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第23回 2012年8月号 金融円滑化法が来年3月で終了! どうする? どうなる?

弁護士 堂野 達之

■プロフィール
堂野 達之
日弁連中小企業法律支援センター 事務局次長(東京弁護士会 所属)

Q.今月の相談

 当社は、金融円滑化法が施行されて以来、平成22年から平成24年までの各6月末日にすべての金融機関からリスケジュール(1年間元本据え置き)を受け、経営改善計画を提出した上、利払いのみを続けています。平成25年3月末日に金融円滑化法が終了すると聞いていますが、次回のリスケジュールの期日(平成25年6月末日)はその後に来ます。当社はこの時までにどのように対応すればよいのでしょうか。

A.利益(キャッシュフロー)を上げて、利息のみならず元本の一部でも返済できるだけの経営体質に改善することが急務です。数値管理、原因分析、計画の策定・実行が不可欠です。効果的で大胆なリストラも厭わない覚悟も大事です。貴社の場合、円滑化法終了後も期限の再延長に応じてくれるか微妙であるため、金融機関と直接協議して、自社がどのような取扱いとされるのか情報を収集すべきでしょう。再建に通じた弁護士等の専門家を活用して、経営者は本業に集中することも考えるべきでしょう。

解 説

1 とにかく利益を上げること
  金融円滑化法によりリスケジュールを受けている会社は、そもそも赤字か、黒字でも負債が過大になっているケースが大半でしょう。このような会社が事業を続けていくには、利益のみが返済の原資ですから、ともかく利益(キャッシュフロー=営業利益+減価償却費-設備投資)を上げていくことに注力すべきです。今後10年分の利益で負債を完済できるかが一つの目安になります。
 そのためには、①数字面で会社の現状を経営者自身がリアルに把握すること(月次できれば日繰りでの資金繰り表、月次の損益計算書、月次の部門別損益計算書等の作成)、②利益が出にくい原因を分析すること、③利益が出る具体的な計画(アクションプラン)の策定と実行が必要です。地道な努力や工夫は欠かせず、特効薬はありません。
 具体的な経営改善策としては、やはり費用の削減が基本です。売上向上よりもコントロールしやすいですし、利益増加という面ではわずかな経費削減でも売上に換算すると効果が大です。また、小さなコストよりも大きなコストの方がかえってカットしやすいです。費用の削減は早くやればやるほど利益を蓄積させる効果があるので、果断かつスピーディに行う必要があります。利益が出ないのであれば、費用削減は自助努力として大胆に抜本的に行うことが必要です。ただし、やみくもな経費削減はかえって逆効果なので、効果を見定めて行うことも忘れてはなりません。
 人件費の削減は注意を要します。事業は人があってこそ成り立つものであり、安易な退職勧奨や減給は慎まなければなりません。他方で人件費は固定費の多くを占めるため、思い切った自助努力も大切です。収益に貢献する人材とそうでない人材を選別し、後者の人材に誠意と手続を尽くして退職してもらうことが一つの方法でしょう。窮境に陥った原因も分析せずに、やみくもに給料の一律カットに走って優秀な人材のモチベーションまで下げてしまうことは避けなければなりません。
 売上の維持・向上も重大な課題です。売上が思うように伸びないのであれば、月次で部門別・商品別・得意先別等で数値を出して、推移を掴み、原因を探ります。市場自体が縮小したり、顧客ニーズの変化に対応できないのであれば、思い切って撤退を考えるべきです。営業力に問題があるのであれば、営業スタイルの転換やマーケティング戦略の見直しに取り組み、外部のノウハウや知恵を導入することも検討すべきです。

2 円滑化法終了後の金融機関の対応と情報収集の必要性
 金融機関が円滑化法終了後に期限猶予の再延長に応じるかについては、すでに提出された経営改善計画の遂行状況を評価して決定するのではないかといわれています。債務者企業が経営改善計画を定性面・定量面で相当程度クリアしていれば、金融機関は再延長には応じると思われます。
 そうでない場合は金融機関は再延長には応じず、原則として不良債権としてサービサー(債権回収会社)に売却することになります。サービサーは安値で買い取るので、サービサーと交渉して一定の額を弁済して残債務を免除してもらえる可能性があるので、債務免除を交渉すべきです。サービサーによっては、売掛金の差押えなど強硬に法的回収を進めてくるケースもあるので、サービサーへの売却という事態にならないように努力するのが基本です。
 また、信用金庫や信用組合、第二地銀などは、サービサーに売却しないところも多く、交渉して分割払いを続けることになるでしょう。信用保証協会の保証付きの借入は、協会が代位弁済するため、協会と交渉して分割返済を続けることになります。
 重要なのは早めに金融機関と相談をして、自社はどのような取扱いになる見通しなのかを率直に訊くなど、情報収集に努めることです。金融機関との話し合いにより、再建の糸口が見つかるかもしれません。不安であれば弁護士等の専門家が付き添うのもよいでしょう。

3 再延長が難しそうな場合の抜本的な負債処理
 経営改善計画の遂行の見込みが立たず、再延長に応じてもらえない公算が大きい場合には、債務者企業としては金融機関に対する負債を抜本的に処理すること(債務免除)を検討しなければなりません。そのための方法は①債権譲渡、②第二会社方式、③民事再生、④中小企業再生支援協議会があります。
① 債権譲渡については、金融機関がサービサーに売却するには通常は入札方式によりますが、金額によっては相対で売却するときもあります。相当程度の返済原資を用意できるのであれば、自社の知り合いのサービサーに金融機関から買い取ってもらい、そのサービサーに一定額を弁済して残債務を免除してもらうことも考えられます。
② 第二会社方式は、第二会社に事業譲渡や会社分割等により事業を承継させ、旧会社を清算する方法です。よく行われる手法ですが、相当な対価を旧会社に支払って負債の支払いに充てること、債権者の理解を得ることが重要なポイントです。この点を怠ると、承継行為を取り消されたり、第二会社にも債務の弁済を求められるなどのトラブルが発生しますので、弁護士等の専門家と相談して進めることが必要です。
③ 民事再生は、債権者数は過半数で2分の1以上の債権額を有する債権者の同意があれば債務を強制的にカットできるメリットはありますが、取引先の債務も棚上げするため信用が失われやすいことから、余程自社に強みがないと成功するのは難しいといえます。裁判所に申立をするため、弁護士の助力は不可欠です。
④ 中小企業再生支援協議会という中立公正な第三者機関の関与の下、金融機関に債務免除に応じてもらう手法もありますが、メインバンクの理解と協力が不可欠ですし、入口の審査が厳格であり、使えるケースが事実上限られるのが難点です。 

4 再建に通じた弁護士に相談を!
 円滑化法終了後の金融機関への対応、抜本的な負債処理には、専門家、特に再建に通じた弁護士が役に立ちます。専門家に交渉等を任せることにより、経営者は本業に注力することができます。費用に関しても、例えば顧問契約を締結して顧問料を継続して支払うなど、弁護士と相談すれば、支出を抑える工夫も可能です。

 

参考ページ> 借入金返済・資金繰り 企業再生・清算