弁護士会から照会を受けた皆さまへ

各弁護士会は、会員弁護士の申請を受けて、官公庁や企業、事業所などに、事実を問い合わせる、照会(弁護士会照会)を差し上げております。このQ&Aでは、弁護士会が差し上げる照会について、その概略をご説明申し上げます。是非、趣旨をご理解いただき、照会を受けた場合には、ご回答くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。


Q1 弁護士会照会とは何ですか?

A  弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた法律上の制度(弁護士法第23条の2)です。個々の弁護士ではなく、弁護士会が照会を行います。法律の条文から、「23条照会」と呼ばれることもあります。

弁護士会照会の受付件数は、下記のとおり年々増加しており、2019年(令和元年)は、全国で、22万1928件となっており、依頼事件解決のための重要な情報収集手段として活用されています。


照会受付件数の推移


【参考】弁護士法第23条の2

弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2  弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。



Q2 なぜそのような権限が認められているのですか?

A 弁護士は、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命」(弁護士法第1条)とし、依頼を受けた事件について、依頼者の利益を守る視点から真実を発見し、公正な判断がなされるように職務を行います。このような弁護士の職務の公共性から、情報収集のための手段を設けることとし、その適正な運用を確保するため弁護士会に対し、照会の権限が法律上認められているものです。


同様の制度として、裁判所が判断を下す上で官公庁などに必要な調査を依頼する調査嘱託や、警察などの捜査機関が捜査のために官公庁や公私の団体に対して必要な事実の報告を求める捜査関係事項照会があります。



Q3 裁判になってから裁判所を利用して調査嘱託をするのでは足りないのですか?

A 裁判を提起するためには、相手方が分かることが必要です。その相手が分からない場合には裁判自体を諦めなければならないことになりかねません。また、相手方が不明であるにも関わらず、相手方であろうという見込みだけで裁判の提起を行うことになると、見込みが違う場合には、無関係の人が裁判に応じなければならないことになり、不当に重い負担を課すことになってしまいます。


また、客観的な事実を弁護士会照会によって収集することによって、客観的事実を踏まえ、裁判によらずに話合いによって自主的に紛争を解決できる場合が増え、迅速簡易な紛争解決に繋がりますし、情報収集により不当な依頼であることが判明した場合には早い段階でこれを拒絶することも可能になります。


さらに、裁判になった場合にも、弁護士会照会によって情報を得ておくことにより、必要な事実を踏まえた具体的な主張が可能となり、迅速な裁判に繋がります。


このように裁判前に照会を行うことが可能となる弁護士会照会制度は、市民の紛争解決のために重要な役割を果たしています。



Q4 照会の手続はどのようになっていますか?

A 照会を申請する弁護士から所属する弁護士会に対し、質問事項(照会事項)と申請の理由を記載した照会申出書が提出されます。その後、その弁護士会によって、照会を必要とする事情と照会を行うことの相当性が審査され、照会の必要性と相当性が認められたもののみ、弁護士会長名で官公庁や企業、事業所などに対する照会が行われます。このように、弁護士会が内容を審査するのは、弁護士会照会が適正に行われるようにするためです。

照会を受けた官公庁等から、弁護士会に対する報告がなされると、弁護士会から照会を申請した弁護士に報告事項が通知されます。



Q5 弁護士会ではどのような審査をしているのですか?

A 弁護士会照会の申請が弁護士会にされると、各地の弁護士会では、各弁護士会が定めている様式を充足しているかどうか、また、照会を必要とする事情と照会を行うことの相当性があるかどうかについて審査を行います。

申請書の内容に不備がある場合や照会の必要性・相当性に疑問がある場合には、申請した会員に対して申請書の足りない部分についての追加、書き直しや再考をお願いすることになります。こうして必要性と相当性が認められると判断されたものについてのみ弁護士会会長名で照会が行われることになります。

また、弁護士会の審査で、要件を満たさない、相当性がないと判断された場合には、照会の申請が弁護士会によって拒絶され、照会が行われないことになります。

審査にあたっては、公正な審査がなされるように、それぞれの弁護士会の会長が指定する、その申請に関わりのない弁護士が行うこととなっています。

また、40を超える弁護士会で、独自に調査室や審査委員会を設置しており、安定した審査ができるような体制を整えています。



Q6 照会に答える義務はありますか?

A 弁護士会照会は、法律で規定されている制度ですので、原則として回答・報告する義務があり、例外として、照会の必要性・相当性が欠けている場合には回答・報告しなくてもよいものと考えられています。

最高裁も、照会を受けた照会先に報告・回答義務があることを認めています(最高裁第三小法廷平成28年10月18日判決)。



Q7 個人情報を回答しても大丈夫なのですか?個人情報保護法には反しませんか?

A 個人情報の保護に関する法律は、本人の同意がなくても第三者に情報を提供できる場合として「法令に基づく場合」を挙げています。この法令には弁護士法23条の2が含まれています(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」および「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」7-16参照)。

ですから、本人の同意なしで、個人情報を含む回答を弁護士会にすることができます。個人情報保護法について分野毎に作成された各種のガイドラインにも、弁護士照会が法令に基づく場合であることが明示されています。



Q8 どういう形で回答したらよいのですか?

A 回答用紙(回答書)が同封されている場合には、その用紙をご利用ください。もちろん、別途作成してくださっても構いません。その場合には、弁護士会照会に対する回答である旨、宛て名、回答者名、日付等を明記していただけると助かります。


また、預金の履歴等、回答するのが困難な事項の場合、回答する代わりに、預金通帳の写し等を添付してくださっても構いません。その際、照会事項とは無関係の事項につきましては、黒塗りするなどして抹消していただければ幸いです。



Q9 照会の内容に疑問があるときはどのようにすればよいですか?

A 照会を行った弁護士会にお問い合わせいただくことが可能です。


なお、照会内容に関する事案の詳細や情報の補足は、照会を申請した弁護士の方が詳しいこともありますので、事案によっては、弁護士会に問い合わせがあった場合でも、照会を申請した弁護士の連絡先をお知らせして、当該弁護士に直接お問い合わせしていただくこともありますのでご了承ください。もし、当該弁護士と直接意見交換することに問題があるようでしたら、弁護士会にその旨伝えていただいて構いません。


また、照会内容についての疑問を、照会申出をした弁護士に最初から直接お問い合わせしていただくことも可能です。お問い合わせによる意見交換を経て、疑問点を解消していただき、弁護士会照会に対するご報告をいただくことが何よりと考えています。



Q10 回答した情報はしっかりと管理されるのですか?

A ご回答いただいた情報につきましては、申請を行った弁護士が事件処理のために用いることになります。各弁護士は、受任している事件の処理に必要な範囲でこの制度を利用するものとされていますので、照会を申請した目的以外に、ご回答いただいた情報を使用することは許されていません。万が一、照会を申請した目的以外に、ご回答いただいた情報を使用した場合には、事案に応じて懲戒処分の対象となります。


また、弁護士は、秘密保持の義務が法定され(弁護士法第23条)、高度の守秘義務が課されておりますし、「弁護士は、事件記録を保管又は廃棄するに際しては、秘密及びプライバシーに関する情報が漏れないように注意しなければならない。」(弁護士職務基本規程第18条)として、取得した情報の適正な管理を義務づけられております。


さらに、弁護士は、「正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏ら」すことが禁止され罰則が定められております(刑法第134条)。
ですから、安心してご回答ください。



Q11 回答したことによって損害賠償請求されることはないですか?

A たしかに、弁護士法上には、照会に応じて回答した場合に損害賠償責任を免れるという規定は存在していません。また、いわゆる前科照会事件においても、照会申出書の理由が不十分な場合に、他人に通常知られたくない情報である前科情報を漫然と照会に応じて回答した自治体に損害賠償責任が認められています。


ただ、この事案では照会申出の審査が不十分であって、照会先に送付された「照会の理由」も簡易なものでした。現在このような照会がなされることはありません。


このような事件が起きたことを重く受け止めて、現在は弁護士会が照会を必要とする事情と照会を行うことの相当性について厳格な審査をしており、照会に回答した方が損害賠償義務を負うような事態は起きないよう努めています。また、照会先には、なぜ照会するのかが容易に判断できるように、その理由が十分に記載された照会書が送付されることになっています。(いわゆる「副本方式」)


裁判例においても、弁護士会照会制度の公共性から、照会書等によって照会を必要とする事情と照会を行うことの相当性が認められる場合には、原則として回答をした方は不法行為責任を負わず、本人から請求された損害賠償について支払う必要はないものと判断されています(広島高裁岡山支部平成12年5月25日判決、鳥取地裁平成28年3月11日判決)。


記載内容が不明で、回答に不安がある場合には、弁護士会または照会を行った弁護士にご連絡ください。



Q12 日弁連は、弁護士会照会の適正な運用のためにどのような取り組みをしていますか?

A 日本弁護士連合会(日弁連)では、弁護士会照会の申請とその審査が適正かつ円滑に行われるように、また、照会を受けた官公庁や企業、事業所などが弁護士会照会に回答していただけるように、弁護士会照会について調査・研究活動を行う特別の委員会として、弁護士会照会制度委員会を設置しています。


当該委員会では、申請の審査のためのマニュアルを作成し、審査のためのモデル会規・会則を公表すると共に、毎年各弁護士会の審査を担当する弁護士に集まってもらい連絡協議会を開くなどして審査の質を高める努力を行っています。また、申出会員たる弁護士が本制度をよりよい形で利用できるように、弁護士向けに全国で受講できるライブ実務研修を行うなどしています。


また、照会先となる官公庁や企業、事業所などとの間で定期的に協議会を開くなどして制度の理解に努め、貴重なご意見を伺っております。



Q13 「弁護士会照会についての改正運動」とは何ですか?

A 弁護士会照会制度は、国民が、裁判や裁判以外での紛争等の場面において、真実に基づいて、権利や利益を実現したり、確保したりするうえで、不可欠の制度です。そして、各地の弁護士会が官公庁や企業・事業所などに行った照会に対しては、約87%の照会先から回答をいただいております。


ところが、残念なことに、13%ほど、回答をいただけないケースがあります。正当な理由がない回答拒否が増大してしまうと、国民の権利や利益を実現したり、確保したりすることが困難になってしまいますし、回答をいただけないままに放置されれば、『悪貨は良貨を駆逐する。』のことわざにもあるとおり、弁護士会照会制度の実効性が担保されない状況となることが危惧されます。そのような状況を容易に見逃すことはできません。


そこで、日本弁護士連合会(日弁連)では、個人等のプライバシーや秘密の保護などにも配慮しつつ、弁護士会照会に対する正当な理由がない回答拒否をなくすための法律改正を求める活動を行っております。具体的には、照会を受けた官公庁や企業・事業所などには正当な理由がない限り照会に対して回答しなければならない義務があることや、正当な理由のない回答拒否ではないかとの疑義が生じた場合にその正当理由の有無を日弁連が審査をする仕組みなどを法律の中に明記する改正案を提言し、その立法化を求めています(2008年2月29日付け「司法制度改革における証拠収集手続充実のための弁護士法23条の2の改正に関する意見書」)。

照会先の官公庁や企業・事業所などには、ご負担をおかけすることにはなりますが、弁護士会照会制度が、国民の権利や利益を実現・確保して公正な社会を築くための重要で不可欠な証拠収集方法であることをご理解いただき、日弁連による上記の法律改正を求める活動にご支援・ご協力をいただけますよう、お願い申し上げます。