行政内部での活躍

現在、行政機関の内部において常勤または非常勤の職員として活躍する弁護士が多数います。
第三者委員会の委員となる弁護士、訴訟に関与する弁護士、立法・条例の起案に携わる弁護士、各種検査において助言をする弁護士等、その専門的知識を生かして、様々な場面で活躍しています。

 

弁護士の求人

弁護士の求人に関しては、日弁連が icon_page.png「ひまわり求人求職ナビ」を運営しております。
詳細については、日弁連業務部業務第一課(TEL:03-3580-9838)までお問い合わせください。

 

行政内部で活躍する弁護士のご紹介

Case1:弁護士A、外務省 国際法局経済条約課

弁護士になってから約3年間は電機メーカーの知財部にて契約等のチェックをしていましたが、その経験を生かし、一方で公益に関わる仕事がしたいと思い公募に応募しました。私が所属する国際法局経済条約課の業務内容は、経済連携協定その他の経済に関する国際約束と、他の国際約束や国内法との整合性のチェックです。具体的には、国会提出国際約束等の締結のための業務や、条約の締結に向けた交渉、国会での条約審議等における法律的な観点からのサポート等を行っており、私は経済連携協定のサービス貿易と知的財産を担当させて頂いております。

 

先日は、ベトナムからの看護師候補者等の受入れに関する法的文書に向けた交渉に参加するためにハノイに出張するなど貴重な経験を積ませて頂きました。その際、チームで仕事をする結束感を感じることができ、外務省で働けて良かったと心から思いました。この業務は、リーガルセンスは勿論のこと、交渉ごとであるため冷静な判断やバランスが求められる職場であると感じています。かなりタイトな日程になることもありますが、本当に全力を尽くしている実感が持てます。

 

2年間の任期終了後は未定ですが、海外で勉強しさらに国際感覚に磨きをかけ、国際ビジネスをサポートする弁護士になりたいと考えています。

 

Case2:弁護士B、関東財務局 証券取引等監視官部門 証券検査官

弁護士になって9年になります。東京の外資系法律事務所で、主に証券・金融関係の企業法務の仕事をしていました。関東財務局の証券取引等監視官部門が証券検査に携わる弁護士を任期付公務員(任期2年)として募集していた際に、証券コンプライアンスに関する専門性を高めようと考え、事務所の了解を得て応募しました。


関東財務局では、証券検査指導班というチームに所属し、各検査チームが検査の現場で日々遭遇する法的問題にアドバイスをすると共に、時には私もチームの一員として検査に参加させて頂いております。日々の職務では、日系の金融商品取引業者(証券会社等)の検査に加えて、外資系の金融商品取引業者に検査に入ることも多く、とても国際的な業務に驚きました。また、金融商品取引業者の最先端の実務を、会社全体の運営の観点から検討する機会に恵まれ、やり甲斐のある仕事をさせて頂いて大変視野が広がったように思います。そして、人間性豊かな関東財務局のプロパーの職員の方々をはじめ、他の現役の任期付職員の弁護士・公認会計士や、任期付職員OBの弁護士・公認会計士の方々とも親しくお付き合いをさせて頂き、大変感謝しております。

 

Case3:弁護士C、自治体の任期付短時間勤務職員

弁護士になって4年目の春から、富田林市(大阪府)の任期付短時間勤務職員として勤務をしています。


市役所での勤務は週2回(午前9時~午後5時30分)で、それ以外の日は通常の弁護士業務を行っています。弁護士業務を続けながら自治体内で働くことができることに魅力を感じたため、公募に応募し、採用されました。


勤務先の自治体では、市が保有する債権の管理・回収に関する法的指導・助言、国民健康保険料の移管案件の徴収を行っているほか、職員向けの研修講師を担当したり、債権以外の庁内法律相談にも対応しています。


強制徴収公債権である国民健康保険料の徴収に関しては、徴収職員として財産調査や滞納処分(差押)も行います。強制徴収公債権の財産調査や滞納処分は、通常の弁護士業務では携わることのできないものですし、庁内法律相談等を通じて学ぶことは多く、非常にやりがいのある仕事だと思っています。


市役所での勤務日以外は、通常の弁護士業務を行っているほか、弁護士会の委員会活動にも積極的に参加しています。委員会活動を通じて他自治体の任期付公務員(自治体内弁護士)や自治体職員の方々と知り合うことも多く、市役所勤務で得た知識・経験を活かして、弁護士としても自治体法務に携わる機会が増えました。


任期後も、これまでの経験を活かして、弁護士として自治体に携わる仕事を続けていきたいと考えています。



Case4:弁護士D、地方自治体の審理員及び行政不服審査会委員

大阪府内の大阪狭山市で審理員の、東大阪市で行政不服審査会の委員をそれぞれ拝命しています。


審理員及び行政不服審査会の委員は、いずれも2016年(平成28年)4月より施行されている行政不服審査法に基づく職務です。行政不服審査法は、行政庁の処分等によって不利益を受けた国民が不服を申し立て、これを行政庁が審査する手続について定めたものですが、公正性の向上、使いやすさの向上等の観点から約50年ぶりに全面改正されました。その法改正の目玉となっているのが、①争いの対象となっている処分には関与しない職員が不服申立ての審理を行うという「審理員」の制度と、②有識者からなる第三者機関が審査庁の判断をチェックするという「行政不服審査会」の制度の2つです。


これら2つの職務は、新しい行政不服審査制度の肝となるものですので、弁護士が関わるのが望ましい職務ですが、全国的には特に前者は弁護士が関わることが少ないのが実際で、私の場合は自治体から所属弁護士会へ推薦依頼があり、会からの推薦に応じて就任することとなりました。


審理員、行政不服審査会委員とも仕事は常時あるわけではなく、いずれも事件が係属した場合に随時仕事が発生し、本業とも兼任可能なものですが、審理員は不服申立てがなされたときに選任されて審理を行い、審査請求人に請求内容や不服の言い分を確認し、処分庁に処分理由を具体的に説明してもらい、双方の意見をかみ合わせて事案の真相を解明し審理員意見書を起案し終わるまでに概ね半年間程度かかります。また、行政不服審査会委員は合議体の一員として、審理員のまとめた事件記録を読み、審理員の審理が不十分なところがあれば追加的に補充調査を行い、毎月1回程度開催される会議に出席し意見を述べます。前者は地裁の裁判官のような仕事であり、後者は高裁の裁判官のような仕事です。後者では保育所への入所の可否、生活保護費の返還の可否等が争われた事案等を審理しましたが、どちらの仕事も行政法や行政事件の知識経験が求められ、行政内部に法の支配を実現する極めて重要な仕事ですし、自分自身にとっても大いに勉強になるものです。


こうした経験を活かし、今後も行政法や行政事件に関わる仕事を続けていきたいと考えています。