法教育コラム

いつかの未来のために(法教育コラム)

第87回 「正解」のない問題に向き合ってみよう

日弁連「市民のための法教育委員会」委員
第一東京弁護士会「法教育委員会」委員
坂本 順子


column_87.png 皆さんの中で、動物が好きな人はいるでしょうか。反対に動物は苦手という人もいるかもしれません。例えば、お住まいの街で野良猫が増えてしまったら、街をあげて保護した方が良いと考えるでしょうか、それとも保護には費用もかかるし殺処分もやむなしと考えるでしょうか、或いは、もっと他に良い対策があるでしょうか・・。

第一東京弁護士会法教育委員会では、中学生向け春休み法律学校の企画として、架空の自治体「ひまわり市」における「地域猫条例」制定について考えてもらおうと準備中です。人と猫とが快適に共生することのできる街づくりを推進するために、市長は「地域猫条例」を議会提案したいと考えており、プレゼンを実施します。これに対して、賛成・反対のそれぞれの立場から、住民が意見を述べます。中学生の皆さんには、立法担当者になってもらい、これらの意見を聞いて適正なルール作りについて協議して戴き、最終的に、この条例を制定するか否か、制定する場合にはどのような内容にするかを考えてもらう予定です。


これは法教育プログラムのほんの一部のご紹介でしたが、今、正に社会問題となっている、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正にも通じるところがあります(なお、このコラムは2021年1月に書いています)。コロナウィルス感染防止の実効性を高めるためには、罰則を導入して厳しく取り締まるべきという意見もあるでしょうし、それではかえって人々の生活が成り立たなくなる恐れもあるし、営業の自由など私権の制限には慎重であるべきだという意見もあります。医療従事者、行政の長、各種店舗の経営者、店舗利用者など、立場が異なれば視点も変わり様々な考えがあるでしょう。法教育での学びは、直ちに目に見える成果となるわけではないかもしれませんが、こうした社会問題に直面する将来において生きてくると考えています。


私事ですが前職は公立小学校教諭でしたので、45分間で一定の答えに辿りつけるように授業を組み立てることが自然と身に付いていました。もちろん、それに適したものもありますが、法教育の授業では、「正解はありませんので、自分で考えて、みんなで結論を出して下さい」と冒頭に伝えるようにしています。地域猫の問題も、特措法の問題も、唯一無二の「正解」があるわけではありません。大事なことは、私たちもその社会の構成員の1人であるということ、そして、いつの時代も社会における諸問題は、その時代に生きる人々が知恵を出し合ってより良い解決を目指してきたということです。


まだ法教育の授業を受けたことのない方は、ぜひ一度、各地の弁護士会の法教育プログラムを経験してみてください。