法教育コラム

いつかの未来のために(法教育コラム)

第106回 ルールや社会は変えられる!

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
第二東京弁護士会「法教育の普及・推進に関する委員会」委員
根本 藍


法教育の目的は、「個人が尊重される自由で公正な社会」の構成員としての市民を育てることにあります。この目的を達成するために重要なことはたくさんありますが、そのうちの一つが、自分達でルールや社会を変えられるという意識を持ってもらうことであると考えています。


日本では、ルールは与えられるもの、守らなければならないものという意識が強く、自分達でルールや社会を変えていくという意識が低いと感じています。日本財団による18歳意識調査(2022年3月24日)によれば、日本、アメリカ、イギリス、中国、韓国、インドの17歳から19歳の男女(各国1000人)に対して行われたインターネット調査の回答結果の中で、「自分の行動で国や社会は変えられると思う」と答えた若者が、他国は50%を超えている(1位のインドは78.9%)のに対し、日本は26.9%とダントツで低くなっています(icon_page.png外部リンクPDF)。また、先日読んだ本に、スポーツの世界でも、他の国では、勝てないなら勝てそうなルールでスポーツを作ってしまえばいいという発想があるのに対し、日本では自分が勝てないからといってルールに手をつけるのは潔くないという発想があるという指摘があり、興味深かったです(為末大『諦める力〜勝てないのは努力が足りないからじゃない」(プレジデント社、2013)124頁)。


しかし、ルールや社会は変えられないという意識を変えていこうという動きもあります。例えば、NPO法人を中心に、校則の改訂を希望する中学校・高校で、学校と生徒の話し合いで校則を変えていこうという活動が行われており、私もこの活動に関わっています。生徒達が「なぜこの校則があるのだろう?」「変えると問題があるのか?」「よいルールって何だろう?」などと考え、学校の先生との対話を通じて、校則を変えていく活動です。なかなか思うように進まないことも多いですが、生徒達は、約1年間の活動終了後、「自分達が動くことで、世の中の色々なことは変えられるとわかった。」「政治だって、みんなが変えようとすれば変えられる。」など、身近な校則を変える活動を通じて、自分達で社会を変えられるという意識をもったことがわかる発言をしていたのが印象的です。


また、SNSの利用も市民が社会を変えていく契機の一つになると考えられます。最近でいえば、例えば、神宮外苑の再開発のための樹木伐採について、その中止を求める一般の人によるオンライン署名やSNSの発信等がされています。第二東京弁護士会の法教育の普及・推進に関する委員会では、最近、インターネットメディアリテラシー(特にSNSの利用について)の出張授業の依頼を多く受けます。授業において、私たち弁護士は、情報の発信と受信の重要性を伝え、SNSの利用が、社会を変えていく武器になることを伝えています。一方で、SNSの利用により、子どもたち自身が危険な目にあったり、他人の人権などを侵す可能性があったりすることも伝え、責任をもってSNSを利用するということについて考えてもらっています。


意識の改革は簡単ではないと思いますが、若い人たちが社会に関心を持ち、自分達でよりよいルールや社会を作っていくという意識を持つきっかけとなればと願って、法教育活動を行っています。