日本国憲法施行70年記念企画「憲法ポスター展~あなたの願いをポスターに」入賞作品が決定しました!
日本国憲法施行70年記念企画「憲法ポスター展~あなたの願いをポスターに」における憲法ポスターの作品募集に、全国から多数の御応募をいただき、誠にありがとうございました。
入賞作品の決定を受けて、2017年10月24日(火)~11月4日(土)まで、入賞作品の展示を行い、11月4日(土)には記念講演・表彰式を開催しました。なお、惜しくも入賞しなかった作品も素晴らしい作品が多数ありました。そこで、ご応募いただいた全ての作品を記録として残すべく、全作品集を取りまとめましたので、ぜひご覧ください。
全作品集のダウンロード (PDFファイル;6.4KB)
入賞作品のデザインを使用したグッズを作成しています。
入賞作品発表
審査員による厳正な審査の結果、応募総数264作品の中から、3部門ごとに金・銀・銅賞および入選作品を決定しました。
小学生以下の部
金賞 |
廣畠 ふらわ さん 7歳 (徳島県) 柏本= 子どもらしい作品。文字も絵のようになって、文字と絵に一体感がある。「みんなと仲良くする」との標語に、7歳児の目線からの憲法がちゃんと伝わってくる。黄色い画用紙に書いているのもよい。/中島= 一番最初に目についた作品。とても可愛い。/長谷川=バランスがたいへんよい。ビジュアルとしてポスターとして、作者は計算してないのに、これしかないという絶妙なバランスと空間と色になっている。プロがやりたくても、なかなかこうは出来ない。すばらしい。 |
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銀賞 |
石原 弘 さん 12歳 (東京都) 柏本= キャッチフレーズがいい。いじめという自分たちの世代のことをちゃんと憲法に絡めて表現している。そこがわかりやすくてよかった。/中島= 差別や排外主義が世界中で問題になっているいま、子どもの言葉で、憲法の人権尊重の精神を書いていて、見る者に訴えてきたいい作品。/長谷川= 言葉がいい。大人でもなかなか書けないことを書いている。よく出来ている。6年生でこれだけの作品は、すばらしい。/窪島= 「憲法はいじめを嫌います」という言葉がいい。何とも言えぬ、スローガンとは違った緩衝地帯から生まれたフレーズで、それが余計に強くいじめは良くないと感じさせる作品。/青井= この素直なフレーズは、言葉を尽くしても到達できない地点なのかなと思った。講義で一番大切なのは13条と教えているが、むしろ好きか嫌いかのところで、許されない尊厳性が出てくるというのは、目からウロコだった。 |
銅賞 |
高柳 敦史 さん 6歳 (千葉県) 柏本= かわいらしい。標語も、子どもらしいことをちゃんと解釈して言っている。このまま飾っても可愛いと思った。/中島= とてもかわいく、コピーもすばらしい。憲法のもっとも重要な部分を、しっかりすくいとっている。/長谷川= 「主役」を奪われるような憲法を作られようとしているときに、素直な良いことを書いてくれたと思う。しかも、非常にかわいい。/窪島= 塗り直し、書き直しなど恣意的なところが一切ない、プロが近寄りたいけど近寄れない、自然でいい作品。 |
入選 |
森田 芽吹 さん 12歳 (東京都) |
入選 |
椛澤 拓海 さん 9歳 (千葉県) |
入選 |
平野 杜和 さん 9歳 (静岡県) |
入選 |
芋縄 そら さん 8歳 (大阪府) |
入選 |
清水 舞衣 さん 5歳 (秋田県) |
中学生・高校生の部
金賞 |
小笠原 伊織 さん 14歳 (広島県) 柏本= 憲法は遠いものではなく、自分たちのものであることを、「僕らの為の憲法」というキャッチフレーズがちゃんと示している作品。若い人たちだけでなく全部の世代が繋がっていることがわかりやすく表現されており、自分たちのこととして訴えかけている。/中島= バランス良く日本国憲法を説明していて、デザインもかわいい。/長谷川= ポスターの中に言わなければいけないことを全部言っている。文字がいっぱい入っているが、絵で細かく表現できている。ものすごく工夫して考えて、全部の色んな要素をまとめた良く出来たビジュアルになっている。/窪島= 色彩と構成、それから詰め込まれている情報も大変良い。デザイン的にも完成度の高いポスターとなっている。 |
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銀賞 |
平野 凌聖 さん 13歳 (広島県) 柏本= ポスターの基本として、見て瞬間にわかるワンビジュアル・ワンキャッチで、ポスターとしてのわかりやすさがあった。素直にこの標語「戦争をしない国に 生まれてよかった」が入ってきた。中学生・高校生の世代の声として入ってきたので良かったと思う。/長谷川= 標語は、戦争放棄の9条があるから、戦争しないで今まで来た、そこに生まれてきて良かったという感謝の気持ちとして受け止め、とても良いと思った。色的にも綺麗。日本地図には、ちゃんと沖縄も描かれている。 /窪島= 生まれてから戦争しか知らないで死んでいく子ども達もいるわけなので、「戦争しない国に生まれてよかった」は、とても純朴にすっと心に入った。駅の柱にでもこのポスターが貼られたら、我々の足を止めさせる吸引力があると思う。 |
銅賞 |
外西 大輝 さん 15歳 (山口県) 柏本= 描かれている人物一人一人の個性が、予定調和でなく、ロックやっている人がいたりと、色んな人が出てくるのが面白い。「人それぞれの…」という標語で、「自分たちの」「私たちの」というのが、ビジュアルと相俟って、ちゃんと伝わってくる。色も鮮やか。/長谷川= こういうコンクールのとき、優等生的な真面目なものが多い中で、この作品には、パンチパーマの人がいたりと絵にユーモアがある。面白い。作者はまじめにつくっているが、見る方が笑ってしまうところに好感を持てた。 |
入選 |
田中 もえ さん 12歳 (京都府) |
入選 |
渡辺 絆 さん 12歳 (神奈川県) |
入選 |
粟井 ひまり さん 14歳 (奈良県) |
入選 |
藤井 彩 さん 14歳 (山口県) |
入選 |
山内 智裕 さん 15歳 (山口県) |
大学生・社会人の部
金賞 |
中川 浩之 さん 80歳 (神奈川県) 柏本= ほぼ満場一致で、一番票が入った作品。ポイントはテーマがご自身が経験されたということ。兵隊に憧れていた頃の子ども時代の写真を置いて、それが叶わなくて良かったという言葉のリアリティがすごく伝わった。/中島= その人の人生を感じさせるので、訴えてくるものが強かった。/長谷川= 作者が、日本国憲法がない時に生まれていることに、今更ながら驚いた。今は、当たり前と思っているが、この憲法がない時代があったことに思い至らせてくれる作品。/窪島= 写真をセピア色にしたのがその時代に引っ張り込んでいく、70年前に吸引していく力のある作品にさせている。 |
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銀賞 |
松田 まさる さん 81歳 (千葉県) 柏本= ワンキャッチ、ワンビジュアルで、伝えたいことを素直に表現している。「9」のデザインの仕方、そこからみんなの顔が出ているビジュアルの作り方はバランスがいい。/中島= とても上手な作品。/長谷川= 何の不可もなく、少しくらい不可があったほうがいいと思うくらい、ちゃんとした作品だと思う。/山岸= 金賞の写真と銀賞の子どもの絵の落差があって、金賞と銀賞になったのは時代としての意味があると思った。 |
銅賞 |
菊池 道子 さん 71歳 (千葉県) ※合作 佐藤 鋼造 さん 中島= 憲法が暮らしの中でこそ生かされるべきだということ、総合的な憲法の力強さを訴えて来る。絵もすばらしい。/長谷川= 市民生活、暮らしというところに憲法があることを、とても素朴な絵で表現している。街宣をしているものよいなと思った。/窪島= 「暮らしの中に憲法の光を」というフレーズがしっくりいって、すっと入ってきた。生活の中に、憲法のありがたさ、大切さが、ややもすれば、遮断されて光が入ってこない時代が来る、もっと光を取り入れようという思いを感じた。/青井= 「暮らしの中に憲法を」ではなく、「憲法の光を」としたのが暖かい感じがしてよかった。/山岸= 絵に奥行き感があり自然な感じがして、よく書けている。町の一角が切り取られた感じがいい。 |
入選 |
龍山 朋子 さん 58歳 (東京都) |
入選 |
大村 泰久 さん 77歳 (奈良県) |
入選 |
新庄 すが江 さん 57歳 (神奈川県) |
入選 |
伊丹 濯 さん 30歳 (千葉県) |
入選 |
土肥 美代子 さん 75歳 (千葉県) |
【審査員総評】
青井= ポスター展には、学者の自分に選ぶことができるのか適格性を疑いながら参加しましたが、大変貴重な経験をさせていただきました。憲法70年記念のポスターに、思いの外、「平和主義」や「平和国家」がテーマとして出てきたのには、励まされました。
印象に残ったポスターは、小学生以下の部で銀賞受賞の「憲法はいじめを嫌います」というポスター。個人が一番大切ということや、「自由」や「平和」を言い換えると、「個人尊重」という言葉よりも、「いじめを嫌います」は、むしろ訴えかけるような良い感性だと思いました。
また、大人の部の入賞作品で、怪物を縛り上げている上手な絵があったが、これはリヴァイアサンをイメージして書いていると思います。いま国家に対してリヴァイアサンであるというイメージが広がっているからこそ、こういうポスターが出てきたのかなと思われ、興味深かったです。
柏本= この企画に参加して、貴重な経験ができました。憲法施行70周年ということで、時代の世相を反映するポスターが上がってくるだろうと、なんとなく感じていました。70周年というこのタイミングで、やはり憲法9条が、世の中一般に、世代も関係なく、みんなが気になっているところなんだろうと思いました。選考に関して言えば、各部門の中で、金賞は意見がほとんど分かれず、非常に良かった。受賞作品は、ポスターとして目立つだけでなく、言葉が良い。深みのある噛みしめた言葉がキャッチフレーズとして上がっている。それが、おそらく時代観を一番反映しているのだろうと思います。このポスターが5年後、10年後に財産として残っていくと、歴史が見えてくると思います。
窪島= 私が館主を務めている信州の無言館という美術館には、戦争で戦死した若い画学生たちの絵が並んでいます。
当時、東京美術学校も多摩帝国美術学校も、卒業時にポスターを描かせていました。したがって、資料ケースの中には、彼らの遺作とは別にポスターが何点かあります。「貯蓄せよ」とか、「欲しがりません勝つまでは」とか、「贅沢は敵だ」というタイトルが、おそらく学校から与えられるのでしょう、その抑圧された空気の中で、かなりセンスのある画学生でさえ、色彩といい、抑圧の空気に押し潰された作品になっています。とりわけ、多摩帝国美術学校にはデザイン科がありました。今生きていればもっと自由に描けていたのではと、残念に思います。
今日の審査で、応募されたポスターを見ていると、子ども達の羽ばたく音が聞こえてきます。戦前は、そういう抑圧されたポスターしか描かされなかったが、今は平和を求める、仲良しを求めるポスターを自由に描くことができる。我々が彼らの描く自由を守ってあげなければいけないと改めて思いました。
この憲法70年ポスター選考を通して、大変大切なことを教えてもらった気がして、感謝しています。
中島= みなさんの力作を拝見でき、楽しかったです。憲法といえば、やはり平和主義、平和憲法のイメージが根づいていることを、改めて認識しました。原爆ドームをモチーフにしている作品も多く、平和と日本国憲法、ひいては反核兵器と日本国憲法が繋がって、意識されている面があるということに気が付きました。
心に残った作品は、小学生以下では、「ぼくたちがしゅやくのけんぽう」とか、「みんなとなかよくする」の二つでしょうか。
中高生の部では、入賞作品の「生まれたときから権利がある」という作品。これは、絵もとてもかわいらしいですし、描いている人の言葉で憲法の根幹にある基本的人権を消化して、思いを訴えているところがすばらしいです。
大人の部は、お年を召した方の応募も多く、日本国憲法70年の歴史の重みを考えさせられました。やはり大人の部の金賞の作品はインパクトがありました。
長谷川= 施行70年のタイミングでポスター展に応募されたことは、もう一度、憲法があって自分たちがいるということを皆で考え直す機会になったと思います。特に、改憲しようとする勢力が活発になって、憲法が改正されることが良いのか悪いのか皆で考えて問わなければいけないわけですが、この企画でしっかり考え直す機会になれたことが、とても良いことだと思います。大人から幼稚園児くらいの子どもまで作品を出してくれたことが良かった。実際、自分でも絵を描いているが、文章とビジュアルで表現することはとても難しいことです。憲法のことを考えて作品を仕上げるのは、悩んで考えて工夫して描いてくれていると思います。ほとんどが一般の方(素人の方)たちが、つたないところもあるが、そこがかえって素直に自分たちが思う生きた憲法があることを、真剣に捉えて表現してくれていました。
また、たくさんの審査員と審査したので、自分が気付かなかった点を他の先生方の意見を聞いて感じるところも沢山ありました。
なかでも、金・銀・銅までに入った作品は、言いたいこととビジュアルが綺麗でしっかりしている作品が選ばれていると思います。
真面目に憲法を考える機会が持てたことは、参加できて良かったと思います。
中本= 日本弁護士連合会は、日本国憲法施行70年を記念して、「日本国憲法」をテーマにポスター作品を募集しました。当連合会として初めての試みでしたが、多くの方々に御応募いただき、皆様が想い描く日本国憲法のポスターが264作品も集まりました。御応募くださった皆様に改めて御礼申し上げます。
応募作品の多くが平和をテーマに描かれているのは、戦後はじめて憲法改正が現実化しつつあり、また、国際情勢も緊迫する今日、国民の皆様が、日本国憲法の価値を改めて評価しようとしている時代背景があったのではないかと思います。
山岸= 憲法問題対策本部として憲法ポスター展を企画したとき、最初は心配もありましたが、沢山の御応募をいただきましたことに、改めて感謝いたします。
日本国憲法施行70年の記念企画でしたが、作品を通して感じたことは、平和や戦争というものが、理屈ではなく、身近な生活や家族の中で、人々の言葉やイメージとして現れてきていることです。もし、作品を募集した時期が今でなかったら、今回のようなイメージのポスターにはならなかっただろうと思います。ある意味で、今の国際情勢が影響しているところもあると思いますが、我々が考えている以上に、この70年、憲法があって平和があったという実感がポスターに込められているという印象を強く感じました。
弁護士会としても、身近な平和な暮らしが続くように改めて力を尽くしていかないといけないと感じた次第です。
【審査員】
青井未帆さん(学習院大学教授)
柏本郷司さん(グラフィックデザイナー)
窪島誠一郎さん(信濃デッサン館・無言館館主)
中島京子さん(作家)
長谷川義史さん(絵本作家)
中本和洋(日本弁護士連合会会長)
山岸良太(日本弁護士連合会憲法問題対策本部本部長代行)