接見交通権の確立(接見交通権確立実行委員会)

活動の概要

日弁連では、接見交通権確立実行委員会を設け、各地での接見妨害の実情を調査し、法務省との協議や、全国各地で提起されている接見国賠訴訟の検討、協力を通じて、接見妨害や接見指定制度の打破、秘密交通権の確立を目指して活動しています。



接見交通権とは

逮捕、拘束されたら

警察留置場・拘置所で身体を拘束されている被疑者・被告人は、犯罪の証拠を隠す疑いがあるなどの理由で、弁護人以外の家族や友人など外部の人間との面会を禁止されることがあります。これを接見(面会)禁止決定と言い、検察官の請求等により、裁判所が決定します。この「犯罪の証拠を隠す疑い」という理由は、実務では広く解釈されていて、自分は無罪だと主張している場合や黙秘をしている場合などは、原則として「犯罪の証拠を隠す疑いがある」として接見禁止とされているのが実情です。この禁止件数は以前よりも増加しています(下表「接見禁止件数の推移」を参照してください)。

 

誰にも連絡がとれない

このように外の世界から遮断された警察署の一室で、朝から晩まで取調べが続き、自白を強く求められたりするのですが、異常な密室の状況のため、精神的・身体的にかなりの苦痛があり、無実の人間でも罪を犯したと虚偽の自白をし、これまで多くの冤罪事件が起きています。また、被疑者等には、家族と連絡をとりたい、勤務先の仕事の手配をしたい、経営している会社に指示がしたいなどのさまざまな心配事があります。接見禁止決定が出ると、それさえもかなえられなくなります。

 

接見交通権が必要な理由

刑事訴訟法39条1項は、弁護人依頼権を保障した憲法34条を受けて、被疑者・被告人に弁護人とだけは自由な接見(面会)ができることを保障しています。これを弁護人と被疑者・被告人との接見交通権といいます。

弁護人との接見では、立会人も付かず秘密が保障されるために、安心して相談できますので、無罪・真実について主張したり、不当・違法な警察署の取扱いについて訴えたり、家族や会社等への連絡を頼んだりすることができます。弁護人にとって、被疑者の話を聞いて、取調べに対する適切な指示をしたり、取調べの威圧的な雰囲気に屈して嘘の自白をしないように励ましたり、被疑者に有利な証拠を集めるなど、その職責を果たすために自由で秘密裡の接見は不可欠です。

 

弁護人との接見でも制約される!

しかし、同時に刑事訴訟法39条はその3項において、弁護人との接見であっても、例外として「捜査のため必要があるとき」には一定の制約がなされる場合があることを規定しており、実務においては、「捜査の必要」の名の下に、検察官が被疑者の勾留場所に接見指定権を行使することがある旨を通知すると、弁護人は被疑者との接見を厳格に制限され、特に検察官が認めた場合にしか接見できないという運用が不当にもなされ、このような「自由な接見の原則」と「例外としての制約」の逆転現象により、実務の現場においてさまざまなトラブルが起きていました。

日弁連は、原則と例外の逆転した実務の運用を改善すべく、接見交通権確立実行委員会を設け、法務省との協議を行う、違法な接見妨害等に対して提起された国家賠償請求訴訟を検討、協力するなどして闘ってきました(別表の接見妨害国賠訴訟全国一覧表を参照してください)。

その結果、一定の改善も見られるようになりましたが、なおこの問題をめぐる本質的な解決はなされておりません。結局、「自由な接見の原則」に対して「例外としての制約」を認めた刑事訴訟法39条3項の存在そのものが接見交通権をめぐるすべてのトラブルの根源にあります。そこで、現在、同条項の削除に向けても活動を展開しているところです。

また、近時、捜査機関は、接見交通権の秘密性を侵して、接見内容について取調べの際に尋問したり、悪質なケースでは接見内容を取調べて供述調書化したりする例も見うけられます。また、接見禁止決定を悪用し、弁護人からの手紙に家族からの伝言が入っていることを理由にこれの差入れを拒否するような事例もでてきています。

このようなことが許されるなら、安心して弁護人に相談できませんし、弁護人もその職責を全うできませんので、日本弁護士連合会はこのような捜査機関のやり方の是正を求めることが課題であるとして活動してゆく所存です。