G7広島サミットにおいて、「核兵器のない世界」に向けて、日本政府が議長国として積極的な役割を果たすことを求める会長声明


本年5月19日から21日まで、G7広島サミット(主要国首脳会議)が開催される。岸田内閣総理大臣はG7広島サミットに向けたメッセージにおいて「力による一方的な現状変更の試みや核兵器による威嚇、その使用を断固として拒否し、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く」こと、核軍縮・不拡散等の国際社会が直面する課題について議論を深め「未来に向けてのアイディアとプランを明確に提示するよう」議長国として主導していくことを発表している。


当連合会は、2021年12月9日に「arrow_blue_1.gif核兵器の不拡散に関する条約(NPT)再検討会議において日本政府が積極的な役割を果たすことを求める会長声明」を、2022年7月14日に「arrow_blue_1.gif核兵器の不拡散に関する条約(NPT)再検討会議において、核兵器のない世界に向けて、締約国に具体的かつ効果的な提案を行うことを求める会長声明」を公表した。これらの声明で述べたとおり、NPTは、第6条において、核軍備競争の停止、核軍縮及び全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約についての誠実な交渉を締約国に義務付けている。これは、核兵器保有国が、自らの核兵器の廃棄を約束するものであり、非保有国への核の不拡散とあいまって、「核兵器のない世界」に向けての法的枠組みを定めたものと理解されている。なお、この「誠実な交渉義務」とは、国際司法裁判所により「交渉を完結する義務」も含意するとされている。


しかし国際社会において、核兵器廃絶に向けた取組は停滞したままである。2022年8月にニューヨーク国連本部で開催された核兵器の不拡散に関する条約(NPT)再検討会議においても、前回に引き続き合意文書の採択に至らなかった。そればかりか、ロシアのウクライナ侵攻に関しては、未だに核威嚇が続き、核兵器の行使が現実的な脅威と認識されている。


当連合会は、G7広島サミットにおいて、「核兵器のない世界」に向けて、日本政府が議長国として以下のとおり、積極的な役割を果たすことを求める。


 1 被爆の実相と核兵器の非人道性を各国首脳に理解してもらう機会を設けること
核兵器廃絶のためには、まず、各国首脳に被爆の実相と核兵器の非人道性を理解してもらい、核兵器廃絶に向けた取組を進展させる必要がある。

日本政府は、各国首脳に原爆ドーム、平和記念公園、広島平和記念資料館を視察してもらうのはもちろん、被爆者からその実体験を聞き、被爆の実相と核兵器の非人道性を理解してもらう機会を設けるべきである。



 2 「核兵器のない世界」に向けて、具体的かつ効果的な提案を行うこと
日本政府は、毎年核兵器廃絶に向けた決議案を国連総会に提出しているところ、2022年12月8日の国連総会本会議において提出した核兵器廃絶決議案(核兵器のない世界に向けた共通のロードマップ構築のための取組)が、147か国の支持を得て採択された。この決議は、核兵器の不使用の継続や透明性の向上、被爆の実相への理解向上のための軍縮・不拡散教育の重要性などを国際社会に呼びかけ、「核兵器のない世界」の実現が国際社会の共通の目標であることを再確認し、NPT第6条の規定を含む全ての面における条約の完全でかつ着実な履行及び同条約の普遍性の更なる向上への決意を再確認するとしている。

日本政府が、NPT第6条の規定を含む全ての面における条約の完全でかつ着実な履行と普遍性の向上を決意している以上、G7広島サミットにおいては議長国として、NPT第6条の完全でかつ着実な履行のための具体的かつ効果的な提案を行うべきである。



2023年(令和5年)4月21日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治