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第12回 2013年12月19日号 国際展開における弁護士の使い方〈2〉

弁護士 池内 稚利

■プロフィール
池内 稚利
日弁連中小企業法律支援センター 委員(第一東京弁護士会 所属)

弁護士の考え方(前回の続き)

 企業の方は、海外展開を新たなビジネスチャンスととらえ、夢をふくらませて考えます。言ってみれば、婚約中の男女のようなものです。将来起こる問題点などは、愛さえあれば解決できると考えるのと同様に、やる気さえあれば解決できると考えます。 
 しかし、我々弁護士は、多くの離婚事例を見てきている第三者です。当事者のような夢を追いかけてはいません。多くの離婚事例から、どういったことが当事者間のすれ違いを生むかを経験してきています。元を正せば、結婚の目的・結婚観が最初から違っていたというケースもあります。たとえば、夫は自分に従順に従う甲斐甲斐しい妻を求めていたが、妻は自立した女性としての独立した生活を重視してくれる理解ある夫を求めていた、というようなケースです。もし、経験ある弁護士が婚約中に相談を受けていれば、当事者と違った第三者の冷静な視点から見てアドバイスするでしょう(もっとも、法律家に結婚したほうがいいかどうか聞いてくる人は実際にはほとんどいませんし、相談されても回答に困るのですが…)。 
 結婚・離婚と同様に、多くのビジネスの失敗を見てきた弁護士は、ビジネスの夢よりもリスク(問題点)を先に見る傾向にあります。しかし、リスクを指摘するからといって、ビジネスに文句をつけているわけではありません。リスクを理解してもらい、回避する方法を指摘し、回避できない場合は、企業家にリスクを意識してビジネスをしてもらうように仕向けます。 
 それでは、以下、事例に即して、弁護士の視点で例題を解説します。

例題に対する問題点

(1)当事者の意識の違い
 例題から分かるのは、当事者の意識の違いです。日本のX社は成長性を考えて海外進出を検討しており、ダメなら他をあたる(結婚を例に取れば、「他の人との結婚も考える」)といった考えであるのに、東南アジアA国のY社は、これがチャンスとばかりの積極的な(結婚を例に取れば、「絶対に逃がさない」)態度である可能性が高いです。この意識の違いが悲劇を生む可能性があります。

(2)Y社の活動とX社の対応の予想図
①カタログ他の宣伝広告
 Y社は製品カタログにX社の商品を載せるほか、業界紙等にも積極的に宣伝をしたいと申し入れて来ました。X社としてもそれは望むところで、異論があろうはずがありません。
②商標・商号使用
 もちろん、宣伝のためには、X社の名前や商標の使用も請われました。これも、X社に異論がありません。Y社は、自社の建物にも、X社の商号や商標を掲げました。
③授権証
 Y社から、A国内で販売するには、Y社が将来も安定してX社の製品を供給できるというX社の証明書が必要であると言われました。これは、この製品を購入しようとするY社のバイヤーの立場に立てば当然の要求であり、X社がこれを拒絶したらX社の製品は売れません。そこで、請われるままに販売権があるという授権証を発行しました。そこには期限の定めはなく、それ以降、Y社は、自社の宣伝や看板にX社の特約店という趣旨の記載を始めました。(つづく)

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出典:帝国データバンクの情報誌『日刊 帝国ニュース』

参考ページ> 契約交渉  知的財産制度の活用・模倣品対策