日弁連新聞 第571号

選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書

arrow_blue_1.gif選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書


日弁連は8月19日、「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣等に提出した。


意見書の背景

日弁連は、選択的夫婦別姓制度についてはこれまで何度も会長声明を公表してきたが、意見書を公表したのは今回が初めてとなる。

本年6月23日、民法750条について2度目の最高裁大法廷の合憲判断が示され、これを批判する会長声明を6月25日付けで公表したところであるが、今回の意見書は改めて、国に対し、民法750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を速やかに導入することを求めている。


意見書の概要

意見書では、民法750条について、①婚姻に際して姓を変更したくない者にとっては人格権侵害であり憲法13条に違反する、②同姓夫婦となるか別姓夫婦となるかは個人の「信条」であり、その信条に反して夫婦同姓を選択しない限り婚姻できないのは憲法14条に違反する、③95.5%もの女性が改姓しているのは、家父長的な家族観や婚姻観が事実上女性に改姓を強制している結果であって、婚姻の要件を加重するものとして憲法24条1項に違反し、婚姻における個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた同2項にも違反する、④「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」と明記する女性差別撤廃条約16条1項(g)、婚姻中および婚姻の解消の際における配偶者の権利の平等について規定している自由権規約23条4項にも違反すると論じている。さらに、⑤1996年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度を導入する「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申してから四半世紀も改正が放置されていること、⑥通称使用は対症療法に過ぎず選択的夫婦別姓制度の代替とはならないこと、⑦世論は選択的夫婦別姓制度に賛成する者が反対を大きく上回っており、地方議会でも多数の意見書等が採択されていることを指摘した上で、国に対して速やかに民法750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入するよう求めている。


(両性の平等に関する委員会  委員 山崎 新)



若手チャレンジ基金制度 申請スタート!
若手会員のチャレンジを支援します

弁護士登録後一定期間を経た若手会員に対し、弁護士としての活動の幅を広げるためのチャレンジを支援する若手チャレンジ基金制度(若手会員の公益的活動等に対する支援制度)の運用が始まりました。

対象の若手会員に対し、特定の活動に対して日弁連が支援金を支給するもので、10月1日から申請の受付を開始しています。


制度概要

新65期から70期の会員が対象で、支援の対象となる活動は以下の4種類です。


①公益的活動

2020年12月1日から2021年11月30日の間(以下「対象期間」)に行った公益的活動等に対する費用支援(5万円または10万円を支給)


②研修・学習

対象期間に支出した弁護士業務に資する研修・学習費用の支援(実費額が10万円以上の場合に、実費額の3割を支給。上限10万円)


③先進的取り組みへの表彰

弁護士資格を活かした弁護士業務の枠にとらわれない活動など、対象期間に行った弁護士業務における先進的な取り組みに対する表彰(10万円~30万円を贈呈)


④先進的取り組みへの助成

現在は実現していないものの、将来予定している弁護士業務に画期的な進歩・改善をもたらすことが期待される先進的な取り組みに対する助成(10万円~30万円を支給)


申請受付期間・申請方法

申請受付期間は2021年10月1日から同年12月12日です。日弁連会員専用サイトに掲載している申請フォームから、疎明資料を添えて申請してください(オンライン申請のみ)。なお、支援対象となる具体的な公益的活動および研修・学習内容等ならびに具体的な支給金額の目安についても、会員専用サイトで案内していますので、自身の活動が支給対象になるか確認していただくことができます。


積極的なご利用を!

本制度は、対象となる4種類の活動それぞれにつき1回ずつ申請が可能です。本年度の対象となる若手会員の皆さま、ぜひ積極的に本制度を利用してください。


本制度の利用を契機として、若手会員の弁護士業務の幅が広がることを期待しています。


(研修・業務支援室  室長 西村 健)


*制度の詳細等は、日弁連会員専用サイトをご覧ください。



普天間飛行場の速やかな撤去及び返還への努力を求める意見書

arrow_blue_1.gif普天間飛行場の速やかな撤去及び返還への努力を求める意見書


日弁連は8月20日、「普天間飛行場の速やかな撤去及び返還への努力を求める意見書」を取りまとめ、内閣総理大臣および防衛大臣に提出した。


普天間飛行場の危険性

沖縄県の在日米軍普天間飛行場は、戦後76年、沖縄の日本復帰から49年が経過した現在においても、撤去・返還されることなく存在している。

同飛行場には住宅や学校等の公共施設が近接しているため、周辺住民は騒音や事故の危険性と隣り合わせであり、安全で平穏な生活が脅かされる状況が続いている。

実際に、2004年8月には米軍の大型ヘリコプターが近接する大学敷地内に墜落するという大事故が発生しており、まさに「世界一危険な飛行場」となっている。


意見書の概要

日本政府も、同飛行場の危険性については認識しており、その「唯一の解決策」として辺野古新基地建設事業を推進しているが、同事業についてもさまざまな問題が指摘されている。


本意見書では、同飛行場が今なお存在し続けている現状について歴史的背景も踏まえながら論じ、これまでに発生した事故等の実例を挙げながらその危険性を指摘している。


その上で、辺野古新基地の建設工事が当初の計画から大幅に遅れている実情や、周辺の自然環境への影響が否定できないこと、沖縄県が実施した県民投票の結果を踏まえて住民自治と民主主義を尊重すべきであることなどを論拠として、日本政府に対し、辺野古新基地建設事業の完成に見通しのつかない現状を直視し、かつ、沖縄県民の示した民意を尊重し、地方自治の保障と民主主義の徹底の観点に立ち、同事業について中止を含む抜本的な見直しを行うとともに、普天間飛行場の速やかな撤去及び返還について、米国政府との合意に向けて全力を尽くすことを求めている。


日弁連は、沖縄の日本復帰前から基地問題について調査・提言等を繰り返し行ってきており、普天間飛行場の一日も早い撤去・返還の実現が望まれる。


(憲法問題対策本部  副本部長 加藤 裕)



ひまわり

金木犀が香る季節になった。ひんやりとした風に運ばれる秋を感じさせる甘い香りだ。春の沈丁花、夏のクチナシとともに、香木と評価されるそうだ。小学校に上がる前、この香りを見つけ「トイレの匂いだ」と言ったことから、母は、芳香剤をやめたという思い出深い香りでもある▼自宅と職場を往復するばかりの生活で歓送迎会や暑気払いといった季節行事が見送られ、季節を感じる機会は減った。時間が止まったような感覚を覚えることもあるが、確実に季節は移ろい、変化にも対応している▼小学校2年生の息子は、巣ごもりで、一緒にしていた秘密基地作りをいつの間にか卒業し、今は近所の友人と暗くなるまで遊び、コミュニティを外に広げている▼家人は、もともと仕事に趣味に飛び回っていたが、夜の付き合いのない自粛生活に入り家の整理を済ませると、筋肉はそのまま、脂肪は落とすトレーニングとそのための食事作りに没頭している▼それぞれ、状況の変化を受容し、その中で成長をしているようで頼もしい▼さて、私は、まだまだそばにいてくれる娘と共に、体重には目をつむりつつ、季節を感じるためにと、秋の味覚を探しに、近所の魚屋、八百屋を巡る。それぞれに心豊かな暮らしができるための工夫を続ける日々である。


(D・K)



詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書

arrow_blue_1.gif詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書


日弁連は8月19日、「詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書」を取りまとめ、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)および消費者庁長官宛てに提出した。


ポンジ・スキームとは

ポンジ・スキームとは、豊田商事事件やジャパンライフ事件など、利益の還元や配当等を装い多数の者から資金を集めるが、実際にはそれを運用する事業や運用対象となる物品が存在しないか形骸化または著しく不足しており、別の者から集めた資金の一部を他の者に分配する詐欺的商法のことである。


意見書の概要

本意見書は、大規模な詐欺的商法被害に関して行政が消費者の被害回復を図る制度について速やかに検討を行い、消費者庁の体制整備を含めた必要な措置を講ずることを求めている。


具体的には、ポンジ・スキームとなるおそれが高い取引を対象として、①内閣総理大臣が対象取引を行った事業者に対し、裁判所の許可を得て、賦課金を納付することを命じ、それを被害者に分配する制度(違法収益吐出型)、②内閣総理大臣が対象取引をした事業者について破産手続開始の申し立てを行い、破産手続の中で被害回復を図る制度(破産型)の二つの制度例を提案している。


悪質事業者から不法な収益を剥奪し被害者を救済する制度の検討は、消費者庁設置当時からの課題だが、2013年に消費者庁が「消費者の財産被害に係る行政手法研究会」の報告書を取りまとめて以降、具体的な制度設計は中断している。本年6月に改正預託法が成立し、ポンジ・スキームに対する抑止は強化されたが、被害者の被害回復については何ら対処がなされていない。今後、速やかに検討が再開され、大規模な消費者被害の回復を図るための実効性のある制度が実現することを期待したい。


(消費者問題対策委員会  副委員長 大森景一)



日弁連短信

弁護士のマネー・ローンダリング対策

佐熊次長

去る8月30日、2019年に行われたFinancial Action Task Force(FATF)の第4次対日相互審査の結果(MER)が公表され、日本は「重点フォローアップ国」に位置付けられた。


FATFは、1989年にG7がマネー・ローンダリング(ML)等への対策を目的として設立した政府間会合であり、各国が取るべき措置を「40の勧告」としてまとめ、勧告事項の法整備状況(TC)およびその実効性(IO)につき相互審査を行っている。従前は金融機関等のみを対象とする勧告であったが、2003年、金融機関等以外の事業者にも対象が拡大され、弁護士もその対象に含まれた。


当連合会は、2007年、弁護士がMLに利用されることを防止し、職務の適正を確保するため、依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程を制定し、MLリスクの高い一定の取引等について依頼者の本人確認を義務化した(2012年、依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程に全部改正)。その他、受任に当たり依頼目的を検討すること、MLの疑いがある場合の対応方法(受任拒否、回避説得、辞任)について定めるとともに、実効性を確認し、高めるための施策として、2018年より、年次報告書の提出を義務化した上、未提出の会員や、報告書の内容に問題がある会員に対するフォローアップを行っている。


また、FATFが勧告1で明示するリスク・ベース・アプローチ(RBA)によるML対策(直面するリスクを特定・評価し、リスクに見合った低減措置を講ずる手法)に関しては、日本の弁護士業務に固有のMLリスクについて、会員の理解に役立てるため、2018年以来、「弁護士業務におけるマネー・ローンダリング危険度調査書」を策定している。


前述のとおり、日本の第4次審査結果は、「重点フォローアップ国」であり、再評価が行われる5年後までの間(フォローアップ期間)に3回、MERで改善を求められた課題の取組状況につき報告する必要がある。


今般公表されたMERでは、危険度調査書の策定、会員へのアウトリーチ、年次報告書提出等の日弁連の取り組みにつき肯定的な言及もあるが、法人の実質的支配者情報の確認等、本人確認強化の課題も見られる。


日弁連としては、弁護士のML関与防止のための施策を、弁護士自治の下、引き続き自主的に進めていく必要がある。


(元事務次長 佐熊真紀子)



弁護士職務の適正化に関する全国協議会
8月23日 弁護士会館

弁護士会独自の立件(いわゆる会請求)や事前公表制度を十分に活用して懲戒手続を適切に運用すること等を目指し、全国の弁護士会の会長や懲戒担当役員等がテレビ会議を利用し、情報共有や意見交換を行った。


弁護士会からの事例報告

出席者より、①非弁提携(弁護士資格のない事務員がウェブサイトで多数の事件を集客し、法律相談・事件処理を行うことを容認していた)により、最終的に退会命令となった事例、②依頼者と共謀して2通の遺言書を偽造したとして、懲役2年執行猶予4年の判決が確定し、登録取消となった事例、③メンタルヘルスの不調が原因の事件放置により、業務停止1月となった事例の三つの会請求の事例について、報告があった。


弁護士会が被告になった訴訟・日弁連の取り組み

弁護士職務の適正化に関する委員会の上田英友委員(福岡県)は、元会員による依頼者からの金員詐取に関し、弁護士会が被告になり指導監督権限の行使を怠ったとして職務上の義務違反に問われた事例(原告らの請求は棄却され、控訴・上告も棄却された)を報告した。


菰田優副委員長(第一東京)は、依頼者見舞金制度の運用状況について概説し、2020年度の支給件数および支給金額について、一人の被申請弁護士に関する申請件数が多数に上る案件で支給の決定があったこと等が影響し、支給件数・支給金額共に多くなったと指摘した。


続いて柴垣明彦委員長(東京)が、日弁連の弁護士不祥事対策の取り組みについて、①非行探知、②被害拡大防止、③非行発生自体を阻止、④重大非行防止、⑤重大非行への対応の項目ごとに具体的な施策を講じていることを紹介した。



司法試験に1421人が合格

9月7日、2021年の司法試験の合格発表があり、1421人が合格した。受験者数は3424人で、昨年から279人減となっている。


単年合格率は5年連続の上昇で41.50%であった。また、合格者のうち、女性は395人で、全体の27.80%であった。


2012年提言で掲げた司法試験合格者数1500人への減員がほぼ達成されたと言える状況にあることから、日弁連では、2020年7月に法曹人口検証本部を設置し、1500人への減員達成後のさらなる減員についての検証を行っており、今年度中に取りまとめを行う予定である。


なお、日弁連では、合格発表に合わせて「 arrow_blue_1.gif令和3年司法試験最終合格発表に関する会長談話」を公表している。



新事務次長紹介

佐熊真紀子事務次長(第二東京)が退任し、後任には、10月1日付で服部千鶴事務次長(愛知県)が就任した。


服部 千鶴(はっとり・ちづる) (愛知県・51期)

服部千鶴事務次長

愛知県弁護士会から初めて事務次長に就任します。これまで司法修習、倒産、ADR等を中心に会務に携わり、2019年度に所属弁護士会の副会長と日弁連理事を務めました。社会や市民の皆さまのため、日弁連のため、会員の皆さまのため、誠実に職務を務め、会務の執行を補佐してまいります。



法曹三者共催企画
法曹という仕事
8月17日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif「法曹という仕事(法曹三者共催企画)」開催のご案内


法曹に関心がある若者を対象に法曹の役割や魅力を紹介するイベントが開催された。今回は初のオンライン開催となり、地方在住者を含む高校生など約200人が参加した。


(共催:最高裁判所、法務省)


最高裁判事の講話

岡村和美最高裁判事

岡村和美最高裁判事は、誰もが平等に尊重され人間らしく生きる社会を実現するため、法曹は堂々と正義を語ることができる重要な仕事であり、法曹には新たな課題に果敢に挑戦してリーダーシップを発揮し、社会のさまざまな場面で活躍することが期待されていると述べ、これからの時代を担う若者の情熱とチャレンジに大いに期待していると語った。


法曹三者による裁判解説

NHK・Eテレの「昔話法廷・白雪姫」(王妃が白雪姫に毒リンゴを食べさせた犯人であるかを争点にした裁判員裁判ドラマ)を題材に、法曹三者が裁判の仕組みや法曹の役割を解説した。ドラマを数回に分けて再生し、その合間に三者がそれぞれの立場から解説やコメントをする形式で、折戸誠子会員(第一東京)と小佐々奨会員(東京)は、弁護人がさまざまな事態を想定しながら公判に臨んでいることや公判の準備活動なども紹介した。


法曹三者それぞれの魅力

法曹三者がオンラインルームに分かれ、仕事や日常生活を掘り下げて紹介した。


弁護士ルームでは、奄美大島で執務する菅野浩平会員(鹿児島県)が、保護観察となった少年を地元のシマ唄で激励した少年事件を紹介し、依頼者の人生の分岐点に関わるやりがいを語った。理系出身で企業内弁護士を経て渉外・企業法務を取り扱う髙橋梨紗会員(東京)は、チームで一つの目標に取り組み苦楽を分かち合う喜びを伝えた。多数の裁判に携わる小佐々会員は、弁護士の仕事にはすべての経験が生きるため、分野にとらわれずに多くの社会経験を積んでほしいと参加者にエールを送った。


参加者の感想

参加した高校生からは、「検察官志望だが、弁護士、裁判官もとても魅力的に感じた」、「弁護士になるために文系進学が必要と思っていたが、理系出身の弁護士もたくさんいると知って驚いた」、「法曹は社会正義を目指し、三者はそのアプローチが違うだけだと知り、感動した」などの感想が寄せられ、法曹に関心を持つ若者に有意義な機会を提供する企画となった。



2021年度子どもの権利委員会夏季合宿
国会審議を踏まえた改正少年法の内容と今後の取組について
企画:子どもの権利委員会少年法に関する小委員会
8月25日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif2021年度日弁連子どもの権利委員会イベント(夏季合宿企画)


日弁連は、現行少年法の手続や処遇は有効に機能し再犯防止に役立っていること、法律の適用年齢は立法趣旨や目的に照らして法律ごとに個別具体的に検討すべきであることなどを踏まえ、少年法の適用年齢の引き下げに反対してきたが、本年5月に改正少年法(以下「改正法」)が成立し、2022年4月に施行される。本企画では、改正法の概要を説明し、今後の日弁連・弁護士会の取り組みについて議論した。


改正少年法の内容と運用上の課題

子どもの権利委員会の山﨑健一幹事(神奈川県)は、選挙権年齢や民法の成年年齢等が18歳とされる中、並行する形で少年法年齢引き下げが議論されてきた経過をまとめた。その上で、改正法は対象年齢を引き下げないこととしたものの、18歳・19歳を「特定少年」とし、保護事件の特例、刑事事件の特例、記事等の掲載の禁止の特例が規定されたことを解説し、「特定少年」にも法1条の健全育成理念が及び、捜査段階、審判段階のいずれにおいても少年の要保護性を重視すべきであると実務上の留意点を説いた。


国会審議の内容

須納瀬学委員(東京)は、改正の趣旨・目的、保護処分の正当化根拠、保護処分における犯情の軽重の考慮、原則逆送対象事件の拡大、推知報道禁止の一部解除など、改正法に関する国会での審議内容や附帯決議の要点を説明した。特定少年が犯した事件について起訴された場合の推知報道禁止の一部解除については、更生の妨げにならないように適切な対応が必要であるとの意見が示された。


今後の日弁連・弁護士会の取り組み

金矢拓副委員長(第二東京)は、改正法下でも、健全育成目的および理念に合致した運用がなされるよう、法の趣旨・理念を会員に周知し、できる限り弊害が生じないよう付添人活動を実践できることが大事だと述べた。さらに、改正法附則8条に規定された施行後5年での検討を見据え、改正による弊害事例を収集・集積して、改正法の問題点を浮き彫りにし現行法へ戻す方向の活動や、さらなる年齢引き下げを阻止するための運動などにも取り組むと力を込めた。

*改正法の要点をまとめたパンフレット「arrow_blue_1.gif少年法2021年改正の概要 」を発行しています。日弁連ウェブサイトでご覧ください。



中小企業の国際業務支援に関する研修会
弁護士と地方における国際業務
〜企業の国際業務支援を中心として〜
8月20日 オンライン開催

企業の海外進出や海外企業との取引のニーズは年々高まっており、このことは地方の中小企業にとっても例外ではない。弁護士には、そうした企業の良き相談相手として地域経済の発展に積極的に貢献することが期待されている。

日弁連および北海道の4弁護士会は、北海道内の会員を対象として、地方において国際業務に積極的に取り組む会員の講演とパネルディスカッションの研修会を共同で開催した。


(共催:北海道弁護士会連合会)


日弁連の中小企業国際業務支援弁護士紹介制度

冒頭、中小企業の国際業務の法的支援に関するワーキンググループ(以下「WG」)の井上智輝委員(札幌)が、JETRO等の公的機関の紹介を受けて日弁連が国際業務に詳しい登録弁護士を企業に紹介する、支援弁護士紹介制度について説明した。


地方都市の弁護士と中小企業国際業務の支援の在り方

八木俊則委員(香川県)は、ヨーロッパへの盆栽の輸出や東南アジアからの雑貨の輸入等、自身が手掛けた地元企業の国際業務支援の事例を紹介し、地方都市でも企業における「国際業務だから特別」との感覚は薄れていると語った。その上で、顧問弁護士に対して、そもそも国際業務について相談にすら乗ってもらえない、という不満を抱えている中小企業が実は多いのではないかと指摘した。


「町弁」と渉外・外国人業務

加藤丈晴会員(札幌)は、休憩中の同僚とのけんかを理由に解雇されたベトナム人技能実習生が地位確認と未払賃金・慰謝料の支払いを求めて提訴した事例、エチオピア人女性が父親に対して認知を求めた事例等、一般民事事件を取り扱う弁護士の外国人業務への関与や外国人に対する法的支援の取り組みを紹介した。


パネルディスカッション

続いて行われたパネルディスカッションでは、各講演者のほかWGの新田裕子副座長(栃木県)、中村崇委員(新潟県)が加わり、国際業務に従事するようになった経緯、必要な語学力の程度・勉強方法等幅広いテーマで意見交換を行った。中村委員は、国際業務支援を通じて地元企業の発展に貢献できることが大きなやりがいであると語った。新田副座長は、比較的新しい分野を自身の強みにできることも、中小企業の国際業務に取り組む上での魅力の一つだと指摘した。



シンポジウム
死刑廃止へのロードマップ
〜米国の死刑制度の行方とわが国の死刑制度〜
8月11日 オンライン開催

arrow_blue_1.gifシンポジウム「死刑廃止へのロードマップ~米国の死刑制度の行方とわが国の死刑制度~」【オンライン開催】


OECD加盟国のうち死刑制度を存置しているのは韓国、米国、日本の3か国のみである。韓国では1997年以降死刑が執行されておらず、米国は本年7月1日に司法長官が連邦レベルでの死刑執行の一時停止をするとの通知を公表した。他方、わが国においては死刑制度の存否についてなお大きな議論がある。本シンポジウムでは、死刑廃止に向けた課題についてパネルディスカッション形式で議論した。


米国の動向が日本の死刑制度に与える影響

パネリストとして、笹倉香奈教授(甲南大学法学部)、佐藤大介氏(共同通信編集委員兼論説委員)、矢倉克夫参議院議員(「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」幹事長)が登壇し、死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部の大川哲也副本部長(札幌)がコーディネーターを務めた。

笹倉教授は、米国の動向について、ここ20年間で死刑廃止への動きが加速し、死刑廃止を公約に掲げるバイデン政権下で議論が目まぐるしく進んでいると現状を報告した。佐藤氏は、日本では議論の前提となるはずの死刑執行に関する情報がほとんど明らかにされないことに疑問を呈した。矢倉議員は、存置・廃止の議論には事実に基づいた検証が必要であると述べた。


死刑制度を巡る国内世論等といかに向き合うか

死刑制度はやむを得ないとする意見が多数であるとされる日本の世論の状況について、笹倉教授は、米国においては1990年代以降のえん罪救済活動の結果、多くのえん罪が明らかになったことが世論の変化につながったと述べた。矢倉議員は、死刑廃止に向けた世論の合意形成が重要であると述べ、そのためにも犯罪被害者の救済制度の充実が必要と述べた。

基本的人権や法の支配といった普遍的価値に基づく司法外交の推進を掲げることと死刑制度の関係について、笹倉教授は、外交上、死刑制度の存置について問われた場合どう答えるのか、政治主導で議論を進める必要があると述べた。


死刑廃止へのロードマップ

各パネリストは、死刑廃止へのロードマップについて、死刑制度の可視化と国内外の現状把握、海外からどのように見られているか等の観点から議論を進め、死刑廃止に向けた合意形成をすべきと締めくくった。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.162

仕事体験テーマパーク「カンドゥー」
被告人の無実の罪を晴らすのは未来の弁護士?

日弁連は、2019年3月から千葉県のイオンモール幕張新都心内にある仕事体験テーマパーク「カンドゥー」に協賛し、3歳から中学生までの子どもたちやその保護者が弁護士の仕事を体験できるアクティビティ(以下「本アクティビティ」)を提供しています。

(広報室嘱託 本多基記)


体験するのは刑事弁護人

ステージ上で行われるアクティビティ本アクティビティは、研究所の助手として働くジョッシュが、窃盗事件の犯人と間違われ、逮捕されるところから始まります。涙ながらに無実を訴えるジョッシュのために、子どもたちは刑事弁護人として、テーマパーク内で人的・物的証拠を探し回ります。そして迎えるジョッシュの公判期日。子どもたちは、弁護士バッジ型ワッペン付きの青いジャケットを着て、法廷に見立てたステージでジョッシュの無罪を主張し、弁護活動をします。


シナリオは、広報室が刑事調査室の協力を得て作成したもので、細かいセリフも本格的です。


得られるものは経験値

キャリア教育講座の様子

カンドゥーからは毎月報告書が提出されます。広報室では、体験者数の推移だけでなく、体験者からのコメントにも注目しています。「ジョッシュを救ってあげようと思ったけれど、自分の感情で動いちゃいけないと思った。しっかり法律を勉強してみたい」という12歳の小学生からの感想や、保護者からの「裁判傍聴に行ってみたいと子どもが言っていました。もう少し大きくなったら一緒に行こうね、と約束しました」との声もありました。また本アクティビティ参加後にもらえる参加者限定の弁護士手帳と弁護士缶バッジも、子どもたちや保護者に大好評です。


コロナ禍での取り組み

冊子「お仕事ドリル」カンドゥーは、新型コロナウイルスの感染拡大により一時営業停止等の影響を受けましたが、専門家の指導の下、マスクやフェイスシールドの着用や定員の調整など感染対策を徹底し稼働しています。


また、遠足などの校外活動が中止となり来場できなくなった学校や幼稚園等に、協賛企業・団体の仕事内容を紹介する冊子を作成して110校に配布しました。その他、カンドゥーでは校外学習の受入先としてキャリア教育講座を実施しています。日弁連にも協力要請があり、広報室嘱託が子どもたちに弁護士の職業紹介をしています。


パークを飛び出して全国で出張カンドゥー

出張カンドゥー

「出張カンドゥー」は、全国のイオンモールなどで弁護士に関するクイズを解いてもらうイベントです。2020年から23回、北は宮城県から南は沖縄県まで各地で実施し、延べ682人の子どもたちが参加しました。日弁連ウェブサイトの広報ページにも今後の予定を随時掲載しますので、お近くで開催される際はのぞいてみてはいかがでしょうか。


伝えたいメッセージ

カンドゥーの運営に携わる織本真紀氏は、「ネット社会の到来でトラブルも多様化しており、日常生活にも法律の知識が必要だが、法律は難しく遠い存在に感じる人が多い。本アクティビティは、法律や弁護士を身近に感じて、困った時の相談相手として弁護士がいることを知ってもらう貴重な体験になるはず。『弁護士は正義の味方でカッコイイ』、『難しい言葉が言えて頭が良くなった気がする』という参加者の反応にもあるように、憧れの職業として夢を与えている」と日弁連が本アクティビティを提供することの意義を語ってくれました。


日弁連は、カンドゥーや出張カンドゥー等における体験を通し、多くの子どもたちと保護者に、弁護士の社会的役割を理解してもらうとともに、子どもたちが証拠に基づいて事実を的確に把握する力、自分の意見を分かりやすく周囲に伝える力などを養うきっかけを提供できればと思っています。参加した子どもたちが将来、弁護士として実際に法廷に立ちたいと思ってくれることも期待しつつ、弁護士という職業を、少しでも身近に感じていただければ幸いです。



日弁連委員会めぐり110
日弁連総合研修センター

今回の委員会めぐりは、日弁連総合研修センター(以下「研修センター」)です。髙畠希之センター長(東京)、馬橋隆紀構成員(埼玉)、小松明広構成員(第一東京)、西村健研修・業務支援室室長(東京)、波田野馨子同嘱託(神奈川県)に活動内容等についてお話を伺いました。

(広報室嘱託 花井ゆう子)


組織について

研修センターは、日弁連の機構としては委員会ではなく事務機構に位置付けられます。日弁連では、研修委員会と研修センターが会員研修のための活動を行っていますが、研修委員会は主として制度作りを、研修センターは研修を具体的に企画・制作して会員に届ける役割を担っています。


活動内容

左から西村室長、馬橋構成員、小松構成員、髙畠センター長、波田野嘱託

日弁連が行う弁護士研修には、新規登録弁護士研修、倫理研修、継続研修としてのライブ実務研修・eラーニング研修・ツアー研修などがあります。継続研修は、その時々のトピックや各委員会などからの提案を基に企画しています。分野別のマップを作成し、できる限り幅広く、テーマに偏りが生じないようにしています。多くの会員に受講していただくため、いかに目を引くタイトルを付けるかは勝負どころです。ライブ実務研修は年間30講座ほど実施し、eラーニングは現在520以上の講座を掲載しています。やはり基本的な実務講座がよく見られているほか、約30分で基礎を押さえられるコンパクトシリーズも好評です。ライブ実務研修は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け一時期中止しましたが、2020年12月からウェビナーでの受講を試行的に開始し、2021年冬以降の本格実施に向けて現在準備を進めています。

今後も、会員の研修機会の確保と充実した研修の企画・制作に努めていきます。


会員へのメッセージ

eラーニングは、移動中にスマートフォン等でも見ることができます。音声のみ再生も可能です。資料もダウンロードできるので、書籍やインターネットで調べ物をするのと同じように総合研修サイトで検索をするという使い方もお薦めです。講義には必要な情報が凝縮されており、効率的な時間の使い方ができると思います。ぜひ多くの会員の皆さまに気軽に利用していただき、業務知識等の向上を図っていただきたいと思います。



ブックセンターベストセラー (2021年8月・手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター


順位 書名 著者名・編集者名 出版社名・発行元
1

携帯実務六法 2021年度版

「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム/編 東京都弁護士協同組合
2

弁護士会照会制度〔第6版〕

東京弁護士会調査室/編 商事法務
3

弁護士職務便覧 令和3年度版

東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会/編 日本加除出版
4 弁護士の周辺学〔第2版〕 髙中正彦・市川 充・堀川裕美・西田弥代・関 理秀/編著 ぎょうせい
5

株式会社法〔第8版〕

江頭憲治郎/著 有斐閣
6

類型別 労働関係訴訟の実務Ⅱ〔改訂版〕

佐々木宗啓、清水 響、吉田 徹、佐久間健吉、伊藤由紀子、遠藤東路、湯川克彦、阿部雅彦/編・著 青林書院

婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)新装補訂版

婚姻費用養育費問題研究会/編 婚姻費用養育費問題研究会
8

類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ〔改訂版〕

佐々木宗啓、清水 響、吉田 徹、佐久間健吉、伊藤由紀子、遠藤東路、湯川克彦、阿部雅彦/編・著 青林書院
9

実践演習 民事弁護起案

金子 稔、川村英二、大坪和敏、姫野博昭/著 日本加除出版
10 商業登記ハンドブック〔第4版〕 松井信憲/著 商事法務



日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング 2021年6月~8月

日弁連会員専用サイトからアクセス

順位 講座名 時間
1 相続法改正後における遺留分侵害額請求訴訟の実務(遺留分計算シートの活用方法~提訴から証拠調べまで~) 169分
2 労働問題の実務対応に関する連続講座(2021) 第4回「セクハラ・パワハラ・労災」 175分
3 できる!インターネット被害対応2020-入門編- 113分
4 自然災害債務整理ガイドライン-新型コロナウィルス感染症への適用- 88分
5 労働問題の実務対応に関する連続講座(2021) 第3回「不利益変更(給与・退職金中心)」 162分
6 弁護士のためのメンタルヘルスケア~こころ軽やかヒント集~ 61分
7 事業承継の手法としてのM&Aの実務に関する連続講座 第1回 
M&Aを利⽤した事業承継の流れと弁護⼠の役割
57分
8 弁護士会照会のノウハウ~事例別!適確な照会申出の実務

115分

9 自然災害債務整理ガイドライン(コロナ特則含む)調停条項案作成の実務 69分
10 弁護士が押さえておきたい民事信託に必要な後見・遺言知識 113分

お問い合わせ先:日弁連業務部業務第三課(TEL:03-3580-9927)