社外役員に就任している女性弁護士インタビュー

佐貫 葉子 弁護士

Q 社外役員としての経歴について教えてください。

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1996年12月に、医薬品卸しの株式会社クラヤ三星堂(現、株式会社メディパルホールディングス)の社外監査役に就任したのが初めての社外役員就任でした。当時在籍していた法律事務所が、大手製薬会社の顧問事務所で、そのルートからの紹介でした。1996年12月から2007年6月まで、途中3年ほど空けて同社の社外監査役を務めました。


2007年6月からは、明治乳業株式会社(当時)の社外監査役に就任しましたが、2009年4月に、明治乳業が明治製菓株式会社(当時)と経営統合し、新たに明治ホールディングス株式会社が両社の親会社として発足した際に、同社の社外取締役に就任し、以降2018年6月までの9年間務めました。


併せて、2011年6月から株式会社りそな銀行の社外取締役に就任しました。りそな銀行は、2003年に公的資金が投入されて事実上国有化(いわゆる「りそなショック」)され、ガバナンスの強化が求められる中、経営再建を引き受けられたJR東日本元副社長の細谷英二会長と、従前から異業種交流会を通じて知り合いであったので、お声をかけていただきました。1年後に、親会社である株式会社りそなホールディングスの社外取締役に就任しました。同社は、委員会設置会社(現、指名委員会等設置会社)であり、就任時から監査委員となり、2015年6月から監査委員長を務めています。りそなホールディングスは、取締役10名中6名が社外で、2年前まで女性取締役がもう1名いたのですが、現在女性取締役は私1人だけです。ただし、執行役には、人事担当の女性が1名います。また傘下銀行(現5行)には、女性社外取締役、女性執行役員、女性監査役が複数名います。




Q それぞれの会社にどのように関わってきましたか?

(1) 明治乳業も明治製菓も、創業約100年の老舗企業でしたが、経営統合により、食と医薬品を扱うグループ企業となりました。食品と医薬品という人の命と健康に直結する企業ですから、安心安全という点が最も重視されます。品質事故が起これば築き上げた信用は一瞬で崩れるという意識は、会社全体に浸透していると思います。工場には、必ずヒヤリハット事例が壁に貼り出されているし、見学の際の厳重な点検規程、あるいは従業員の安全対策など、細部に気を張り詰めているということが窺えます。したがって取締役会でも、お客様相談センターの苦情や問題事例を多い順にまとめて報告していただいたりしていますし、企業理念においても最優先事項として意識していました。なお、明治ホールディングスは、監査役会設置会社ですが、発足時から任意の指名委員会、報酬委員会があり、両委員会のメンバーを務めました。その意味では、CGコードが制定される前から、コードの趣旨を先進的に取り入れていたと考えています。


(2) りそなホールディングスは、その経緯からも、ガバナンスという面では、かなり先進的であると考えています。公的資金投入直後は、細谷会長主導の下、他業種から経営者経験のある社外取締役を複数名招聘して、企業改革に取り組まれました。就任された社外取締役からは相当厳しい意見や指摘があり、また改革の実効性については社外取締役自ら現場に赴いて確認されるなど、その激しさとハレーションは、今や伝説となっています。この時期の社外取締役は、かなり執行にもコミットされたわけで、それも社外取締役の一つの在り方かと考えています。


私が、就任した頃は、当初の改革の時期は過ぎていましたが、社外取締役の役割が重く、一方では意見をよく聞いてくれて、情報も隠さず速やかに開示してくれるという印象が強かったです。なお、取締役会や委員会あるいは取締役や執行役に関する業務を担う部署は、通常、秘書室あるいは経営企画部という名称が多いのではないかと思いますが、りそなでは当初からコーポレートガバナンス事務局と称していました。コーポレートガバナンスという用語がまだ一般に普及していなかった頃には、他社の方から「何ですか?それは?」と聞かれたそうです。


私は、それまで弁護士としても社外役員としても関わりがあったのは、全て監査役会設置会社でしたから、当初委員会型には戸惑いがありました。監査委員も独任制ではなく、委員会としての組織監査であり、その上で役割分担があるのだということを初めて実感したものです。監査委員会は、取締役会の内部機関という位置付けなので、適法性監査か妥当性監査かという議論は気にしないで済むため、すっきりしているということは感じます。




Q 女性の経営参画についてのお考え等を教えてください。

(1) 明治ホールディングスでは、9年間、事業会社を含め社内における女性管理職登用について、随分申し上げたつもりです。株主総会で株主から指摘され、回答したこともあります。なかなか短期的には難しいところです。2019年1月時点でも、事業会社を含め執行役員にも女性は一人もいないのではないでしょうか。企業風土や企業文化は、先程申し上げたように堅実ですが、多少保守的なところがあることや、工場において3交代制があり、女性がそのシフトに入るのが難しいといったことが影響しているのかもしれません。


ただ、学生の就職を希望するランキングでは、いつも上位にありますし、近年特に優秀な女性が入ってきています。会社でも意識してモチベーションを上げるための推進施策を様々試みています。将来的には、着実に進むものと期待しています。


(2) りそなホールディングスの女性活躍は進んでいます。傘下の埼玉りそな銀行は、2018年12月、内閣府の「女性が輝く先進企業」の内閣総理大臣表彰を受けました。管理職比率が32.4%であることや男性の育児休暇取得率が100%であることなどが評価されたものです。


りそなホールディングスにいると、重要会議などに女性社員(管理職や役員も含む)がいることが当然で、むしろいないことの方に違和感を覚えるようになります。重要会議は、ダークスーツの集団が当然という意識は、ぜひ打破してほしいです。


よく、女性を登用したくても、女性の方が尻込みをするとか、「偉くなりたくない」「(ステレオタイプの女性リーダーをイメージして)ああはなりたくない、なれない。」と言われるなどの指摘があります。そのような女性の声があることも事実ですが、りそなホールディングスのように多数の管理職や役員がいると、本当に様々なタイプの方がいます。役員のみに絞っても、皆さんそれぞれ個性が異なります。それぞれに素敵です。もちろん、お子さんがいらっしゃる方もいます。自分のロールモデルを(密かに探して)目標にするということは可能だと思います。私は、キャリアも含めて様々なタイプの方がいますよということを、声を大にして言いたいです。


もちろん、先進的とは言っても、現状では女性が企業内で昇進していくことには、様々なハードルがあると思います。女性社外取締役は、社内で頑張っている女性社員の精神的な拠り所の一つになれればよいかなと思っています。



Q 指名委員会等設置会社の取締役会や監査委員会委員長について、経験を踏まえてのお考え等を教えてください。

(1) りそなホールディングスの場合は、機関設計からしても、取締役会での決議事項は少ないです。でも報告事項はかなり多いし、また報告事項についての質問や意見、議論も活発になされています。報告事項といっても、重要案件などは、企画段階から報告されていますし、そのような企画案件が、取締役会での意見を踏まえて修正・変更される場合もあります。また結果報告も含めて、同一案件が複数回上程される場合もあります。モニタリング型でも、このような形での個別の報告事項を通しての監視というのは充分あり得ることだと考えています。


金融機関は、専門性が高いので、取締役会の他にも勉強会やフリーミーティングがしばしば開催されます。そのような議論を通じて、銀行というビジネスモデルが急速に変化しているのを実感しています。


(2) りそなホールディングスの3委員会の委員長は、全員社外取締役です。監査委員長に就任したのは2015年ですが、この年、大手電機メーカーの会計不正事件が起き、同社も委員会設置会社で、一般的にはガバナンス先進企業と評価されていましたから衝撃を受けました。会社規模が大きくなるほど、監査資源(監査役、監査委員、監査等委員、事務局)には限界があり、やはり内部監査部門との連携が問われると考えます。幸い金融機関は、他業種に比べると内部監査人員は充実していて、グループで100名以上います。この事件を受け、内部監査部門の第一義的なレポーティングラインを取締役会(実質は監査委員会)としたり、監査委員会から直接的な指示ができることを明文化したり、また内部監査部長や担当執行役の人事について、事前協議事項としたりしました。内部通報制度のうち、外部の法律事務所などに通報があったものについては、全件直接監査委員会に報告されるようにもしました。


私は、監査については、やはりできるだけ多くかつ素早く情報を収集することがその実効性を上げることに繋がると思います。このため、常勤の監査委員や委員会事務局も、日常的に執行部門との情報交換に務めていますが、私も内部監査協議会や会計監査人との意見交換会には、オブザーバーとして出席しています。結構な回数会社に行っていることになります。監査委員長としての職務と考えています。



※本インタビュー記事の内容は、インタビュー時点(2018年9月)のものです。



山神 麻子 弁護士

Q 他の社外取締役の方はどのような方々か教えてください。

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地元豊橋でガス・住宅等の事業を展開する企業グループ各社の代表取締役を務める方、グローバルな自動車部品メーカーのCOOを歴任されているアメリカ国籍の方、外資系証券会社の投資銀行部門での要職を経てAIベンチャーを起業した方、情報通信技術のグローバル企業で取締役副社長を経て、企業の経営顧問や新規事業開発のアドバイザーとして活躍中の方が社外取締役として、そして監査等委員として財務省出身で現在は銀行の顧問をされている方です。株主総会招集通知には、以下のとおり各取締役の有している能力について一覧表が掲載されており、グローバルな事業展開や自動車業界の環境変化への対応のためにボードのダイバーシティが確保されていることがおわかりになると思います。この一覧表は、役員選任基準を明確にするため、ある社外取締役から提案があり、他社の例も参考にしつつ2018年から導入されたものです。


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Q 取締役会はどのように開催されているか教えてください。

監査等委員会設置会社で、権限移譲により業務執行機能と監督機能の分離が相当程度進んでいることから、取締役会は年8回と少なめになっており、そのうち1回は子会社の視察を兼ねて海外で行われています。取締役会は英語(日英の同時通訳付き)で行われ、社外取締役はほぼ全員が全ての議案について質問を出したり意見を言ったりします。社外取締役のダイバーシティを反映して、様々な観点から議論がなされます。自動化や電動化といった自動車業界の環境変化に伴い、自動車部品も淘汰されるものや高機能製品へシフトしていくことへの対応、開発・製造に関しては製品検査にAIのディープラーニングを導入したり、また、グローバルな経営環境の中で海外子会社のM&Aやその後の統合課題等が取り上げられたりします。取締役会の他、年2回は役員(執行役員を含む)合宿があり、中長期の経営戦略に関する議論等がなされています。


取締役会に上程される議案は、それ以前に経営会議で十分な議論がされますが、経営会議の議事録は社内のイントラネットで社外役員も閲覧することができ、また、取締役会の前日には監査等委員会の中で議案のブリーフィングが行われた上で、取締役会当日も更に2時間ほどかけて議論がなされます。



Q 社外取締役として特に留意している点を教えてください。

監査等委員として、ガバナンスやコンプライアンスの観点からのモニタリングで留意していることは、グローバルな事業展開をしているため、海外子会社の内部統制、本社の意思決定が適時適確に伝わる指揮命令系統の確認や規程の統一的な整備・運用などです。また、年2回程度、内部監査部門と一緒に海外子会社の往査に行っています。特に昨今は、製造業の不祥事を踏まえたコンプライアンスの重要性が指摘されていますが、当社のコンプライアンス体制を強化するために必要な知識や情報等は、顧問弁護士の方に役員・幹部社員向けのレクチャーを毎年行なっていただいているほか、私が会社の費用でセミナー等に出席して情報を仕入れ、会社に報告することもしています。



Q 女性の経営参画についてのお考え等を教えてください。

社内の女性管理職の登用については、常々意識していますが、まだ対象者が少ないという問題があります。女性管理職だけでなく、海外子会社の現地従業員からも、女性取締役が入ったことが励みになると言っていただいています。女性管理職の方と意見交換をしたり、女性の登用をプロモーションするための育成計画について意見を述べたりするなどしています。



Q これから社外役員を目指す方へのメッセージをお願いします。

私の場合は、社外役員になるために意識的に準備する前に、所属事務所所長の知人を介して紹介されましたので、決まった後に足りない部分を補うべく勉強しました。法律知識や弁護士としての経験は、コンプライアンスやガバナンスの観点で生かされると思いますが、更に、会計知識や経営など、勉強すべきことは沢山あるので、企業経営を巡るあらゆることに興味を持って接することが役に立つのではないか思います。インハウスの経験がある方であればより敷居が低いかと思いますが、そうでなくても、とにかく会社に入ってみれば、まわりの方々から会社運営や経営、業界に関する知識を吸収することができます。


グローバル展開する会社はこれから増えていくと思われますが、英語での対応のみならず、海外往査などもフットワーク軽く動ける方、海外からの役員・従業員とも垣根なく接することのできる方が求められていると思います。また、事業活動に興味を持って社内の方々と共に考え、率直な意見を臆することなく述べることのできる方が向いていると思います。



※本インタビュー記事の内容は、インタビュー時点(2019年4月)のものです。



相澤 光江 弁護士

Q 社外役員としての経歴について教えてください。

相澤 光江 弁護士


カルビー株式会社社外監査役(現在東証一部上場、上場までの間監査役を務めました)
サミット株式会社社外監査役(住友商事子会社、非上場)
株式会社コジマ社外監査役(東証一部上湯)
株式会社コジマ監査等委員 現任(同上、監査等委員会の導入に伴い就任)
株式会社オカモト社外取締役 現任(東証一部上場)
株式会社プルデンシャルホールディング・ジャパン社外監査役 現任(アメリカの上場企業の子会社、傘下に生命保険会社三社を有する持株会社)



Q 就任の経緯について教えてください。

いずれも、代表取締役社長からの要請によります。


特殊要因としては、事業再生の専門家として、会社更生の管財人を経験し、危機状態から再生に至る段階で上場企業を含む企業の経営の責任を経験したことが評価された面があると思います。



Q 社外役員として留意してきたことについて教えてください。

(1) 会社の業態をよく理解すること
会社の業態や収益構造、社内の権力構造を理解することが社外役員として発言力を持ち、適切な役割を果たすことにつながるため、それぞれの会社の内容を理解することに努めてきました。


(2) 会社の財務状況を理解すること
企業にとって、財務状態は重要であるので、取締役会に提出される数字を理解するように留意してきました。事業再生を専門としているため、財務的な資料に接する機会は弁護士としては多い方だと思いますが、専門家ではないので、できるだけ基礎的な会計や税務の知識も習得するように留意してきました。



Q 女性の経営参画についてのお考え等を教えてください。

従来は長い間、経営の中枢部はもちろん、中堅幹部に至るまですぺて男性で占められており、女性は、事実上補助職か、ラインから外れた専門職の立場しか与えられていない状態でした。


そのため、特に伝統的な大企業では、女性社員にとってロールモデルとなるような上級管理職がいない企業が今でも圧倒的に多い状態です。社外であっても、女性が経営に参画することによって、経営幹部は男性のみという固定概念を変えていく第1歩となり得ると考えられます。


その結果、社内で女性が同期の男性と同様に昇進し、管理職となり、経営に携わることが当たり前になるよう、会社の中の無意識の女性差別を変えることにつながる可能性があり、大きな社会的意義があると考えます。


男性と女性では物の見方や考え方に相達があり、社会や組織の多様性を大事にするためにも、女性が男性と同様に積極的に指導的立場に立つことが重要だと思います。



Q これから社外役員を目指す方へのメッセージをお願いします。

女性の地位向上のためには、女性が積極的に前に出て、リーダーシップを発揮していくことが大事なことはいうまでもありません。弁護士は価値のある法曹資格をもっているため、男性優位な企業社会の中でも有利な立場にあります。


それを大いに活用して、日本の社会を女性がもっと活躍できる社会に変えていく必要があります。出る杭は打たれると言われますが、敢えて打たれる覚悟をもって前に出て、まだまだ閉塞的な社会を一人一人が一歩一歩変えていってください。



※本インタビュー記事の内容は、インタビュー時点(2019年3月)のものです。