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第15回 2014年5月20日号 再生局面における金融機関との交渉〈2〉

弁護士 堂野 達之

■プロフィール
堂野 達之 日弁連中小企業法律支援センター 委員(東京弁護士会 所属))

債務返済の計画と実行

 金融機関への債務の返済を進めるためには、リスケ中に自社の経営体質を抜本的に改善するための経営改善計画を策定する必要があります。自助努力により、経費をいつから誰が責任者となって、いくら削減するのかを明確にし、いたずらに経費を削減して売り上げに打撃を与えないように注意します。売上高の予測は、景気が回復しない経済下では、保守的に見積もることを金融機関から求められることが多いです。
 計画の策定にあたっては、公認会計士や税理士などの専門家の助力を受けるべきですし、金融機関から第三者の専門家によるデューデリジェンスを受けるよう求められることがあります。
 経営改善計画を策定した上で、負債を長期で分割返済する計画を立てる必要があります。通常は、フリー・キャッシュ・フロー(営業利益+減価償却費-設備投資額)の7~8割を返済原資に充てることを求められるようです。

債務の一部免除

 抜本的かつ実現可能性の高い経営改善計画によっても、返済に30年も40年もかかるような場合には、例えば返済期間を15~20年程度に収めるように、金融機関に債務の一部免除を求めることになります。
債務の一部免除を受けるには、計画の実現性、徹底した自助努力、粉飾決算や不正行為も含めた情報の開示、経営者責任の明確化などが求められます。手法として、第二会社方式(事業を新会社に移して旧会社を清算)、債権譲渡方式(金融機関は貸付債権をサービサーに廉価譲渡、債務者はサービサーに弁済して残債務の免除を受ける)等が必要となることもあります。
 手続きにあたっては、金融機関は中立公正な第三者の関与を求めるのが通常です。中小企業再生支援協議会や、新たに運用が開始された特定調停を利用する必要があり、金融機関との交渉には、弁護士の助力が不可欠となります。

金融機関の行動特性

 債務返済の交渉を行うには、金融機関の行動特性を理解しておくことが大切です。まず、こまめなコミュニケーションが重要です。金融機関は情報開示を重んじ、担当者は受け持っている企業が多く個別の融資先のフォローになかなか手が回りませんから、企業側から積極的にコミュニケーションを取ると安心されます。
 次に、金融機関は少しずつでも継続して債務返済がされることを重視し、債務免除は原則としてしません。債務者の企業としても、債務免除は最後の手段と心得るべきでしょう。
そして、金融機関は他行とのバランス、衡平を重んじます。その意味でも、金融機関が複数であれば、金融機関説明会(バンクミーティング)は有用です。他方で、メーンバンクの意向に他行が追従する傾向があり、債務返済交渉を進めるにあたっては、まずはメーンバンクと摺り合わせておく必要があります。
 また、金融機関は自行が企業を潰したという風評リスクを恐れ、法的な回収手段に出ることは少ないと言われています。しかし、不正行為や財産隠匿には厳しい目を向けますし、場合によっては法的な回収手段も辞さないです。
 金融機関は組織であるため、支店担当者が本部に稟議を上げるときのために、債務者の企業の側で説明資料などを作っておくと、スムーズに進むことが期待できます。


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出典:帝国データバンクの情報誌『日刊 帝国ニュース』

参考ページ> 借入金返済・資金繰り 企業再生・清算