特定商取引に関する法律等の改正を求める意見書

2015年5月8日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

当連合会は2015年5月8日の理事会で「特定商取引に関する法律等の改正を求める意見書」を取りまとめ、同年5月18日に経済産業大臣、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官、内閣府消費者委員会委員長宛てに提出しました。

 

本意見書の趣旨

特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)と特定商取引に関する法律施行令(以下「政令」という。)及び特定商取引に関する法律施行規則(以下「省令」という。)に関し、以下のとおり改正することを求める。

 

1 訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引及び業務提供誘引販売取引関係
契約締結について勧誘をするに際し、消費者に金銭の借入れをさせ又は金融機関に同行して預貯金を引き下ろさせ、同金員をもって代金の支払いに充てさせる行為を、指示対象行為(特商法第7条、第22条、第38条、第56条)とするべきである。

 

2 訪問販売及び電話勧誘販売関係
訪問販売のいわゆる特定顧客の定義(特商法第2条第1項第2号、政令第1条)は、現在、事業者が街頭で消費者を呼び止めて営業所等に同行する方法のほか、①契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに営業所等への来訪を要請する方法(以下「販売勧誘目的隠匿型」という。)及び②他の者に比して著しく有利な条件で契約を締結することができる旨を告げて営業所等への来訪を要請する方法(以下「有利条件提示型」という。)のみであるところ、販売勧誘目的隠匿型、有利条件提示型以外のそれに類する不意打ち性を伴う手法により営業所等への来訪を要請する場合にも定義を拡大するべきである。また、来訪招請手段についても、雑誌や新聞の広告・ウェブページ・SNSを用いる場合や、営業所等以外の場所での口頭による場合を追加するべきである。
さらに、電話勧誘販売についても、販売勧誘目的隠匿型、有利販売提示型以外のそれに類する不意打ち性を伴う手法により電話をかけさせる方法も追加するべきである。また、「電話をかけさせ」る手段(特商法第2条第3項、政令第2条)に関しても、雑誌や新聞の広告・ウェブページ・SNS等を用いる場合を追加するべきである。

 

3 電話勧誘販売関係
現行法の訪問販売における過量販売行為の規制(特商法第7条第3号)及び過量販売契約解除権(特商法第9条の2)と同様に、電話勧誘販売取引においても、勧誘方法の規制において過量販売行為を指示対象行為とするとともに、過量販売契約の解除権を導入するべきである。

 

4 通信販売関係
(1) インターネット上のショッピングモール運営業者に対し、インターネット取引の場の提供者として、加盟販売業者の実在性確認義務及び苦情の対応義務を課すべきである。
(2) インターネット販売業者が電子メール・SNS上のメッセージやチャット等を利用して、文字による勧誘を行うことにより、インターネット通販契約を締結する場合について、電話勧誘販売と同様の規制を設けるべきである。
(3) SNSやスマートフォンのアプリケーションソフトを用いた広告メッセージの送信について、事前の請求がない者への送信禁止(以下「オプト・イン規制」という。)の対象にするべきである。
(4) 電子メール広告につき、オプト・イン規制から除外される承諾、請求をした者がその後に受信拒否の意思表示をした場合、当該意思表示の記録につき、事業者に作成・保存義務を課すべきである。
(5) 通信販売における解約返品ルールを見直し、未履行の役務提供契約についても解約できるように拡大するべきである。

 

5 特定継続的役務提供関係
(1) 「関連商品」となる商品について政令指定制による限定を撤廃するべきである。
(2) 特定権利販売の契約書面に、権利の内容となる役務提供を行う当事者の氏名・名称、その住所、電話番号の記載を義務付けるべきである。

 

6 業務提供誘引販売取引関係
業務提供誘引販売取引の定義について、商品又は提供される役務について「利用する業務」との限定を改め、それに加えて、「業務提供利益の収受に関して必要のある物品の販売又は有償で行う役務の提供事業」を適用対象とするべきである。

 

7 訪問購入関係
(1) 不招請勧誘の禁止(特商法第58条の6第1項)について、購入業者が訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘を要請していない者に対し、当該売買契約の締結について勧誘をすること、勧誘の受ける意思を確認するために電話をかけること、政令で定める方法により電話をかけさせることを禁止するべきである。
(2) 売買契約が代金受領後に解除された場合の返金額の上限につき、重利を認める規定を改めるべきである。

 

8 執行関係
(1) 適格消費者団体に対し、不実告知や誇大表示における合理的根拠資料の提出要求権限を付与するべきである。
(2) 立入調査権限が及ぶ対象者について、現行の「密接関係者」の要件を拡大し、勧誘業務、契約締結業務、履行業務、苦情対応業務等、相互の役割分担の下で訪問販売等の営業活動を担っている事業者を含むべきである。
(3) 事業者の代表者その他役員、営業活動を統括する者、実質的主宰者等についても、行政処分の対象とするべきである。
(4) 立入調査の拒否や妨害を行った場合、その事実を事業者名とともに公表する措置を導入するべきである。
(5) 複数の都道府県にまたがる被害事案に対する法執行について、国と都道府県の役割分担を定めた政令を改正し、全国的被害事案や都道府県による行政処分のみでは不十分なケースについては国が行政処分を行うべきことを明確にするべきである。

 

これまでの意見書

当連合会は、これまで特定商取引に関する法律に関して以下の意見書をとりまとめてきたが、本意見書はこれらに加えて更なる消費者トラブルの予防・救済のために省令・政令で規定された事項を含む改正を求めるものである。

 

 

 

 

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