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第14回 2014年5月13日号 再生局面における金融機関との交渉〈1〉

弁護士 堂野 達之

■プロフィール
堂野 達之
日弁連中小企業法律支援センター 委員(東京弁護士会 所属)

 企業が事業活動の利益で負債を正常に返済できない局面となったときは、金融機関との交渉により返済条件を緩和したり、場合によっては債務のカットを求めることが必要となります。この際の交渉のポイントを説明します。

リスケジュール

 企業が再生するためには、利益を上げられる体質に改善することが最重要であり、そのために、金融機関に返済条件を緩和してもらい、または元本返済を猶予してもらい(「リスケジュール」略称は「リスケ」)、その間に経営改善を進めることが必要です。
 2009年12月に施行された中小企業金融円滑化法により、金融機関に申込をすれば、かなりの割合でリスケが受けられるようになりました。同法は2013年3月に終了しましたが、リスケの慣行が広く行き渡ったおかげか、金融庁によると、2013年4月から9月までの貸付条件変更の実行率は98.8%となっています。
どのような経営状態になったらリスケの申込をすべきでしょうか。リスケを受けると、通常は新規融資を受けられなくなります。逆に言うと、どの金融機関からも新規融資を受けられなくなったような場合は、リスケを行う潮時ということになります。このような場合でも、数年先もどの債務も正常に弁済して事業を続けられる見込みが高ければ、敢えてリスケの申込をする必要はないかもしれませんが、1年先でもいずれかの債務の支払いを止めなければならない事態が予測されるのであれば、早めにリスケの申込をすることをお奨めします。近時は景気の低迷によりどの企業も売り上げ不振に苦しんでいますので、早期の決断が肝心です。
 リスケを受ける場合、通常元本を据え置きにして約定利息を全額支払わなければなりません。元本の返済時期は3カ月後か6カ月後に設定して数回刻むことが多いようです。金融機関が複数であれば、全ての金融機関との間で平等な条件で行います。
 メリットは、その間返済が助かることです。またリスケを行うことで、金融機関から明確に経営改善を求められるため、経営者自身に、もう後がないという一定の意識的な規律が働きます。
 デメリットは、通常新規融資を受けられなくなることです。これは既に借り入れをしてリスケを受ける金融機関だけではなく、まだ借り入れをしていない金融機関からも同じです(質問されれば他行でリスケしている事実を開示せざるを得ません)。リスケをすると手形割引にも応じなくなる金融機関も多いと言われていますが、月次の資金繰り表等を示し、経営改善に着手して早期に利益体質になる見込みがあることを示せば、応じてくれる金融機関もあります。
 従って、金融機関から新規融資を受けられる見込みがあるのであれば、リスケの申込は慎重に考えた方がよいでしょう。また、申し込みにあたっては、今後新規融資(手形割引も含む)が受けられないことを前提に資金繰りを組む必要があります。
 企業としては、リスケは延命手段ではなく、本格的な経営改善を断行するための猶予期間であると心得るべきです。具体的な施策に果断に着手するとともに、経営改善のための抜本的な計画を専門家の助力を得て策定し、金融機関にも説明し意見交換することが重要です。リスケ期間中に経営改善が果たされなければ、金融機関から転廃業を促されたり、資金繰りが回らず事業継続を断念しなければならなくなる可能性もあるので、真剣に取り組むべきです。(つづく)

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出典:帝国データバンクの情報誌『日刊 帝国ニュース』

参考ページ> 借入金返済・資金繰り 企業再生・清算