゃん。ルールは誰が決めるのか、どう実施されるのかを一緒に考えて行きます。その上で「権力分立」の考え方とそれが必要になる理由を気づかせます。

 

第3章では、町に町長が誕生し、議会や裁判所もできました。そこでリエちゃんに最後の試練が訪れます。議会で、虫歯にならないように、お菓子を作ることも売ることも禁止するというルールが作られてしまいます。リエちゃんは、裁判所でそんなルールはおかしいと主張しなければならなくなります。

 

ここで大事なのは、ルールが正しいかどうかを分析的に考えさせるため、そのルールの目的は何か、内容はその目的を達成するために適切な手段か、公正な手続きで作られたかなどという考え方の筋道を示すことです。子どもたちも、筋道を与えることにより、問題点を整理しながら結論を出せるようになります。

 

リエちゃん

こうして問題を解決したリエちゃん。原作では、リエちゃんに本当の試練が待っていることを告げる次のようなエピローグが書かれています。

 

妖精「すごいじゃない。本当に町を変えちゃうなんて。前の世界に戻してあげてもいいけど、今の世界の方が暮らしやすいんじゃない?」

 

リエ「やっぱり戻るわ。正しくないルールは変えられるんですもの。前の世界の悪いところもきっと私が変えてみせるわ。」

 

 

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第4回 「高校生模擬裁判選手権、ふるってご参加(傍聴)ください!」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

福岡県弁護士会 法教育委員会委員長

菅藤 浩三


 

 

 「高校生模擬裁判選手権」、毎年、夏真っ盛りの8月初め、高校生が模擬法廷で熱い闘いを繰り広げます。各校対抗で、高校生が主役となって、記録を読み、刑事裁判の弁護人、検察官になって、証人や被告人への質問を組み立て、弁論や論告を行うのです。2007年から日弁連・最高裁・法務省の3者共催で開催され、2013年までに7回行われました。開催場所も増え、第1回大会は東京と大阪の2か所だったのですが、2014年第8回大会は、東京・大阪のほか、徳島(四国)と金沢(北陸)の計4カ所で開催する予定です。

 

この大会のルーツはアメリカにあります。日本よりも前から、アメリカでは、高校生を対象に、ナショナルモックトライアルチャンピオンシップ(全米模擬裁判選手権)が開かれ、各州の代表校が集って優勝を競う大会が開催されていました。それを聞きつけた日弁連が、「日本でも同様の大会を行ってみたい!」と嚆矢(こうし)を放ったのです。

 

とはいえ、普通の暮らしをしている高校生に、いきなり「さあ模擬法廷でやり取りをして下さい」と言ってもまずできません。そこで、日弁連・法務省は、参加高校の技術向上をサポートするため、支援弁護士・支援検察官として、本物の弁護士や検察官を、参加を申し入れた全高校に配属しています。本物の弁護士や検察官と会うのは初めての高校生がほとんどであり、他方、弁護士や検察官も真剣そのものの高校生と接することで新鮮な気持を取り戻し、お互いに充実した時間を過ごしています。

 

日弁連も、これまでの大会の中で、参加する高校生にとってより競技しやすい形であるよう、大会の都度、改善を加えてきました。

 

例えば、大会教材は公的機関が過去につくったものの流用でなくオリジナルに日弁連でつくった新作を使う、証人役と被告人役は高校側から出すのではなく日弁連が用意する、というものです。次回、第8回大会でもまた、よりよい大会になるように改善する予定です。

 

もっとも、記録を読んだ上で、証人や被告人から必要な情報を引き出しながら、質問の中身を高校生のアタマと感性で考えてもらうことや、説得力のある論告や最終弁論の組み立てや発声を高校生にやってもらうことは変わりません。次回大会においても、高校生らしい瑞々しい感性を感じさせる質問や活き活きとした論告・弁論が繰り広げられることでしょう。

 

模擬法廷傍聴の様子

ちなみに、過去の大会の模様は「法教育フォーラム」 というウェブサイトの中に投稿記事が載っています。

 

大会実施日時や場所は日弁連ウェブサイトで毎年7月には案内しております。また、傍聴は無料です。高校生たちの繰り広げる闘いは太陽にも負けないほど熱く眩しいものです。ぜひご観覧下さい。

 

 

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第3回 「法教育をやってみよう!」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長

神坪 浩喜


 

 

私は、仙台弁護士会に法教育委員会ができた平成16年4月から法教育活動を始めました。それから約10年、その面白さと可能性、やりがいにとりつかれて、ここまで続けてきました。 法教育の活動は、法とは何か、正義や公正とは何かを考えたりする一方で、学校の教室に行ったり、弁護士会館を一日ロースクールにして子ども達に来てもらったりするアクティブなものです。

 

子ども達とふれあったりするのは、実に楽しいものです。緊張もしますし、授業の準備も大変ですが、法教育授業の子ども達の反応が素直で、キラキラした目を見ると実に嬉しいものです。

 

「あ、法って面白そうだな。あ、こんなものの見方や考え方もあるのか。答えのないことをみんなと話し合って考えるのって楽しい・・・。」そんなことを子ども達に体感してもらえるといいなと思っています。弁護士の仕事は、主に紛争の場面で、いろいろな立場の人、様々な考え方の人と出会う仕事です。いろいろな角度からものごとを見て、表現する仕事です。弁護士が行っているものの見方や頭の使い方を子ども達にも経験してもらうことは、子ども達が社会に出て、人とひととのつながりで生きる上で、とても有意義なことだと感じています。

 

私たち法教育に携わる弁護士が、子ども達と接する時間はほんのわずかしかありません。それでも子どもの心に何かの種を植えることができたらと思っています。そして、それがきっかけとなって、今すぐに何かにはならなくとも、何年も後になって、きれいな花を咲かせることがあるとしたら、とても素敵なことだと思います。

 

法教育、それは自分の頭で考え、自分で判断する。人の考えを頭から鵜呑みにせず、また否定もせずに、ますは受け入れてみる、話し合ってみる。さまざまな価値観、いろいろな考え方があることを知る。そんな中で、自分の価値観を大切にしつつも、人も同じように大切にしているものを尊重し、自律的に他者と共に生きることができる人を育もうとするものです。

 

授業風景

そんな法教育は、価値観が多様化複雑化する現代社会において、これからますます必要とされることでしょう。そして、やりがいのある活動です。

 

あなたも法教育をやってみませんか?

 

 

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第2回 「法教育活動の喜び」

「日弁連市民のための法教育委員会」委員

「東京弁護士会 法教育センター運営委員会」委員


黒澤 圭子


 

 

東京弁護士会・法教育センター運営委員会では、毎月平均1回から2回程度の頻度で刑事模擬裁判や裁判傍聴の依頼が入ります。中学校、高校のみならず、最近は小学校からの依頼も増加して、刑事模擬裁判だけではなく、民事事件を題材にした授業も行っています。1回の指導時間は、刑事模擬裁判の場合には事前指導と本番がそれぞれ2時間程度、裁判傍聴では事前の説明と事後の解説をあわせて3時間程度予定されているため、半日時間がとられてしまう、というような悩みもあります。

 

しかし、学校へ行くと、生徒さんたちは、弁護士が学校に来たということを喜んでくれます。そして、各プログラムを実施して必ず感じることは、中学生でも高校生でも、また小学生でも、議論の過程を踏めば、大人に負けない判断力があるということです。弁護士も、難しい内容を、生徒さんたちにわかりやすい言葉で説明することが求められ、その訓練によって、日常の弁護士業務に役立つ能力が養われるように感じます。

 

法教育の活動は、弁護士業務には直接結びつくものではありません。また生徒さんたちがそのような体験をしたことによって、直接的にすぐに効果が現れるというものではありません。しかし、このような活動を通じて、法的なものの見方や考え方に触れてくれた生徒さんたちが、将来の我が国の民主主義の担い手として育ってくれることを願って、その種を蒔けたら、それが一番の喜びではないかと感じます。

 

(平成25年9月現在)

 

 

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第1回 「七輪と法教育」

日弁連「市民のための法教育委員会」委員長

船岡 浩


 

 

ログハウスの朝は、七輪に火を熾すことから始まる。 新聞紙8分の1枚をくしゃくしゃにして、その上に松ぼっくりをたっぷり乗せる。更に、薄割れた炭のかけらを振り蒔いて、新聞紙に火を付ける。七輪の底に火が入ったところで、一気に火口から団扇で風を送る。

 

最初は、白い煙が辺り一面に立ちこめ、近所迷惑も甚だしい。でも、山奥なら問題ない。ほんの数秒で白煙はオレンジ色の炎に変わる。松ぼっくりに火が付くのだ。その火力は中々のもので、顔まで熱が伝わってくる。やがて、松ぼっくりは真っ赤に燃えだし、炭に熱を伝える。今度は炭が燃え始める。そこで、ちょっとごつ目の炭を投入。燃え上がりかけた炎を消さないように、一つ二つと投入する。でも、まだ、暫く、団扇で煽らなければ・・・左手が怠い。

 

インフラの整った都会では、レバーを捻ればすぐガスコンロに火が付く。煙をまき散らして、隣近所に迷惑かけることもない。でも、じんわりと素材を料理するには、ガスコンロではもの足らない。手間をかけた炎の方が、料理を美味しく仕上げてくれるはず。

 

我々は、法教育の名の下で、個人の尊重、立憲主義、自由、公正、平等といった法の根底にある基本的価値を理解し、自己・他者を尊重する態度・約束や法を吟味して守る態度、事実を正確に認識し、問題を多面的に分析する能力を身につけてもらうことを目標とし、教材の作成、高校生模擬裁判選手権の拡大、教員セミナー、法教育と道徳教育との位置づけ、日弁連内の関連委員会・学校現場・関係省庁との連携を目指して日々活動し・・・。あぁ、七面倒くさい。 でも、その方が、きっと良い社会を築けるはずだ。

 

山奥の七輪の炎を蔑ろにしてはならない。火を熾す手順が結構面倒くさかったり、最初は周囲に迷惑をかけるかも知れない。ごつ目の炭に火が熾るまで、手首がだるくなる。でも、この炎は食材を芯から加熱し、食べる人を幸せにする。多少の面倒や怠さは我慢しよう。全国津々浦々に法教育の炎が燃え盛る七輪を届けるぞ。

 

さて、今朝は、何を焼こうか。夕べ仕込んでおいたスルメイカの一夜干し?それとも、フィレ鯖の塩漬け?鯖ふぐの一夜干しもいいなぁ。地元の酒蔵で仕入れた純米吟醸酒が程良く冷えてる。朝から呑んだくれで、ごめんなさい。

 

 

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