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第22回 2015年7月2日号 事業再生に使える新運用の特定調停手続〈1〉

弁護士 堂野 達之

■プロフィール
堂野 達之
日弁連中小企業法律支援センター事務局次長 事業再生PT座長(東京弁護士会 所属)

私的再生の手法としての特定調停手続

 金融機関との協議により負債の額や返済条件を調整して窮境に陥った企業を再建する、いわゆる私的整理(私的再生)には、中小企業再生支援協議会、事業再生ADRといった手段があります。ただ、2013年3月に中小企業金融円滑化法が終了し、抜本的な事業再生を要する企業が10万社以上とも言われるなか、関係諸機関の多大な努力はあるものの、膨大な数の中小・小規模事業者の抜本的な再生のための仕組みの整備が追い付いていないというのが実情です。
 日弁連中小企業法律支援センターは、特定調停手続を中小企業の事業再生に活用できるよう、最高裁判所や中小企業庁と協議を重ね、2013年12月に弁護士の指針として「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキーム利用の手引き」を策定・公表し、運用を開始しました。

新運用の特定調停手続の特徴・メリット

1)債務者企業が裁判所に申立て、裁判官や調停委員の仲介により債権者である金融機関と協議して負債の額や返済条件を確定するため、中立性・公正性が担保されている。

2)主に大企業・中堅企業が対象の事業再生ADR、主に中小企業が対象の中小企業再生支援協議会に比べて、年商数億円以下の小規模事業者も対象とし、間口が広い。

3)リスケジュールが中心の中小企業再生支援協議会に比して、債務の一部免除という抜本的な処理も想定されている。

4)前述の「手引き」の策定・公表により、手続の内容が定型化され、使いやすくなった。弁護士が代理人として申立てをするのみならず、金融機関との事前調整を進めたり、経営改善をサポートするなど、窮境に慣れていない経営者の心強い支援者となる。経営者は弁護士に金融機関との交渉を任せることで本業の立て直しに注力できる。金融機関としても、弁護士がいることでスムーズに交渉が進むことを期待できる。

5)税務上の特典が整備された。債権者は、特定調停スキームで策定された再建計画により行われた債権放棄が一定の要件の下で全額損金算入できる。債務者は債務免除の免除益に対し、青色欠損金の損金算入や期限切れ欠損金の損金算入を行い、課税所得を低減、もしくはゼロにすることが可能(2014年6月27日付国税庁課税部長回答)である。

6)信用保証協会付き融資を受けている債務者は信用保証協会の求償権の放棄が可能

7)債務返済計画に反対ではないが積極的な同意はしにくい金融機関に対応し、裁判所が民事調停法17条に基づく決定(「17条決定」)を行い、決定の告知から2週間以内に相手方から異議がなければ、調停が成立するのと同様の効果が生じる。

8)調停が成立(17条決定が確定)すると、調停調書の記載(17条決定)は裁判上の和解と同一の効力が生じ、相手の給付を求める条項の不履行に対して強制執行を求めることができ、債務返済計画の実効性が担保される。

9)費用が比較的低廉。弁護士が関与すれば、経営改善支援センターに申し入れをすることにより、計画策定支援費用の一部の支払いを受けられる可能性がある。

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協力:日本弁護士連合会
ビジネス向け弁護士紹介サービス「ひまわりほっとダイヤル」
0570-001-240

参考ページ> 企業再生・清算