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創業者が知っておきたい8つの法的ポイント

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第1回 2019年2月20日 仲間と起業。仲間割れによるリスクを防ぐには?

弁護士 平田 えり

■プロフィール
平田 えり
日弁連中小企業法律支援センター 委員(第一東京弁護士会 所属 ※当時)

起業後、まさかの仲間割れ?! 

ポイント
・株式会社の意思決定は原則、過半数の賛成による。 
・リーダーは最低でも51%の議決権を確保しよう。
・合同会社では定款で議決権割合を自由に定めることもできる。 

株式会社の意思決定のルールを知っておこう 

家族や友達など親しい仲間と起業する場合、それぞれの保有する株式の割合も均等に(例えば2人で起業するなら株式は50%ずつ)、というケースも多いのですが、実はそのようなやり方はリスクが大きいのです。 
会社の意思決定は多数決が基本です。株式会社の出資者(株主)は、「一株一議決権」といって、原則的に出資割合に応じた議決権を持っています。株主総会で会社の運営について決議するには、議決権の過半数の賛成が必要です(普通決議)。また、定款の変更や組織変更など重要な事項について決議する場合は、議決権の3分の2の賛成が必要なのです(特別決議)。

(表 株式会社の決議要件と決議事項(例)) 

種類 成立要件 決議要件 決議事項(例) 
普通決議 
(309 条1項) 
議決権の過半数
(定款で排除できる) 
出席者の議決権の過半数 ・役員等の報酬 
・剰余金の配当 
・計算書類の承認 
特則普通決議
(341 条) 
議決権の過半数
(定款で1/3 以上にできる)
出席者の議決権の過半数 ・役員の選任 
・役員の解任 
特別決議 
(309 条2項) 
議決権の過半数
(定款で1/3 以上にできる) 
席者の議決権の2/3 以上 ・定款の変更 
・組織再編、事業譲渡 
・資本金の減少 
・募集株式の発行 
・監査役の解任 


リーダーは最低でも51%、できれば67% 

もし、創業者2人で50%ずつ株式を持っていて、会社の運営についての意見が真っ二つに分かれてしまった場合、いずれも株主総会で過半数を取ることができず、会社の運営について何も決められなくなってしまいます。他方、仮にあなた以外の人が過半数の株式を握ったら、あなたの意見は通らなくなりますし、最悪あなたが会社を追い出されてしまうこともありえます。 
したがって、もしあなたが一緒に起業する仲間のリーダーであるのなら、万が一仲間割れしてしまってもあなたが会社の運営についての決定権を握れるように、最低でも51%の株式を保有しておくことが必要です。 
また、特別決議では議決権の3分の2の賛成が必要ですので、できれば3分の2を超える割合、すなわち67%以上の株式を保有しておくとより安心です。 

合同会社の意思決定のルールはどうなっているか 

ところで、最近「合同会社」という形態の会社を設立する人が増えています。株式会社に比べて低コストで設立できる・手続が簡単であるなどの理由で、合同会社を選択する人も多いようです。 
合同会社の業務については、出資者(社員)の過半数の賛成で意思決定するのが原則です。議決権割合は、株式会社と異なり、出資者は「一人一議決権」が原則です。ただし、定款によってこれと異なる議決権割合を定めることも可能です。したがって、合同会社を設立する場合、出資割合に関わらず、あなたの議決権割合が51%以上になるよう定款で定めておくと安心です。 

なお、合同会社は、議決権以外の事項(利益配当等)も定款で比較的自由に定めることが可能です。しかし、自由度が高い分、設立当初の制度設計が重要になってきますので、設立の際は弁護士に相談してみるとよいでしょう。 

(表 株式会社と合同会社の比較) 

 
株式会社
合同会社

設立手続

比較的コストがかかる 比較的簡単、安価
(定款認証不要)
出資者の名称 株主 社員
出資者の責任 有限責任 有限責任
業務執行者 取締役 業務執行社員
(業務執行社員を選任しない
場合は社員全員)
業務執行者と出資者
の関係
委任契約
株主以外からでも選任可
社員本人
社員以外からは選任不可
業務執行者の任期 通常2年、最大10 年 任期なし
決算公告 毎事業年度ごとに必要 不要
利益配当 株式の割合に応じて配分 出資割合に関係なく
社員の合意で自由に配分可能
議決権 原則、出資比率(保有株式数)に比例 原則、出資者1人1議決権。
もっとも定款で異なる定めを
置くことは可能。
株式(持分)の譲渡 自由
譲渡制限をかけることも可能
原則社員全員の同意が必要

 

参考ページ> 創業(企業) 契約交渉