外国人の入国在留手続
1 手続の概要
1 入国在留手続関係の申請業務
外国人が日本に入国し、在留するためには、在留資格を有することが必要になります。
この在留資格を得たり、変更したり、期間を更新したりするために入国管理局に対して行う、在留資格認定証明書交付申請、在留期間更新申請、在留資格変更申請、永住許可申請などの行政手続を、弁護士は、外国人本人を代理して行っています。
2 退去強制手続の口頭審理における代理業務
退去強制事由があるとの疑いのある外国人に対しては、退去強制手続が開始されます。
退去強制手続は、違反調査、違反審査を経て、退去強制事由があると認定された者が不服申立てを行うことによって口頭審理手続に移行しますが、口頭審理では、弁護士が代理人となって、退去強制事由にあたらないことや、人権諸条約を適用すると退去強制をしてはならない場合にあたることなどを主張します。
このことにより、外国人が退去強制されず、在留特別許可を受けることができることがあります。
3 難民不認定への異議における代理業務
日本は難民条約に加入しているので、難民条約で定義された難民にあたると日本政府が判断すると、その外国人は難民として保護されます。
日本の難民認定手続は、出入国管理及び難民認定法によって定められ、一次申請手続と不認定処分に対する異議申立手続があります。異議手続では、口頭審理、審尋が行われますが、弁護士は申請者の代理人として活動することが認められ、難民として認定されるための主張、立証活動を行っています。
2 申請業務における弁護士の関与
外国人の妻を夫が呼び寄せたり、日本企業が外国人を雇うために入国させたりする場合に日本国内で申請する在留資格認定証明書交付申請や、在留期間の更新の申請、在留資格の変更の申請、永住許可の申請などを弁護士は代理して行っています。
2005年からは、各弁護士会を通じて地方入国管理局長に届け出た弁護士については、本人の出頭がなくても申請書や証拠等の提出等ができることとなっており、全国でこの届出を行った弁護士が活動しています。
また、人権に関係する在留資格申請手続については、日弁連は法テラスに委託して実施する外国人法律援助事業によって、外国人が弁護士に代理申請を依頼することを援助しています。
具体的事例(離婚調停係続中の在留資格更新許可)
家庭を棄てて別居してしまった夫との間で離婚調停などが係続中の場合、日本人の配偶者としての在留資格の更新について、入管から否定的な結論を示唆されたり、更新を不許可とされることが少なくありませんが、弁護士が代理人となって、調停中であることや別居の状況を説明し、再申請を行うことなどによって、更新を許可される事例が多くあります。
3 行政との争訟に関する業務における弁護士の関与
- 退去強制手続で在留特別許可を与えるかどうかについては、これを基礎づける事実が存在するか、その事実を国際人権法にあてはめて法的保護に値するかなどが争点になります。
例えば、在留資格はないものの日本人の配偶者や親として日本で生活する外国人については、人道上の見地のみならず、自由権規約や子どもの権利条約との関係で法務大臣の裁量が狭められ、在留特別許可が与えられるべきこととなります。
このような見地から、弁護士は事実を立証し、人道上、あるいは国際人権条約上、在留特別許可を与えるべきことを主張しています。
弁護士の代理人としての活動を委任することに対しても、日弁連は、法テラスに委託して実施する外国人法律援助事業によって援助を行っています。 - 難民異議手続では、第三者機関である難民審査参与員が立ち会って行われる口頭審理と審尋手続が実施されます。
口頭審理と審尋では、本人の陳述等のほか、代理人からも一次審査における事実誤認の主張や難民条約の解釈等に関する主張立証が行われます。
また、行政手続での結果に不服がある場合、不認定処分取消を求める行政訴訟によって認定を求めることとなります。
日弁連と国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)は、共同して、難民法律援助事業を実施しています。
具体的事例(ミャンマー出身男性の難民認定)
ミャンマー出身男性が、本国での政治団体や来日後の政治活動を行っていたために本国に帰れば迫害をうけるおそれがあるとして難民申請をしたところ、一次では不認定の結論となってしまった案件について、異議手続で弁護士が代理人となって、それまでの活動経歴などを詳細な陳述書として提出し、難民該当性をめぐる迫害の主体論などの法律論点についても主張を行った結果、一次の不認定の結論が覆り、難民認定を得て日本で安心して生活を送ることができるようになりました。
4 弁護士がこれらの手続を代理することの意義
在留特別許可手続では、人道上の配慮を求めると同時に、子どもの権利条約や自由権規約などに基づく規範の解釈や適用の主張も重要なテーマです。
難民認定手続は、迫害を受ける虞れを基礎づける事実の立証と、難民条約上の難民の定義に関する解釈が問題となります。国際的にも様々な解釈と判例などが集積されており、これらの知識に基づいた有効な主張立証が必要になります。
これらの援助は、高度な法律専門家である弁護士によってこそ担うことができるでしょう。
参考
難民認定に関する法律援助事業の手続別援助件数
法律相談 | 認定申請援助 | 不認定異議申立代理 | 不認定取消訴訟代理 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
2007年度 | 5 | 10 | 16 | 32 | 63 |
2008年度 | 22 | 37 | 39 | 61 | 159 |
2009年度 | 361 | 30 | 97 | 73 | 561 |
2010年度 | 340 | 26 | 108 | 76 | 550 |
2011年度 | 259 | 31 | 134 | 43 | 467 |
2012年度 | 411 | 53 | 103 | 89 | 656 |
2013年度 | 516 | 98 | 136 | 39 | 789 |
合計 | 1914 | 285 | 633 | 413 | 3245 |
※2007年度は法テラスへの委託開始の2007年10月1日以降の下半期の件数