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第20回 2014年10月21日号 事業再生におけるタックス・マネジメント〈1〉

弁護士 後藤 登

■プロフィール
後藤 登
日弁連中小企業法律支援センター 委員(第二東京弁護士会 所属)

1.タックス・マネジメントの重要性

 事業再生の目的は、税引き後利益の最大化を通じて、債務の弁済に充当可能なキャッシュ・フローを最大化することにあります。金融機関の最大関心事も、支援によってどれだけのキャッシュ・フローが生み出され、返済原資が生じるのか、ということにあります。
 そこで、再生債務者は、売上げを拡大して債権回収を確実に行うことで、キャッシュ・インを増やす一方、不要な経費支出の節減によってキャッシュ・アウトを削減することに努めます。その際、法人税等の負担によるキャッシュ・アウトを適切に抑制する、いわゆるタックス・マネジメントが極めて重要です。

2.債権者から債権放棄を受けた場合に生じる債務免除益課税対策

(1)債務免除益課税による不都合
 事業再生において、金融機関等の債権者から多額の債権放棄を受けた場合、再生債務者には債務免除益が発生します。債務免除益は法人税法上の益金として課税対象となりますので、何も手を打たなければ法人税法等の税金によるキャッシュ・アウトが生じることになります。その分、事業再生に充当できる原資が減少してしまいます。このような事態は、再生債務者にとって不都合であるばかりでなく、債権放棄を行った金融機関等の債権者にとっても意図するところではありません。

(2)青色欠損金の活用
 そのために考えられる対策として、法人税法上の欠損金を活用することが挙げられます。再生債務者は通常、青色欠損金を有していると思われますので、この青色欠損金を損金算入し、債務免除益に充当するのです。
 青色欠損金とは、各事業年度開始の日前9年以内に開始した事業年度において生じた欠損金(益金から損金を控除したマイナス金額)のことです。ただし、2001年4月1日以後に開始した事業年度から2008年4月1日前に終了した事業年度において生じた欠損金額については、繰越は7年に限られます。
 そこで、青色欠損金の活用に当たっては、まず、欠損金の発生した年度を確認し、青色欠損金額を確定する必要があります(青色欠損金に該当しない、いわゆる期限切れ欠損金は、法的又は一定の私的整理に基づく再生計画に基づき債務免除を受けた場合に限り損金算入が認められます)。
 また、青色欠損金として計上された欠損金の中に、本来、損金計上できない類のものが含まれていないか、その質の検証も必要です。例えば、法人税法上認められない資産の評価損をそのまま青色欠損金に計上しているケースなどです。
 青色欠損金額の確定を誤ると、青色欠損金の利用を織り込んで税負担が生じない弁済計画や資金繰りを予定していたにもかかわらず、思いがけないキャッシュ・アウトが生じ、計画に狂いが生じる危険があります。

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協力:日本弁護士連合会
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参考ページ> 企業再生・清算