会長からのご挨拶(2024年1月1日)

会長からのご挨拶

あけましておめでとうございます。

本年が皆様にとって素晴らしい年となりますようお祈り申し上げます。


私の日弁連会長としての2年間の任期も残すところ3か月となりました。

昨年来取り組んでいる諸課題の中から、民事法律扶助と再審法改正問題を取り上げます。


1 民事法律扶助制度改革

 経済的に余裕がない方が法的トラブルにあった際に弁護士費用の立替えなどを行う民事法律扶助に関しては、2022年6月から、法務省、日本司法支援センター(法テラス)、日弁連の三者で勉強会を開催してきました。2023年2月には、喫緊の課題であるひとり親世帯支援のため、養育費の請求を伴う離婚等関連事件に関する支援の取りまとめに至りました。

 この取りまとめにより、事件の相手方から過去分の養育費等の支払を受けた場合に、その養育費等を法テラスの立替金の一括即時償還に充てなければならないとされている現状の制度が改善され、離婚が成立した場合等において、一定額までの養育費等を一括即時償還に充てる必要がなくなるなど、ひとり親世帯において養育費確保の道がさらに拡充されることとなりました。

 2023年3月の臨時総会では、「民事法律扶助における利用者負担の見直し、民事法律扶助の対象事件の拡大及び持続可能な制度のためにその担い手たる弁護士の報酬の適正化を求める決議」を採択しました。

 今後も、臨時総会決議の趣旨の実現を含む総合法律支援の拡充に向けて、活動を継続していく必要があります。


2 再審法改正に関する活動

 えん罪被害者の救済のための再審法改正等に関する活動も行ってきました。

 我が国の刑事再審制度は、現行法が施行されてから70年以上にわたって一度も改正されておらず、再審について定めた規定はわずか19条しかありません。2019年の人権擁護大会において採択された、再審法の速やかな改正を求める決議の内容の実現に向けて、私が会長に就任して2か月後の2022年6月に「再審法改正実現本部」を設置しました。

 2023年2月には、「刑事再審に関する刑事訴訟法等改正意見書」として、再審法改正の要綱案および条文案を提言しました。同年6月開催の第74回定期総会においては、「えん罪被害者の迅速な救済を可能とするため、再審法の速やかな改正を求める決議」を採択し、えん罪被害者の声に真摯に耳を傾け、引き続き再審支援活動を行うとともに、再審法改正の実現に向けて、全力を挙げて取り組む決意を示しました。

 また、同年4月に、地方自治体の首長や各種団体に対し、再審法の改正への賛同を求める要請書を提出したほか、同年5月と11月には国会議員への一斉要請を実施し、同年6月には議員会館において再審法改正を求める院内集会を開催しました。これまでに150名を超える国会議員から再審法改正への賛同メッセージを寄せていただき、3つの道県議会を含む多くの地方議会で再審法改正を求める意見書を採択していただきました。

 さらに、同年7月には、日弁連ウェブサイトに「icon_page.png再審法改正プロジェクトACT for RETRIAL」の特設ページを設けるなどして、この問題の広報にも力を入れています。

 再審法改正に向けて、引き続き粘り強く取組を進めていく必要があります。


そのほか、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、民事司法改革(早期開示命令制度の新設、損害賠償制度の改革)、憲法と平和、死刑問題、刑事国選弁護報酬、オンライン接見、民事裁判・刑事手続のIT化など、多くの課題に対応してきました。

できる限り各課題を前進させ、次の執行部によい形で引き継げるよう、残りの任期中、全力を傾注したいと存じます。

本年も、よろしくお願いいたします。



2024年(令和6年)1月1日
  日本弁護士連合会会長     

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