弁護士になるには(社会人向けQ&A)

Q1 弁護士になるにはどういうルートがありますか?


Answer

弁護士になるためのメインルートは、法科大学院を修了して司法試験に合格し、司法修習を終了するというルートです。


法科大学院には、3年制の未修者コース(3年)と、入試に法律科目が課される2年制の既修者コース(2年)があります。カリキュラムには法律学の科目のほか、法律実務に関する科目も配置されており、弁護士を中心とする多くの実務家教員が教壇に立っています。修了者には「法務博士(専門職)」という学位が付与されます。


2023年から、一定の要件を充たした場合には法科大学院在学中に司法試験を受験できる、在学中受験制度が始まりました。ただし、この場合も司法修習を行うためには、司法試験合格後、法科大学院を修了する必要があります。


これに対し、法科大学院を経ずに司法試験を受験できるルートとして、予備試験ルートがあります。


予備試験は、毎年1回実施され、短答式(7月)、論文式(9月)、口述(翌年1月)のすべての試験に合格すると、翌年度の司法試験の受験資格が付与されます。したがって、予備試験合格→司法試験合格→司法修習終了、というのがもう一つのルートとなります。


また、弁護士になるには司法修習を終了するのが原則ですが、司法試験合格後、司法修習を行うことなく弁護士になることができるルートがあります。企業法務担当者や公務員として7年以上の実務経験を経て、日弁連が実施する一定の研修を修了することで、弁護士資格が得られるルートで、「弁護士資格認定制度」といいます。実務経験の内容によっては必要年数が7年ではなく5年の場合もあります。司法修習中は原則として仕事ができないため、社会人経験者の場合、このルートについても一考の余地があります。

Q2 弁護士になるために最短で何年かかりますか?


Answer

法科大学院の既修者コース(2年)に進学して司法試験に在学中受験で合格し、司法修習(1年)を終了した場合、法科大学院入学から3年で弁護士資格を得ることができます。未修者コース(3年)の場合には、1年プラスされ、法科大学院入学から4年となります。


予備試験ルートでは、予備試験の短答式(7月)、論文式(9月)、口述(翌年1月)の各試験をいずれも1回で合格すると、最短で司法試験の受験資格を得ることができます。翌年の司法試験に合格し、司法修習を終了すると、予備試験受験から約3年で弁護士資格を得ることができます。

Q3 法科大学院と予備試験、社会人にとってどう違いますか?


Answer

法科大学院は、2年間または3年間で修了し、もしくは最終年次までに在学中受験の要件を満たせば、必ず受験資格を得ることができます。一方で、一定の時間的負担と、経済的負担がかかることになります。ただし、経済的負担については、奨学金制度をはじめ様々な経済的支援策が用意されており(Q9参照)、学業に集中できる環境が整えられています。なお、社会人経験者の未修者コース1年次から2年次への進級率は全体と比較すると、若干ですが低い状況にあります(Q12参照)。


他方、予備試験は、短答式、論文式、口述の各試験について、いずれも1回で合格することができれば、1年間で司法試験の受験資格を得られることになり、そうなれば時間的、経済的負担は少なくて済みます。しかし、予備試験の合格率は相当に低い(3%程度)ため、予備試験の最終合格までにかかる時間が読みにくいという側面がありますし、社会人が予備試験に合格するには予備校の利用が必要になるでしょうから、そのための経済的負担も相当額に及びます。また、社会人の予備試験合格率は予備試験受験者全体の合格率よりもかなり低い(1%台)のが現状です(Q14参照)。

Q4 仕事を続けながら学ぶことはできますか?


Answer

全国で、学生を募集している法科大学院は34校、このうち、国立は15校、公立は2校、私立は17校です(2025年4月現在)。ただ、その大半は、原則として昼間開講している法科大学院であり、夜間、土休日開講の授業のみで修了できるようにカリキュラムが組まれている法科大学院は、筑波大学法科大学院(国立)、日本大学法科大学院(私立)の2校のみです(Q6参照)。


通信制の法科大学院は存在していません。オンラインで授業を配信している法科大学院はありますが、オンライン授業の受講だけで修了可能な法科大学院は、今のところ存在していません。


地域的条件や、通学条件などにより、夜間開講の法科大学院に入学できる方はぜひ検討をしていただければと思います。なお、最近急速に普及している在宅勤務などを利用して、夜間開講の法科大学院に通学しつつ、仕事の方をオンラインでこなしている方もみられるようです。そのため、最近は、夜間開講の法科大学院には、全国から受験生が集まっています。


他方、昼間のみ開講の法科大学院に、仕事をしながら通学することには、相当の困難が伴います。自営業など、自ら仕事の時間を管理できる業務に就いている方でない場合は、夜間中心の仕事や、時間の自由の効く仕事に転職するなどの対応が必要になるものと考えられます。


仕事をしながら夜間開講の法科大学院に通学している方の中でも、勉強が進み、司法試験が近くなった場合などに、仕事をやめたり、休職したりする大学院生も一定数見られます。また、夜間開講、昼間のみ開講を問わず、多くの法科大学院では、仕事を続けながら通学する大学院生や、在学中の事情の変化などに対応し、長期履修制度(Q7参照)を設けています。


法科大学院への通学が難しい方が仕事を続けながら司法試験の受験を目指す場合には、予備試験合格によって、司法試験の受験資格を得ることになります(Q3参照)。予備試験受験のための予備校の中には、働きながら学ぶ方のための通信制のコースを設けているところもあります。詳しくは、各予備校のウェブサイトなどをご参照ください。

Q5 仕事を辞めて学ぶ選択肢もありますか?


Answer

法科大学院によっては、夜間コースが設けられています(Q6参照)。自宅から通学できる法科大学院の夜間コースの場合、日中働いてから授業を受けることができるので、仕事を辞めなくても進学することが可能です。


近隣に夜間コースがない、もしくは希望する法科大学院に夜間コースがない場合など、仕事を辞めるかどうかを選択することもありえます。その際、①進学先の法科大学院の司法試験合格率、②自身の司法試験合格可能性、③経済的なリスク、④家庭の事情などのさまざまな要素を考慮して判断することになるでしょう。


進学を考えている法科大学院の司法試験合格率が高いのであれば、仕事を辞めて学ぶ選択に傾きやすいかもしれません。ただし、既修者コースと未修者コースで司法試験合格率には顕著な差があるので、留意が必要です。


司法試験の合格可能性は、法律学修の適性にも左右されます。法科大学院によっては、科目等履修生として1年次の授業を受けられる制度があります。この制度を利用すれば、入学試験を受験する前の段階で、自身の適性の有無を判断するための材料を得ることができます。その他、司法試験予備校や通信教育課程のある法学部に関する情報を収集したり、場合によっては授業を受講したりするなどして、自身に適性があるか、また、仕事を辞めて法律学習に専念することができそうかなどを検討した方もいらっしゃるかと思います。


経済的なリスクも重要な考慮要素です。いずれの法科大学院を選ぶとしても、いかにして学費や生活費を賄うか、想定しておかなければなりません。特に家庭のある人にとっては、法科大学院在学中又は司法試験に最終合格できなかったときの家計のやりくりは避けて通れない課題です。


進学にあたって仕事を辞めるかどうかは、自身(と家族)の置かれた状況や将来の見通しに基づいて、冷静に判断する必要があるでしょう。

Q6 法科大学院の夜間コースとは?


Answer

夜間コースとは、仕事を持っている社会人でも通えるように、平日夜と土曜日などに授業を行うカリキュラムがあるコースです。ただし、夜間コースが設けられている法科大学院は、現在では全国で2つしかありません。


夜間コースのある法科大学院

筑波大学法科大学院・・・つくば市ではなく東京の茗荷谷にあります。夜間コースのみ。

日本大学法科大学院・・・水道橋・神保町付近。昼夜開講。


したがって関東以外では夜間コースに行くこともなかなか厳しい状況です。それでも筑波大学では、オンラインでの授業参加、オンデマンド授業受講の併用が認められるなどの工夫がなされ、地方からの出願者もみられるようです。

なお、夜間コースとはいえ18時台から授業が始まります。残業や通学など職場での調整が必要となる場合もあります。

また、長期履修制度についてもご参照ください(Q7参照)。


仕事が終わった後に大学院で学ぶことは負担もあるかもしれませんが、これまでに、夜間コースからも相当数の方が司法試験に合格しています。

Q7 長期履修制度とはどのような制度ですか?


Answer

長期履修制度とは、仕事を有しているなどの事情により、法科大学院の標準修業年限の3年間では修了が困難な学生を対象に、4年以上かけて修了することを認める制度です。標準修業年限が2年の既修者コースに3年以上の長期履修を認める法科大学院もあります。長期履修制度を利用した場合、標準修了年限を超えて修了に必要な単位を取得することになります。


長期履修制度が設けられていることをウェブサイト上で確認できた法科大学院は以下のとおりです(2025年4月現在)。大学によって要件が異なるため、詳細は各法科大学院に確認してください。


長期履修制度が設けられている法科大学院

岡山大学、関西大学、九州大学、専修大学、筑波大学、東北大学、南山大学、日本大学、広島大学、福岡大学、琉球大学(五十音順)

Q8 法科大学院はどのくらいの学費がかかりますか?


Answer
国立

国立の法科大学院は、入学料28万2000円、授業料(年額)が80万4000円です。


公立

公立の法科大学院2校の入学料は、各自治体の住民等であるか否かによって異なります。東京都立大学は、学生本人またはその配偶者等が東京都民である場合14万1000円、その他の場合28万2000円です。大阪公立大学は、学生本人またはその親が大阪府民の場合28万2000円、その他の場合38万2000円です。


私立

私立の法科大学院の入学料は10万円から30万円の範囲に収まっており、大半が国公立よりも低額に設定されています。一方、授業料(年額)は100万円前後が多数を占めており、また、ほとんどの法科大学院が施設整備費等の諸費用を徴収しています。


私立の場合には国立と比較して学費は高額となりますが、国立にはない大学(または法科大学院)独自の奨学金等の経済的支援制度も用意されています。なかには、入学者の半数以上に何らかの奨学金を付与している法科大学院もあります。詳しくは各法科大学院のウェブサイトなどを参照してください。

Q9 法科大学院在学中に社会人が使える経済的支援策は?


Answer

法科大学院生に対しては、様々な経済的支援策が用意されています。支援策には、社会人経験者に対するもののほか、法科大学院生に対するもの、学生一般に対するものがあります。


教育訓練給付制度

社会人経験者が活用できる経済的支援方策として、「教育訓練給付制度」があります。この制度は、働く人々のキャリア形成の支援などを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。


雇用保険の被保険者であったことなどが要件となりますが、最大で年間56万円が給付されますので、社会人経験者にとっては魅力的な支援制度です。ただし、利用できない法科大学院もありますので、注意が必要です。


各法科大学院における経済的支援制度

各法科大学院では様々な奨学金制度が利用できます。このなかには、大学全体で設けられているもの、法科大学院独自のもの、大学の枠を超えた民間機関によるものなど、さまざまなものがあります。


私立の場合、入試の成績優秀者を対象とした授業料の全額免除制度が設けられている法科大学院もあります。また、法科大学院によっては、社会人経験者を対象とした特別の奨学金制度を設けているところもあります。


これらをうまく活用することで、相当な経済的支援を受けることが可能になります。


日本学生支援機構による奨学金

学生一般に対するものについては、「日本学生支援機構(旧日本育英会)」による奨学金制度があります。


この奨学金は、貸与奨学金です。無利子の第一種奨学金と、有利子(低利率です)の第二種奨学金があります。法科大学院生の場合、通常の大学院生よりも貸与額を増加することができます。第一種奨学金は収入要件や成績要件が、第二種よりもやや厳しいという違いがあります。


また、第一種奨学金については、成績優秀者を対象とした返還免除制度があり、受給者のうち最大で30%の人が、全額または半額の返還免除を受けることができます。

Q10 法科大学院入試の際に社会人に対する配慮はありますか?


Answer

法科大学院の中には、主に社会人を対象にした夜間コースを開講しているところもありますが、このような法科大学院に限らず、入試において社会人経験者向けの選抜枠を用意している法科大学院もあります。


社会人経験1年から3年以上の者を対象として5名から10名程度の定員を設けて優先的に入学させるケースが多く、12校程度の法科大学院がこのような社会人向け選抜枠を設けています(2025年4月現在)。


法科大学院としても、多様な人材に法科大学院で学び法曹として活躍してもらおうとの考えから、このような選抜枠が設けられています。社会人経験をもって法科大学院進学を検討される方には、社会人向けの選抜枠を設けている法科大学院について、ぜひ最新の情報を確認し、志望校の選択に役立てていただきたいと思います。

Q11 未修者コースと既修者コース、どちらを選ぶ?


Answer

2024年の法科大学院入学者数に占める社会人の割合は、18.0%(373人)、うち既修者コースで13.0%(192人)、未修者コースで30.2%(181人)となっています。2020年から2024年の5年間をみても、上記の割合、社会人入学者数に大きな変動はありません。


社会人の方が弁護士を目指す場合、そもそも法科大学院に入学するか(または予備試験合格を目指すか)、法科大学院に入学するとして、夜間コースを選択するか、一般のコースを選択するかを検討することになります(夜間コースについては、Q6参照)。


法科大学院には、標準修業年限3年の未修者コースと2年の既修者コースの2つがあります。既修者コースは、入学者選抜の時点で、法律の知識や法律に関する論文作成能力などを問う試験を行うのに対して、未修者コースでは、入学者選抜の時点で、法律の知識等は問われません。既修者コースでは、入学者選抜時点で法律の知識や論文作成能力について一定の基礎的水準を求めているため、未修者コースよりも司法試験合格率が高い傾向にあります。


どのルート、コースを選ぶかは、①働きながら勉強するのか、または(一旦)退職して法律の学修を中心とするのか、②奨学金受給を含めた経済的状況、➂家庭の状況、④法科大学院入試受験時の法律学修の経験、レベル、⑤法科大学院での学修やそこで得られる教授、実務家、クラスメイトとの交流等の価値評価、⑥本人にとっての司法試験合格の見通しなど、各人の状況をふまえ、検討していくことになります。


法学部出身の社会人の場合でも、既修者コースを選択する方もいれば、未修者コースを選択する方もいます。一方で、法学部以外の出身者で、未修者コースに進まれる方もいれば、(事前に司法試験予備校などで法律を学習するなどして)既修者コースに進む方もいます。


なお、未修者コースに進む場合でも、入学前に、法律に触れて、法律の勉強の仕方を身に付けること、法律の勉強の適性があるかをできる限り確認しておくこと(法律は、制改定されていくもので、弁護士は一生法律を勉強することが必要です)がベターであるように思われます。

Q12 社会人経験者の法科大学院進級率、修了率はどれくらいですか?


Answer

法科大学院では、各学年での学修の積み重ねにより司法試験合格、さらにはその後法曹として活躍するための素養を身に着けられるよう、各校で工夫したカリキュラムが用意されています。そのため、各学年での学修を十分に修得していることを条件に次の学年への進級が認められており、比較的厳しい進級判定が行われています。


未修者コースに入学した社会人経験者について未修者コース1年生から2年生への進級率をみると、2019年から2023年の5年間については6割程度(2023年で57.1%)の社会人経験者が未修2年次への進級が認められているという状況にあります。未修1年次在籍者全体の進級率と比較すると、5%程度低いという状況にはありますが、社会人経験のある学生のうち、一定数は仕事を続けながら法科大学院で学ぶ方もいることを踏まえれば、社会人経験のない学生と比較しても、遜色のない進級率といえるのではないでしょうか。


また、就労などにより未修者コース3年間での修了に困難が伴う学生に向けて、長期履修制度を用意している法科大学院もあります。このような制度を利用し、未修者コース3年間での修了を予定せず、無理なく進級していくことも可能です(Q7参照)。

Q13 社会人経験者の司法試験合格率は?-法科大学院ルート


Answer

社会人経験者が法科大学院を修了して司法試験を受験した場合の合格率については、2020年度が35.5%(445人中158人、全体合格率は39.16%)、2021年度が30.1%(442人中133人、全体合格率は41.50%)、2022年度が42.2%(370人中156人、全体合格率は45.52%)、2023年度は18.7%(520人中97人、全体合格率は45.3%)となっています。ただしこれは、法科大学院修了資格での受験者についての合格率ですので、修了後2回以上司法試験を受験した合格者も含まれています。


また、2023年試験は在学中受験制度が開始したことにより、法科大学院3年次在学中に128人の社会人経験者が在学中受験制度を利用しています。2023年度は、うち49人が合格し、合格率は38.3%(在学中受験者全体の合格率は59.8%)でした。


社会人経験者にも、法学部等での法律の勉強の経験がある人もいれば、まったく他分野から法曹を志す人までさまざまです。特に未修者コース入学者については、学修当初は慣れない法律の勉強や進級に苦労する様子も一部うかがえますが、社会人経験者全体を俯瞰すると、法科大学院で2年~3年間勉強する中で、在学中受験または修了資格に基づく受験をして合格できるだけの力を身につけることは十分に可能といえます。

Q14 社会人経験者の司法試験合格率は?-予備試験ルート


Answer

社会人経験を有する者が予備試験を受験した場合の司法試験合格率については、正確なデータがありません。参考までに、予備試験出願時に有職であった人の予備試験合格率を挙げると、2020年が1.65%、2021年が1.50%、2022年が1.87%、2023年が1.67%、2024年が1.66%となっています。予備試験全体の合格率が3%程度(2024年は受験者数12,569人に対し合格者449人、合格率3.57%)であることと比較すると、仕事を続けながらの予備試験合格は、狭き門であるといえそうです。


予備試験に合格すると、翌年度以降の司法試験を受験することができます。予備試験合格者の司法試験合格率は、2020年は89.36%(423人中378人)、2021年は93.50%(400人中374人)、2022年は97.53%(405人中395人)、2023年は92.63%(353人中327人)、2024年は92.84%(475人中441人)となっています。このため、予備試験に合格できるだけの実力が備われば、多くの人が司法試験合格も手にできる状況にあるといえそうです。

Q15 弁護士になって社会人経験はどう活かせる?


Answer

社会人経験といっても、業務等の内容、経験年数等は様々であり、弁護士になって、社会人経験をどう活かすかは、人それぞれです。社会人時代に経験した業務内容と直接関連する業務分野を選択する方もいれば、そうでない方もいます。ただ、いずれにしても、社会人経験を有する弁護士は、何等かの形で社会人経験を活かして、活躍している方が多いように思われます。


具体的に、社会人経験がどう活かせるか、役立つかについて、まず、社会人のときに、一定の専門的な業務に従事し、法律以外の分野について専門的な知識、経験を有する方が、弁護士になって当該業務分野と関連する業務に従事するケースがあげられます。日本では、アメリカなどと異なり、弁護士になる前に法律以外の専門的事項を大学院などで学んだ弁護士や、法律以外の専門的な業務に従事した経験のある弁護士(すなわち法律以外の専門的なバックグラウンドを有する弁護士)は、残念ながら少ないため、弁護士としての専門性を確立し、差別化を図る上で、こうした専門的なバックグラウンドは、大きく役立つ可能性があります。社会が多様化、複雑化、国際化していく中、弁護士の業務も専門化が進んでおり、弁護士にとって、自らの専門性をどう確立していくかは、重要な課題となっています。


また、社会人として経験した内容が、そこまで専門的な内容ではないとしても、弁護士として仕事をしていくうえで、社会人経験が役立つ面が少なからずあると思われます。たとえば、会社や公共団体、NGOなどの組織で働いた経験のある方は、多かれ少なかれ、組織における上下関係、人間関係の機微、難しさといったものを身をもって体験されているのではないでしょうか。一方で、こうした組織には、それぞれに何らかの専門性や社会的意義があり、組織として活動することにより、関係者の生活を支え、社会に少なからぬ貢献をしているということや、こうした組織の仕組み、運営の在り方などを実感をもって理解されているように思います。弁護士の仕事は、法律という切り口から、関係者の利害を調整し、課題を解決するものですが、法律だけを理解しておけばよい解決ができるというものではなく、社会や人に対する深い理解、洞察力を備えておくことが必要であると考えられています。こうした観点から、会社や公共団体、NGO等で働くことにより、経験したこと、理解したこと、感じたことは、弁護士として仕事をするうえでも役立つことは少なくないでしょう。

Q16 弁護士になったらどのくらいの収入が得られるの?


Answer

社会人から弁護士になった方に特化した収入データは残念ながらありません。

弁護士白書には、全体の収入状況が載っています。(2023年調査、単位:万円)



これによれば、経験年数を経ることによって収入も増えていくという傾向があるようにも思われますが、弁護士は個人事業主が多く、事務所や業務分野、経験年数などさまざまな要素から、実際には収入状況などに違いがあります。

Q17 司法試験に合格しなかった場合の進路は?


Answer

社会人から法科大学院に進学し、司法試験に合格しなかったケースに特化したデータはありません。

文部科学省「PDF法科大学院修了生の進路(2024年4月1日時点)」によると、2023年度の法曹資格を有しない修了生で、司法試験受験を継続しない方の就業先は以下のとおりです。(2023年修了生894人中50人対象。なお約72%(644人)は受験継続)



「前職と同じ又は継続」の割合が最も高く、社会人から法科大学院に行って元の企業に戻った方が多いということが言えます。次に多いのは、企業の法務部門以外です。法的素養を活かしたビジネスへの参画、例えば金融商品開発部などのビジネス部署で活躍される場合もあるようです。企業が、法科大学院修了の経歴を評価して採用するケースも少なくありません。

Q18 社会人経験者のための情報提供窓口は?


Answer

弁護士という職業に関心のある方、興味はあるが、弁護士を目指すか、どう目指すか等検討中の方は、社会人を経験して、弁護士になった人の話を聞いてみてはいかがでしょうか。何か参考になることがあるかもしれません。


弁護士という職業・進路に関心のある社会人の方を対象に、社会人から弁護士になった経験を有する弁護士によるWeb面談を実施し、情報提供を行っていますので、ご興味のある方は、弁護士に聞いてみよう(社会人向け)からお申込みください。