日弁連新聞 第577号

就任のご挨拶
日本弁護士連合会会長
小林 元治

2月4日に実施された日弁連会長選挙において会長に選出された小林元治です。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、2月24日に始まったロシアのウクライナ軍事侵攻により犠牲となった多くの方々に対し、心から哀悼の意を表します。

さて、コロナ禍という未曾有の危機に見舞われ、市民社会ではさまざまな法的課題・人権問題が発生し、私たち弁護士・弁護士会の法的支援が必要とされる場面は増え続けています。日弁連は、このような市民社会に寄り添い、頼りがいのある法律家団体でありたいと考えます。今後も各地の弁護士会と連携し、法律相談や各種法的支援の輪を広げてまいります。


また、組織での働き方の改善やハラスメント防止、医療・教育現場での事故防止、事故後に発足する第三者委員会、児童相談所における弁護士の関与など、社会の法的危機管理に弁護士の知見を生かしていかなければなりません。成年後見人への弁護士のさらなる就任も求められています。


ESGやSDGsなど、ビジネスと人権に関連する国際的な取り組みも時代の要請であり、弁護士の活躍が期待されています。


あわせて、利用者の負担軽減をはじめとする法テラスの改革・改善、弁護士費用保険制度の運用改善も検討する必要があります。


民事裁判手続等のIT化、国際仲裁の充実、損害賠償制度の改革、民事訴訟における情報・証拠収集手続の拡充など、利用しやすく頼りがいのある民事司法の改革にも取り組みます。


そして、若手・女性会員の活躍機会をさらに広げ、業務・経済基盤を強化するとともに、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進し、私たちの足元からジェンダーバイアスなどを根絶する努力をしていきたいと考えています。


平和と人権の諸課題については、弁護士としての使命感を持ち、人権NGOとしての取り組みを進めます。えん罪を防ぐための活動や再審法改正などの刑事司法改革にも精力的に取り組んでまいります。


さらに、日弁連のIT化・デジタル化の推進と併せて、中小規模弁護士会への支援拡充を検討し、日弁連の組織力の向上と一体化を図り、弁護士自治を強化していくことも重要です。


さまざまな課題が山積していますが、会員の皆さまのご理解・ご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。



改正少年法の施行に当たって
改正法下の付添人活動


改正少年法の概要

2021月5月21日に改正少年法が成立し、本年4月1日に施行された。今回の改正は、18歳・19歳について、従来どおり要保護性に応じた処分を選択するとしつつも、①処分の選択や処遇期間の決定に行為責任による上限を設ける、②いわゆる「原則逆送」対象事件の範囲を強盗罪や強制性交等罪を含む短期1年以上の懲役・禁錮の罪の事件にまで拡大する、③推知報道の禁止を正式起訴後に解除するなど、大規模な改正となっている。



改正法下の付添人活動の手掛かりとして

改正法の施行後は、行為責任に応じた安易な処分がされないよう、また比較的軽微な事案もいわゆる「原則逆送」対象事件となり得ることに配慮した付添人活動等が必要となる。これに対応する日弁連の取り組みを紹介するので、ぜひ活用していただきたい。


①研修体制
2021年9月に実施したライブ実務研修「少年法2021年改正の概要と実務上の留意点」をeラーニングで配信している。 また、各地の弁護士会でも、工夫を凝らした改正少年法に関する研修会が実施されている。


②パンフレット・冊子
パンフレット「少年法2021年改正の概要」には法改正の概要とその趣旨に関する立法担当者の国会答弁などをまとめた。 冊子「少年法2021年改正に伴う付添人活動のQ&A」は、18歳・19歳の少年事件を担当する弁護人・付添人の視点から、活動の流れに沿って、検討・対応すべき事項や行うべき活動をまとめたものである。


今後の実務運用と対応

改正法下での少年事件の実務運用は、これから明らかになる点や、固まってくる点も多い。また、立法過程で想定されていなかったような刑事処分相当での逆送決定の増加も危惧される。日弁連では、これからも随時情報提供に努めていくので、付添人を務める会員におかれても、キャッチアップをお願いしたい。


(子どもの権利委員会少年法に関する小委員会 委員長 金矢 拓)


*パンフレット「少年法2021年改正の概要」は日弁連ウェブサイトでご覧いただけます。
*冊子「少年法2021年改正に伴う付添人活動のQ&A」は日弁連会員専用サイトでご覧いただけます。


公正な消費者取引を確保するために分野横断的に適用される行政ルールの整備を求める意見書を提出

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日弁連は2月18日、「公正な消費者取引を確保するために分野横断的に適用される行政ルールの整備を求める意見書」を取りまとめ、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)および消費者庁長官に提出した。


横断的ルールの必要性

本意見書は、国に対し、業種・業態を問わず分野横断的に適用される消費者取引についての行政ルールを整備する立法措置を求めるものである。

消費者取引の市場の公正さを確保するためには、さまざまな施策が重畳的に機能する必要がある。民事ルールも重要であるが、被害を未然に防止する観点からは行政ルールが不可欠である。

しかし、現行の行政ルールは、広告の表示等に関する景品表示法を除けば、業種・業態ごとの個別的な対応にとどまっている。このため、法の隙間を突く悪質商法に適時に対応できない、いわゆる後追い規制になっている。さらに、高齢化の進行や情報通信技術の進展等により、消費者と事業者との間で情報の質および量の格差が広がっていること、業法規制がされていない分野でも消費者被害が生じていることなどからすれば、業種・業態を問わず、分野横断的に適用される行政ルールが必要である。このような法規として、EUにはUCPD(不公正取引方法指令)があり、米国にはFTC法(連邦取引委員会法)がある。日本でも、自治体の消費者保護条例で横断的な取引ルールを定めている。


整備すべきルール

整備すべき行政ルールは、①各業法との関係で一般法の性質を持つこと、②不公正な取引行為を明示的に禁止すること、③実効性を確保するための適切な措置を設けることが必要である。また、④禁止される不公正な取引行為を個別的・具体的に列記するとともに、新たに発生する悪質行為に対応するために包括的な受皿規定を設けるべきである。さらに、⑤高齢者の増加、障がい者への配慮、成年年齢引き下げを踏まえ、いわゆるぜい弱な立場にある消費者に関する規定も必要である。

今後も、本意見書の趣旨の実現に向けて、具体的な法律案の検討やシンポジウムの実施等の活動を行っていきたい。


(消費者問題対策委員会  副委員長 川本真聖)



旧優生保護法国賠訴訟の大阪高裁判決を受けて一時金支給法の見直しを求める会長声明を公表

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2月22日、大阪高等裁判所は旧優生保護法を違憲と判断し、国に賠償を命じる判決を言い渡した。これを受けて日弁連は、3月3日、旧優生保護法一時金支給法の内容の充実等を求める会長声明を公表した。


判決の内容

旧優生保護法に基づく強制不妊手術(優生手術)を受けた人とその配偶者が国に対して慰謝料等の損害賠償を求めていた訴訟で、大阪高等裁判所は、2月22日、控訴人(原告)に対する賠償金の支払いを命じる判決を言い渡した。


本判決は、全国各地で提起されている旧優生保護法を巡る国家賠償請求訴訟で初の高裁判決であり、原告の請求を認めた初の判決である。これまでの地裁判決では、除斥期間経過を理由に原告の請求が棄却されてきたが、本判決は、除斥期間の適用を認めることは著しく正義・公平の理念に反するとして適用を制限しており、画期的な意義がある。また、強制不妊手術を受けた被害者の配偶者に対しても権利侵害を認めて慰謝料の支払いを命じており、権利の性質を正当に評価した判断であると言える。


会長声明の公表

会長声明では、国に対し、本判決を速やかに確定させた上で、判決の内容を踏まえて2019年に成立した一時金支給法の内容を見直し、充実させるべきとしている。あわせて、一時金支給法の申請件数が少ない現状(被害者数が約2万5千人に対し、本年3月6日までの請求受付件数は1145件)に鑑み、申請期限の延長や、被害者の特性等に配慮した情報提供の在り方についての検討も求めている。


国は3月7日、本判決を不服として最高裁に上告した。3月11日には東京高等裁判所も原告の請求を認めたが、3月24日に国が上告した。引き続き、全国の地裁・高裁に係属中の同種訴訟や最高裁の判決、それらに対する国の対応を注視していく必要がある。


(人権擁護委員会  副委員長 金 喜朝)


2022年度 役員紹介

3月11日に開催された代議員会(本人出席231人、代理出席342人)において、2022年度役員が選出された。就任に当たり、15人の副会長の抱負と理事および監事の氏名を紹介する。

 

伊井 和彦(東京・37期)

[出身]大阪府
[抱負]FATF対応、死刑廃止、民事司法改革、民事裁判手続等のIT化などを担当します。会員間の多様な意見に配慮しつつ、弁護士全体にとって最善となる方策を模索し、決定・実行していきます。



松村 眞理子(第一東京・40期)

[出身]東京都
[抱負]財務・経理、国際関係、男女共同参画推進・ダイバーシティなどを担当します。急激に変化する現代社会の中で、日弁連・司法が対処すべきさまざまな課題に全力で取り組んでいきます。



菅沼 友子(第二東京・42期)

[出身]静岡県
[抱負]総合法律支援本部、労働法制、依頼者と弁護士の通信秘密保護などを担当します。誰もがアクセスに困難を感じることなく法的サービスを利用できるよう、司法アクセス改善等の課題に全力で取り組みます。



芳野 直子(神奈川県・43期)

[出身]静岡県
[抱負]消費者問題対策、情報問題対策、市民のための法教育、秘密保護法・共謀罪法対策本部、弁護士会照会制度などを担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現を担う日弁連に期待される役割を果たすよう頑張ってまいります。



増子 孝徳(栃木県・49期)

[出身]埼玉県
[抱負]男女共同参画推進、人権擁護、人権擁護大会、教育法制改正問題対策などを担当します。会員の皆さまの付託に支えられ、日弁連の活動が市民の方々の期待に応えるものとなるよう会長を支えてまいります。



福田 健次(大阪・36期)

[出身]大阪府
[抱負]刑事弁護センターや取調べの可視化などの刑事関係とリーガル・アクセス・センターなどの業務領域の拡大分野を中心に担当します。市民に身近で頼りがいのある弁護士、日弁連を目指して尽力いたします。



矢倉 昌子(大阪・39期)

[出身]大阪府
[抱負]広報、公害対策・環境保全、貧困問題対策、両性の平等などを担当します。弁護士の魅力を効果的に発信するとともに、他の副会長とチームワークよく、会長を補佐し、日弁連の諸課題に取り組みます。



林 晃史(兵庫県・42期)

[出身]兵庫県
[抱負]主に民事裁判手続、司法修習費用問題対策本部、法曹養成制度改革実現本部、災害復興支援関係を担当します。委員会と執行部とのコミュニケーションを密にすることを心掛けて会長を補佐してまいります。本年度は、法曹の魅力を発信することに取り組んでいきたいと思います。



蜂須賀 太郎(愛知県・39期)

[出身]愛知県
[抱負]資格審査会、総合研修センター、若手弁護士サポートセンター、法律サービス展開本部などを担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現のため、会長を補佐し、将来を担う若手会員が存分に活躍できるよう、尽力いたします。



下中 奈美(広島・41期)

[出身]広島県
[抱負]家事法制、犯罪被害者支援、高齢者・障害者権利支援センター、消費者問題対策、刑事弁護センターなどを担当します。会長を補佐し、人権擁護と社会正義の実現の観点から日弁連が直面する諸課題に誠意をもって取り組みます。



多川 一成(福岡県・45期)

[出身]佐賀県
[抱負]弁護士倫理、法科大学院センター、司法修習費用問題対策本部、ADRセンターなどを担当します。市民社会の期待に応える日弁連を目指し、内部自治分野や法曹の養成、若手会員の活動支援等の諸課題に取り組みます。



吉田 瑞彦(岩手・41期)

[出身]岩手県
[抱負]弁護士自治と基本的人権の擁護に尽くします。国選弁護、刑事拘禁制度改革、刑事法制、取調べの可視化、死刑廃止などの刑事全般、憲法、自治体等連携センターの諸課題に全力で取り組みます。



秀嶋 ゆかり(札幌・41期)

[出身]長崎県
[抱負]子どもの権利、全面的国選付添人制度実現本部、国内人権機関実現、国際人権問題、男女共同参画推進などを担当します。格差の解消に向けて、小さな声にも耳を澄ませながら尽力いたします。



樋川 恒一(札幌・44期)

[出身]北海道
[抱負]弁護士業務改革、中小企業法律支援センター、司法制度調査会、倒産法制等検討、知的財産センター、日弁連法務研究財団などを担当します。弁護士の活動領域拡大と充実した業務の継続実現に取り組みます。



松尾 泰三(徳島・45期)

[出身]徳島県
[抱負]裁判官制度改革・地域司法計画推進本部、民事介入暴力対策、弁護士業務妨害対策、公設事務所・法律相談センターなどを担当します。会長を補佐し、日弁連の取り組むべき課題の実現に尽力します。


理事

  • 小杉 公一(東京)
  • 石田  茂(東京)
  • 渡辺 彰敏(東京)
  • 加納小百合(東京)
  • 荒木 理江(東京)
  • 関  理秀(東京)
  • 森  大輔(東京)
  • 若林 茂雄(第一東京)
  • 野村 憲弘(第一東京)
  • 石川  剛(第一東京)
  • 浜田  薫(第一東京)
  • 番  敦子(第二東京)
  • 九石 拓也(第二東京)
  • 金ヶ崎絵美(第二東京)
  • 二川 裕之(神奈川県)
  • 髙岡 俊之(神奈川県)
  • 白鳥 敏男(埼玉)
  • 清田乃り子(千葉県)
  • 篠崎  純(千葉県)
  • 亀田 哲也(茨城県)
  • 安田 真道(栃木県)
  • 吉野  晶(群馬)
  • 伊豆田悦義(静岡県)
  • 石川  恵(山梨県)
  • 中村 威彦(長野県)
  • 齋藤 貴介(新潟県)
  • 松本  岳(大阪)
  • 大砂 裕幸(大阪)
  • 黒田  愛(大阪)
  • 山田 敬子(大阪)
  • 鈴木 治一(京都)
  • 中上 幹雄(兵庫県)
  • 馬場 智巌(奈良)
  • 吉田 和宏(滋賀)
  • 山本 久子(滋賀)
  • 山岡  大(和歌山)
  • 小川  淳(愛知県)
  • 眞下 寛之(愛知県)
  • 長尾 英介(三重)
  • 御子柴 慎(岐阜県)
  • 紅谷 崇文(福井)
  • 二木 克明(金沢)
  • 坂本 義夫(富山県)
  • 久笠 信雄(広島)
  • 田中 礼司(山口県)
  • 近藤  剛(岡山)
  • 西川 文雄(鳥取県)
  • 光谷香朱子(島根県)
  • 野田部哲也(福岡県)
  • 河合 勇治(福岡県)
  • 井寺 修一(佐賀県)
  • 濵口 純吾(長崎県)
  • 清水 立茂(大分県)
  • 福岡聰一郎(熊本県)
  • 神川 洋一(鹿児島県)
  • 川添 正浩(宮崎県)
  • 田島 啓己(沖縄)
  • 伊東 満彦(仙台)
  • 紺野 明弘(福島県)
  • 小野寺弘行(山形県)
  • 青柳 紀子(山形県)
  • 長谷川 大(岩手)
  • 松本 和人(秋田)
  • 小野 晶子(青森県)
  • 坂口 唯彦(札幌)
  • 田端 綾子(札幌)
  • 佐藤 昭彦(札幌)
  • 柳  順也(函館)
  • 池田めぐみ(旭川)
  • 久保田庸央(釧路)
  • 古屋 時洋(香川県)
  • 瀧  誠司(徳島)
  • 重松健二郎(高知)
  • 吉村 紀行(愛媛)
  • 射場 和子(愛媛)



監事

  • 豊﨑 寿昌(東京)
  • 田上 昭子(第二東京)
  • 山村 清治(千葉県)
  • 津久井 進(兵庫県)
  • 鈴木 雅雄(岐阜県)


新事務総長紹介

渕上玲子事務総長(東京)が退任し、後任には、4月1日付で谷眞人事務総長(東京)が就任した。


谷 眞人(東京・42期)

これまで、日弁連事務次長、司法調査室室長、所属弁護士会の副会長等を務めさせていただきました。これから2年間、職員の皆さんと共に小林執行部を支え、多くの若者に法曹を終生の仕事として選んでもらえるように、個々の弁護士が輝いている弁護士会を目指して努力したいと思っています。



「司法サービスの全国展開と充実のための行動計画」を策定

arrow 「司法サービスの全国展開と充実のための行動計画」を策定


日弁連は2月17日、弁護士過疎を克服・解消するための第3次行動計画となる「司法サービスの全国展開と充実のための行動計画」を取りまとめた。


これまでの経緯と内容

日弁連は2001年5月、弁護士過疎を克服・解消し、全国で均質の司法サービスを提供する体制を整備するため、当面の具体的目標として「司法サービスの全国展開に関する行動計画」(第1次行動計画)を策定した。今回の行動計画は、第1次および2012年の第2次行動計画を踏襲しつつ、司法サービスをさらに充実させるため、今後の10年間で取り組むべき新たな行動計画を策定したものである。


その内容は、地裁支部管内の弁護士ゼロワン地域の解消など、第2次行動計画において実現できなかった課題を引き続き取り上げるとともに、弁護士を取り巻く情勢の変化に対応できるよう、法律相談センターの代替制度を整備することなどを盛り込んでいる。


弁護士過疎・偏在対策事業の現在地

1996年5月定期総会で採択された「名古屋宣言」以降、日弁連の取り組んできた弁護士過疎・偏在対策が成果を上げ、何度か地裁支部単位での弁護士ゼロワン地域を解消するに至った。ところが、2018年3月に新たなワン地域が発生して以来、ゼロワン地域解消は実現できておらず、2022年3月時点では、全国で2か所のワン地域が存在している。また、同時点で、女性弁護士ゼロの支部は62か所存在し、人口3万人以上で弁護士ゼロの市町村も121か所存在している。つまり、名古屋宣言および第1次・第2次行動計画の基本理念である「いつでも、どこでも、誰でも法的サービスを受けられる社会」の実現には至っていない現状がある。


行動計画実現に向けて

日弁連としても、第3次行動計画の実現に向けた新たな施策を検討中であるが、行動計画は当該地域の弁護士会と個々の会員の協力なくして実現できるものではない。これからも地域の実情を踏まえつつ、行動計画の実現に向けた不断の努力を続けていくことを改めてここに宣言するとともに、弁護士会と会員に対して、弁護士過疎・偏在解消事業へのご理解とご協力をお願いする次第である。


(日弁連公設事務所・法律相談センター 委員長 上椙裕章)


日弁連短信

法曹志望者増に向けた取り組み

司法制度を支える法曹に有為な人材が入ることは非常に重要である。他方で、法科大学院入学者の減少、ひいては法曹志望者全体の減少が指摘されており、有為な志望者の確保は法曹界全体における喫緊の課題となっている。そのため、弁護士の仕事の魅力ややりがい等を発信する取り組みを積極的に行い、潜在的な法曹志望者を掘り起こし、新たな志望者の獲得に向けた活動を推し進めることが必要である。

日弁連では、法科大学院センター、男女共同参画推進本部、司法調査室、広報室等において、広報ツールやパンフレットの作成、「弁護士に会ってみよう!」企画の実施、法曹三者共催イベント「法曹という仕事」などの法曹志望者増に向けた各種イベントの開催、「ロースクールへ行こう!!」(法科大学院協会主催)への協力、仕事体験テーマパーク「カンドゥー」での弁護士の仕事体験アクティビティへの協賛、大学生向け情報サイト「マイナビ学生の窓口」へのコンテンツ掲載等の取り組みを行っている。


また、法曹養成制度改革実現本部が主体となり、全国の弁護士会に対して法曹志望者増に向けた取り組みの実施とその報告を求めるとともに、全国の状況を集約・整理し、活動を充実させるために情報提供を行っている。これまでに、イベント実施用の手引や広報用パンフレットの作成に関する資料を提供したほか、弁護士との対話や法廷傍聴、卒業生による母校訪問の企画例などについて情報を提供した。理事会でも各地の取り組みについて報告していただき、全国の理事へ共有を図っている。


各弁護士会で、各地の実情に応じて法曹志望者増に向けた取り組みを行っていただいているところであるが、今後も一層のご協力をお願いしたい。日弁連では、本年度も引き続き、各弁護士会における法曹志望者増に向けた取り組み(法曹の魅力や法曹養成制度の概要等の発信を主眼とする内容に限る。)に対し、①講師を派遣した場合、②シンポジウム・講演会等の行事を開催した場合、③広報用ツールを作成した場合に、費用補助を行うことを検討している。


法務省、最高裁判所、文部科学省、法科大学院協会等の関係機関が連携して法曹志望者増に向けた取り組みを行うことも重要であり、日弁連では、こうした連携をさらに進めていく。各弁護士会においても、各地の裁判所、検察庁、大学(法学部・法科大学院)等と協力した活動の実施を検討していただければと思う。



(事務次長 服部千鶴)



可視化実践経験交流会総括会議
2月7日 オンライン開催

取調べの可視化を義務付ける改正刑事訴訟法が2019年6月1日に施行され、まもなく3年後見直しの時期を迎える。そこで、近時の無罪事例を報告するとともに、可視化の全件・全過程への拡大に向けた取り組み、報告事例から見えてきた課題等について議論した。


事例報告〜プレサンス事件

大阪地裁は2021年10月28日、学校法人の土地売却を巡る業務上横領事件について、関係者の供述は信用できないとして無罪判決を言い渡した。同事件で弁護人を務めた秋田真志会員(大阪)は、被告人および共犯者らの取調べ状況を録音・録画した膨大な記録媒体をすべて反訳し、繰り返し確認して共犯者らの虚偽自白に至る経緯を明らかにした過程を報告した。被告人であった山岸忍氏は、「人質司法」の下でごく普通の人が虚偽自白をする心理状態に陥っていくことがよく分かったと実感を込めて語り、可視化の重要性と取調べへの弁護人立会いの必要性を強く訴えた。



これまでの取り組みと今後の課題

取調べの可視化本部の前田裕司副本部長(宮崎県)は、これまで可視化実践経験交流会で報告された47事例を総括し、取調べの全件・全過程の可視化の必要性のほか、可視化を想定した被疑者等に対する適切な助言の重要性、弁護人による積極的な記録媒体の活用方法などを共有したと報告した。 意見交換では、可視化によっても不当な取調べそのものは阻止できないという可視化の限界や膨大な記録媒体への対応の困難さ、記録媒体を証拠採用させるための手法確立の必要性などについて意見が出された。また、今後も諸課題への取り組みを続け、すべての弁護人が可視化時代の刑事弁護を実践できるように研修等を充実させるとともに、取調べに依存する捜査実務を変えていかなければならないとの声が上がった。


再審法改正を求める院内集会
―証拠開示の制度化と検察官不服申立ての禁止を実現するために―
2月2日 オンライン開催

arrow 再審法改正を求める院内集会―証拠開示の制度化と検察官不服申立ての禁止を実現するために―


再審に今なお高いハードルが存在する要因の一つに、現行の刑事訴訟法における再審規定の不備がある。再審法の改正に向け院内集会を開催し、人を超える国会議員を含む約150人が参加した。


証拠開示の早急な制度化を

人権擁護委員会再審法改正に関する特別部会の鴨志田祐美部会長(京都)は、通常審で検察官が提出しなかった被告人に有利な証拠、いわば「『古い』新証拠」が再審開始の原動力になった事件として、布川事件、東京電力女性社員殺害事件、松橋事件等を紹介した。また、再審請求手続における証拠開示は明文の規定がなく、裁判所の裁量に委ねられていることから、「再審格差」と呼ぶべき状況が存在していると述べ、証拠開示の制度化の必要性を説いた。



検察官不服申し立ては許されない

鴨志田部会長は、検察官が再審開始決定に対して不服申し立てを繰り返すことにより審理が著しく長期化している実情を批判し、検察官は「無辜の救済」という再審の目的のために「公益の代表者」の役割を果たすべきであることや、仮に有罪を主張するのであれば再審が開始してから再審公判で行うべきであることを指摘した。


法改正の実現を目指す多くの声

布川事件で再審無罪が確定した櫻井昌司氏は、自らの体験に基づいて、日本の刑事司法制度の運用実態は法治国家の体をなしていないと言わざるを得ないと語り、えん罪被害当事者の声を聞いて法改正を行う必要があると訴えた。


さらに、袴田事件と大崎事件の再審弁護団がクラウドファンディングで集めた資金で作成した再審法改正に関する動画を上映した上で、袴田事件、大崎事件、湖東事件の再審弁護団による活動報告が行われた。


成年年齢引下げ目前!このまま突入?!
〜引下げ後の問題と対策 できていること・いないこと〜
2月4日 オンライン開催

arrow 成年年齢引下げ目前!このまま突入?!〜引下げ後の問題と対策 できていること・いないこと〜


本年4月1日から民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられるのを前に、その問題点やこれまで講じられてきた対策、今後の課題などについて議論した。


成年年齢引き下げの経緯と問題点

消費者問題対策委員会の谷口央副委員長(富山県)は、成年年齢引き下げにより18歳・19歳の若者が未成年者取消権を失うこととなり、消費者被害の拡大が懸念されると説明した。しかし、現状では若者の消費者被害の防止・救済に向けた対策は不十分であり、引き続き残された課題に対処し、議論を続ける必要があると述べた。


パネルディスカッション

上田孝治幹事(兵庫県)、塩地陽介幹事(宮崎県)、松岡泰樹幹事(神奈川県)は、残された課題の具体例として、つけ込み型勧誘、マルチ商法、若者の借金問題への対策が不十分と指摘し、各種法律による規制が不可欠であると訴えた。上田幹事は、今国会で審議予定の消費者契約法の改正案について、成年年齢引き下げの対策としても取消権に関する規定が不十分であると述べ、実効性のある改正法の成立に向けて声を上げてほしいと呼び掛けた。

加藤進一郎副委員長(京都)は、SNSの活用例などを紹介し、若者が相談しやすい手段の必要性や課題を論じた。


遠藤郁哉委員(島根県)は、消費者教育の推進に向けた施策が実施されてきたものの、理解度や定着率が低いという課題があり、小・中・高等学校を通じた段階的な消費者教育を行う必要があると指摘した。


石川周子氏(東京都立文教高等学校主任教諭)は、生徒が当事者意識を持てるように工夫し、被害を防ぐために自ら行動する若者を育成するための消費者教育に取り組んでいることを紹介した。大学生の藤林理子氏(NPO法人スマセレ)は、若者には18歳・19歳が契約の当事者になるという発想がない人が多いと述べ、スキップできないウェブ広告やTikTokなどを活用して、若者に消費者被害に関して注意を促すことを提案した。


生活保護ケースワーク業務の外部委託問題を考える
〜生存権保障はどこへ行くのか〜
1月27日 オンライン開催

arrow 生活保護ケースワーク業務の外部委託問題を考える〜生存権保障はどこへ行くのか〜


厚生労働省は2021年3月、ケースワーカーの業務過多を理由に生活保護業務の一部を外部委託可能とする事務連絡を発出し、ケースワーク業務の外部委託を解禁する法改正の機運が高まっている。本シンポジウムでは、外部委託化の問題等を検討した。


基調報告

貧困問題対策本部の小久保哲郎事務局次長(大阪)は、2021年8月19日付け 「生活保護におけるケースワーク業務の外部委託化に反対する意見書」を踏まえ、外部委託化により保護の決定・実施(公権力の行使)が民間業者に丸投げされ、生存権保障や最低生活保障という生活保護法の基本原理が形骸化する恐れがあると強調した。


安藤千晶氏(日本社会福祉士会副会長)は、ケースワーク業務には高度な専門性が必要であり、外部委託化ではなく社会福祉士・精神保健福祉士の配置促進および増員を行うべきと訴えた。


現場からの報告

戸口真良氏(精神保健福祉士)と大口耕吉郎氏(全大阪生活と健康を守る会連合会会長)は、委託先職員による違法な対応や権限を越えた行為の事例を紹介し、外部委託化による被保護者等の権利侵害に警鐘を鳴らした。 桜井啓太准教授(立命館大学産業社会学部)は、外部委託化の目的はコストカットに主眼があるのではないかとの見解を示した。さらに、受給者が支援により就職して保護廃止となった場合等に成功報酬が支払われる仕組みが導入されると、被保護者が劣悪な雇用に追い立てられる可能性があると懸念を示した。


羽曳野市ケースワーカーの仲野浩司郎氏(全国公的扶助研究会事務局次長)は、生活困窮者自立相談支援機関や相談支援員に対して支援現場の実情を調査した結果を報告し、不安定な労働環境に悩む非正規支援員の声などを紹介した。ケースワーカーを取り巻く既存の問題を放置したまま外部委託化を進めても、生活困窮者への支援の質は向上しないと指摘した。


第2回
弁護士業務妨害対策全国会議
2月22日 オンライン開催

多様化・複雑化する弁護士業務妨害を埋もれさせず、適切な対策を講ずべく全国会議を開催し、各弁護士会の業務妨害対策関係委員会の委員ら約140人が参加した。


業務妨害被害を経験して

横山幸子副会長(当時)は、自らの被害経験として、嫌がらせ、待ち伏せ、脅迫などの妨害が10年以上に及んだものや刑事事件化したもののほか、家族のことが記載され、職務上の氏名でなく本名を宛名とする手紙が自宅に届いたことなどを報告した。いずれも通常の事件処理の結果起こったもので、業務妨害は他人事ではないとし、一人で抱え込まないためには弁護士・弁護士会全体で理解と共感の醸成が必要であると語った。


業務妨害を埋もれさせないために

パネルディスカッションでは、小規模弁護士会を中心に支援要請がゼロの弁護士会も少なくない現状について意見を交わした。依頼者から繰り返し金銭を要求され、支援要請を行わないまま最終的に第三者の資産に手を付けてしまった事例等を踏まえ、支援要請がないことは業務妨害がないことを意味せず、業務妨害を埋もれさせないための取り組みが重要だと確認した。


認知度向上と活動の周知

さらに、業務妨害では「周りから自分にも落ち度があったと見られるのでは」という心理が働くため、どのような支援を得られるのかを会員が理解していなければ、支援要請の行動を起こすことが難しいとの問題が提起された。委員からは、支援要請を受けた支援弁護士らが各種対応をした事例やアドバイスにより実際に被害拡大を防止できた事例のほか、相談の端緒を得る方法として会員サポート窓口等と連携することなどが報告され、委員会の認知度向上と活動の周知を図っていくことを確認した。


弁護士会等の連携強化

特に小規模弁護士会では、会員が複数の委員会に所属し、人的・物的資源にも限界があることから、日弁連および弁護士会同士が随時協力して、横断的に連携する必要性も共有した。


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