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第7回 2013年10月29日号 国際倒産 ―債権回収の対策―〈2〉

弁護士 平良 夏紀

■プロフィール
平良 夏紀
日弁連中小企業法律支援センター 幹事(兵庫県弁護士会 所属)

取引先である外国の個人や法人が事実上倒産状態となった場合

法的倒産手続とはなっていませんが、債務者が事実上倒産状態になって債権回収が不可能となることも考えられます。 
 特に、代理店等を通して直接面識を持たないまま取引を開始した場合、債務不履行が発生してはじめて問題が明るみになることも少なくありません。極端な場合、債務の履行を催告する通知を送ろうとしたところ、取引先は正規に登録をされておらず、実在しないことが判明するということもあります。また、以前までは問題なく連絡が取れていた電話番号等と突然連絡が取れなくなり、それ以外の連絡手段がないという問題が発生することもあります。
 国内の取引先が債務不履行に陥ったときは、訴訟を提起する等して強制的に債権を回収することができますが、外国の取引先の場合は外国で訴訟を提起しなければならなかったり、国内で提起しても外国の財産から回収するには外国の裁判所で日本の判決の承認を経る必要があるなど、費用や時間の面で様々な制約があり、債権回収が事実上困難となる場合が多いと考えられます。

外国の取引先が事実上倒産状態となった場合に備えて採り得る手段

特に、外国の取引先の場合には、問題が発生してからの対処では手遅れの場合が多いため、取引を開始する前に損害を最小限に抑えておくことが重要になります。  
 まず、取引先の個人または法人が実在するかを確認する作業は怠ってはいけません。戸籍・住民票や商業登記簿の制度が存在しない国であれば、それに代わる公的な証明書を徴求する必要があります。証明書には必ず取引先の住所の記載があるかを確認し、記載がない場合は他の公的証明書も徴求し、印鑑証明書の代わりにサイン証明を徴求する必要もあります。
 また、万が一、取引先からの債権回収が不可能となっても、損害を最小限に抑えるために、①担保を設定する、②(自社が売主であれば)信用状取引を行う、③入金を確認してから商品を発送する、④デポジット金を要求する(不払の場合は相殺)、等の手段をとる必要があります。自社が買主の場合には、⑤契約時に一部を支払い、商品を受領した時点で残額を支払うという分割弁済の方法を採ることが考えられます。 なお、取引関係が継続し、信頼関係が構築されている場合であっても、これらの手段は徹底するべきだと思います。
 さらに状況によっては、外国の取引先に訴訟提起や仲裁申立をする場合もあります。こうした事態に備え、取引開始の際に契約書を作成するのはもちろん、注文書・受注書のみで取引をする場合も、書面に最低限、準拠法および管轄条項を設けておく必要があります。特に準拠法の定めは、訴訟や仲裁という場面に限らず、全ての取引行為の前提となり、非常に重要です。
 また、裁判ではなく仲裁手続を選択する場合には、当事者間で仲裁合意をしていることが必要になります。準拠法を何法にするか、紛争になった際にどこでどのような手続を行うかを予め定めていない場合には、これらの点でも争いが生じてしまう可能性があるので、取引開始の段階で準拠法や管轄について合意しておくことが重要です。

 外国の取引先と取引をする場合は、国内で取引する場合に比べ、より多くの問題が想定されます。そのため、取引開始の段階から、適宜、弁護士等に相談し、リスクの軽減を図っていただきたいと思います。

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出典:帝国データバンクの情報誌『日刊 帝国ニュース』

参考ページ> 企業再生・清算