法教育コラム

いつかの未来のために(法教育コラム)

第125回 成年年齢引下げ動画のお勧め

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
弁護士 小原 麻矢子


私は当委員会の「情報発信チーム」に所属し、「法教育セミナー」というイベント開催などの活動に参加しています。私たちのチームで作成した成年年齢引下げに関する動画をご紹介しながら「法教育」についてお伝えしたいと思います。


この動画は「18歳になる皆さんへ/成年?何がどうなるの?教えて!弁護士さん」と題するもので、YouTubeで観ることができます。


内容、構成だけでなく、絵柄の印象、発声の有無、効果音も検討し、年齢が18歳にほど近い美術大学の学生の方にご協力を求め、多くの人たちに見ていただけるよう動画のタグ付け(関連するキーワード)にもこだわりました。「心がまえ編」と「実践編」の2編から成ります。


「心がまえ編」:高校3年生で4月から社会人になる加藤さんが、4月から住む部屋を探しに父と一緒に不動産業者を訪ねます。部屋を借りる契約は父が結ぶものと思い込んでいましたが、「契約者は自分」と聞いて驚きます。18歳以上は自分で契約を結ぶことができるからです。ドキドキしながら加藤さんは自分で賃貸借契約を締結します。2か月後、加藤さんは思いがけないトラブルに見舞われることになります。契約を解除したいと考える加藤さんですが、、


「実践編」:高校3年生で4月から大学生になる山本さんが、大学の近くで、ギターも練習できる部屋を探しています。最初に紹介された部屋は「大学まで歩いて5分です。」と不動産業者から説明がありました。本当に5分で行かれるかな?実際には「開かずの踏切」で15分も待つことになります。


その後、山本さんはやっと気に入った部屋に出会いますが、ギターを弾いても良いか尋ねると答えはノー。「うるさいから楽器は禁止です。」と言われました。

何とかこの部屋に住みたい山本さんは大家さんに掛け合い、交渉します。さて何と掛け合ったのか、皆さんならどんな提案をしますか。山本さんがどのような提案をしたかぜひ動画をご覧になってみてください(笑)


さて、山本さんの提案は入れられ大家さんと合意できることになります。山本さんはこの提案を守ると約束し、契約の条件に入れ込むことになりました。


何か問題が生じたとき、自分の希望や意思を明確に伝えることが必要になります。そのうえで、相手が何を望んでいるのか、自分が相手の立場だったらどのように感じるかを考えてみましょう。すると「〇〇ならどうだろう」という案が浮かぶのではないでしょうか。物事には色々な見方や考え方があります。相手の意見もよく聞きながら、互いの意見をすり合わせ、工夫しながら徐々に合意へのプロセスを辿ることになるでしょう。


こうして合意を形成するとき、大切なのは、正義、公正、個人の尊重などの価値を理解していることです。これらの価値に基づく法や司法制度を軸としたものの見方を身に付けるのが法教育です。


物事には多面的な見方があります。幾つもの視点があることを知り、考えを深め、対話によって公正な問題解決を目指しましょう。18歳になれば契約に関することも自分で自由に決められるのであり(契約自由の原則)、これは憲法上の価値に由来します(自己決定権)。動画でも出てきますが、契約の自由には契約したことを守るという責任が伴います。


お互いに納得できる合意に至るなかで、根幹をなすのは法教育的なものの見方ができているということです。


正義、公正、個人の尊重などの重要な価値を理解した上での考える力、対話の力を身に付けて、一人ひとりが自分らしく生きていけるようになることを私たちは目指しています。


なお、視覚障がいを持つ方のための動画作成も企画しています。目が見えない方や視力が弱い方も、成年年齢の引下げで上記のような契約締結などの場面に直面することになります。合意の場面で自分の意見や希望を明確に伝え、相手と折り合いつつ、契約の内容を理解し、責任を負うことになるのです。正義、公正、個人の尊重などを軸とする法的なものの見方を身に付けて自分らしく生きる力が育まれるよう願っています。


私たちも盲学校の先生のお話を伺うなどしながら、主に聴覚でご理解いただけるような工夫をしつつ、わかりやすいものを作りたいと考えています。