いつかの未来のために - 法教育コラム
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第69回 「ぶらんこ復活」著者とのやり取りの中で


埼玉弁護士会「人権のための法教育委員会」委員 

弁護士 水谷 亜弓



「ぶらんこ復活」は、小学校3・4年生の道徳の副読本に載っている話で、これは実話である。
法教育活動の中で知り合った著者との、当時のやり取りを振り返ってみた。
なお、著者は話に出てくる当時の校長でもある。


当時、著者はこれを「自分たちで学校生活を快適に過ごすためのルールを考え、そのルールに基づいて実施、運用する」話として執筆したそうである。


その後、大学の非常勤講師をしている著者が、この題材を使って、教員を目指す学生らへ模擬授業を行うにあたって、その授業案について私に意見を聞いてくれた。
 
なぜルールが存在するのか、という視点抜きには語れない「ルール」というものを安易に作って、「みんな守ろうね」では何ともツマラナイ。


でも、この話には色々詰まっていた。


噛めば噛むほど・・・もとい、読めば読むほど、面白そうな題材だった。


しかし、ポイントを抑えなければ意味がない。
私は、生来の図々しさも手伝い、「ぶらんこで遊ぶ権利をはく奪する(横暴な校長である)」と伝えてしまった。
もちろん、最終的に校長は児童からの提案を受け入れ、禁止を解除するのだから、非常に柔軟性の高い校長なのだが。


当時の自分のメールを(大層恥ずかしいが)引用する。
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①怪我が多いからと一方的にぶらんこで遊ぶ権利はく奪
②ここで普通の小学生は「学校が決めたことだから」と諦める。
③主人公の子は諦めずに自分のやりたいことを主張する
④また遊ぶには、問題点をクリアしなければならない
⑤どうすればよいか話し合って決める
⑥解決策を学校側に提示
⑦学校側がこれを認め、ぶらんこ使用を再開
 
という流れで、③を自由にいえる環境があることがまず大切です。
その上で、⑤ですね。自分の自由(自己実現)と他者の自由の共存、そして
みんな自由に使うと自分も他人も怪我をしてしまうというリスクをどう回避するか。
さらに、それを受けて合理的な解決策と認めてルール変更(使用不可から使用再開へ)する学校側の姿勢。
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生意気だなあと思う。
でも、これを真正面から受け止めてくれた。
むしろ面白がってくれた。

そして、授業案として、低、中学年は③(自分の意見を主張する。すなわち、ルールへの疑問を持つことと、それを表明するという行動)をメインに、高学年は⑤をメインに法教育授業として展開できるのではないかとアレンジされ、実際に模擬授業活動を行っている。 


なお、著者が日弁連主催「法教育セミナー」に参加された際、ワークショップにて「ぶらんこ復活」が題材として取り上げられたが、著者はそれが扱われることを知らなかったとのことである。自分が著者だと伝えると、大変盛り上がったそうだ。


その後のやり取りの中で、ぶらんこ復活の授業の効果として私が感じたことをコメントしていたので、これも(非常に恥ずかしいが)引用する。
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※なぜきまりがあるのかを考えることで、きまりがあることは、実は当たり前のことではないこと、どうしても必要だから存在するのだということを理解できるのではないでしょうか。
こどもたちが、なぜ既存のきまりがあるのかと疑問に持つことができ、きまりの真の意味を知って行動することで、そのきまりを守る意識も高まると思います。


逆に、きまりを作る側としては、そのきまりの意味を説明できないといけませんし、そのきまりが過度に制約を伴うものであった場合、本来は自由な存在である、基本的人権を持つ1人1人に対する過度な制約であることを真摯に受け止め、変更も含め考えなければならない問題だとも思います。
 

例えば、通学班一つとっても、本来、どの道を通ろうが、誰と行こうが、1人で行こうが「自由」なはずなんですが、それよりも、「安全な登校」という価値が上回るからこそ、その自由を制限しています。
 

しかし、班はすべて軍隊のように一糸乱れず歩調を合わせなければならない、となると過度な制約ですよね。「安全を守る」という目的からもかけ離れ、意味のない制約になってしまいます。

ぶらんこ復活は、上記の理解のためにとてもシンプルでこどもたちも理解しやすい題材だと思います(サクセスストーリーだから余計に!)。
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道徳として載っている教材も、ポイントを抑えれば十分に法教育の題材になる、というお話でした。

本当に生意気でごめんなさい。


【参考】『私たちの道徳3・4年生』(文部科学省ホームページ)
 

以上