刑事弁護に関する制度のご紹介

刑事弁護における各制度

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1 国選弁護制度

国選弁護制度とは、被疑者(刑事事件で勾留された人)および被告人(起訴された人)が、貧困等の理由で自ら弁護人を選任できない場合に、本人の請求または法律の規定により、国が費用を負担して、裁判所、裁判長または裁判官が弁護人を選任する制度です。


ただし、後から資力(弁護士費用を負担できるお金)があることが分かったなど、場合によっては、裁判所から費用を負担するように命じられることがあります。


被疑者国選弁護制度

被疑者が勾留されており、勾留された被疑者の経済状況等により弁護士費用を負担することが難しい場合に、本人の請求等により、裁判官(国)が弁護人を選任する制度です。


2006年9月以前は、被告人のみに国選弁護人が付されていましたが、2006年10月から、被疑者国選弁護制度が実施されました。しかし、その対象は、被疑者に勾留状が発せられている場合における「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件」に限られていました。その後、2009年5月から、対象事件が「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件」に拡大され、2018年6月からは、対象事件が「被疑者が勾留されている全事件」に拡大されました。


逮捕されてから勾留されるまでの間の被疑者は、現行法上、被疑者国選弁護制度の対象とはされておりませんが、後述する当番弁護士制度を利用することが可能です。また、一定の要件を満たす場合には、後述する刑事被疑者弁護援助事業の利用も可能です。


被告人国選弁護制度

起訴された被告人の経済状況等により弁護士費用を負担することが難しい場合に、本人の請求等により、裁判所等(国)が弁護人を選任する制度です。



2 私選弁護人選任申出制度

私選弁護人を依頼したい被告人または被疑者が、弁護士会に対し、弁護士を紹介するよう申し出ることができる制度です。この申出を受けた弁護士会は、すみやかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければなりません。ただし、弁護人となろうとする者紹介できる弁護士がいない場合や、紹介した弁護士が受任を拒むできない場合もあります。


また、資力が一定以上ある場合など,国選弁護人を選任するためには予め弁護士会に私選弁護人選任申出をしなければならないときがあります。



3 当番弁護士制度

当番弁護士制度は、各地の弁護士会が運営主体となり、毎日担当の当番を決め、被疑者等からの依頼により、被疑者の留置・勾留されている場所に弁護士が出向き、無料で、接見の上、相談に応じる制度です。


同制度は、1990年、被疑者段階の国選弁護制度がない中で、被疑者国選弁護の充実化と被疑者国選弁護制度創設の足がかりとして、弁護士会が独自に始めました。


初回の接見費用や外国人被疑者のための初回通訳費用などは、被疑者に負担を求めることなく、弁護士会が費用を負担して制度を運営しています。


国選弁護制度を補完するものとして創設された趣旨から、現在は、主に逮捕段階の被疑者に積極的に利用いただくことが望まれます。


なお、当番弁護士制度に刑事訴訟法が規定した私選弁護人選任申出制度の機能を併せ持たせて一元化している弁護士会や、私選弁護人選任申出制度のみで対応している弁護士会もありますので、詳細は各地の弁護士会へお問い合わせください。


arrow_blue_1.gif当番弁護士連絡先一覧



当番弁護士の派遣の仕組みと運用状況

1.被疑者からの当番弁護士派遣依頼は、弁護士会の受付電話に入ります。依頼は被疑者本人のほかご家族・ご友人からも受け付けています。

  ※休日等は、留守番電話に吹き込んでもらうことになります。

  ※被疑者本人の場合は、警察や裁判所等を通して弁護士会に依頼することになります。


2.弁護士会は、派遣依頼を受けたら、その日の担当となっている弁護士に出動要請の連絡をします。

  ※休日等は、担当日の弁護士が、留守番電話を聞いて接見に向かいます。休日明けに接見に向かうこともあります。


注 弁護士会ごとに、実情に応じた運営を行っているため、一般的な形態をまとめました。運営形態については、各弁護士会にお問い合わせください。


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当番弁護士の主な活動

1.出動要請の連絡を受けて、接見に向かいます。可能な限り当日に接見しています(通訳人を要する場合や遠隔地の場合など翌日以降となる場合もあります。)。


2.被疑者と接見をします(以下は接見の一例です。)。

 (1)自己紹介をし、当番弁護士の立場を説明します。

 (2)依頼の趣旨を聞きます。

 (3)被疑事実とそれに関する被疑者の言い分を聞きます。

 (4)逮捕状況とその後の取調べ状況を聞きます。

 (5)刑事手続の概要を説明します。

 (6)供述調書と黙秘権について説明します。

 (7)弁護人依頼権と弁護人の役割を説明します。

 (8)資力等により、被疑者国選弁護制度または「刑事被疑者弁護援助事業」を説明します。

 (9)以上の説明をした上で、改めて弁護人を選任する意思があるかどうかを確認します。


3.接見終了後

  被疑者が弁護人選任を希望した場合は、私選弁護人として活動を開始します。



4 刑事被疑者弁護援助事業

身体を拘束された刑事被疑者のために、接見とアドバイス、警察官・検察官との折衝、被害者との示談交渉、その他被疑者段階の刑事弁護活動一般を行う弁護士に、依頼者に代わって日弁連が弁護士費用を支払う制度です。被疑者国選弁護制度の対象事件が「被疑者が勾留されている全事件」に拡大された現在では、特に、逮捕段階の被疑者が弁護費用の援助を受ける制度として多く利用されています。


arrow_blue_1.gif法律援助事業のご案内