経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~(案)」に対する意見書
- 意見書全文 (PDFファイル;128KB)
2016年1月14日
日本弁護士連合会
本意見書について
近年、企業の大型の技術流出事件が発生していること等を背景に、法整備を含む実効的な営業秘密漏えい防止対策が政府において検討されてきました。
その結果、2015年7月には、罰金刑の引上げ、非親告罪化及び被害者の立証負担の軽減等を内容とする改正不正競争防止法が成立したほか、企業が差止め等の法的保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示した「営業秘密管理指針」の改訂が経済産業省において行われました。
この度、これらに加えて、経済産業省において、企業がその実情に応じた対策を検討するための包括的な参考資料として「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~(案)」が取りまとめられ、意見公募に付されました。当連合会はこれに対する意見書を取りまとめ、2016年1月14日付けで経済産業省に提出いたしました。
[関連意見書]
- 2014年12月04日 営業秘密管理指針改訂案に対する意見
- 2015年01月30日 産業構造審議会知的財産分科会営業秘密の保護・活用に関する小委員会「中間とりまとめ(案)」に対する意見書
本意見書の趣旨
「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~(案)」(以下「本ハンドブック案」という。)は、企業における秘密情報の適切な管理と有効利用に資するために、様々な秘密情報の漏えい対策例を提供しようとするものであり、当連合会として、その趣旨に賛同する。
また、本ハンドブック案では、それぞれの企業が会社の規模、業態、保有する情報の性質などに応じて適切な漏えい対策を選択できるように工夫がされている点や平成27年の営業秘密に係る不正競争防止法の改正にも配慮されている点においても評価できる。
もっとも、企業による秘密情報の管理は、行き過ぎれば、従業員の転職の自由や再就職先での研究開発等の活動を不当に抑制することにつながりかねず、ひいては、日本の産業全体に悪影響を及ぼすことにもなりかねない。本ハンドブック案においては、かかる視点に立った記述も既に見られるところではあるが、事の重大性に鑑みれば、より一層の配慮が示されるべきである。
当連合会の本意見を参考にしつつ、必要な改訂が加えられた「秘密情報の保護ハンドブック」が、企業価値の向上に資する適切な情報管理のための参考書として、多くの企業に活用されることを期待する。
(※本文はPDFファイルをご覧ください)