日弁連新聞 第589号

臨時総会開催
3月3日 弁護士会館

少年・刑事財政基金に関する規程の一部改正の件など4議案が審議され、いずれも可決された。


少年・刑事財政基金に関する規程の一部改正など2議案を可決

罪に問われた障がい者・高齢者の刑事弁護に付随する福祉的支援等の費用について、日弁連から弁護士会に対し補助金を支出すべく、少年・刑事財政基金に関する規程等の改正を行うものである。


福祉的支援を全国的に展開し、国費支弁の実現につなげるべきなどの意見等が出され、採決の結果、いずれも可決された。本改正は本年4月1日から施行される。


依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程の一部改正を可決

FATF第4次対日相互審査での指摘や犯収法2022年改正に対応すべく、依頼者の本人確認を要する場面での確認事項の追加、依頼目的の検討における「弁護士業務におけるマネー・ローンダリング危険度調査書」(会員サイトに掲載)の勘案や弁護士会の事例調査の枠組みの明文化などの改正を行うものである。


弁護士・弁護士会が全うすべき責任等に関する意見が出され、採決の結果、賛成多数で可決された。


民事法律扶助に関する決議を可決

採決時の様子 「民事法律扶助における利用者負担の見直し、民事法律扶助の対象事件の拡大及び持続可能な制度のためにその担い手たる弁護士の報酬の適正化を求める決議」は、民事法律扶助について、現在の立替・償還制を改め原則給付としつつ、資力等、利用者の負担能力に応じて一定の負担をする制度にするなど利用者負担の軽減を図ること、民事法律扶助の対象事件の拡大、弁護士報酬の適正化を求めるものである。


立替・償還制が利用の障壁となり、また、受任者である弁護士の負担にもなっている実態から、本決議に賛成する意見のほか、さまざまな意見が出され、採決の結果、賛成多数で可決された。



「日野町事件」即時抗告棄却・再審開始維持決定についての会長声明

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2月27日、大阪高等裁判所は日野町事件第2次再審請求について再審開始決定を維持し、検察官の即時抗告を棄却する決定をした(以下「本決定」)。これを受け、日弁連は会長声明を公表した。


事件の経緯

記者会見に出席する小林元治会長、再審法改正実現本部本部長代行の鴨志田祐美会員(右から) 日野町事件は、1984年12月、滋賀県日野町で発生した強盗殺人事件である。1988年に逮捕された阪原弘氏は自白を撤回して無実を訴えてきたが、2000年に無期懲役判決が確定した。確定判決は、直接の物証がなく、情況証拠も阪原氏と犯人を結び付けるものではなく、任意性と信用性に疑問の残る自白調書しかないという脆弱な証拠に基づくものであった。


阪原氏は、2001年に第1次再審請求をしたが(その直後から日弁連が支援)、2011年3月に病死した。2012年3月に阪原氏の遺族が第2次再審請求を行い、2018年7月に大津地方裁判所は再審開始を決定した(以下「原決定」)。しかし、検察官が即時抗告し、4年7か月もの間、大阪高等裁判所に係属していた。



本決定の意義

第1次再審請求審では、全ての送致書、証拠品目録などが開示され、証拠の一覧表が作成された。第2次再審請求審でも、引当捜査に関する写真とネガ、アリバイ捜査に関する捜査資料など、多くの重要証拠が開示された。その中には、引当捜査の任意性に重大な疑問を生じさせる証拠など、再審開始決定を導く重要な証拠が含まれていた。新旧証拠を総合的に判断し、阪原氏を犯人であると推認することはできないとした原決定を維持した本決定は、再審における証拠開示がいかに重要であるかを再認識させるとともに、最高裁判所白鳥・財田川決定が示す総合判断の手法の重要さを改めて明らかにした。


しかしながら、検察官は3月6日、本決定について特別抗告を行った。阪原氏の早期の名誉回復を図るためにも、一刻も早く、日野町事件の再審公判が開始されるべきである。


袴田事件でも再審開始決定(速報)

3月13日、東京高等裁判所は、日弁連が支援する袴田事件の第2次再審請求審において、静岡地方裁判所の再審開始決定を支持し、検察官の即時抗告を棄却する決定をした。これに対し、検察官は特別抗告を断念し、袴田事件は静岡地方裁判所で再審公判が開かれることになった。


(人権擁護委員会  特別委嘱委員 小林 修)



刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書
32年ぶりに再審法改正案の提案内容をアップデート

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日弁連は、2月17日付けで「刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書」を取りまとめ、法務大臣、衆議院議長および参議院議長に提出した。同意見書では、早期の再審法改正を求めるとともに、改正すべき具体的な内容を「刑事訴訟法等改正案」として示している。


再審法改正に向けた日弁連の取り組み

日弁連は、1959年に個別事件の再審請求支援を開始したが、それと並行して再審法改正に向けた取り組みを進めてきた。

その歴史は古く、1962年に「刑事訴訟法第四編(再審)中改正要綱」として再審法等の改正に関する提言を行ったのが最初である。その後、1977年、1985年、1991年と3度にわたり意見書を公表し、改正案を提示してきた。

21世紀に入り、再審をめぐる動きが活発になる中で、法制度の不備がえん罪被害者の速やかな救済を阻害している実情が浮き彫りとなった。そこで、2019年の人権擁護大会の決議や最近の再審事件の実例などを踏まえて、再審法改正に向けた検討を進め、この度、32年ぶりに、意見書として公表するに至った。


意見書の内容

① 証拠開示制度の整備

本意見書の基本的な視点は、1991年に公表した「刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書」を踏襲しているが、再審における証拠開示制度の整備を新たな項目として列挙した。これは、同制度の不存在が「再審格差」(裁判所の訴訟指揮次第で証拠開示が左右されるという実情)を生み出していることから、統一的な運用を図るための制度化を求めるものである。

② 検察官の不服申し立ての禁止

近年、再審開始決定に対して検察官が不服申し立て(抗告)を行う事件が増え、えん罪被害の早期救済が妨げられるという深刻な問題をもたらしている。このため、検察官による不服申し立ての禁止も求めている。


再審法改正の実現に向けて

日弁連は、2022年6月16日に再審法改正実現本部を設置した。今後も、同法改正の実現に向け、精力的な取り組みを行っていきたい。


(再審法改正実現本部  事務局長 上地大三郎)



法律扶助シンポジウム
真のリーガル・エイドを実現するために
司法のセーフティネットをもっと使いやすく!
2月16日 オンライン開催

arrow 法律扶助シンポジウム


日本の民事法律扶助制度は、利用者が費用の全額を償還する立替・償還制がとられている。
本シンポジウムでは、法律扶助の世界的動向や現場の声を踏まえ、同制度の課題と改善・改革について議論した。


開会挨拶

小林会長は、日弁連は民事法律扶助制度の改革を最重要課題として取り組んでおり、利用の障壁となっている立替・償還制の今後の在り方を検討し、利用者のニーズに応えていくことが弁護士の責務であると挨拶した。


世界的動向と改革の必要性

我妻学教授

総合法律支援本部の池永知樹事務局次長(埼玉)は、法律扶助の拡充を先行実施したアメリカ、北欧諸国、イギリスの状況を検証し、日本の法律扶助関連の予算は欧米諸国と比較して相対的に低く、拡充が必要だと指摘した。その上で、立替・償還制を改めて、原則給付制としつつ、利用者の資力等に応じた一部負担制(応能負担)への改革が総合的・包括的支援の実現につながると述べた。


我妻学教授(東京都立大学)は、司法へのアクセスに対する障壁の一つに「費用のバリア」があるとした上で、訴訟費用の調達方法は訴訟費用保険や第三者による訴訟ファイナンスなど多様化しているが、法律扶助を代替するものではないとし、社会経済構造の変化に応じた民事法律扶助制度の改革と公的支援の拡充が必要であると強調した。


現場から見た法律扶助の問題点と改革の必要性

パネルディスカッションには、DV被害者支援に取り組む松本知子氏(NPO法人女性ネットSaya-Saya代表理事)、生活困窮者支援に取り組む今井豊氏(一般社団法人キャリアブリッジ理事)、多くの民事法律扶助事件を扱う総合法律支援本部の岡村晴美事務局員(愛知県)が登壇した。パネリストらは、現状の立替・償還制は利用の障壁となるだけでなく、事件の終結後も償還が続くことが再起や自立の妨げとなっていると訴え、広い視野での改革が必要だと語った。



2023年度 役員紹介

3月10日に開催された代議員会(本人出席285人、代理出席307人)において、2023年度役員が選出された。就任に当たり、15人の副会長の抱負と理事および監事の氏名を紹介する。


松田 純一〈まつだ じゅんいち〉(東京・45期)

〔出身〕山形県
〔抱負〕資格審査会、民事司法改革総合推進本部、再審法改正実現本部、国際活動・国際戦略に関する協議会、法律サービス展開本部(国際業務推進センター)などを担当します。夢を持って未来にチャレンジします。




菰田 優〈こもだ まさる〉(第一東京・39期)

〔出身〕神奈川県
〔抱負〕財務・経理、国選弁護本部、弁護士職務の適正化、依頼者見舞金制度、業際・非弁・非弁提携問題等対策本部などを担当します。会長を補佐し、日弁連が取り組む課題の実現に力を尽くします。




戸田 綾美〈とだ あやみ〉(第二東京・43期)

〔出身〕神奈川県
〔抱負〕研修、人権擁護、国内人権機関実現、国際人権問題、ダイバーシティ&インクルージョンなどを担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現のため、会長を補佐し、日弁連の諸課題に全力で取り組みます。




小川 恵司〈おがわ けいじ〉(第二東京・46期)

〔出身〕香川県
〔抱負〕法曹養成制度改革実現本部、総合法律支援本部、民事裁判手続等のIT化などを担当します。変革する社会において、市民や次世代を担う若い人たちにとって、弁護士が魅力的な存在であるよう全力で取り組みます。




大多和 暁〈おおたわ さとる〉(静岡県・42期)

〔出身〕静岡県
〔抱負〕人権擁護大会、憲法、災害復興支援、民事介入暴力対策、弁護士業務妨害対策などを担当します。人権擁護と社会正義を担う日弁連の諸課題について、会長を補佐し、その実現のために尽力いたします。




齋藤 裕〈さいとう ゆたか〉(新潟県・51期)

〔出身〕新潟県
〔抱負〕情報問題、弁護士業務における情報セキュリティ、共謀罪・秘密保護法、知財関係、教育法制、住宅紛争処理、個人通報などを担当します。中堅・若手会員の意見を反映すること、AIなどの現代的課題に適切に対応し得るようにすることを目指します。



三木 秀夫〈みき ひでお〉(大阪・36期)

〔出身〕大阪府
〔抱負〕死刑廃止・刑罰制度改革、ADRセンター、リーガル・アクセス・センターなどを担当します。市民社会から期待される日弁連を目指し、日弁連のミッション実現に向けて諸課題に取り組みます。




大脇 美保〈おおわき みほ〉(京都・42期)

〔出身〕愛知県
〔抱負〕両性の平等、犯罪被害者支援、貧困問題対策、公害対策・環境保全などを担当します。基本的人権の擁護、格差解消など社会正義の実現に尽力し、会内の男女共同参画にも取り組みます。




小川 淳〈おがわ じゅん〉(愛知県・42期)

〔出身〕愛知県
〔抱負〕男女共同参画推進本部、司法修習費用問題対策本部、法律サービス展開本部、信託センターなどを担当します。会長を補佐し、日弁連が対処すべき課題に全力で取り組みます。




末永 久大〈すえなが ひさたけ〉(山口県・50期)

〔出身〕山口県
〔抱負〕高齢者・障害者権利支援センター、子どもの権利、全面的国選付添人制度、刑事拘禁制度改革、接見交通権の確立、罪に問われた障がい者等の刑事弁護の費用に関するWG、刑事法制および労働法制を担当し、小規模弁護士会の支援にも積極的に取り組みます。



宇加治 恭子〈うかじ きょうこ〉(福岡県・51期)

〔出身〕福岡県
〔抱負〕法科大学院センター、若手弁護士サポートセンター、広報などを担当します。多様な会員の活躍が市民の日弁連に対する信頼につながることから、将来を担う若手会員への支援、法曹の魅力発信を中心に取り組みます。




辻 泰弘〈つじ やすひろ〉(佐賀県・47期)

〔出身〕福岡県
〔抱負〕消費者問題対策、弁護士会照会制度などの各委員会のほか、再審法改正、貧困問題対策、司法修習費用問題対策、死刑廃止等の本部などを担当します。日弁連の諸施策の実現に向けて、全力で取り組みたいと思います。




伊東 満彦〈いとう みつひこ〉(仙台・49期)

〔出身〕東京都
〔抱負〕家事法制、家事ADR、弁護士業務改革、中小企業法律支援センター、民事司法改革、民事裁判手続等のIT化などを担当します。会長を補佐し、裁判手続の改革、弁護士業務の発展など各種課題に誠意を持って取り組みます。



中村 元弥〈なかむら もとや〉(旭川・41期)

〔出身〕兵庫県
〔抱負〕刑事弁護センターや取調べの可視化・立会いなどの刑事関係、弁護士任官などを担当します。地域における家庭裁判所の在り方を議論する長野人権擁護大会の成功に向けて粉骨砕身します。「言葉の力」で日弁連に尽くします。



籠池 信宏〈かごいけ のぶひろ〉(香川県・46期)

〔出身〕香川県
〔抱負〕司法制度調査会、民事裁判手続、倒産法制等検討、市民のための法教育、公設事務所・法律相談センター、多文化共生社会の実現に関するWGなどを担当します。日弁連の諸課題に誠心誠意取り組みます。



理事

  • 木田 卓寿(東京)
  • 坂口 禎彦(東京)
  • 兼川 真紀(東京)
  • 山下  紫(東京)
  • 西村  健(東京)
  • 安藤  豪(東京)
  • 八木 清文(第一東京)
  • 神﨑 浩昭(第一東京)
  • 北村 聡子(第一東京)
  • 横田 高人(第二東京)
  • 村上嘉奈子(第二東京)
  • 坂井  愛(第二東京)
  • 土肥  勇(第二東京)
  • 島崎 友樹(神奈川県)
  • 須山 園子(神奈川県)
  • 尾崎  康(埼玉)
  • 菊地 秀樹(千葉県)
  • 望月 直美(茨城県)
  • 山下 雄大(栃木県)
  • 湯澤  晃(群馬)
  • 杉本喜三郎(静岡県)
  • 杉田 直樹(静岡県)
  • 花輪 仁士(山梨県)
  • 山岸 重幸(長野県)
  • 福井 泰雄(新潟県)
  • 森本  宏(大阪)
  • 島尾 恵理(大阪)
  • 細田 祥子(大阪)
  • 米倉 裕樹(大阪)
  • 浅野 則明(京都)
  • 吉田 誠司(京都)
  • 大島 麻子(京都)
  • 柴田 眞里(兵庫県)
  • 山口 宣恭(奈良)
  • 中井 陽一(滋賀)
  • 藤井 友彦(和歌山)
  • 伊藤 倫文(愛知県)
  • 竹内千賀子(愛知県)
  • 伊藤 明紀(三重)
  • 神谷 慎一(岐阜県)
  • 三田恵美子(福井)
  • 麻生 英右(福井)
  • 織田 明彦(金沢)
  • 武島 直子(富山県)
  • 坂下 宗生(広島)
  • 松田 訓明(山口県)
  • 竹内 俊一(岡山)
  • 足立 珠希(鳥取県)
  • 房安  強(鳥取県)
  • 福島  薫(島根県)
  • 大神 昌憲(福岡県)
  • 小鉢 由美(福岡県)
  • 櫻田 康則(佐賀県)
  • 山下  肇(長崎県)
  • 中山 知康(大分県)
  • 田中真由美(熊本県)
  • 渡辺 裕介(熊本県)
  • 湯ノ口 穰(鹿児島県)
  • 永友 郁子(宮崎県)
  • 金城 智誉(沖縄)
  • 野呂  圭(仙台)
  • 町田  敦(福島県)
  • 粕谷 真生(山形県)
  • 山﨑 哲雄(岩手)
  • 嵯峨  宏(秋田)
  • 伊藤 佑輔(青森県)
  • 清水  智(札幌)
  • 佐藤 昭彦(札幌)
  • 堀田 剛史(函館)
  • 万字  達(旭川)
  • 久保田庸央(釧路)
  • 松井  創(香川県)
  • 梶野 正寛(徳島)
  • 紫藤 秀久(高知)
  • 高橋 直子(愛媛)



監事

  • 村田 智子(東京)
  • 西尾雄一郎(第一東京)
  • 平嶋 育造(山梨県)
  • 鈴木 治一(京都)
  • 長尾 英介(三重)


弁護士任官者の紹介

4月1日付けで次の会員が裁判官に任官した。


丸山 水穂氏

49期(元仙台弁護士会)
官澤綜合法律事務所に勤務。
〈初任地 大阪高裁〉



精神保健福祉制度の抜本的改革を求める意見書

arrow 精神保健福祉制度の抜本的改革を求める意見書~強制入院廃止に向けた短期工程の提言~


日弁連は、2月16日付けで「精神保健福祉制度の抜本的改革を求める意見書~強制入院廃止に向けた短期工程の提言~」を取りまとめ、厚生労働大臣に提出した。


背景・経緯

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」)は、精神障害のある人だけを対象として、精神障害があることを理由とする強制入院制度を定めている。この法制度により、入院を強いられた人たちは人間としての尊厳を奪われ、心身ともに被害を受けてきた。また、精神障害のある人は地域から隔離するべきという誤った認識を生む原因の一つとなっている。


日本の精神科病床数はOECD諸国の平均値の約4倍という数字を見ても、日本の精神保健福祉制度が国際的見地からいかに立ち遅れているかを物語っている。


日弁連は、第63回人権擁護大会において、精神保健福祉法上の強制入院制度を廃止することを掲げた決議を採択した。本意見書は、そのための第一段階(短期工程)として、2025年までに達成すべき目標を示すものである。


提言の内容

本意見書では、主に、次の精神保健福祉法の改正等を求めている。


① 措置入院および医療保護入院の入院要件を厳格化し、入院期間の上限を法定する。

② 任意入院につき、本人の自由意思に基づくものでなければならないことなどを明記する。

③ 精神医療審査会の独立性および公平性の確保、入院者が弁護士に依頼する権利や記録を閲覧する権利等の保障、入院届および定期病状報告の書類審査の実質化など適正手続を保障する。

④ 精神障害のある人が、地域で平穏に生活するための社会資源の充実を図る。

⑤ 人権侵害の実態等に関する検証・調査を行う。本意見書の趣旨の実現に向け、引き続き活動を行っていきたい。


(日弁連高齢者・障害者権利支援センター  委員 採澤友香)



「家族法制の見直しに関する中間試案」に対する意見書

arrow 家族法制の見直しに関する中間試案


日弁連は、法制審議会家族法制部会において議論されている離婚後の子の養育等に関する制度の見直しについて、パブリックコメントに付された「家族法制の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」)に対する意見書を2月16日付けで取りまとめ、法務省に提出した。


中間試案では、離婚そのものに関わる制度のほか、離婚に関連した養子制度や財産分与、法定養育費制度の導入や家事事件手続の見直しなど、多岐にわたる論点が示されている。本稿では、離婚後の共同親権(本意見書では「双方親権」と記載)の導入に関する本意見書の内容と、取りまとめに当たっての対応に絞って紹介する。


共同親権に関する検討

中間試案においては、共同親権を導入する甲案と、現行の単独親権を維持する乙案が併記された。日弁連では、中間試案の取りまとめに先立ち、各弁護士会や家事法制委員会、両性の平等に関する委員会、子どもの権利委員会、司法制度調査会などの関連委員会に意見照会を行ったところ、賛否に関する種々の意見が寄せられた。そのため、共同親権の導入に関しては、日弁連として一致した意見の表明を見送る内容とした。


また、本意見書の「意見の理由」では、今後の法制審等での議論に資するよう、諸外国における法制度などを参照しつつ、共同親権の導入の賛否について考え得る論点を可能な限り盛り込んだ。


家庭裁判所の基盤拡充

現行の単独親権が維持された場合でも共同親権が導入された場合でも、家庭裁判所の役割が重要であることに変わりはない。このため、本意見書では、家庭裁判所の人的・物的基盤の拡充を求めている。


日弁連として、本意見書の内容が実現されるよう、引き続き、法制審家族法制部会の議論を注視していきたい。


(法制審議会家族法制部会バックアップ会議  座長 西村依子)



第二期成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会(第3回)
任意後見制度
~もっと使いやすくできないの?~
2月1日 オンライン開催

arrow 第二期成年後見制度利用促進基本計画に関する連続学習会


2022年3月に閣議決定された第二期成年後見制度利用促進基本計画では、優先して取り組む事項として「任意後見制度の利用促進」を掲げている。
本稿では、任意後見制度を積極的に活用するための方策等を検討した学習会の模様を伝える。


基調報告

神野礼斉教授(広島大学大学院)は、ドイツの任意後見に相当する事前配慮代理権制度について、2021年12月末日時点で500万件以上の登録があるとし、制度の概要を解説した。


ドイツの後見法制が障害者権利条約第12条を背景に「意思決定代行」から「意思決定支援」の流れにあるとした上で、事前配慮代理権制度は私的自治を尊重した通常の任意代理であって、代理権授与に特別な方式は要求されず、監督人も任意であるなど、要件が緩やかで利用しやすいことを解説した。また、一定の要件を満たした場合に医療同意権の付与・行使も可能なことや、所轄官庁等による制度利用の組織的な広報・助言・支援体制が整備されていることも紹介した。


パネルディスカッション

神野教授、多田政孝氏(社会福祉法人横浜市社会福祉協議会横浜生活あんしんセンター担当課長)、中野篤子氏(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート常任理事、司法書士)、佐々木育子会員(奈良)が登壇した。佐々木会員は、イギリスの任意後見制度であるLPA(Lasting Power of Attorney、「永続的代理権」とも訳される。)制度は、2015年からオンラインで申請・登録できるようになり、2021年時点での累計登録数は600万件を超えていると報告した。


各国の法制度も踏まえ、任意後見契約の締結、監督、発効といった段階ごとの諸課題が議論された。任意後見の利用促進に向けて、受任者の質や量の確保と、適切な情報提供・マッチングを可能とする仕組み作りを進めるとともに、受任者にとっても業として引き受けやすい制度に改善する必要があるなどの意見が出された。



特定商取引法5年後見直しについての院内学習会
2月28日 オンライン開催

arrow 特定商取引法5年後見直しについての院内学習会


日弁連は、2022年7月14日付け 「 arrow 特定商取引法平成28年改正における5年後見直し規定に基づく同法の抜本的改正を求める意見書」で、特定商取引法(以下「特商法」)の抜本的な法改正等を求めている。被害の実情を知り、法改正の機運を高めるべく、本集会を開催した。


被害事例の報告

高齢者を狙った訪問販売・電話勧誘販売、全世代で広がるインターネット通信販売、マルチ商法などの被害事例が報告された。


娘が投資マルチ被害に遭った末に命を絶った川上佐永子氏は、マルチ被害の根絶のためには法改正が必要だと強く訴えた。母がマルチ商法に傾倒したRio氏は、構造はカルト宗教と同じで、被害者の親族には相談窓口がほとんどなく、本人との絶縁か諦めるしか選択肢がないと語り、家族の分断を促すビジネスとは何なのかと怒りを込めた。


特商法の改正提案など

松苗弘幸会員(埼玉)は、訪問販売・電話勧誘販売での拒否者への勧誘規制やインターネット通信販売のルール整備、連鎖販売業(マルチ取引)の開業規制導入など、意見書の内容を説明した。釜井英法会員(東京)は、「2022年版消費者白書」によると、消費生活相談約85万件のうち特商法対象取引の相談が約55%を占める現状を踏まえ、法改正に向けた緊密な連携を呼びかけた。


参加者の声

国会議員からは、消費者の立場に立った法改正の実現に取り組みたい、被害実態を踏まえて消費者被害の防止と被害救済に努めなければならないなどの発言があった。また、参加した関連団体等からは、デジタル化などの急速な社会変化に耐え得る法整備が急務であるとの声が上がった。



日弁連中小企業国際業務支援弁護士紹介制度10周年記念シンポジウム
日本経済の将来と弁護士の役割
2月15日 オンライン開催

arrow 日弁連中小企業国際業務支援弁護士紹介制度10周年記念シンポジウム


日弁連は、連携する外部機関(以下「連携機関等」)と協力し、国際業務に関する悩みを抱える中小企業に弁護士を紹介する「arrow 日弁連中小企業国際業務支援弁護士紹介制度」(以下「本制度」)を運営し、支援を行っている。
2022年5月に本制度の発足から10年を迎えたことを機に、活動を振り返り、日本経済の発展のために弁護士に期待されていることは何かを検討した。


利用状況の分析と弁護士・弁護士会の役割

金山卓晴会員(第一東京)は、2022年末までに本制度を通じて実施された相談件数は509件で、契約書に関する相談が多く、初回相談で終了するケースが半数を占めていたことなどを報告し、身近に国際取引等について相談できる弁護士がいない中小企業が多いのではないかと分析した。


森脇章会員(第二東京)は、リーガル・リスクは国際取引におけるさまざまなリスクの一つに過ぎないことを意識し、付加価値を付けた助言をすることが弁護士の重要な役割であると語った。


杉村洋維会員(埼玉)は、埼玉弁護士会が独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)埼玉と連携し、独自に運用している国際業務支援制度を紹介した。連携機関等の拠点がない地域の弁護士会でも、体制整備の参考にしてほしいと呼びかけた。


パネルディスカッション

清水力氏(東京商工会議所中小企業相談センター主席調査役)は、弁護士から一歩踏み込んだ助言を受けた相談者がとても感謝していたと、本制度の利用者の声を紹介した。また、紛争予防の重要性を理解してもらうため、今後も弁護士会と協力して情報発信していきたいと語った。


新井剛史氏(JETROお客様サポート部貿易投資相談課課長)は、経営者のさまざまなニーズや悩みに応えるために、地域の弁護士会との連携が進むことに期待を寄せた。


八木俊則会員(香川県)は、弁護士が中小企業の国際業務を支援することで、中小企業とともに弁護士自身も成長し、地域経済の発展に貢献できると述べ、弁護士にとってもやりがいのある分野だと、議論を締めくくった。




2022年度
若手チャレンジ基金制度表彰式
2月16日 弁護士会館


2022年度若手チャレンジ基金制度の表彰式を2月16日に開催した。「弁護士業務における先進的な取組等に対する表彰」の対象となったシルバージャフバ賞4名、ブロンズジャフバ賞1名の受賞者が出席した。


蜂須賀太郎副会長(当時)は、同制度への申請数が420件に及び、多様な活動を行っている若手会員が同制度を利用したことなど、全体の講評を行った。その後、小林元治会長から、受賞者に記念の盾が贈呈された。


受賞者コメント

表彰式に出席した三浦光太郎会員、加部歩人会員、真山萌会員、加藤聡一郎会員、田島輔会員(左から)東北地方で初めて開設された民間の妊娠相談窓口を運営するNPO法人での活動についてシルバージャフバ賞を受賞した真山萌会員(仙台)は、活動内容の紹介や今後の展望などを力強く語った。また、全国の若手会員に、各自が社会に貢献できると思ったことに少しずつチャレンジし続けることが大切であるとメッセージを送った。


最後に、小林会長から、表彰対象となった若手会員の活動における功績は大きいものであり、今後も果敢にチャレンジして欲しいと祝辞が述べられた。


(研修・業務支援室  室長 岩田康孝)



シンポジウム
ステルスマーケティング規制を考える
2月3日 オンライン開催

arrow ステルスマーケティング規制を考える


広告であることを隠して行われる宣伝手法であるステルスマーケティングについて、消費者庁の「ステルスマーケティングに関する検討会」における議論状況を概観し、日本や諸外国の現状などを踏まえた規制の在り方について議論した。


消費者庁の検討会報告書

南雅晴氏(消費者庁表示対策課長)は、2022年12月に取りまとめられた「ステルスマーケティングに関する検討会報告書」では、ステルスマーケティングに対する規制の在り方として、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」)第5条第3号に基づき、誤認されるおそれがある表示として新たに指定することが妥当とされたと説明した。また、規制の実効性を高めるため、通報窓口を設置して情報収集を行う必要があること、官民・民民が連携して未然防止に取り組む体制を確立することが提言されたと報告した。


諸外国と日本の現状

カライスコス・アントニオス准教授(京都大学大学院)は、日本で検討されている制度は、ステルスマーケティングに明確な規制の枠組みを設けるという点で大きな一歩であるが、ステルスマーケティングに特化している点が諸外国に比べてやや限定的であり、広く不公正な取引方法を対象とした規制の確立が望ましいと語った。


福永さつき氏(公益社団法人全国消費生活相談員協会)は、東京都消費生活総合センターに寄せられた相談事例を紹介した。その上で、消費者の自主的、合理的な選択を阻害するステルスマーケティングの問題を消費者、事業者、インフルエンサーなどに広く啓発していくことや、不正な口コミ・レビュー等が削除できる制度を検討することが必要だと述べた。


壇俊光会員(大阪)は、現在検討されているステルスマーケティング規制は、規制対象や罰則などが景表法の範囲内でしか対応できないなどの限界があり、将来的には個別立法が必要であると強調した。



シンポジウム
秘密保護法・経済安全保障法の現段階と情報機関に対する監督制度について考える
2月27日 オンライン開催

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秘密保護法や経済安全保障法など、国が安全保障を理由に情報を管理する諸制度に関する問題を検討し、諸外国の制度等に学びながら情報機関に対する監視・監督制度の在り方を議論した。


軍事研究に向けた研究者の囲い込み

2022年5月に成立した経済安全保障法を踏まえ、国は、先端的な重要技術の研究開発から実証・実用化までを迅速かつ機動的に行うことを目的とした「経済安全保障重要技術育成プログラム」を公表している。
井原聰名誉教授(東北大学)は同プログラムについて解説し、これらの政策は研究の自由や他の研究者への発表を阻害し、研究者を囲い込み、軍事研究に誘導する仕組みだと批判した。


諸外国の情報取得制度と監視・監督機関

小町谷育子会員(第二東京)は、オランダの情報機関及び保安機関に関する法律では、①国による情報取得に厳格な要件を定めている、②保有期間が明確にされている、③市民によるデータの閲覧等が保障されている、④監視機関に広範な権限が付与され、不正行為の認定に拘束力があることなどを報告した。


海渡雄一会員(第二東京)は、国家安全保障を理由に一定の情報を秘密にすることの必要性は否定しないが、秘密にしてはならない情報が秘密指定されていないかなど、審査する仕組みが必要であると語った。その上で、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスを例に挙げ、比例原則や必要性の原則に照らした情報取得制度の導入とともに、同制度を監視・監督する独立した機関の設置が国際スタンダードになっていると紹介し、日本の法制度はこれらの視点を欠いていると指摘した。


秘密保護制度から見た沖縄の現状

加藤裕会員(沖縄)は、軍事基地周辺の取材活動や住民の行動について、根拠が不明確なまま制限されている現状を報告し、現在の軍事機密に関する管理の在り方に疑問を呈した。その上で、自由を制約される市民の知る権利を保障する制度や、中立的な監視・監督機関を設置する必要性を訴えた。



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(2023年2月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

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2 調停等の条項例集―家事編 星野雅紀/著 司法協会
3 ゼロから信頼を築く 弁護士の顧問先獲得術  高橋喜一/著 学陽書房
4 新版 注解交通事故損害賠償算定基準 高野真人/編著 園 高明、古笛恵子、松居英二、髙木宏行、末次弘明、北澤龍也、垣内惠子/著 ぎょうせい
5 離婚事件における家庭裁判所の判断基準と弁護士の留意点 武藤裕一、野口英一郎/共著 新日本法規出版
6 面会交流―裁判官の視点にみるその在り方―  松本哲泓/著 新日本法規出版
7 即解330問 婚姻費用・養育費の算定実務 松本哲泓/著 新日本法規出版
婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編) 新装補訂版  婚姻費用養育費問題研究会/編 婚姻費用養育費問題研究会
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こんなところでつまずかない! 民事訴訟手続21のメソッド  東京弁護士会親和全期会/編著 第一法規
どの段階で何をする?業務の流れでわかる!遺言執行業務〔第2版〕  東京弁護士会法友全期会/編著 第一法規


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1 交通事故を中心とした偶発事故対応弁護士費用保険について 38分
2 LAC制度の概要 12分
3 令和4年度民事訴訟法改正の概要と実務対応(住所・氏名の秘匿等/和解・弁論準備等の双方ウェブ会議) 123分
4 離婚事件実務に関する連続講座 第4回 婚姻費用・養育費(2022) 90分
4 中小企業向け弁護士費用保険について 9分
6 交通事故刑事弁護士費用保険について 22分
7 できる!インターネット被害対応2020-入門編- 113分
8 業務妨害行為対応弁護士費用保険について 12分
9 民事裁判書類電子提出システム(mints)の操作説明会(第2次運用開始対応) 91分
10 よくわかる最新重要判例解説2022(民事) 113分

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