住宅建築工事請負契約約款(モデル)

第1章 総則

第1条 (基本理念)

住宅は、人間が生存し人格形成をしていく主要な場であり、健康で文化的な生活の基盤をなす。安全で快適な住宅に居住することは、基本的人権に属するものである。


本約款の解釈は、常にこのことを念頭においてなされなければならない。


第2条 (注文者、請負人、監理者の地位と責務)

  1. 住宅の建築請負人(以下「乙」という。)は、この契約(契約書並びにそれに添付された請負代金内訳明細書、この工事請負契約約款〔以下「約款」という。〕及び設計図、仕様書〔以下これらを「設計図書」という。〕を内容とする請負契約をいう。以下同じ。)に基づいて工事を完成し、目的物を注文者(以下「甲」という。)に引き渡し、甲は請負代金を支払う。
  2. 乙は、甲に対し、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律に基づき、住宅建設瑕疵担保責任保険契約の保険証券若しくはこれに代わるべき書面又は住宅建設瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅建設瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付し、かつ、その記載内容について説明しなければならない。
  3. 監理者(以下「丙」という。)は、建築士法その他の関係法令に基づき、乙の施工が次条の技術基準に従ってなされることを監理するとともに、この契約が円滑に遂行されるよう協力する。


第3条 (施工の技術基準)

  1. 乙は、建築工事にあたり、建築基準法、同施行令、その他建築関係法令(国土交通省(旧建設省)告示を含む。)を遵守するとともに、本契約時における最新の日本建築学会標準仕様書(以下「学会仕様書」という。)、住宅金融支援機構の住宅工事仕様書(以下「機構仕様書」という。)及び住宅瑕疵担保責任保険設計施工基準(以下「保険基準」という。)に定める技術基準若しくは建築材料や設備機器メーカー所定の施工マニュアルがある場合にはその施工マニュアル記載の施工基準を最低の基準としていずれも遵守し、施工する義務を負う。
  2. 乙は、建築工事にあたり、設計図書(設計図面及び仕様書をいう。以下同じ。)に指示がない場合、又は設計図書によっても明らかでない場合は、前項の技術基準を最低基準とし、建設業法25条の27第1項に定める施工技術の確保に努めて施工しなければならない。
  3. 乙が設計図書若しくは第1項と異なる仕様に基づいて施工しようとするときは、第1項の仕様又は性能と同等又はそれ以上の仕様であることが証明され、かつ甲及び丙の書面による承認を受けた場合に限り、これを行うことができる。
  4. 設計図書に第1項又は第2項に違反する記載があったときは、当該記載部分は無効とする。


第4条 (請負代金内訳明細書)

  1. 乙は、甲に対して、本契約締結と同時に、丙の承認を受けて、設計図書及び請負代金内訳明細書(以下「内訳明細書」という。)を提出しなければならない。
  2. 乙が前項の設計図書及び内訳明細書を提出しない場合には、甲は、乙に対して工事着工を拒否でき、相当期間を定めて催告してもなお、いずれかの提出に応じないときは、甲は、請負契約を解除することができる。この場合、甲は、乙に対する損害賠償責任を負わない。
  3. 乙は、第1項の内訳明細書に誤記、違算又は請負代金の脱漏などがあっても、そのために請負代金の変更を求めることができない。


第5条 (工程表)

  1. 乙は、甲に対して、本契約締結後速やかに、丙の承認を受けて、工程表を提出しなければならない。
  2. 乙が、前項の工程表を提出しない場合には、甲は、中間金の支払合意がある場合でも、中間金の支払を拒否できる。


第6条 (一括下請・一括委任の禁止)

  1. 乙は、その請け負った建設工事全部を、委任その他何らの名義をもってするかを問わず、一括して単一業者に請け負わせてはならない。
  2. 乙は、建設工事全部の一括下請でなくても、その工事代金額の50%以上に相当する工事を単一業者に請け負わせるときは、その下請工事が必要である理由を付して甲及び丙の了解を求め、書面による承諾を得なければならない。


第7条 (下請負人の明示及び変更請求)

  1. 乙は、甲の請求があったときは、乙の下請負人の住所・氏名及び工事内容を記載した書面を甲に対して交付しなければならない。
  2. 甲は、乙に対して、建設工事の施工につき著しく不適当と認められる下請負人があるときは、その変更を請求することができる。


第8条 (権利義務の譲渡などの禁止)

  1. 甲及び乙は、相手方の書面による承諾がなければ、この契約から生ずる権利義務を第三者に譲渡することはできない。
  2. 甲及び乙は、相手方の書面による承諾がなければ、契約の目的物、建築資材、建築設備を第三者に譲渡若しくは貸与し、又は担保の目的に供してはならない。


第9条 (保証人)

  1. 保証人は、この契約から生ずる債務(この契約履行に際して発生した不法行為上の債務を含む。)について、当事者と連帯して保証の責任を負う。
  2. 保証人が前項の義務を果たせないことが明らかとなったときは、当事者は相手方に対して保証人の変更を求めることができる。
  3. 請負代金の全部又は一部の前金払(初回金、中間金を問わず、工事の出来高以上の金額を前もって支払うこと。)をする定めがなされたときは、甲は乙に対して、何時でも、保証人を立てることを請求することができる。乙がこの請求を受けたときは、乙は第1項に定める保証人を立てなければならない。
  4. 乙が前項の規定により保証人を立てないときは、甲は、契約の定めにかかわらず、前金払をしないことができる。


第10条 (監理者の業務及び責任)

  1. 丙は、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているか否かを確認する責務を負う。
    1. 丙は、別に定めた監理契約書記載の業務のほか、最低限次の業務を行う。
    2. 地業工事、構造耐力上主要な部分、防水、断熱、配線・配管設備の施工に立ち会いかつ検査し、それ以外の部分の施工については必要に応じて立ち会いかつ検査すること。
    3. 工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに乙に注意を与え、乙がこれに従わないときは、その旨を甲に報告すること。
    4. 設計図書に示されていない建築基準法、その他第3条1項記載の技術基準に違反する施工箇所を発見したときは、直ちに乙に注意を与え、乙がこれに従わないときは、その旨を甲に報告すること。
    5. 甲の指示が不適当であるときは、その旨を教示すること。
    6. 工事の追加、変更について検討し、助言を行うこと。
    7. 完成検査を行うこと。
  2. 丙は、前項の業務を誠実に執行し、建築物の質の向上に努めなければならない。
  3. 甲又は乙が施工に関して指図、検査、立会を求めたときは、丙は直ちにこれに応じなければならない 。
  4. 丙は、工事監理が終了したときは直ちに写真を添付した工事監理報告書を作成し、工事監理中においては甲の求めに応じて随時書面又は口頭若しくは写真によって、その結果を甲に報告しなければならない。
  5. 丙は、工事監理のために自ら撮影した写真及び乙より提出を受けた工事写真を監理終了後15年間以上保存しなければならず、甲より請求を受けたときはいつでもこれを甲に提出しなければならない。


第11条 (現場代理人)

  1. 乙は、本契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては、当該現場代理人の権限に関する事項及び当該現場代理人の行為について甲の乙に対する意見の申出の方法を、あらかじめ書面により甲に通知しなければならない。
  2. 現場代理人と次条に定める主任技術者又は監理技術者とは、これを兼ねることができる。


第12条 (主任技術者・監理技術者の現場管理)

  1. 乙は、建設業法26条1項、2項の定めに従い、当該工事現場における主任技術者又は監理技術者を定め、現場の管理を行わせなければならない。
  2. 前項の主任技術者又は監理技術者は、同時に次のいずれかを超える工事の現場を担当してはならない。
    1. 3棟
    2. 延べ床面積の合計750平方メートル
  3. 同時期かつ同一現場での複数棟の工事等、工事管理に支障がないと認められるときは、主任技術者又は監理技術者は前項の制限を超えて工事現場を担当することができる。この場合、乙は、工事管理に支障がないことの理由並びに同時に担当する棟数、各施工場所及び延べ床面積の合計を示して、甲及び丙の書面による承認を得なければならない。


第13条 (工事関係者の変更等)

  1. 甲は、乙の現場代理人、監理技術者、主任技術者、専門技術者又は従業員のうちに、工事の施工又は管理について著しく適当でないと認めた者があるときは、乙に対して、その理由を明示した書面をもって、その交替等の必要な措置をとるべきことを求めることができる 。
  2. 乙は、前項の求めを受けたときは、甲に対し、書面をもって、必要な措置をとるか否か、とる場合にはその措置の内容、とらない場合にはその理由について、回答しなければならない。
  3. 乙は、丙の業務を代理して行う監理者又は現場常駐監理者の処置が著しく適当でないと認めたときは、丙に対して、その理由を明示した書面をもって、その交替等の必要な措置をとるべきことを求めることができる。
  4. 丙は、前項の求めを受けたときは、甲に対し、書面をもって、必要な措置をとるか否か、とる場合にはその措置の内容、とらない場合にはその理由について、回答しなければならない。
  5. 乙は、丙の処置が著しく適当でないと認めたときは、その理由を明示した書面をもって、甲に対して、当該丙の処置の変更等を求めることができる。
  6. 甲は、前項の求めを受けたときは、乙に対し、書面をもって、処置の変更等を行うか否か、行う場合にはその内容、行わない場合にはその理由について、回答しなければならない。


第2章 建築工事の遂行

第14条 (丙の立会)

  1. 乙は、次の工事を施工するときは、事前に丙に通知して、工事の日程を協議しなければならない。
    1. 地業工事
    2. 基礎工事
    3. 構造躯体に関する工事(基礎と構造躯体に関する部材との接合工事、構造躯体に関する部材同士の接合工事)
    4. 内装工事
    5. 断熱、配線・配管工事
    6. 防水工事
    7. 屋根工事
    8. 前各号のほか、設計図書の定め、ないし丙の指示に基づいて丙の立会のうえで施工すべき工事
  2. 乙が、前項の通知をせず、かつ丙の立会なしで、前項各号の施工を実施した場合には、甲及び丙は、乙の費用によって当該施工の設計図書への適合性の有無を調査することができる。


第15条 (設計の疑義・条件の変更)

  1. 乙は、次の場合には、甲及び丙に対して、直ちに書面をもってその判断内容を通知する。
    1. 設計図書の内容が明確でないと判断した場合
    2. 設計図書に基づく施工が不適当であると判断した場合
  2. 前項の通知を受けた丙は、甲及び乙に対して、書面をもって自らの判断を示し、設計図書の変更、施工内容に対する指示等を行う。
  3. 丙が自ら、第1項の判断をした場合にも、前項と同様とする。
  4. 前項ないし第2項に基づき、工事の内容、工期又は請負代金額を変更する必要があると認められるときは、甲、乙及び丙が協議して、変更内容、費用負担者等を決定する。ただし、工事代金額が増額になる場合には、その費用を甲に負担させることはできない。この協議内容は、書面によらなければならない。


第16条 (設計図書に適合しない施工)

  1. 施工について、図面、仕様書に適合しない部分があるときは、丙の指示によって、乙は、その費用を負担して速やかにこれを改造する。このために乙は、工期の延長を求めることはできない。
  2. 丙は、図面、仕様書に適合しない疑いのある施工について、必要と認められる相当の理由があるときは、甲の書面による同意を得て、必要な範囲で破壊してその部分を検査することができる。
  3. 前項による破壊検査の結果、図面、仕様書に適合していない場合は、破壊検査に要する費用は乙の負担とし、図面、仕様書に適合している場合は、破壊検査及びその復旧に要する費用は甲の負担とし、乙は、甲に対しその理由を明示して必要と認められる工期の延長を請求することができる。ただし、14条2項に基づく破壊検査の場合には、図面、仕様書に適合しているときでも、破壊検査費用等は乙の負担とする。
  4. 次の各号の一によって生じた図面、仕様書に適合しない施工については、乙はその責めを負わない。
    1. 丙の指示によるとき。
    2. 支給材料、貸与品、指定材料の性質又は指定施工の方法によるとき。
    3. その他施工について、甲又は丙の責めに帰すべき理由によるとき。
  5. 前項の場合であっても、施工について乙の故意又は重大な過失によるとき、又は乙がその適当でないことを知りながらあらかじめ丙に通知しなかったときは、乙はその責めを免れない。


第17条 (中間検査)

  1. 建築基準法7条の3に基づく中間検査を必要とする特定工程がある場合には、丙は、甲を代理して、当該特定工程に係る工事完了日から4日以内に中間検査申請書を建築主事又は指定確認検査機関(以下「建築主事等」という。)に提出しなければならない。
  2. 丙は、前項の中間検査に立ち会い、中間検査済証を受領して甲に交付しなければならない。
  3. 建築主事等から中間検査済証の交付を受けられない場合には、甲、乙及び丙の協議により、中間検査済証の交付を受けるための修補等の必要な処置を取ることとし、中間検査済証の交付を受けられるまで同様の協議と処置を行うものとする。
  4. 前項による協議及び処置に要する費用は、乙又は丙の負担とする。


第18条 (損害発生の防止)

  1. 乙は、完成した建物の引渡までの間、自己の費用で、建築中の建物その他契約の目的物、甲が支給した建築資材等の工事材料、又は近隣の工作物若しくは第三者に対して損害を発生させないため、法令と設計図書に基づき、工事と環境に相応した必要な処置をしなければならない 。
  2. 当初予期できなかった損害発生防止処置が第1項の範囲を越えて必要となった場合は、その都度甲乙間で協議してその結果を書面化しなければならない。その際の費用負担については、特段の事情が存在しない限り甲の負担とする。上記の特段の事情の存在は、甲が主張立証しなければならない。
  3. 甲、乙、丙のいずれかが災害防止などのための緊急の処置を必要と認めた場合、乙は直ちにこれを実行しなければならず、甲、丙は直ちにこれを実行するよう乙に対して要求できる。
  4. 前項の処置に要した費用の負担については、甲、乙、丙が協議して定める 。


第19条 (第三者に発生させた損害の処理)

  1. 施工により第三者に損害を発生させた場合は、乙がこれを賠償する。ただし、その損害のうち甲の責めに帰すべき事由により生じたものについては、甲がこれを賠償し、丙の責めに帰すべき事由により生じたものについては、丙がこれを賠償する。
  2. 前項の場合、その他施工について第三者との間に紛争が発生した場合は、乙がその処理にあたる。乙のみでは処理が困難な場合は、甲及び丙は乙に協力する。
  3. 契約の目的物それ自体に基づく日照阻害、風害、電波障害、その他甲の責めに帰すべき事由による損害が第三者に発生した場合は、甲がその処理にあたり、乙は必要に応じて甲に協力する。上記の損害の賠償責任は甲が負う。ただし、乙の責めに帰すべき事由により上記の損害が生じた場合は、乙がその処理にあたり、上記の損害の賠償責任を負う。
  4. 前3項の場合において、乙が具体的理由を示して工期の延長を請求した場合は、甲はこれを許諾しなければならない。上記の延長日数は、甲、乙及び丙の協議によってこれを定める。


第20条 (損害の処理)

  1. 工事の完成引渡までに契約の目的物、工事材料、支給材料、貸与品、その他施工一般について生じた損害は、乙の負担とし、工期は延長しない。
  2. 前項の損害のうち、次の各号のいずれかの場合に生じたものは甲又は丙の負担とし、乙は必要によって工期の延長を求めることができる。
    1. 甲の都合によって着手期日までに工事に着手できなかったとき、又は甲が工事を繰延べ若しくは中止したとき。
    2. 支給材料又は貸与品の受渡が遅れたため、乙が工事の手待又は中止をしたとき。
    3. 前払又は部分払が遅れたため、乙が工事に着手せず又は工事を中止したとき。
    4. その他甲又は丙の責めに帰すべき事由によるとき。


第21条 (保険加入)

乙は、工事中、建築中の建物その他契約の目的物について、火災保険(各種共済を含む。以下同じ。)又は建設工事保険に加入し、その証書の写しを甲に提出しなければならない。設計図書、請負契約書に定められたその他の損害保険に加入した場合も同様とする。


第3章 検査・引渡

第22条 (完成・検査)

  1. 乙は、工事を完了したときは、設計図書に適合していることを確認して、書面により丙に検査を求め、丙は、速やかにこれに応じて乙の立会のもとに検査を行う。
  2. 検査に合格しないときは、乙は、工期内又は丙の指定する期間内に補修又は改造して丙の検査を受ける。
  3. 乙及び丙は、第1項の検査の時期及び方法につき請負契約締結時に甲に対し十分な説明を行った上で甲との間で書面により合意しなければならない。
  4. 丙は、第1項の検査の結果及び第2項の補修又は改造について乙に対して行った指示の内容を詳細に記録した書類を速やかに作成し、甲に交付して報告・説明しなければならない 。
  5. 丙は、甲を代理して工事完了日から4日以内に完了検査申請書を建築主事等に提出しなければならない。
  6. 丙は、完了検査に立ち会い、完了検査済証を受領して甲に交付しなければならない 。
  7. 建築主事等から完了検査済証の交付を受けられない場合には、乙は、甲、乙及び丙の協議により、完了検査済証の交付を受けるための修補等の必要な処置を取ることとし、完了検査済証の交付を受けられるまで同様の協議と処置を行うものとする。
  8. 前項による協議及び処置に要する費用は、乙又は丙の負担とする。
  9. 乙は工期内又は丙の指定する期間内に、丙の指示に従って仮設物の取払及び後片付けなどの処置を行う。
  10. 前項の処置が遅れているとき、甲が催告しても乙が正当な理由がなく前項の処置を行わないときは、甲は、乙に代わってこれを行い、その費用を乙に請求することができる。この場合、甲は撤去した仮設物について保管の義務を負わない。


第23条 (部分使用)

  1. 契約の目的物の一部について、工事中であっても、甲は、乙の書面による同意を得て、これを使用することができる。乙は、工事に支障が生じる等の正当な理由がない限り前段の書面による同意をしなければならない 。
  2. 甲の使用する部分の保管の責めは甲が負う。
  3. 甲は部分使用することにつき丙に通知する。
  4. 丙は、前項の通知を受けた後、速やかに部分使用に関する技術的審査を行った上で、法令に基づいて必要とされる仮使用承認等の手続を甲に代理して行う。上記手続に要する費用は、甲の負担とする。
  5. 乙は、甲が部分使用を始めるに先立ち、甲が行う部分使用の方法等につき安全上注意すべき事項や工事の妨げとならないように注意すべき事項、その他、甲・乙及び第三者に損害が生じることを防ぐために必要な事項を文書を交付し説明しなければならない。
  6. 甲が前項の注意事項の遵守を怠り、乙に損害を及ぼしたときは、甲は、その損害を負担する。


第24条 (請求・支払・引渡)

  1. 第22条1項の検査に合格したときは、乙は甲に契約の目的物を引き渡し、同時に、甲は、乙に請負代金の10分の9に相当する額を支払う。
  2. 甲は前項の引渡から2か月経過後に乙に請負代金の10分の1に相当する残額の支払を完了する。ただし、引渡後に契約不適合が判明した場合には、乙によりその修補がなされるまで甲は上記残額の支払を拒むことができる。
  3. 契約の目的物の一部について、第22条1項又は2項の検査に合格したときは、甲は、その部分の引渡を受けることができる。引渡部分の請負代金の支払時期については前2項を準用する。
  4. 前項の部分引渡につき、法令に基づいて必要となる手続については、丙が甲を代理してこれを行う。
  5. 乙は、契約書に定めるところにより、工事の完成前に部分払を請求することができる。この場合、出来高払によるときは、乙の請求額は、丙の検査に合格した工事の出来形部分と検査済の工事材料に対する請負代金相当額の5分の4に相当する額とする。
  6. 乙が前項の部分払の支払を求めるときは、その額について丙の承認を経た上、支払請求締切日(支払日の5日以上前とする。)までに甲に請求する。
  7. 前払を受けているときは、第5項の請求額は、次の式によって算出する。 請求額=第5項による金額×(請負代金額-前払金額)÷請負代金額


第4章 契約の変更・違反・責任

第25条 (契約不適合責任)

  1. 契約の目的物が契約の内容に適合しないもの(設計図書、又は、第3条1項の技術基準に違反している場合をいう。以下同じ。)であるときは、甲は、乙に対して、目的物の修補による履行の追完を求め、又は目的物の修補に代え若しくは修補とともに損害の賠償を求めることができる。
  2. 前項の場合において、甲の乙に対する損害賠償請求については、民法415条第1項ただし書きにかかわらず、契約不適合による債務不履行が、乙の責めに帰することができない事由によるものであるときも、乙は損害賠償責任を負う。
  3. 第1項の場合において、甲が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、甲は、その不適合の程度に応じて請負代金の減額を請求することができる。
  4. 前項にかかわらず、次に掲げる場合には、甲は、前項の催告をすることなく、直ちに請負代金の減額を請求することができる。
    1.  履行の追完が不能であるとき
    2.  乙が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき
    3.  この契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において、乙が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
    4.  甲が催告をしても乙が履行の追完をする見込みがないことが明らかであるとき
  5. 第1項の目的物の修補の方法は、契約の目的物を、設計図書、又は、第3条1項の各技術基準に適合させ、契約の内容に適合する状態に回復させるために必要かつ相当な方法とし、別紙契約不適合補修方法一覧表に記載がある契約不適合については、同表記載のとおりの方法によることとする。
  6.  建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づく補強方法は、修補方法としては採用できないものとする。
  7. 第1項による契約不適合担保期間は、甲に引き渡した時から10年間とする。ただし、契約不適合が乙の故意又は重大な過失によって生じたものであるときは、甲に引き渡した時から20年間とする。
  8. 第1項の契約不適合については、民法637条1項の規定は適用しない。
  9. 前各項の規定は、第16条4項の各号によって生じた契約の目的物の契約不適合又は滅失若しくは毀損については適用しない。ただし、同条5項に該当するときはこの限りでない。



第26条 (工事の変更、工期の変更及びこれらに伴う請負代金額等の変更)

  1. 甲及び乙は、相手方からの申出に応じて、工事の追加又は変更を合意することができる。
  2. 前項の合意は、追加又は変更の内容、追加又は変更に伴う請負代金額の増減額、並びに、追加又は変更に伴う工期の変更の有無及び工期変更がある場合にはその変更後の工期について、書面に明記し、甲及び乙が署名又は記名押印して相互に交付しなければならない。ただし、請負代金が増額となる場合、又は、工期が伸長する場合には、乙は、甲の書面による同意がない限り、代金増額、又は、工期延長を請求できない。
  3. 契約期間内に天災その他不可抗力により、工期の変更又は損害の負担が必要となる事態となった場合には、甲乙協議のうえ、請負契約の解除、又は、工期の変更をすることができる。
  4. 前項に基づき請負契約を合意解除する場合には、甲及び乙は、相手方に対して、請負代金請求ないし損害賠償請求をすることができない 。
  5. 第3項の場合において、工期を変更する場合には、甲乙協議のうえ、甲及び乙に生じた損害の負担について協議により各負担額を合意することとする。
  6. 価格等(物価統制令第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更があった場合には、甲乙協議のうえ、請負代金額又は工事内容の変更を合意することとする。
  7. 前項の協議が調わない場合には、請負契約を合意解除し、甲及び乙は、相手方に対し、解除による損害賠償その他の金員請求を行うことができないものとする。



第27条 (履行遅滞・違約金)

  1. 乙の責め帰すべき理由により、契約期間内に契約の目的物を引き渡すことができないときは、特約のない限り、甲は、請負代金に対し乙が遅滞の責任を負った最初の時点における民事法定利率による遅延損害金を請求することができる。ただし、甲はその他遅延により特別必要とした仮住居費用等や収益を目的とする建築物については、その収益の損失違約金を加えて別途請求できる。
  2. 甲が請負代金の支払を完了しないときは、乙は支払遅滞額に対し甲が遅滞の責任を負った最初の時点における民事法定利率による遅延損害金を請求することができる。
  3. 甲が前払又は部分払を遅滞しているときは、前項の規定を適用する。ただし、遅延判断は乙の工事の進行状況と対比して決定する。
  4. 甲が第2項の遅滞にある場合であっても、支払遅滞額が請負代金額の10分の1を下回る場合は、乙は契約の目的物の引渡を拒むことができない。



第28条 (甲の中止権・解除権)

  1. 甲は、必要によって、書面をもって工事を中止し又はこの契約を解除することができる。甲は、これによって乙に生じる損害を賠償する。
  2. 次の各号の一にあたるときは、甲は、書面をもって工事を将来に向かって中止し、又はこの契約を解除することができる。この場合、甲は、乙に損害の賠償を求めることができる。
    1. 乙が正当な理由なく、着手期日を過ぎても工事に着工しないとき。
    2. 工事が工程表より著しく遅れ、工期内又は期限後相当期間内に、乙が工事を完成する見込がないと認められるとき。
    3. 乙が第6条又は第16条1項の規定に違反したとき。
    4. 乙が建設業の許可を取り消されたとき、又はその許可が効力を失ったとき。
    5. 乙が強制執行を受け、資金不足による手形・小切手の不渡りを出し、破産・会社更生・会社整理・特別清算の申し立てをし、若しくは受け、又は民事再生の申し立てをするなど、乙が工事を続行できないおそれがあると認められるとき。
    6. 乙が第29条2項の各号の一に規定する理由がないのに、この契約の解除を申し出たとき。
    7. その他、乙がこの契約に違反し、そのため契約の目的が達成できなくなったと認められるとき。
  3. 乙の工事が、建築基準法、同法施行令、その他同法令を実施するために定められた国土交通省(旧建設省)告示等に違反し、そのため契約の目的を達することができないと認められるときは、甲は、建物完成後であっても、この契約を遡及的に解除することができる。この場合、乙は既施工工事の結果を除去して工事用地を原状に復して明け渡し、既受領の請負代金を返還するとともに、これによってなお生じる甲の損害を賠償しなければならない。



第29条 (乙の中止権・解除権)

  1. 次の各号の一にあたるとき、乙が相当の期間を定めて書面をもって催告してもなお甲に解決の誠意が認められないときは、乙は、工事を中止することができる。 甲が正当な理由なく前払又は部分払を遅滞したとき。 甲が正当な理由なく第15条4項による協議に応じないとき。 甲が工事用地等を乙の使用に供することができないため、又は不可抗力などのため乙が施工できないとき。 前各号のほか、甲の責めに帰すべき理由により工事が著しく遅延したとき。
  2. 次の各号の一にあたるときは、乙は、相当の期間を定め、書面をもってこの契約を解除することができる。
    1. 前項による工事の遅延又は中止期間が、工期の4分の1以上になったとき、又は2か月以上になったとき。
    2. 甲が工事を著しく減少したため、請負代金額が3分の2以上減少したとき。
    3. 甲がこの契約に違反し、そのため契約の目的が達成できなくなったと認められるとき。
    4. 甲が請負代金の支払能力を欠くことが明らかになったとき。
  3. 前各項の場合、乙は甲に損害の賠償を求めることができる。



第30条 (解除に伴う措置)

  1. 前2条により、甲又は乙がこの契約を解除したときは、第28条3項による解除の場合を除き、乙がした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって甲が利益を受けるときは、甲はその部分(工事の出来形部分)を引き受けるものとし、甲が受ける利益の割合に応じて乙に請負代金を支払うとともに、出来形部分及び工事材料・建築設備機器等の処理については、甲、乙、丙が協議して定める。
  2. 前項の甲が受ける利益の割合の算定方法については、当初の請負金額から残工事に要した費用を控除した金額をもって甲が受ける利益とする方法による。
  3. 甲が第28条2項によってこの契約を解除し、精算の結果過払があるときは、乙は、過払額について、その支払を受けた日から法定利率による利息をつけて甲に返す。
  4. 前2条により、甲又は乙がこの契約を解除したときは、甲、乙、丙が協議して、当事者に属する物件について、期間を定めてその引取り、後片付けなどの処置を行う。
  5. 前項の処置が遅れているとき、催告しても、正当な理由なくなお行われないときは、相手方は、代わってこれを行い、その費用を請求することができる。


第5章 紛争の解決

第31条 (裁判の管轄)

この契約について当事者間に紛争が生じたときは、甲の住所地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所を第一審管轄裁判所とする。


第6章 付則

第32条 (付則)

契約書又はこの約款に定めのない事項については、必要に応じて甲、乙、丙が協議して定める。