いつかの未来のために - 法教育コラム
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第59回 「出張授業は「ソ」の音で」

日弁連「市民のための法教育委員会」副委員長
千葉県弁護士会「法教育委員会」委員
            石垣 正純



各単位会での法教育委員会の活動の中で重要なものに、学校への出張授業があります。公平や公正など法の価値や理念を教えるもの、主権者教育として主体的な社会へのかかわりに関するもの、18歳への成人年齢引き下げでやにわに脚光を浴び始めている消費者教育やワークルール教育、いじめの防止授業、模擬選挙・模擬裁判の指導などです。出張授業は「ソ」の音で


教員養成系の学部を卒業し、職業人生の4分の3を高校の教員として過ごし、教育と法の世界をより近くするために司法の世界に入ったという変わり者の私にとって、これら出張授業の拡大、スクールロイヤー制度の導入という近年の流れは、大いに歓迎すべきもので、各弁護士会でのますますの取り組みの発展を期待しています。


さて、そのような法教育を取り巻く状況の中で、最近私は、各弁護士会で、「出張授業の心構え」と題した研修を行わせてもらっています。すでに、滋賀、宮崎、大分、岐阜の各会でお話をさせていただきましたが、熱心に出張授業に取り組む(又はこれから取り組もうとしている)先生方に、授業の方法論とともに、「学校で児童・生徒に教えることを、もっともっと楽しもう!」という裏のテーマを伝えることができたのではないかと思っています。


授業の方法論で、一番大事なのは、まず児童・生徒をよく見ること、次に、教室や体育館で、もっと自由に歩き回ることです。そして、発声は「ソ」の音でということ。「ソ」の音でとは、地声の音程を「ド」としたときに、授業では、それより高い「ソ」の音で話してほしいということです。普段より、はっきりとした声になりますし、何より授業の雰囲気が格段に明るくなります。


出張授業の中で、時に、生徒が全然話を聞いてくれなくて「折れた」「もう行きたくない」、などと言う話をちらほら聞きくのですが、「ソ」の音で明るくはっきりと、そしてどんどん歩き回って生徒との距離を縮めると、もっともっと授業を楽しめます。弁護士は、いかに正確な文章を作るかを日々研鑽しているわけですが、児童・生徒に対しては、正確さよりわかりやすさが大事。子どもたちが退屈している時は、それは言葉の意味が分からない、話し方が単調だということです。そんな場合は、少し声を高くして、一人一人の子どもに手を差し伸べて向き合ってみてください。


これまで、日本の学校には、十分な法的な知識もなければ、法を支える価値への理解もありませんでした。それ以前に、自ら考える力、そして他と議論して考えを深める力も育ってはいなかったのです。しかし、今、数多くの弁護士が、学校での出張授業に取り組んでいて、これは、子どもたちが、大きく成長する良い機会なのです。そして、この活動を発展させていくためには、弁護士ももっともっと授業を楽しむようにすることが大切です。出張授業を通して、その授業のテーマとともに、弁護士の仕事がいかに楽しく素晴らしいものかも子どもたちに伝えられれば(シビアな部分は黙秘するとして)、教育と法の世界はもっと近いものになり、子どもたちがより安心して、安全に成長していけるはずです。


出張授業は「ソ」の音で! 楽しく出張授業をしていきましょう。