MENU

ひまわりほっとダイヤル 日弁連の中小企業向け弁護士予約サービス ひまわりほっとダイヤル 日弁連の中小企業向け弁護士予約サービス

中小企業のための ほっと通信

トップページ > 中小企業のための ほっと通信 > 第4回 2013年8月6日号 取引先破綻時の債権回収〈2〉

第4回 2013年8月6日号 取引先破綻時の債権回収〈2〉

弁護士 板橋 喜彦

■プロフィール
板橋 喜彦
日弁連中小企業法律支援センター 委員(第一東京弁護士会 所属)

3 譲渡担保

 譲渡担保は、債務者の財産の所有権を担保として債権者に移転し、債務不履行時に対象物件を処分し、その処分代金を債権に充当する約定担保物権です。これは民法に規定はないものの、実務上認められ広く利用されています。譲渡担保には、倉庫など一定範囲の場所の中で搬入・搬出により構成物件が変動する集合物を対象物件とする集合動産譲渡担保と、債務者が第三者に対して有する債権を担保として包括的に債権者に譲渡する集合債権譲渡担保があります。譲渡担保権は、債務者が破綻した場合もその効力が失われない点で、有効な債権回収手段となります。

 譲渡担保に基づいて回収を図る場合は、以下の点に注意が必要です。まず、①担保設定契約において譲渡担保の対象物の特定をすることが重要です。特に集合物を対象とする集合動産譲渡担保では、種類・所在場所及び量的範囲を指定するなどして特定する必要があります(最判昭和54年2月15日)。また集合債権譲渡担保では、第三債務者、債務発生原因、債権発生時期、金額、弁済期などで対象債権を特定することになり、特定可能であれば、将来発生する債権も対象とできます(最判平成12年4月21日)。次に、②譲渡担保の対象となっていることを第三者に示すために、対抗要件を具備する必要があります。原則として動産の場合は占有改定、債権の場合は確定日付のある債権譲渡通知が対抗要件となりますが、譲渡人たる債務者が法人の場合、特別法による登記を対抗要件とすることもできます。また、③集合動産譲渡担保の実行の際は、前述した所有権留保の実行と同様の注意が必要となります。 譲渡担保の実行は、抵当権の実行の場合と異なり、法的手続きによる必要がありません。このように簡易な実行が可能である一方、譲渡担保の実行により得られた利益が被担保債権額を上回る場合、債権者はその差額を清算しなければなりません(最判昭和46年3月25日)。

4 動産売買先取特権

 動産売買先取特権(民法311条5号)とは、売主が売却した動産(商品)につき取得する法定担保物権です。買主が、売買代金を支払わないとき、売主は当該商品を差し押さえ、強制的に競売し、売買代金及び利息を競落代金から優先的に回収できます(民法321条)。 

 この先取特権は別除権の1つです(破産法2条9号)。したがって、相手方の経営破綻時においても行使可能な債権回収手法です。また、商品が第三者に転売されたときは、転売代金の支払前に債務者の転売先に対する転売代金債権を差押え、物上代位により転売代金から売買代金を回収できます(民法304条、民執法193条)。動産売買先取特権は、動産売買の売主であれば誰でも取得できる権利(法定担保物権)ですが、この権利の行使には、①売買代金債権の弁済期が到来していること、②被担保債権・担保権の存在を証明する文書の提出(民執法190条2項)、③物上代位の場合は②の他に転売の事実を証明する文書の提出が必要となります。 動産先取特権は売却した動産に及ぶものであるため、どの動産が売却した動産であるか特定をする必要があり、製造番号等で売却した動産の情報管理を行うことが不可欠です。

123

出典:帝国データバンクの情報誌『日刊 帝国ニュース』

参考ページ> 企業再生・清算