会長からのご挨拶(2023年10月1日)

会長からのご挨拶

世界ではAI(人工知能)が急速に進展・普及しており、さまざまな分野で活用されています。私たち弁護士が関わる分野においても、例えば、AIを用いて契約書のチェックを行うサービスなどが提供され始めています。

その影響は、司法サービスの形のみならず、基本的人権をはじめとする諸権利などにも及ぶことが予想され、今後、さまざまな課題が発生する可能性があります。


日弁連では本年6月に、これらの広範な課題への対応や採るべき方針の検討、その他必要な活動を行うことを目的とした「AI戦略ワーキンググループ」を設置しました。

このワーキンググループでは、AIがもたらす影響などの全体像を把握するため、AIの定義、種類、AIに関する論点などについて、専門家から知見を得るための勉強会を開催するなどの活動を開始しています。今後、弁護士の業務に及ぼす影響のみならず、基本的人権、民主主義、知的財産権への影響などに関する検討を行うほか、規制の必要性だけでなく、弁護士業務を含むさまざまな分野におけるAIの利活用についても広く議論し、論点を整理する予定です。

その一つとして、弁護士以外による法律事務の取扱い等を禁止している弁護士法第72条との関係についての検討・対応にも取り掛かる予定です。これに関しては、本年8月、法務省大臣官房司法法制部から「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」と題するガイドラインが公表されておりますが、このガイドラインの内容についても、慎重に検討する必要があります。日弁連でも、ワーキンググループを中心にこの問題について、しっかりと対応していきます。


私の会長としての任期も、残すところあと半年となりました。民事法律扶助改革、再審法の改正やオンライン接見の実現など重要課題が山積しておりますが、残りの任期中、一つ一つの課題に真摯に取り組んでまいる所存です。市民の皆様におかれましても、引き続き、ご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。



2023年(令和5年)10月1日
  日本弁護士連合会会長     

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