海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する条約締結交渉についての意見書
本意見書について
日弁連は、2024年9月19日付けで海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する条約締結交渉についての意見書を取りまとめ、同月26日付けで環境大臣、経済産業大臣及び外務大臣宛てに提出しました。
本意見書の趣旨
日本政府は、日本が海洋国家であり、プラスチックの海洋汚染に重大な利害関係を有することに鑑み、実効的かつ適切な本条約となるよう、リーダーシップを発揮して条約締結交渉を行うべきである。 具体的には、本条約の各条項案について、以下の点に関して積極的に提案を行う等の対応をとるべきである。
1 一次プラスチックポリマーの削減について
本条約においては、一次プラスチックポリマー(製品になる前のプラスチック素材そのもの)の削減についての条項が検討されている。
日本政府は、2021年(令和3年)3月18日付け「今後のプラスチック資源循環政策についての意見書」(以下「2021年意見書」という。)で1つ目の意見として述べたプラスチック製品のリデュース(発生抑制)の重要性にも鑑みて、一次プラスチックポリマーの生産を各国一律に削減する目標設定を義務付ける条項案に賛同した上で、より厳しい削減目標が設定されるよう各国に働きかけるべきである。
2 ワンウェイプラスチック等の問題がある回避可能なプラスチック製品について
本条約においては、ワンウェイプラスチック等の問題がある回避可能なプラスチック製品について、共通の判断要件に基づきこれをリスト化した上で、リスト化されたプラスチック製品について、一定時期までに生産・販売等の禁止を義務付ける条項などが検討されている。
2021年意見書で1つ目の意見として述べたとおり、日本政府としては少なくとも2030年までにはワンウェイのプラスチックの排出をゼロとする目標を設定すべきであって、これに沿う条項となるよう、日本政府として各国に働きかけるべきである。
また、本条約に関するジョージア、ペルー、ルワンダ、スイス、タイによる共同提案 は、一定のワンウェイプラスチックや意図的に添加されたマイクロプラスチック等について2030年等の期限までに禁止することとしており、少なくともこの共同提案に賛同すべきである。
3 拡大生産者責任等について
本条約においては、各国に、国内で生産・利用されるプラスチック製品について、共通の設計・性能要件に適合させるとともに、その認証・表示の仕組みを設けることを義務付ける条項や、拡大生産者責任(EPR)制度を確立し、運用することを推奨する条項等が検討されている。
2021年意見書で3つ目の意見として述べたとおり、実効的な拡大生産者責任制度を導入することが、事業者の創意工夫によるリデュース(発生抑制)や、環境配慮設計等を行わせるよう誘導することでリユースやリサイクルを促進することにもつながる。そこで、拡大生産者責任制度を確立し適切に運用する法的義務を各国に課す条項に賛同すべきである。
4 有害化学物質について
本条約においては、各国に、危険性があるものとしてリスト化された化学物質等について、これにかかるプラスチック製品の生産・販売等を禁止する条項等も検討されている。
2021年意見書で4つ目の意見として述べたとおり、有害化学物質が生態系等を循環することが明らかになっていることから、危険性のある化学物質を含むプラスチック製品について禁止、制限することは必須である。
日本政府は、少なくともノルウェー、クック諸島、ルワンダによって共同提案された初期リスト に賛同し、禁止、制限、段階的廃止の規制措置を期限までに講じる義務が本条約に盛り込まれるよう各国に働きかけるべきである。
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