核兵器の不拡散に関する条約(NPT)再検討会議において、核兵器のない世界に向けて、締約国に具体的かつ効果的な提案を行うことを求める会長声明


本年8月、核兵器の不拡散に関する条約(核兵器不拡散条約。以下「NPT」という。)再検討会議がニューヨーク国連本部で開催される。


本来、NPT再検討会議は、2020年4月に開催される予定であった。


しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により4回に渡り延期され、本年8月に開催予定となった。再三に渡りNPT再検討会議が延期されたことも影響して、世界の核不拡散及び核軍縮への取組は、2000年、2010年のNPT再検討会議での合意にも関わらず、停滞している。


当連合会は、2021年12月9日に「→核兵器の不拡散に関する条約(NPT)再検討会議において日本政府が積極的な役割を果たすことを求める会長声明」を公表したが、核兵器保有国や核兵器依存国を巻き込んだ「核兵器のない世界」に向けての法的枠組の確立には至っていない。また、国内外では核兵器を使用するとの威嚇、核兵器共有論や非核三原則の見直しなど核不拡散及び核軍縮を推進するNPTに反する動向も見受けられる。


NPTは、第6条において、核軍備競争の停止、核軍縮及び全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約についての誠実な交渉を締約国に義務付けている。これは、核兵器保有国が、自らの核兵器の廃棄を約束するものであり、非保有国への核の不拡散と相まって、「核兵器のない世界」に向けての法的枠組を定めたものと理解されている。


また、日本と米国は、第6条を含むNPT上の全締約国の義務を再確認するとしているところである。


しかし、核兵器禁止条約は発効したが、核兵器保有国や核兵器依存国の参加を前提とする「核兵器のない世界」を実現し、維持する上で必要な法的枠組みは、存在しない。


延期後のNPT再検討会議においては、「核兵器のない世界」を実現し、維持する上で必要な法的枠組みを確立し、核不拡散及び核軍縮を推進する必要がある。


よって、当連合会は、日本政府に対し、岸田首相が参加を表明しているNPT再検討会議において、「核兵器のない世界」に向けて、すでに、コスタリカ政府等によって国連文書として提出されているモデル核兵器条約等を参考にするなどして、締約国に具体的かつ効果的な提案を行うことを求める。



 2022年(令和4年)7月14日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治