郵便不正・厚生労働省元局長事件(村木事件)

2010年9月10日に大阪地方裁判所が無罪判決を言い渡したえん罪事件。無罪判決の後、担当検察官が証拠を改ざんしていた事実が明らかになり、主任検察官であった大阪地方検察庁特別捜査部検事が証拠隠滅罪で、その上司である特別捜査部部長および副部長が犯人隠避罪で有罪判決を受け、処罰された。


事件の概要

2008年10月ころ、企業が心身障害者用低料第三種郵便制度を悪用し、郵便料金を不正に免れる事件が明るみに出た。大阪地方検察庁特別捜査部は、2009年4月16日、同制度を利用して営利目的のダイレクトメールを発送していた自称障害者団体「凛の会」の代表者らを郵便法違反の被疑事実で逮捕した。「凛の会」は、同制度を利用するにあたり、同会が障害者団体であることを証明する厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長名義の公的証明書(本件公的証明書)を郵政公社に提出していたが、それは正式な決裁を経たものではなかった。


検察官が主張した公訴事実の要旨は、村木厚子氏が、社会・援護局障害保健福祉部企画課長であった2004年、郵便料金の割引を受けることができる心身障害者団体であることなどを認定する公的証明書の発行に関し、同課社会参加推進室社会参加係長、自称福祉事業支援組織「凛の会」の会長および発起人と共謀の上、真実は「凛の会」は心身障害者団体としての実体がなく、郵便料金を不正に免れることを目的としたものであり、村木氏が公的証明書を発行した事実もないのに、企画課長作成名義の内容虚偽の有印公文書(本件公的証明書)を作成し、発起人らが、その内容が真実であるかのように装って提出して行使した、というものであり、検察官は、村木氏に虚偽有印公文書作成、同行使罪が成立すると主張した。



捜査情報の流出と有罪視報道

大阪地方検察庁特別捜査部による捜査が行われた2009年当時、村木氏は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長であったが、国家公務員法により守秘義務が課されている捜査情報(関係者の供述調書の内容)が報道機関に流出し、あたかも村木氏が有罪であるかのような報道が繰り返された。


  • 「局長『偽証明書忘れて』厚労省係長供述 違法性認識か」(産経新聞2009年6月16日夕刊)
  • 「元厚労局長 書類求めず証明書 逮捕の係長供述『準備止められた』」(日本経済新聞2009年6月16日夕刊)
  • 「『前局長が日付変更指示』地検捜査に係長供述 証明書『決裁 気にしないで』 手渡し後『この件は忘れて』」(朝日新聞2009年6月17日朝刊)
  • 「厚労省局長が直接電話 …『目の前で郵政幹部に』」(産経新聞2009年5月29日朝刊)
  • 「証明書発行『元課長が電話』 障害者郵便 郵政側にと代表供述」(朝日新聞2009年5月29日朝刊)



身体拘束

2009年6月14日、村木氏は、大阪地方検察庁特別捜査部の検察官に逮捕された。検察官の請求を受け、大阪地裁は、6月15日、村木氏を勾留する決定をし、その後、さらに勾留期間を延長する決定をした。


7月4日、検察官は、村木氏、係長、団体会長および発起人を、虚偽公文書作成・同行使の罪で起訴した。7月6日、村木氏の弁護人は保釈を請求したが、検察官は、村木氏が「罪証を隠滅する」「逃亡する」と主張して保釈に反対し、裁判官も保釈請求を却下した。弁護人は、7月24日にも保釈請求したが、検察官は同様に反対し、裁判官も保釈請求を却下した。公判前整理手続が進んだ10月7日、弁護人がした保釈請求に対し、検察官は同様に反対したが、裁判官は保釈を許可する決定をした。ところが、検察官はこれを不服として準抗告を申し立て、これを受けた裁判所は、保釈許可を取り消した。11月18日に弁護人がした保釈請求に対し、裁判官は保釈を許可する決定をし、逮捕から164日後の11月24日、村木氏はようやく釈放された。保釈保証金額は1500万円であった。


他方で、取調べにおいて村木氏が関与していたとする内容の検察官調書に署名した係長、「凛の会」の会長および発起人は、いずれも起訴直後に保釈されていた。このうち発起人については、検察官が、「職権保釈については、しかるべく」「保釈保証金は100万円を相当とする」と記載した意見書を裁判官に提出していたことが判明している。



取調べ

逮捕から起訴までの間、大阪地方検察庁特別捜査部の検察官は、連日・長時間にわたり、村木氏の取調べをした。検察官は、勾留1日目から、「私の仕事は、あなたの供述を変えさせることです」と言い、村木氏が述べていないことを記載した調書を作成してサインを求めたり、「否認していると、厳しい刑、実刑を受けることになるが、それでもいいのか」「裁判のことを心配している」「弁護士の中には無罪を安請け合いしたり、だます人もいる」などと言ってきたと村木氏は明らかにしている。


村木氏は、取調べにおいて、自らに向けられた嫌疑を否定し続けたが、係長、団体の会長および幹部は、村木氏が関与していたとする内容の検察官調書に署名した。係長は、取調べにおいて、自分が独断で本件公的証明書を作成し、「凛の会」の発起人に渡したと言っても、検察官は話を聞いてくれず、「関係者はこういうふうに言ってるよ」「あんまり覚えてないことが多いから、そういうことは周りの人の意見を聞いて総合的に判断するのが妥当じゃないか」「多数決みたくやってかないと真実は見えてこない、真実の糾明に力を貸さないあなたは無責任だ」などと言われ、検察官が作文したものが、自分が語った形で調書になって、直してもらえなかった、と公判で明らかにしている。


係長は、取調べを受けた当時、「被疑者ノート」に次のように記入している。


 ・「どうしても村木と私をつなげたいらしい。だんだん外堀からうめられている感じ。逮捕された私から村木の関与の供述が得られれば検察のパズルは完成か。今後私の供述を待たず、厚労省職員の証言をもって村木に自白をせまるのか。仮にそうなったら孤立している私はどうなるのか。全体の流れにのった方が有利なのか迷っている、いつまでも違った方向を見ていると拘留期間が長期化しそうで恐い。しかし、現時点で村木の関与は思い出せない。どうしたものか。」「(健康状態)普通」(5月28日)


 ・「私が自分の責任を上に押しつけた形になってしまうのか。真実はどこにあるのかよくわからない。が、一日も早くここを出たい。」「(健康状態)普通」(5月29日)


 ・「記憶はないけど私が村木に証明書を渡したことを認めた。(そうせざるを得ない)→りんの会側のメモや手帳という記録には、記憶だけでは勝てない。本当にそうなのか自信ない。早く両親のもとへ帰りたい。」「夜1人でシーンと静まりかえった独房にいると頭がおかしくなる。今後、社会や親族に受け入れてもらえるか。再出発できるのか考えていると息苦しくなってパニックになった。夜が怖い。」「(健康状態)普通」(5月30日)


 ・「弁護士会館で証明書をりんの会の関係者に渡したことを「ウソ」ということにされてしまった。→調書にされた。」「違うと言ったが聞き入れたもらえなかった。最初から聞く気はない(単なるセレモニー)」「えん罪はこうした始まるのかな」「取調べはやはり録画するか弁護人の立会がなければ対等に戦えない。」「自分でリークしているのにマスコミは面白おかしく書くと言っている」「検事のいいとこどり作文→そういう作文こそ偽造ではないか。」「(健康状態)悪い・夜一人になると動悸がして絶望感におそわれる」「(弁護人について聞かれたか)今日のことは弁護人には言うな。」(5月31日)


 ・「①村木が私に指示した ②私が村木に渡した、という点について、覚えていないのにこれではいかにも私が指示を受け、村木に渡したというウソの証言をしたことになるが、後から偽証罪にならないか?罪のない人をおとし入れるとになりはしないか、そのことを私が一生背負って生きていかなくてはならないと訴えたが全々まともにとりあってくれない。
→もうあきらめた。何も言わない。」「(健康状態)悪い・だるい、眠れないのでつらい。つかれた。」(6月5日)


 ・調書の修正は完全にあきらめた。
後々他人がどうなるかなんて今はどうでもよい。
罪をおかしたのは自分だから死ぬまで苦しむのは仕方ない
密室での取調べでは検察に勝てない
もうだれも信じられない気持ち」「(健康状態)悪い・だるい、眠い、背中が痛い」(6月6日)


 ・「後づけでもよいから後々のために決裁をとろうとしたことについて村木に『形だけでも決裁の形をととのえておいた方が良いでしょうか』という趣旨を私が相談して、村木からはその必要はないという調書になっている。作文に近いが……。
→検事の作文にのるという決断をした以上しかたない。」「(健康状態)悪い・だるい」(6月9日)


 ・「・村木逮捕(理由は不明。はっきりわからない。検事総長まで了解しているとのこと)・再逮捕(公文書偽造・行使)明日裁判所、最大7/4まで拘置」「村木の逮捕について①私が証明書を渡したこと②村木から証明書作成について、指示があったことについて、「やはり記憶にない。自信がない」と言ったら、「●さん(係長)だけが悪いわけではなく村木さんも利用された。彼女もいずれ本当のことを話してくれるから、気にするな」と言われた。」「(健康状態)悪い・だるい」(6月14日)


 ・「村木と共謀していない、村木が(私に)押させてはいない、今日裁判官に話したことは訂正しないと言ったら、検事は少し涙目になって「私は●さん(係長)がウソをついているとは全く思っていない。村木さんも逮捕されて今、職場のこと、家族のこと、●さん(部長)から言われたことなどいろいろなことを整理しているのだと思う、●さんがそうだったように村木さんも本当のことをいずれ話してくれると信じている」「村木と共謀していないし、村木が私に公印をおさせてはいない。裁判官に言ったことは訂正しない、と言ったが結局、署名押印した。」「(健康状態)悪い・夜になるとドキドキして眠れない。」(6月15日)


 ・「「決裁文書がないが心あたりは無いか」と聞かれ、「もっとよく探してみなよ」と私が答えるストーリーになる予定。これもいずれ調書になると思うが、勝手にしてくれという感じ。検事はいつも「ここからは想像でしかないんだけどね」と言って私に聞いてきて、これをパソコンで打ち込み、これが調書になる。いつもこのパターンで架空のストーリーを作り上げる。」「調書の中で私が「あとづけでも書類を整えて審査したという形にしておいた方がよいでしょうか?」と村木に聞いたところ、村木は「後で面倒なことになるからいいわ。●さん(係長)はこのことは忘れてください。」と言った部分があるが、これも検事の作文である。しかし、このやりとりはたしか読売新聞に出ていた(やっぱりリークしたかという感じ)。」「もう無駄な抵抗はしないでおこうと思う。早くここから出たい。まともに物を考える状況ではない。きちんとした供述を書いてもらえない。また逮捕されて20日拘置になったら困るから。」「(健康状態)悪い・とにかく疲れた。まともに物を考える状況ではない。」(6月21日)


 ・「「村木から指示されたこと」「証明書を村木に渡したこと」やっぱり今でも単独でやったと思っているか?と検事に聞かれて「私の記憶では私が決断して●(発起人)に渡した」と答えると、「否認するわけね。じゃあ、室長補佐だった●さんとか関係者全員証人尋問だね」「→否認するわけね。関係者全員証人尋問だね」という発言にはプレッシャーを感じた。」「(健康状態)悪い・心臓がドキドキして苦しい。訳もなく涙が出てくることがある。」(6月22日)


 ・「これまでのダイジェスト版の調書6枚(村木から指示、村木に渡した。)
→村木からの指示があって、村木へ証明書を渡したのではなく、弁護士会館B1のメトロで●(発起人)に渡したのが私の記憶であるという供述をしたが、調書はすでに出来上がっていて、署名押印は拒める状況ではなかった。」「保釈という甘いえさの誘惑に負けてしまった。保釈の話をしているか聞かれて、一応拘置期限は7/4だけど、土日にかかる場合は普通前日の7/3に処理すると言われ、その後、すでに出来あがっている調書に署名押印という段取りになっていて、ここで話がこじれるのが怖くなった。」「(健康状態)悪い・睡眠不足、動悸、かゆみ」(6月25日)


 ・「調書の中には、「村木から指示されて証明書を作り、村木へそれを渡した」という主旨のことも書いてあったが、あきらめた。(とてもこの中にいたのでは、まともに物事を考えられない。冷静にあと先のことを考える余裕はとてもない。一分一秒でも早くここを出て東京に帰りたい。)」「(健康状態)悪い・だるい、食欲不振、頭痛→かぜかも。」「(弁護人について聞かれたか)保釈は検察庁としても反対はしないので、金曜日か月曜日になると思う。300万位は保釈金が必要になると思うので、弁護士さんと相談しておいた方がよい。」


 ・「拘留中の供述について『決して精神的に不安定になってもう想を語ったわけではない』という、私が語ったことになっている供述調書の言葉→悔しい、不本意」「(健康状態)悪い・だるい」(6月30日)


 ・「いきなり裁判における反省の言葉を紙に書けと言われた。1日かけて考えようと言われた。」「・裁判で想定外のことを言われたら困るから、一筆かかせて洗脳しておけと言われているのかも知れない。これ以上のことは出てから考える、今は冷静になれない。と言ったら、明らかに目の色が変わった。・今回のような件で保釈はめずらしいとも言われた。・裁判で供述調書と違うことを言うと余罪を持ち出して再逮捕ということもあるのだろうか心配だ。・裁判における反省の言葉を拒否したら、保釈に影響がでるのだろうか?」「(健康状態)悪い・疲れた、頭痛、夜中に何度も目が覚める。」(7月2日)


逮捕された村木氏、係長のほかにも、多数の厚労省関係者が在宅被疑者として取調べを受けた。その10人のうち5人が、検察官の取調べにおいて、村木氏が本件公的証明書の作成に関与していたと記載された供述調書への署名押印に応じた。



公判で明らかになった検察官主張の矛盾

村木氏に対する事件は、2009年7月24日に公判前整理手続に付する旨が決定され、2010年1月27日から公判が開始された。


公判において、検察官は、村木氏は、「凛の会」は心身障害者団体としての実体がなく、定期刊行物「凛」は心身障害者の福祉の増進を図ることを目的としないことを認識しながら、正規の手続をとらず、係長に指示して日付を遡らせた虚偽の公的証明書を作成させ、係長からこれを受け取り、「凛の会」会長に交付したと主張した。検察官は、村木氏がそのようなことをしたのは、本件が有力国会議員から村木氏の上司である部長に要請された「議員案件」で、「凛の会」の実態がいかなるものであれ、公的証明書を発行することが企画課内で決まっていたところ、「凛の会」から日付を遡らせた公的証明書の交付を要請されたからであると主張した。


「凛の会」会長は、公判において、検察官の主張に沿って、自身の手帳に記載のある2月25日午後1時に、「有力国会議員」と面談して、「凛の会」に対する公的証明書発行への口添えを依頼したと証言した。しかし、「有力国会議員」は、その日時、千葉県のゴルフ場におり、「凛の会」会長と面談することは不可能であったことが、「有力国会議員」の手帳およびゴルフ場からの照会結果により、明らかになった。


「凛の会」発起人が署名押印した検察官調書には、6月4日に第三種郵便物の承認書を受領した数日後、日本橋郵便局から公的証明書の原本の提出を求められ、係長に5月中の日付で公的証明書を発行するよう要請し、その翌日か翌々日に厚労省か連絡があり、「凛の会」会長に厚労省を訪ねて企画課長から公的証明書を受領するよう伝えたと記載されていた。「凛の会」発起人は、公判でも、自分が係長から本件公的証明書を受け取ってきたということはないと証言した。「凛の会」会長も、6月上旬に「凛の会」関係者から電話を受け、その日の午前中に厚労省に出向いて、村木氏から本件公的証明書を受け取ったと証言した。これに対し、係長は、「凛の会」の案件処理を雑事として先延ばししていたところ、5月中旬ころに「凛の会」から督促があり、6月1日午前零時から1時ころに、公的証明書のデータを作成し、同日朝8時くらいに出勤し、企画課長の公印を押して本件公的証明書を作成し、その日に「凛の会」発起人に連絡して、厚労省の隣にある弁護士会館の地下1階のメトロという喫茶店で「凛の会」発起人に渡したと証言した。係長方から発見されたフロッピーディスクの中に、本件公的証明書と全く同じ内容の文書データが保存されており、その更新日時は6月1日午前1時20分6秒であったことが、捜査報告書に記録されていた。これにより、係長の証言は裏付けられるのに対し、「凛の会」発起人の検察官調書の記載内容は、あり得ないものであることが明らかとなった。さらに、「凛の会」会長の証言は、日本橋郵便局担当者が「凛の会」に公的証明書の提出が必要であると伝えた日(6月8日ころ)、本件公的証明書が日本橋郵便局に提出された日(6月10日)、「凛の会」会長の手帳の記載、村木氏の手帳という客観的証拠と符合しないことも明らかになった。



無罪判決と検察官による証拠隠滅・犯人隠避の発覚

2010年9月10日、大阪地方裁判所は、村木氏に対し、無罪判決を言い渡した。


同年9月21日、大阪地方検察庁特別捜査部の主任検事が証拠隠滅の罪で逮捕、同年10月11日に起訴され、2011年4月12日に懲役1年6月の有罪判決を受けた。判決で認定された犯罪事実の要旨は、2009年7月13日、大阪地方検察庁において、村木氏らに対する虚偽有印公文書作成等被告事件の証拠であるフロッピーディスクについて、パーソナルコンピューターと高機能ファイル管理ソフトウェア等を使用して、同フロッピーディスク内に記録されていた「コピー~通知案」と題する文書ファイルの更新日時「2004年6月1日、1:20:06」を「2004年6月8日、21:10:56」に改変するなどし、もって他人の刑事被告事件に関する証拠を変造した、というものであった。


さらに、2010年10月1日、大阪地方検察庁特別捜査部の部長および副部長が、犯人隠避の罪で逮捕、同年10月21日に起訴され、2012年3月30日に懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が言い渡され、2013年9月25日には、同判決に対する控訴も棄却された。判決で認定された犯罪事実の要旨は、副部長は、2010年1月30日、主任検事から、本件改ざんの告白を受け、同年2月1日、部長に報告したが、部長および副部長は、同年2月2日、本件改ざんを故意によるものではなかったと事実をすり替えるなどし、もって主任検事を隠避させようと決意し、犯人隠避の共謀を遂げて、主任検事に対し、電話で、本件改ざんは過誤によるものとして説明することになったから、どのような説明が付けられるのか、もう一度説明するよう指示してその内容を聞き取るとともに、同月8日、何か聞かれたときに本件データの改変が過誤だと説明できるような書面を作成しておくよう指示するなどして、本件データが過誤によって改変された可能性はあるが、改変の有無を確定できず、改変されていたとしても過誤にすぎない旨事実をすり替えて、自らまたは同部所属の検察官らを指揮して捜査を行わず、同月2日、次席検事に対し、虚偽の報告をし、同月3日、検事正に対し、おおむね同様に虚偽の報告をし、よって、捜査は不要と誤信させて自らまたは同庁所属の検察官らを指揮して捜査を行わないようにさせ、証拠隠滅罪の犯人である主任検事を隠避させた、というものであった。


blank平成22年9月10日 大阪地方裁判所判決(裁判所ウェブサイト)