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第17回 2014年8月5日号 海外との取引における与信管理及び債権回収〈1〉

弁護士 土森 俊秀

■プロフィール
土森 俊秀
日弁連中小企業法律支援センター 委員(東京弁護士会 所属)

はじめに

 近時、海外の需要を取り込むべく、海外市場に挑戦する中小企業が増加傾向にあります。また、政府の平成26年度中小企業・小規模事業者政策において、5年間で新たに1万社の海外展開の実現という目標が示されており、これから初めて海外との取引を行う中小企業も多く出てくることが予想されます。本稿では、そのような中小企業を念頭に、海外との取引(主に輸出取引)における与信管理及び債権回収のポイントについて説明します。

1 事前対策の重要性

 まず強調しておくべきことは、海外取引の場合、トラブルが発生してから事後的に対応するのではなく、トラブルを未然に防ぐ、トラブルが発生しても損害を最小限に抑えるための事前対策が極めて重要ということです。
 相手方が代金を支払わない場合、最終手段としては、訴訟等を提起して判決(債務名義)を取得し、強制執行により権利の実現を図るという方法があるわけですが、海外取引の場合、相手方の財産が海外にしかないことも多く、その場合には海外における法的手続を余儀なくされます。それに伴う権利実現のためのコスト(現地弁護士の費用や証拠書類の翻訳費用等)は国内の場合に比べて非常に高額となってしまうところ、特に中小企業の場合は、費用対効果の関係で残念ながら泣き寝入りになってしまうということが多々あります。最終手段に頼らず債権回収ができる状況をいかに整えるか、そのための事前対策が重要になるわけです。

2 取引相手の調査・与信管理

(1)取引相手の調査
 債権回収のトラブルを防止するためには、適切な取引相手を選択することが第一です。必ず信用調査を行い、取引先の信用力を見極めておく必要があります。なお、既存取引先等からの紹介であっても信用調査は欠かせません(失敗例も耳にします)。信用調査では、信用調査会社の信用情報レポートの取得、相手方への各種質問、同業者や取引先等からの聞き取りを行うほか、必要に応じ現地に出向いての調査、現地の専門家等を利用した個別調査等を行います。

(2)与信管理
 信用調査の結果をもとに、取引先への与信限度額及び求めるべき支払条件(次回に記述)を設定し、これに従った与信管理をします。国内取引の場合には社内規定を設けて与信管理をしている会社でも、海外取引用の規定を設けておらず対応できていないことがあります。
 運用にあたっては、定期的に取引先の信用調査をアップデートし、与信限度額等の見直しを行う必要があります。不良債権は、初めての取引先からだけでなく、むしろ既存の取引先から多額に発生しがちですので注意が必要です。特に、取引先が支払条件の変更等を求めてきた場合には、その理由を把握し、対策を立てる必要があります。
 また、時間が経つにつれ回収が困難になりますので、遅滞等があった場合の対応方法につき、督促等のタイムスケジュールも含め、予めルールを定めておくのが効果的です。 (つづく)

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協力:日本弁護士連合会
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