「『代用監獄』の廃止に向けて ─代用監獄問題の新段階─」(改訂第2版)

改訂第2版発行にあたって

「『代用監獄』の廃止に向けて-代用監獄問題の新段階-」の発刊から1年余りが経過しました。この間、2007年(平成19年)6月1日に刑事被収容者処遇法が施行され、同年5月には国連の拷問禁止委員会により日本の代用監獄制度の廃止に向けた勧告が示されるなど、代用監獄をとりまく状況に、また大きな変化がありました。このように、「新段階」を迎えた代用監獄問題は、今も日々、動きをみせています。そこでこのたび、こうした最新情報を盛り込み、改訂第2版を発行する運びとなりました。本書が、代用監獄の廃止に向けた取組において、これまで以上に広く活用されることを、心より願います。


発刊にあたって

このたび、「代用監獄」問題をわかりやすく説明したパンフレットを作成しました。主として若手弁護士向けに作成したものですが、市民の皆さんにもお読みいただければ幸いです。


2005年の受刑者処遇法の成立に続き、2006年6月、未決拘禁法が成立し、監獄法が約100年ぶりに全面改正されました。これによって、監獄法改正・代用監獄問題は新たな段階を迎えました。


「代用監獄」は、今回の立法では存続とされましたが、それは「代用監獄」の問題点がなくなったからではありません。「代用監獄」問題を含む未決拘禁制度の問題点は、立法にあたっての法務省・警察庁・日弁連の三者協議会、法務省・警察庁各省庁と日弁連との二者協議、未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議、衆議院、参議院における論議を通じて、よりいっそう明らかになりました。「代用監獄」問題は、先送りされたのです。


いまが、まさに刑事手続と未既決の刑事拘禁制度の改革のときです。


2009年には、市民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まります。これに先立ち、2005年11月には、公判前整理手続が始まり、2006年10月には、即決裁判制度も始まりました。


連日的開廷による集中審理においては、取調べの全過程の可視化や十分な証拠開示、接見交通の確保が前提とされなければ、被告人の防御に重大な困難が生じます。これを避けるためには、夜間・休日接見や裁判所構内接見などの十分な接見交通の機会が保障されなければなりません。


また、これまで、日本の刑事手続においては、被疑者・被告人の身体拘束を当然とする運用がなされ、「人質司法」との批判を受けてきました。刑事手続が大きく変わろうとしているいまこそ、本来あるべき姿にたちかえり、被疑者・被告人の不適正な身体拘束をやめさせ、「人質司法」を解消しなければなりません。


日本弁護士連合会は、取調べの全過程の可視化や証拠開示、接見体制の拡充など被疑者の防御権保障のための刑事手続改革と連動した未決拘禁制度の抜本的改革を目指します。そしてその中で、「自白強要装置」として働く「代用監獄」の廃止を含む未既決の拘禁制度改革に強力に取り組んでいきます。