法教育コラム
いつかの未来のために(法教育コラム)
第129回 自分の意見を持つこと
日弁連「市民のための法教育委員会」委員
札幌弁護士会「法教育委員会」委員
三浦 航志
私が所属する札幌弁護士会では、毎年12月に高校生を対象にしたジュニアロースクールを開催しております。午前中は、学校の教員と弁護士が共に行う法教育授業、午後は刑事模擬裁判が行われます。他にも、小学校、中学校、高校での出前授業を行っております。
このような活動を通じて、私が学生の頃は、自分の意見を持てていただろうかと考えることがあります。少数派の意見を言うのが恥ずかしく、周りの目を気にしていなかっただろうか、間違うことを嫌っていなかっただろうか、仲の良い友人の意見に流されていなかっただろうかなどです。これは、学生時代に限ったことではなく、弁護士となった現在でもこのような考えがよぎることがあります。自分の意見を伝えたら周りからどのような反応をされるでしょうか。そう考えると、自分の意見を持ち相手に伝えるというのは、とても勇気のいることだと思います。周囲の反応を気にして、自分の意見を胸にしまいこんでしまう、更には自分の意見を持つことすらやめてしまう。全く不思議ではありません。
いきなり、自分の意見を周囲に伝えるのは難しいと思いますが、同じ問題に直面した際、周囲にいろんな意見を持っている人がいると知ることが最初の一歩なのだと思います。普段の授業であれば不得意科目で間違えるのが怖いから、、、といった周囲の目を気にすることがあるかもしれません。しかし、ジュニアロースクールや出前授業では、生徒の皆さんには同じ土俵で考えてもらうこととなります。そこでは、人の数だけ意見が飛び交います。正解のない問題なので、間違ったらどうしようという不安もありません。周りと意見が異なるのが当たり前という環境です。そこに身を置くと、自分の意見をもっていいのだと安心できると思います。自分の意見を持つことができると、周りの意見との違いに気づくと思います。より進むと自分の意見を相手に伝え、相手が意見を変えて自分の意見に賛同する体験をすることがあると思います。その逆も然りです。自分の意見を持つことは、他者との議論につながります。議論を行うことで、自分の意見をより多角的な視点で考えることができます。その結果、結論が変わることは、おかしいことではありません。他者との議論を通じて、自分でも気づかなかった考えや感情があることを知ることができるのです。
法教育活動を通じて、より多くの皆さまにこのような体験をしていただけるよう微力ながらも尽力させていただければと思います。