会長からのご挨拶・日弁連Diary
会長からのご挨拶

新年度に入り、私も会長として2度目の春を迎えました。
昨年度は多くの課題に対応しました。経済的に余裕がない方が法的トラブルにあった際に弁護士費用の立替等を行う民事法律扶助に関しては、2022年6月から、法務省、日本司法支援センター(法テラス)、日弁連の三者で民事法律扶助制度をめぐる諸課題を検討するための勉強会を開催してきました。その中でも特に喫緊の課題であるひとり親世帯支援のため、養育費の請求を伴う離婚等関連事件に関しては、極めて短期間で集中的に検討を進めた結果、2023年1月末に支援の方向性についての取りまとめに至りました。
この取りまとめにより、事件の相手方から過去分の養育費等の支払を受けた場合に、その養育費等を法テラスの立替金の一括即時償還に充てなければならないとされている現状の制度が改善され、離婚が成立した場合等については、一定額までの養育費等について一括即時償還に充てる必要がなくなることや、養育費請求をしているひとり親について法テラスの立替金の償還免除の範囲が拡大されること、そして、代理人が、養育費から報酬を毎月取り立てる扱いを原則やめて法テラスが一括で支払うこととするなど、ひとり親世帯において養育費確保の道がより拡充されることとなりました。
現在、実施時期その他の詳細を詰めていますが、2023年3月の日弁連臨時総会で採択された「民事法律扶助における利用者負担の見直し、民事法律扶助の対象事件の拡大及び持続可能な制度のためにその担い手たる弁護士の報酬の適正化を求める決議」も踏まえ、ひとり親世帯支援の更なる拡大のほか、未成年者本人による代理援助申込みや成年後見の本人申立てへの法的支援、民事法律扶助の担い手確保のための方策など残された他の諸課題についても、三者の勉強会で引き続き検討を行っていく予定です。
また、えん罪被害者について一刻も早い救済が必要です。日弁連は、1959年の徳島事件以来、再審事件の支援に取り組むとともに、これまでも再審制度の運用改善・法改正の必要を指摘してきました。2019年10月の人権擁護大会決議の実現に向けて、2022年6月に日弁連内に再審法改正実現本部を設置したほか、2023年2月には、「
刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書」を取りまとめて公表しました。また、日弁連が支援する再審事件のうち、日野町事件の第二次再審請求については2023年2月27日に大阪高等裁判所が、袴田事件の第二次再審請求については同年3月13日に東京高等裁判所がいずれも再審開始を認める決定をしたことを受けて、それぞれ会長声明を公表しました。今後も再審事件の支援を継続するとともに、「刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書」等を踏まえた再審法改正の実現を目指して、粘り強く活動を行っていきます。
そのほかにも多くの重要課題が山積しておりますが、一つひとつの課題に真摯に取り組んでまいる所存ですので、市民の皆様におかれましても引き続きご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
2023年(令和5年)4月1日
日本弁護士連合会会長
2022年・2023年度 会長 小林 元治(こばやし もとじ)
小林 元治 会長プロフィール
- 1976年 中央大学法学部卒業
- 1981年 弁護士登録(司法修習第33期)
- 2016年 東京弁護士会会長
- 同年 日本弁護士連合会副会長
- 2022年・2023年度 日本弁護士連合会会長
主な日弁連委員履歴
- 2004年~2011年 行政訴訟センター副委員長
- 2008年~2014年 日本司法支援センター推進本部副本部長
- 2011年~2016年 民事司法改革推進本部事務局長
- 2013年~2021年 立法対策センター副委員長
- 2016年~2018年 法曹養成制度改革実現本部副本部長
- 2017年~2021年 民事司法改革総合推進本部本部長代行
- 2023年01月01日 会長からのご挨拶(2023年1月1日)
- 2022年10月01日 会長からのご挨拶(2022年10月1日)
- 2022年07月01日 会長からのご挨拶(2022年7月1日)
- 2022年04月01日 会長からのご挨拶(2022年4月1日)
- 2022年01月01日 会長からのご挨拶(2022年1月1日)
- 2021年10月01日 会長からのご挨拶(2021年10月1日)
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