核兵器の不拡散に関する条約(NPT)再検討会議において日本政府が積極的な役割を果たすことを求める会長声明
2022年1月、核兵器の不拡散に関する条約(核兵器不拡散条約。以下「NPT」という。)再検討会議が開催される。
1970年に発効したNPTは、核不拡散、核軍縮及び原子力の平和的利用を条約の三本柱としており、現在では日本を含む190以上の国・地域が締約国となっている。1995年に条約の無期限延長が決定され、締約国によるNPT再検討会議が5年ごとに開催されている。
このNPTは、第6条において、核軍備競争の停止、核軍縮及び全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約についての誠実な交渉を締約国に義務付けている。これは、核兵器保有国が、自らの核兵器の廃棄を約束するものであり、非保有国への核の不拡散と相まって、「核兵器のない世界」に向けての法的枠組を定めたものと理解されている。なお、この「誠実な交渉義務」とは、国際司法裁判所により「交渉を完結する義務」も含意するとされている。
この点、日本は、毎年核兵器廃絶に向けた決議案を国連総会に提出しているところ、本年12月7日、米国や英国等と共同で提出した「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」と題する決議案が、158か国の賛成を得て採択された。この決議は、「核兵器使用がもたらす壊滅的で非人道的な結末を認識」した上で、「核兵器のない世界」の実現が国際社会の共通目標であることを再確認するとともに、「国際的な核不拡散体制の強化等を通じ、第6条を含むNPTの完全で着実な履行にコミットしていることを再確認」するとしている。
日本が、第6条を含むNPTの完全で着実な履行にコミットする決意を表明していることは大きな意義を有すると言えるが、さらに今後は、「核兵器のない世界」に向けての法的枠組を実現するための具体的な取組が求められる。その際、既に1997年にコスタリカが、2007年にコスタリカとマレーシアが国連に討議文書として提出した条約案(モデル核兵器条約)等を参考にし、NPT第6条の規定を具体化する効果的な提案を行うべきである。
よって、当連合会は、日本政府に対し、NPT再検討会議において、NPT第6条の完全・着実な履行のための具体的かつ効果的な提案を行い、「核兵器のない世界」に向けて積極的な役割を果たすことを要請する。
2021年(令和3年)12月9日
日本弁護士連合会
会長 荒 中