法制審議会刑事法(犯罪被害者関係)部会における諮問事項について
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2006年12月15日
日本弁護士連合会
本意見書について
2006年9月6日、法務大臣より、刑事手続において犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るための法整備等に関する諮問第80号が法制審議会に諮問され、同日の会議において「刑事法(犯罪被害者関係)部会」を設けて審議することが決定されました。同部会は10月3日より審議を開始し、来年2月に答申を提出する予定となっております。
日弁連は、諮問事項について全国の弁護士会及び各種関連委員会に意見照会し、検討を重ねてきましたが、この度別紙のとおり意見をまとめ、法務大臣及び法制審議会に提出いたしました。
諮問内容及び意見の趣旨は以下の通りです。
【諮問第80号】
犯罪被害者等基本法の趣旨及び目的にかんがみ、刑事手続において、犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るため、早急に法整備を行う必要があると思われるので左記の事項に関して、その整備要綱の骨子を示されたい。
記
第1 損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度
第2 公判記録の閲覧及び謄写の範囲の拡大
第3 犯罪被害者等に関する情報の保護
- 公開の法廷において性犯罪等の被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度
- 証拠開示の際に、相手方に対して、性犯罪等の被害者の氏名等が関係者に知られないようにすることを求めることができる制度
第4 犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度
【意見趣旨】
第1 損害賠償に関し刑事手続の成果を利用する制度について
刑事訴訟手続及び被告人の防御活動に対する影響、並びに被告人に対し民事上の防御権が十分に保障されるのか等について、なお慎重な検討が必要であり、制度設計によっては、その全部または一部について反対せざるを得ない。
第2 公判記録の閲覧および謄写の範囲の拡大について
- 要件の緩和について
基本的な方向としては賛成だが、具体的な制度設計に当たっては、以下の点に留意する必要がある。
公判記録の閲覧又は謄写を認めるとしても、被告人を含む関係者の名誉、プラ イバシーへ配慮し、閲覧又は謄写の範囲を限定することが必要である。
「犯罪被害者保護法3条」の実効性を確保し、謄写した公判記録が第三者に流布 されることがないよう、犯罪被害者等への情報開示と一般公開を明確に区別しなければならない。
- 対象者の拡充について
基本的な方向としては賛成であるが、疎明資料の提出によって予断排除原則や証拠法則に抵触しないような制度設計を行う必要がある。
第3 犯罪被害者等に関する情報の保護について
- 公判手続における被害者特定事項の秘匿について
性犯罪や児童の福祉を害する事件については、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない制度の導入に賛成する。法制審議会で審議されている対象事件のうち、上記以外の事件についての制度導入については、基本的な方向としては賛成であるが、非公開とする要件はさらに検討する必要がある。また、予断排除の原則に反しないよう、要件存否の判断に際し、疎明資料よりも弁護人の意見を重視し、事実上その同意を要する扱いとすることも考えられる。 - 被害者特定事項の秘匿の要請について
基本的な方向としては賛成である。但し、検察官の弁護人に対する要請は、拘束力を有するものではなく、弁護人に何らの義務を負わせるものではないこと、及び「被告人の防御に関し必要である」か否かは、専ら弁護人の判断にかかるものであることを、明確にする必要がある。
第4 犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することができる制度について
犯罪被害者等が刑事裁判に出席し、検察官の事実に関する主張・立証の範囲において、「事件の当事者」としての立場で、一定の訴訟活動を行うことができる制度には反対する。
理由は、日弁連の2005年6月17日付意見書「犯罪被害者等の刑事手続への関与について」に記載したとおりである。
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