民法(債権関係)改正に関する意見書(その4)― 消費者に関する規定部分 ―

2012年10月23日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

日弁連は、2012年10月23日に「民法(債権関係)改正に関する意見書(その4)―消費者に関する規定部分―」を取りまとめ、同年10月31日に法務大臣宛てに提出いたしました。
 

本意見書の趣旨

法制審議会民法(債権関係)部会では、現在、中間試案の取りまとめを目指して第2読会の審議が進行しているところ、当連合会では、2012年1月20日付けで「保証制度の抜本的改正を求める意見書」、同年3月15日付けで「公序良俗違反の具体化」「意思表示に関する規定の拡充」等についての「民法(債権関係)改正に関する意見書」、同年8月23日付けで「債権譲渡」「債権債務関係における信義則の具体化」等についての「民法(債権関係)改正に関する意見書」を公表した。


本意見書は、当連合会が、上記の意見書に引き続き、「消費者に関する規定」について意見を述べるものである。



現代の高度化した競争社会においては、経済力、専門的知識や情報の量と質又は交渉力において弱い立場にある者が契約において不利益を受けることがあり、当連合会は、このような経済的、社会的に弱い立場にある者の不利益を解消し、社会的公正を実現することを重視している。



今般の民法(債権関係)改正問題に関しても、当連合会は、2010年6月17日に、6項目からなる基本姿勢を定めているが、その一部を抜粋すれば、以下のとおりである。


「4.専門的知識や情報の量と質または交渉力に大きな格差のある消費者・労働者・中小事業者などが、理由のない不利益を蒙ることがなく、公正で正義にかなう債権法秩序を構築できる民法となるように積極的に提言する。」


この点、一般私法たる民法の基本ないし原則となる法規範は、契約自由の原則や契約の拘束力のみを強調したものであってはならず、消費者・労働者・中小事業者など現実社会における多くの非対等な契約関係の存在や契約弱者の利益にも配慮したバランスのある規定内容とされなければならない(後記「第8」「第10~13」など)。また、非対等な契約関係における格差への配慮に関する抽象的な理念規定を民法に規定することを積極的に検討すべきである(後記「第2」など)。さらに、現代の高度に発達した消費生活社会における代表的な格差契約である消費者契約に関する規定の制定(後記「第7~17」など)の他、その適用範囲の拡張(後記「第4~5」など)や、「消費者」概念以外の指標を用いた契約弱者保護規定の制定も併せ検討されてよい(例:「事業者・非事業者」概念に着目した法規範など)。なお、消費者契約に関する規定を設けることが、民法典のデフォルトルールの事業者ルール化の代償措置とされたり、例外規定として位置づけることによる安易な反対解釈などで消費者以外の契約弱者の保護が不当に狭められないよう留意する必要がある。



本意見書の公表段階では、民法典の中にいかなる「消費者に関する規定」を置くか、その内容が必ずしも網羅的かつ明確なものとなっていない。そこで、本意見書では、2011年4月に公表されている「民法(債権関係)に関する中間的な論点整理」(以下「中間論点整理」という。)の「第62」の1及び2部分で列挙されている諸規定に関連する意見のみを述べる。

 

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