法教育コラム

いつかの未来のために(法教育コラム)

第73回 法教育なるほどセミナー~弁護士の異常な情熱~


日弁連「市民のための法教育委員会」委員
熊本県弁護士会「法教育委員会」副委員長
野村憲一




熊本県弁護士会では、平成18年から毎年8月頃、演劇などを通じて法教育を子どもたちに行う「法教育なるほどセミナー」というイベントを開催しています。小学生及び中学生を対象としており、それぞれ定員30名程度で行っています。
開始当初は、参加者がなかなか集まらず苦労していましたが、5年ほど前くらいから突如申込みが殺到するようになり、現在では、早い段階で定員に達し、やむなくお断りすることがあるほど人気があります。なぜなのかは正直なところ私たち委員も分かっていません。

同セミナーの構成は、基本的には、弁護士が演劇を行い、そこで、後にディスカッションしてもらう考慮要素となる事情が出るようにします。その後、数名ずつの班に分けた参加者にそれぞれ意見を発表してもらい、班としての意見を集約しもらいます。そして、全員に発表してもらい、違った視点の意見を聞くことになります。このように、多様な意見を聞き、様々な利害を調整することで、法的なものの考え方を身につけてもらうことを目標としています。いわゆる「正解」は設定していませんので、とにかく褒めて、子どもたちの発表を煽っていきます。

主役はもちろん参加してくれる子どもたちです。しかし、「やりすぎでしょう」と思うくらい、そこには弁護士たちの異常な情熱があります。
完全オリジナルのシナリオを一から作り、配役を決め、練習前に台詞の暗記が義務付けられます。月1回だった委員会は、週1回に増え、イベントの直前期は、週に複数回集まります。
最初は、みんな恥ずかしそうに、「やらされているから仕方ないな」という感じで演技します。しかし、演技指導(主にどうすれば面白くなるかについて)が行われ、徐々にスイッチが入っていき、やがて自分の台詞はこうして欲しいなど積極的な意見(主にどうすれば笑いが取れるかについて)が出てきます。誰よりも笑いを取りたいというのは、当初の目的を見失っている気もしますが、そこには、期や年齢は関係なく、アクターとしてのプライドが見え隠れしています。かく言う私も、過去、女子バレー部員役、紫色の全身タイツを着て某国民的アニメのバイキンをモチーフにした悪役などを演じました。

小道具や衣装にも力が入っています。ついに犬の着ぐるみまで手作りした際は、自分たちはどこに向かっているのかよく分からなくなりました。
映像も凝り出し、1つのピークを迎えたのが、平成27年度。静止画ベースの映像に台詞を入れ込む回想シーンと生の演劇を融合させることに成功しました。
このように作品としてのクオリティーは年々上がっていったように感じます。
しかし、その代償は大きく、平成27年度を境に委員数が激減しました。みんな情熱を注ぎすぎ、特に若手の負担は大きく、(うすうす勘づいてはいましたが)通常業務に支障をきたしていたのです。猛省し、「労力をかけすぎない。若手に無理させない。」をモットーに、ここ数年は過去の演目のリメイクが続いています。

ただ、やはりシナリオを作っている際の議論、子どもたちに何を伝えるべきか、分かりやすくするためにはどうすべきかを考える作業こそ、私たち弁護士にとっても非常に勉強になるのだと思います。そのため、再びオリジナルのシナリオを作りたいと思っています。
現在当会の法教育委員会の実働は10数名です。しかし、法教育に情熱をもっています。今後も子どもたちに楽しんでもらいながら、法教育を伝えられるように切磋琢磨していきたいと思います。