特定商取引法平成28年改正における5年後見直し規定に基づく同法の抜本的改正を求める意見書

2022年7月14日
日本弁護士連合会


本意見書について

日弁連は、2022年7月14日付けで「特定商取引法平成28年改正における5年後見直し規定に基づく同法の抜本的改正を求める意見書」を取りまとめ、同月19日付けで内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、経済産業大臣、消費者庁長官及び内閣府消費者委員会委員長宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

国に対し、特定商取引法平成28年改正における附則第6条に基づく「所要の措置」として、以下の内容を含む抜本的な法改正等を行うことを求める。


1 訪問販売・電話勧誘販売について


  (1)  拒否者に対する訪問勧誘の規制
訪問販売につき、家の門戸に「訪問販売お断り」と記載された張り紙等を貼っておくなどの方法によりあらかじめ拒絶の意思を表明した場合が、特定商取引法第3条の2第2項の「契約を締結しない旨の意思を表示した」場合に該当することを条文上明らかにすること。

  (2) 拒否者に対する電話勧誘販売の規制
電話勧誘販売につき、特定商取引法第17条の規律に関し、消費者が事前に電話勧誘販売を拒絶できる登録制度を導入すること。

  (3) 勧誘代行業者の規律
訪問販売及び電話勧誘販売につき、その契約の締結の媒介又は代理の業務の委託を受けた者(いわゆる勧誘代行業者)に対しても、特定商取引法上の行為規制が及ぶことを条文上明らかにすること。

  (4) 販売業者等の登録制
訪問販売及び電話勧誘販売を行う者は、国又は地方公共団体に登録をしなければならないものとすること。


2 通信販売について


  (1) インターネットを通じた勧誘等による申込み・契約締結についての行政規制、クーリング・オフ及び取消権
通信販売業者がインターネットを通じて消費者を勧誘し、消費者が申込みを行い又は契約を締結した場合について、行政規制を設けること、並びに消費者によるクーリング・オフ及び取消権を認めること。

  (2) インターネットを通じた通信販売における継続的契約の中途解約権
インターネットを通じた通信販売による継続的契約について、消費者に中途解約権を認めること及び中途解約の場合の損害賠償の額の上限を定めること。

  (3) 解約・返品に関するインターネット通信販売業者の受付体制整備義務
通信販売業者がインターネットを通じて申込みを受けた通信販売契約について、契約申込みの方法と同様のウェブサイト上の手続による解約申出の方法を認めること及び迅速・適切に解約・返品に対応する体制を整備することを義務付けること。

  (4) インターネット広告画面に関する規制の強化
インターネットの広告画面及び申込画面において、契約内容の有利条件や商品等の品質・効能の優良性を殊更に強調する一方、有利性や優良性が限定される旨の打消し表示が容易に認識できないものを特定商取引法第14条第1項第2号の指示対象行為として具体的に禁止すること。また、広告表示において事業者が網羅的で正確かつ分かりやすい広告を行うこと(広告表示における透明性の確保)を法令等で明確化すること。

  (5) インターネットの表示を中止した場合の行政処分
通信販売業者が不当なインターネット広告の表示を中止した場合であっても、行政処分(指示処分及び業務停止命令)が可能であることを明示すること。

  (6)  広告・申込画面、広告・勧誘動画の保存・開示・提供義務
通信販売業者がインターネット上で契約の申込みを受けた場合、消費者が申込み過程で閲覧した広告や勧誘過程の動画を一定期間保存する義務及び消費者に対して保存内容を提供する義務を負うものとすること。

  (7) 連絡先が不明の通販事業者及び当該事業者の勧誘者等を特定する情報の開示請求権(詐欺等加担者情報開示請求権)
特定商取引法第11条第5号及び同法施行規則第8条第1号の表示義務を満たさない通信販売に関する広告又はインターネット等を通じて行った勧誘により自己の権利を侵害されたとする者は、SNS事業者、プラットフォーマーその他の関係者に対して、通信販売業者及び勧誘者を特定する情報の開示を請求できることとすること。

  (8) 適格消費者団体の差止請求権の拡充
適格消費者団体の差止請求権について、前記(1)から(4)までの行政規制等に違反する行為等を請求権行使の対象に追加すること、及び(5)の場合に差止請求権行使の対象となる旨を明示することなど、その拡充を行うこと。


3 連鎖販売取引等について


  (1) 連鎖販売業に対する開業規制の導入
連鎖販売取引について、国による登録・確認等の事前審査を経なければ、連鎖販売業を営んではならないものとする開業規制を導入すること。

  (2) 後出し型連鎖販売取引の適用対象への追加
特定利益収受の契約条件を設けている事業者が、連鎖販売取引に加入させることを目的として特定負担に係る契約を締結させ、その後に当該契約の相手方に対し特定利益を収受し得る取引に誘引する場合は、特定商取引法の連鎖販売取引の拡張類型として規制が及ぶことを条文上明確にすること。

  (3)  不適合者に対する紹介利益提供契約の勧誘等の禁止
物品販売又は役務提供による対価の負担を伴う契約をした者が次のいずれかに該当する場合は、その者との間において、新規契約者を獲得することにより利益が得られることを内容とする契約の勧誘及び締結を禁止すること。

   ① 22歳以下の者

   ② 先行する契約として投資等の利益収受型取引の契約を締結した者

   ③  先行する契約の対価に係る債務(その支払のための借入金、クレジット等の債務を含む)を負担している者

  (4) 連鎖販売取引における特定利益の計算方法等の説明義務の新設
連鎖販売取引について、収受し得る特定利益の計算方法等を特定負担に関する契約を締結しようとする者に説明しなければならないものとすること。

  (5) 連鎖販売取引における業務・財務等の情報提供義務の新設
連鎖販売取引について、業務・財産の状況等に関する情報を特定負担に関する契約を締結しようとする者や加入者に開示しなければならないものとすること。


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