法教育コラム

いつかの未来のために(法教育コラム)

第114回 SNSに関する出前授業について

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
新潟県弁護士会「学校へ行こう委員会」委員
     弁護士 中 村 亮 平


私が所属する新潟県弁護士会の学校へ行こう委員会では、多くの学校から出前授業の依頼が来ます。出前授業のテーマとしては、主権者教育や弁護士の職業説明、消費者教育等が多いですが、その中でも特に多いのがSNSに関するテーマについての依頼です。


出前授業を行う前に講義内容について学校側と打合せを行うのですが、学校によって抱えている問題は異なっているようです。生徒のSNS利用について保護者が介入できずに困っているとの相談があったり、他校の生徒と交際関係にあった生徒が、交際がこじれたことによりSNS上で誹謗中傷したことが問題となったり、一口にSNSの問題と言っても話す内容は幅広くなります。


また、話をする対象は生徒・学生に限られず、保護者・教員の場合もあるため、話す内容が同じでも表現の方法を変更したり、難しい言葉の説明が必要となってくる場合もあります。学校によっては、刺激の強い具体例は控え、生徒・学生の精神的負担に配慮してほしいとの希望がある一方、刺激の強い具体例を示して、他人事ではないということを強く印象付けてほしいという希望をされる学校もあります。


近年では、闇バイトとして、足のつきやすい特殊詐欺の受け子・出し子や強盗をさせて金品等を回収する役目を未成年に担当させている事件の報道が見られます。また、バイト先や飲食店での不適切行為を撮影した写真・動画等を投稿し炎上する報道も多く見られます。世間的にも少年が重大事件に関わる報道が増加しているように思います。そのような事情もあり、学校でもSNS教育については関心が高く、出前授業の内容に求める水準が高くなってきているように思います。


特に、親が子に対してSNSの利用について注意を促したり、利用を制限したりするのは、子の年齢が上がるほど難しい問題となります。小さいころから十分な知識を備えるためには、保護者が如何に知識を得ているかが重要となります。そのため、保護者が子にどのような説明をすれば聞いてもらえるのか、という視点も意識しながら出前授業の資料を作成することも大切であると感じています。


出前授業を担当する弁護士も、近年の事件やインターネットに関する法改正には敏感になり、日々知識をアップデートしていく必要があることを強く実感しています。特に、実際にSNSを利用している生徒には知識の差をつけられないようにすることが、大変ではありますが、重要だと思います。


以上