国際機関就職支援Q&A(2020年3月改訂)

よくある質問


※「国際公務とは?」→icon_pdf.gifこちら (PDFファイル;198KB)をご覧ください。



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Q1 国際機関とは何ですか?

国際機関の代表は国際連合(国連)です。国連は、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所および事務局の6つの主要機関からなっています。


また、国連の総会決議によって設立された総会の補助機関として国連人権理事会や国際法委員会、また、計画・基金その他の機関として、国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、UN-Women、国連環境計画(UNEP)、国連人口基金(UNFPA)、世界食糧計画(WFP)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連大学(UNU)などがあります。


他方、経済社会局(DESA)、人道問題調整事務所(OCHA)、人権高等弁務官事務所(OHCHR)、内部監査室(OIOS)、法務局(OLA)、紛争下の性的暴力に関する事務総長特別代表事務所(SRSG/SVC)、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表事務所(SRSG/VAC)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)などは、事務局の中の部局です。


これらのほか、国連との協定に基づいて設立され、国連と密接な関係を持ちながらも独立した自治組織として「専門機関」があります。例えば、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行グループ(国際復興開発銀行《IBRD》、国際金融公社《IFC》、国際開発協会《IDA》など )、世界知的所有権機関(WIPO)、国連食糧農業機関(FAO)、世界気象機関(WMO)、国際電気通信連合(ITU)、国際海事機構(IMO)などがこれにあたります。


これらの国際機関を総称して「国連システム」あるいは「国連ファミリー」と言うことがあります。



Q2 どんな仕事がありますか?

国際機関での職種は、一般に「専門職」と「一般職」に分類され、法律家はこのうち「専門職」として採用されることが一般ですが、これらの正規職員のほか、コンサルタントやアドバイザーなどの形で専門的な業務を行う契約形態もあります。


法律家は、ほぼ全ての国際機関で専門職として必要とされており、各機関の法務官や人権担当官はもちろん、内部監査、人事部門、調達部門に至るまで様々なポストで活躍しています。


専門職の正規ポストは、公募による採用ですが、国連事務局等によるヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)というルートもあります。各分野の試験が毎年あるわけではなく年齢制限(32歳)にも注意が必要ですが、関心のある方は、外務省国際機関人事センターのウェブサイト等で情報を確認してみてください。


「専門職」「一般職」の内容や、その数などについては、外務省国際機関人事センターのウェブサイトや、国連日本政府代表部のウェブサイトなどをご覧ください。


icon_page.png外務省国際機関人事センター

icon_page.png国際連合日本政府代表部



Q3 求められる資格、要件は?

専門職に就く場合、「語学力」と「学位」そして「専門性」が求められます。

 

語学力

最低限、英語かフランス語のどちらかで職務遂行が可能であることが求められます(ポストによりますが、理想的には両方、もしくは英語+英仏以外の国連公用語1カ国=ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語での職務遂行能力があると有利)。

 


学位

基本的には、応募するポストと関連する分野での修士号以上が必要とされます。例えばアメリカのロースクールのLLMやMCJ等の修士レベルのコースを修了すればこの要件をクリアします。ただし、Advanced Degreeの一つである日本の法科大学院(米国のJDも同じ)修了がどのように取り扱われるかは、ポストによります(後述するJPOは、日本の法科大学院修了により応募可能です)。

 


専門性

主として、学位取得分野での勤務経験です。目安となる職務経験年数は、ポストの高さ(専門職はP1~P5、管理職はD1~2)と、保有する学位が修士号か博士号かによって変わります。例えばP2の場合、修士号保有者は2年、博士号所有者や0年、P3の場合、修士号保有者は5~8年、博士号保有者は3年、P4の場合、修士号保有者は8~12年で博士号保有者は6年の職務経験年数が目安とされています。

 


Q4 国連機関での待遇は?

国際機関によって異なりますが、国連機関の勤務条件を統一化するため共通制度というものが作られ、多くの国際機関がこれを採用しています。一般に、国際機関ではポストの高さによって基本給が決められており、これに勤務地による調整給などがつきます。子どもの教育補助金、1年間の有給休暇日数や帰国費用の支給等も細かく決められています。詳しくはicon_page.pngこちらをご覧ください。



Q5 弁護士としての資格や経験は生かせますか?

注意が必要なことは、日本の弁護士資格を持っているというだけでは国際舞台では通用しない、という点です。専門職ポストに応募するためには、Q3で述べたように一定の学位(基本的に修士号以上)が必要となります。また、弁護士としての職務経験は、広い意味では実務経験になりますが、国際公務員への応募に際しては、応募するポストに求められる資質と関連する具体的な実務経験をどの程度積んでいるかが重要になります。とりわけ、国際的な職務経験(外国での勤務経験、国内であっても国際的な職場環境での勤務経験等)の有無が重要視されますので、国際公務員を目指す場合、意識して国際的な職務経験を積んでいく必要があります。


どうやってその経験を積むのかについては、Q6も参考にしてください。



Q6 いずれは国際機関で働きたい。そのために今からできることは?

国際機関の採用システムは、日本の企業や官公庁の新人採用とは全く異なり、常に「即戦力」を求めていることを忘れてはいけません。したがって、採用されるためには、語学力を磨く、必要な学位を取得することのほかに、働きたい分野での実務経験を積んでおくことが必要です。


また、国際機関の専門職正規ポストの人事採用は、公募の形を取ってはいますが、実際にそのポストが求めている内容を把握するため、常日頃からアンテナを張り巡らして情報収集に努めることも必要です。採否の判断にあたっては国際機関内部の人的評価や推薦などが重視されているとも言われていますから、積極的に人的ネットワークを作っていくことも大事です。加えて、積極的な情報収集や人的ネットワークによって、公募によらない短期ポストの情報を得られるケースもあります。そうした短期ポストが、正規ポストへのステップとなることもあります。


実務経験を積む

Q5で説明したとおり、日本の弁護士としての経験がそのまま国際機関採用の際の実務経験として評価されるわけではなく、自らの専門分野(応募するポスト)に即した形での専門的な、かつ、より国際的な実務経験が必要となります。



日弁連・国際公務相談窓口・国際公務志望者メーリングリストを利用する

日弁連では国際公務分野でのキャリア構築を志望する方々にアドバイス等を行い、キャリアパスを支援するicon_page.png「国際公務相談窓口」 を設置しています。ご相談内容によっては、国際機関等でご活躍の国際公務のご経験豊かなアドバイザーの方々へのご相談もサポートします。


方向性を決める前のキャリア形成初期の悩みからJPO試験準備のような具体的なものまで、様々なご相談に対応しています。早い段階でご相談頂くことで相談の効果が高まる傾向があり、国際公務に関するご相談や悩みがある場合は、ぜひ遠慮せずにお申込みをいただければと思います。


また、国際公務に関する情報提供のため、icon_page.png 「国際公務志望者メーリングリスト」 を運用しています。日弁連からの情報提供のほか、国際公務志望者間での双方向の情報交換やネットワークの構築にご活用いただきたいと思います。



インターン

自分が目指す国際機関や、その分野で活動する国際NGOでインターンをすることはキャリアを切り開いていくために有効です。Q3で触れたように、例えばP3ポストの場合、目安として修士号保有者は5~8年の職務経験年数が必要とされますが、国際機関でのインターンシップ経験は、それにつながる契機・手がかりとなり得るでしょう。インターンは将来の職場を内側から見ることができますから、自分の意欲と適性を自分なりに確認する良い機会にもなるでしょう。


外務省国際機関人事センターのicon_page.pngこちらのページもご参照ください。


また、第62期以降の司法修習では、独立行政法人国際協力機構(JICA)や外務省経済局のほか、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際移住機関(IOM)といった国際機関の駐日事務所での選択型実務修習(全国プログラム)が用意されています。もしあなたが修習生や法科大学院生であれば、国内にいながらにして国際機関の環境やそこで働く方々に触れるまたとないチャンスですから、ぜひ、応募されると良いでしょう。



国連ボランティア(UNV)

現場(フィールド)での活動が重視されるポストに応募する場合、国連ボランティア計画(UNV)で現場を経験することは非常に有益でしょう。国連の一機関である国連ボランティア計画(UNV)により、世界各国の国際機関やPKOミッション等に派遣され、平和構築や開発支援に従事します。「ボランティア」という名称が付いていますが渡航費や生活費は支給されます。


もしあなたが平和構築・開発分野での経験を積みたいと思っているならば、外務省が広島平和構築人材育成センターに委託して行っている「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」への応募を検討してもよいかもしれません。例えば、同事業のプライマリー・コースでは、弁護士国内実務経験等に基づく応募により、日本国内での集合研修のほか、UNVの資格での海外実務研修(原則1年間)を通じて現場で働く機会が得られるからです。コースによっては研修終了後に就職支援を受けることもできます。


2009および2012年~2014年に、日弁連は上記事業に関するセミナーを開催しています。



JPO(Junior Professional Officer)

国連で勤務する専門職の日本人職員のうち約45%がJPO出身者であるとされており(機関によっては、JPOではなく、AE、APOといった名称の場合もあります)、もしあなたが30代前半以下であれば、JPOは、正規ポストにつながる一つの有力な選択肢になります。これは、外務省が毎年行っている国際機関への派遣制度で、選考試験に合格すると、基本的にP2レベルの職員として、原則2年間、国際機関に派遣されます。


なお2008年2月、日弁連はJPOに関するセミナーを開催しています。セミナーの内容は、icon_pdf.gifこちら (PDFファイル;148KB)をご覧ください。



その他

外務省の任期付公務員として日本政府の立場で国際機関や国際法に関わる仕事を経験すること、JICA等が実施する国際司法協力(法整備支援等)の長期専門家として開発途上国における活動の経験を積むこと、日本政府の国連代表部が募集する専門調査員といった経験も、国際的な実務経験を積む有効な方法と考えられます。



人的ネットワークを作る

国際機関の人事採用は、公募の形を取りつつ、国際機関内部の人的評価や推薦が重視されていると言われています。したがって、国際機関の内部に、あなたのやる気や能力を知っている人が一人でも多くいた方が良いでしょう。


上記のインターンや、UNV、JPOとして国際機関で働く経験は、人脈作りという意味でも有効です。組織内部にいる間に、しっかりと自分のやる気と能力を周囲にアピールしておきましょう。


また、そうした経験の有無にかかわらず、志望先の候補となる国際機関の内部の人を紹介してくれる人が周りにいないか、アンテナを張り巡らしてみましょう。一人でも紹介してもらえれば、あなたの熱意次第で、その人がさらに別の人を紹介してくれるなどして、徐々にネットワークが広がっていく可能性は大いにあります。



情報を収集する

外務省国際人事センターのウェブサイトで、国際機関就職に関する必要最低限の知識を得ることができます。国際機関の空席情報一覧も、同センターのウェブサイトに掲載されています。


また、国際機関人事センターのicon_page.png「メール配信サービス」 では、国際機関人事に関する新着情報および職員募集情報などを逐次メールで配信しています。さらに、「即戦力」と言える経歴・職歴がある方は、同センターのicon_page.png「キャリア相談のための情報登録制度」(旧「ロスター登録制度」) に登録しておけば、個人の経歴や専門性、志望などに応じてアドバイスや空席情報の提供を受けることができます。


なお、国連採用ミッションの来日情報も同センターのウェブサイトに掲載されます。採用ミッションは、通常、事前の書類審査を通過した人との面接、ガイダンス等の活動を行い、応募者の適性を判断します。ミッションにより適格と評価された場合でも、そのまま採用に結びつくものではなく、別途、通常のプロセスにより個別のポストに応募する必要がありますが、適格と評価されたことは、将来、応募する際に考慮されます。



Q7 国際機関を辞めた場合、その後のキャリアはどうなりますか?

国連の人事採用は、短いものでは6か月から2年程度の期間付きで採用する契約ポストの形態が増えています。このような形での採用は、長く国際公務員として働きたいという人にとっては不安定ですが、そうした短期ポストでの採用が、正規ポストへのステップとなることがあるほか、法曹資格を持ち、いつでも弁護士としての実務に戻ることができるという人にとっては、かえって応募しやすいと考えることもできます。


弁護士であるあなたが一定期間国際機関で働いた場合、その後、弁護士業務に復帰するという選択肢の他に、大学や法科大学院の教員として、国際機関での勤務に関連した科目を教えるという選択肢もありえるかもしれません。